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小規模多機能型居宅介護と併用できるサービスはある?デメリットなども解説

 公開日:2025/11/18
車椅子を押すヘルパーと高齢者

介護サービスのなかでも、通いや訪問、泊まりを柔軟に組み合わせて利用できるのが小規模多機能型居宅介護です。

すべてのサービスを同じ事業所内で対応するため、顔なじみの職員が一体的に支援を行い、利用者は安心感をもって自宅での暮らしを続けることができます。

地域に密着したサービスでありながら、仕組みがやや複雑な点もあるため、利用前に特徴を理解しておくことが大切です。

本記事では、小規模多機能型居宅介護の仕組みや特徴、メリット・デメリットをわかりやすく解説します。
小田村 悠希

監修医師
小田村 悠希(医師)

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・資格:社会福祉士、研修認定精神保健福祉士、介護福祉士、福祉住環境コーディネーター2級
・経歴:博士(保健福祉学)
これまで知的障がい者グループホームや住宅型有料老人ホーム、精神科病院での実務に携わる。現在は障がい者支援施設での直接支援業務に従事している。

小規模多機能型居宅介護とは

高齢者女性と話す女性スタッフ(メモ) 小規模多機能型居宅介護は、地域包括ケアシステムの推進を目的に2006年4月に新設された制度です。

利用者が住み慣れた地域で自分らしい生活を続けられるよう通いや訪問、泊まりの3つのサービスを同じ事業者が包括的に提供します。

要介護者の状態や希望に応じて、自宅での支援や施設への通い、短期間の宿泊を柔軟に組み合わせられるのが特徴です。

自宅以外にも安心感をもって過ごせる拠点をつくるという考えのもと、宿泊時には入浴・排泄・食事などの介護のほか、調理・洗濯・清掃などの日常生活支援や機能訓練なども行います。

小規模多機能型居宅介護は介護保険法で定められたサービスの一つで、小多機(しょうたき)と略されることもあります。

サービスの基本的な仕組み

小規模多機能型居宅介護を利用するには、あらかじめ事業所への登録が必要です。1つの事業所で受け入れられる登録者数は、制度上29名までと定められています。

一つの事業所で契約をする小規模多機能型居宅介護は、3つのサービスの通いと訪問、泊まりを利用者の心身の状態や希望に応じて利用できるサービスです。

通いでは、日中に事業所で介護やレクリエーションなどの介護を受けるもので、生活の中心となる支援です。利用定員は登録定員の2分の1または15名以内(条件により18名まで)です。

訪問では、職員が利用者の自宅を訪問し、掃除・食事・排泄などの日常生活を支援します。宿泊では、短期間事業所に泊まり介護を受けるもので、家族の都合や体調にあわせて利用可能です。定員は通い定員の3分の1または9名以下です。

それぞれのサービスはいずれも同じ職員が一体的に支援を行うため、顔なじみの関係が築かれやすく、利用者に安心感を与えます。

利用できる対象者と条件

要介護認定 小規模多機能型居宅介護を利用できるのは、介護保険法に基づき、要介護1〜5または要支援1,2の認定を受けている方です。

地域密着型サービスのため、事業所が指定を受けた市区町村に住んでいる方に限り利用できます。

また、介護が中重度になっても、住み慣れた自宅や地域で生活継続を希望されている方が主な対象です。

利用者の現状は、要介護度の低い方(要介護1,2)が新規契約時に多く(54.9%)、一方で要介護度の高い方(要介護3〜5)は介護の進行などにより契約を終了するケースが少なくありません。

小規模多機能型居宅介護の特徴

介護・ケアする優しい手 小規模多機能型居宅介護は、2006年度に新設されて以来、地域包括ケアシステムを支える重要な仕組みとして位置づけられています。

制度の目的は介護が必要になっても住み慣れた地域で自分らしい生活を続けられるよう支援することです。

利用者が中重度の介護状態になっても、通いや訪問、泊まりのサービスを柔軟に組み合わせることで在宅生活を継続しやすくするのが特徴です。

家族の介護負担を軽減しつつ、利用者が住み慣れた地域で暮らし続けられるよう支援する役割を担っています。

訪問や泊まりを組み合わせられる仕組み

小規模多機能型居宅介護では、事業所が利用者ごとにケアプランを作成し、3つのサービスを必要に応じて組み合わせて利用できます。

訪問サービスは時間や回数に制限がなく、短時間の支援や電話での安否確認など柔軟な対応も可能です。

また、一つの事業所で複数のサービスを提供できるため、利用者の状況に応じた切れ目のない支援が行えます。

普段は通いを中心に利用している方でも、体調の変化や家族の事情に応じて、訪問や宿泊を追加できるのが小規模多機能型居宅介護の大きな特徴です。

顔なじみの職員による継続的支援

小多機ではすべてのサービスを同じ事業所と同じ職員が担当するため、利用者とのなじみの関係が築かれ、安心感を得やすい環境が整っています。

顔なじみの職員の対応は、利用者の心身の変化を継続的に把握でき、きめ細やかな支援が可能です。

利用者や家族はコミュニケーションが取りやすく、信頼関係や安心感のなかでケアを受けられるのが強みです。

認知症の方にとっては、担当職員が変わらないことで混乱を防ぎ、落ち着いて生活できる利点があります。小多機は認知症の年配の方の在宅生活を支援する重要な役割を果たしています。

小規模多機能型居宅介護と併用できる介護サービス

居宅サービス計画書・ケアプラン 小規模多機能型居宅介護は複数のサービス(通い・訪問・泊まり)をまとめて提供する包括報酬型サービスのため、基本的にほかの居宅介護サービスと併用はできません。

ただし、医療的な処置や生活維持に欠かせない一部のサービスに限って、例外的に併用が認められています。

利用の際は、利用者のケアプラン作成や給付管理は、契約している小規模多機能型居宅介護のケアマネジャーが一括して行う仕組みになっています。

併用できるサービスを詳しくみていきましょう。

訪問看護

小規模多機能型居宅介護と訪問看護は、原則として併用はできません。小多機のサービス費が月額定額制であり、訪問看護にあたる基本的なケアも含まれているためです。

ただし、主治医が特別な医療的ケアを要すると判断した場合は、医療保険による訪問看護の併用が認められます。

例えば病状の急変時や退院直後、終末期と精神疾患の治療中、または特定疾患に該当する場合などが対象です。

対象の際は小多機のケアマネジャーが訪問看護師や主治医と連携し、役割を明確に分担することで、医療と介護が一体となったより安心感のあるケア体制が実現します。

福祉用具貸与

介護用小型車椅子と電動介護ベッド 小多機は包括的なサービスのため、ほかの居宅介護との併用は原則できませんが、福祉用具貸与(レンタル)は例外的に併用が認められています。

福祉用具貸与は、要介護者が自宅で安全かつ自立した生活を送れるように車椅子やベッド、手すりや歩行器などを貸与する制度です。

利用者の身体状態や環境にあわせて専門相談員が用具を選定し、定期的に点検や調整を行います。

軽度者(要支援・要介護1)は一部の用具のみが対象ですが、必要性が認められれば例外的に給付されることもあります。自宅生活を支える重要な支援制度です。

居宅療養管理指導

居宅療養管理指導は通院が難しい要介護者の自宅を医師や薬剤師、管理栄養士や歯科衛生士などが訪問し、療養上の管理や指導を行う小多機と併用が認められている例外的なサービスの一つです。

サービス提供者と内容は以下のとおりです。

  • 医師と歯科医師:計画的かつ継続的に診療や歯科医学的管理を月2回まで行う
  • 薬剤師:服薬や薬の保管状況の確認を月4回(病院の薬剤師は月2回)まで行う
  • 管理栄養士:食事や栄養相談を月2回まで行う
  • 歯科衛生士:歯科医師の指示で口腔ケアや摂食・嚥下機能の指導を月4回まで行う

医師らは小多機のケアマネジャーへの情報提供を行い、サービスの一体的な連携を図ることが義務づけられています。

併用できない介護サービス

高齢者の介助をする介護士 小規模多機能型居宅介護は、複数のサービスを一体的に提供する仕組みのため、ほかの介護保険サービスとの併用は基本的に制限されています。

前述のとおり、小多機のサービスに含まれない専門的な医療ケアや生活維持に欠かせない一部のサービスは、例外的に併用が認められています。

一方で通いや訪問、泊まりなど小多機が包括的に提供しているサービスと重複する居宅介護サービスは、原則として併用できません。さらに詳しくみていきましょう。

通所介護との併用制限

小多機は通いをメインに食事や入浴、機能訓練とレクリエーションなどを提供するサービスで、通所介護(デイサービス)と同様の機能を持ちます。

費用は要介護度に応じた月単位の定額制(包括報酬)で、金額のなかに通いのサービスも含まれています。

小多機を利用している方が、介護保険で通所介護を併用することは、サービス内容が重複するため原則認められていません。

小多機は3つのサービスを一体的に提供し、担当者が変わらない安心感をもって支援体制を整えています。

訪問介護との併用制限

小多機は利用者の自宅を訪問し、入浴・排泄・食事などの介護や掃除と洗濯などの家事や健康管理、機能訓練などを行う訪問サービスを提供します。

訪問介護(ホームヘルプ)と同様の内容を含むため、介護保険で別途訪問介護の利用は重複となり、基本的には認められていません。

小多機の費用には訪問サービスが含まれており、サービスは事業所の職員が行う決まりです。外部の訪問介護事業者への依頼は、利用者の自己負担であっても原則認められていません。

小規模多機能型居宅介護を利用するメリット

明るい介護職員 小規模多機能型居宅介護は、要介護が重度になっても住み慣れた地域で安心感をもって暮らし続けられるよう支援するサービスです。

通いや訪問、泊まりを柔軟に組み合わせられるため体調や家族の状況に応じて定員に空きがある限り、24時間365日制限なく利用できます。

料金面やサービスの柔軟性、職員との関係性の確保などのさまざまなメリットがあります。詳しく解説しましょう。

定額制で3つのサービスを利用できる

小多機のサービスは、要介護度に応じた月ごとの定額で利用できるのが特徴です。

通いや訪問、泊まりを頻繁に利用しても、介護保険の自己負担割合(1〜3割)は原則変わりません。

実際の費用は自治体や事業所によって異なるため、契約前に詳細な確認が大切です。食費や宿泊費などの日常生活費は別途自己負担になりますが、事業所ごとに金額が異なります。

複数のサービスを柔軟に組み合わせても追加料金が発生しにくく、費用を抑えながら安心感をもって利用できるのが特徴です。

訪問に制限がない

室内で車椅子を押す若い女性とシニア男性 通いのサービスを中心に、利用者の状態変化や緊急時にも随時対応できる24時間365日の安心感のある体制が整っています。

要介護度別の定額制(包括報酬)が採用されているため、訪問回数の制限がなく、利用者の状態に応じて3つのサービスを自由に調整できます。

夜間の訪問や緊急コールにも対応できる柔軟な仕組みが特徴的ですが、事業所によっては対応可能範囲に違いがあるため、注意が必要です。

2021年度のデータでは利用者一人あたりの平均月間訪問回数は19.4回で、事業所の88.5%が一日複数回の訪問を実施していました。

少人数制のため関係を築きやすい

小多機は名前のとおり登録定員は29名以下と小規模で運営されており、利用者と職員、利用者同士が親密な関係を築きやすいのが特徴です。

各サービスを利用しても、顔なじみの職員が対応することで利用者の混乱を防ぎ、心身の変化を継続的に把握できます。一貫した職員の体制は、関係性の構築にたいへん重要です。

特に認知症の方にとって安心感がもてる家庭的な環境が整っており、在宅生活の継続を支える大きな役割を果たしています。

小規模多機能型居宅介護を利用するデメリット

憂鬱な表情の高齢者女性 小規模多機能型居宅介護は通いと訪問、泊まりを一体的に受けられる便利なサービスですが、いくつかの制約もあります。

利用できるのは、原則として同一市区町村の住民に限られます。また、小規模制度のため登録定員も少人数です。

利用開始後はほかの介護保険サービスが原則併用できず、ケアマネジャーも事業所専属に変わります。

定額制のため利用頻度が少ない場合や医療的ケアが必要な場合には、費用負担が大きく感じられることもあります。詳しくデメリットを解説していきましょう。

利用できる定員やサービス内容の制約

利用者はそれぞれの市区町村の指定を受けた事業所に登録が限定されており、それぞれの事業所には定員の上限が設けられています。

事業所に登録できる人数は多くて29名(サテライト型は18名)までです。定員は以下のとおりです。

  • 通いサービス:登録者数の半分程度から15名ほど(多くて18名)
  • 泊まりサービス:9名まで(サテライト型は6名まで)

訪問サービスは、事業所の職員が交代で行うため、対応できる範囲に限りがあります。また、毎回同じ職員が訪問できるとは限らず、同じ事業所内でその日の担当者が変わることもあります。

希望者が多い場合は利用したいタイミングでサービスを受けられないことがあり、特に毎日のそれぞれのサービスは満員になることも少なくありません。

基本的に、小多機を利用している間は、ほかの介護保険サービス(訪問介護やデイサービス、ショートステイなど)を同時に利用することはできません。

定額制のため費用がかさむ場合もある

小多機は、利用者の要介護度に応じてあらかじめ決められた月額料金を支払う定額制の仕組みを取っています。

利用回数や時間に関わらず一定額が発生するため、月の途中で体調を崩したり、家族の都合で利用回数が減ったりした場合でも料金は変わりません。

通いや訪問の利用が少ない月は、実際の利用量に対して費用が高く感じられる場合もあります。

一方で、利用回数が多い方にとっては費用を気にせずサービスを受けやすい仕組みでもあり、利用頻度が少ない方にとって費用対効果が低くなる点に注意が必要です。

小規模多機能型居宅介護を検討する際の注意点

憂鬱な表情の高齢者女性 小規模多機能型居宅介護を利用する際は、契約前にサービス内容や制度をしっかり確認することが大切です。

ほかの介護サービス(デイサービスや訪問介護など)が使えなくなる場合があるため、併用の可否を理解しておきましょう。

事業所ごとに定員や対応内容が異なるため、自分の希望に合った支援が受けられるか事前確認が必要です。

料金は月額定額制のため、利用回数が少ないと割高に感じることもあります。ケアマネジャーが事業所専属に変わる点も含め、家族や関係者と十分に話し合って決めましょう。

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