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「更年期障害」になると現れる症状はご存知ですか?医師が監修!

 更新日:2023/03/27
「更年期障害」になると現れる症状はご存知ですか?医師が監修!

更年期とは閉経の前後5年間のことで、その時期にはさまざまな身体・精神症状が現れます。

日本人女性の場合には平均的に45歳から55歳頃が更年期にあたりますが、この時期には仕事で重要なポストを任されるケースもあるでしょう。

仕事やプライベートでいろいろと忙しい時期に、のぼせ・ほてり・頭痛・イライラといった症状に悩まされるのは辛いものですね。

こちらでは、更年期障害の原因・症状・治療法などについて解説します。

男性の更年期障害についても併せて解説していくので、参考にしてみてください。

前田 裕斗

監修医師
前田 裕斗(医師)

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東京大学医学部医学科卒業。その後、川崎市立川崎病院臨床研修医、神戸市立医療センター中央市民病院産婦人科、国立成育医療研究センター産科フェローを経て、2021年より東京医科歯科大学医学部国際健康推進医学分野進学。日本産科婦人科学会産婦人科専門医。

更年期障害とは?

落ち込む女性

更年期障害とはどういう病気ですか?

  • 更年期とは主に閉経の前後の5年間、合計10年間を指します。
  • 更年期になるとエストロゲンの減少によって心身の不調が起こることがありますが、その症状によって日常生活に支障をきたすのが更年期障害と呼ばれるものです。
  • 更年期障害といえば女性特有のものと思われがちですが、男性もテストステロンの減少やストレスなどによって更年期障害(LOH症候群)が起こる可能性があります。
  • テストステロンの減少のしかたは個人差が大きいため、男性の更年期障害は40代以降の男性ならいつ起こってもおかしくありません。

男性・女性それぞれの症状の特徴を教えてください。

  • 女性に起こる更年期障害の症状には、身体症状と精神症状があります。
  • 更年期障害でみられる症状は非常に種類が多く、現れ方には個人差があるのが特徴です。
  • そのうち、身体症状は以下のようなものがあります。
  • のぼせ
  • ホットフラッシュ
  • ほてり
  • 発汗
  • 頭痛
  • めまい
  • 動悸
  • 関節痛
  • しびれ
  • 冷え
  • また、精神症状は以下のようなものです。
  • イライラ
  • 気分の落ち込み
  • 意欲の低下
  • 情緒不安定
  • 抑うつ感
  • 物忘れ
  • 不安感
  • 不眠
  • 一方で、男性に起こる更年期障害にも、身体症状と精神症状がみられます。身体症状は以下のようなものです。
  • 肩こり
  • 動悸
  • 手足のしびれ
  • ほてり
  • のぼせ
  • 頭痛
  • 発汗
  • 冷え
  • 精神症状には以下のようなものが挙げられます。
  • うつ傾向
  • 無気力
  • イライラ
  • 不安
  • 疲労感
  • 不眠
  • 精力の減退

原因はなんですか?

  • 更年期障害の原因のひとつに挙げられるのが、女性ホルモンの1つであるエストロゲンの分泌量の低下です。
  • 加齢や閉経によって卵巣機能が低下してエストロゲンの分泌が減少すると、エストロゲンの働きで保たれていた機能がうまくいかなくなります。エストロゲンの急激な減少が女性ホルモンのバランスや自律神経に影響を与え、心身にさまざまな影響が現れるのです。
  • さらに、仕事や子育てなど周りの環境によるストレスや、なりやすい性格かどうかも、更年期障害の原因となりうるといわれています。
  • 男性の更年期障害の場合には、男性ホルモンの1つであるテストステロンの減少やストレス・過労などが原因です。

30代で発症する方もいると聞いたのですが…。

  • 更年期と呼ばれる年齢は45歳から55歳くらいですが、30代でも更年期障害と似た症状や不調を感じている人もいるでしょう。
  • これは、食生活や生活習慣などによるホルモンバランスの乱れで起こるといわれているもので、「プレ更年期」などとも呼ばれます。
  • 実際にはエストロゲンの量が減っていない人もいますが、 中にはエストロゲンの低下が始まっている人もいます。
  • プレ更年期の時期に更年期症状を感じた場合は、自分の身体を知るためにも一度ホルモン検査や婦人科で相談をしてみることもおすすめです。

更年期障害が重くなる・なりやすい人に共通する特徴はあるのでしょうか?

  • 更年期障害になりやすいのは、男女ともに真面目で責任感が強い性格の人だといわれています。
  • さらに、仕事や育児などでストレスを抱えている人や、睡眠時間が少ない人なども注意が必要です。

更年期障害の診断と治療方法

内服薬

更年期障害はどのようにして診断するのでしょうか?

  • 更年期障害とは、更年期に現れるさまざまな症状のうち、ほかに原因となる病気がなく、なおかつ日常生活に支障をきたす状態のことです。
  • まず、更年期障害特有の身体・精神症状が出ている場合、更年期障害を疑う必要があります。さらに、その症状がエストロゲンの減少によって起こっているのか、ほかに病気が隠れていないかどうかといった点も、診断するうえで大事なポイントです。
  • 特にうつ病など、更年期障害と似た症状の病気との見分けに注意を払う必要があります。

診断するうえで検査などありますか?

  • 更年期障害の検査では、まず問診を行います。チェックされるのは、初潮の年齢・妊娠や出産の回数・月経の有無・生理周期・これまでにかかった病気・家族の病気といった項目です。
  • また、ほかの病気によるものではないということを調べるために、血液検査で女性ホルモンの数値の測定や、子宮や卵巣の超音波検査なども行われます。
  • 病院によって検査の内容には多少の違いがありますが、マンモグラフィーや骨量検査が行われるケースもあるでしょう。

更年期障害の治療方法が知りたいです。

  • 更年期障害の治療方法は次に挙げる3つがあります。
  • ホルモン補充療法(HRT)
  • 漢方薬による治療
  • 向精神薬による治療
  • ホルモン補充療法(HRT)は、加齢や閉経で減少するエストロゲンを薬で補充する治療法です。子宮のある人は、子宮内膜の増殖を避けるために黄体ホルモン(プロゲステロン)も併用します。
  • ホルモン補充療法(HRT)はホットフラッシュ・のぼせ・発汗・ほてりといった症状に特に有効です。
  • 漢方薬による治療は、心身のバランスを整える効果が期待できます。症状や証と呼ばれる人ごとの特性によって、使われる漢方薬が異なるのが特徴です。また、向精神薬による治療は、特に精神症状が強い場合によく用いられます。
  • 男性の更年期障害の場合、症状が強ければテストステロンを注射などで補充する男性ホルモン補充療法(ART)を行うのが一般的です。

治療しても改善しない場合はどうしたら良いですか?

  • 症状に合っていない治療方法で治療を行った場合、更年期障害の症状がなかなか改善しないケースもあるでしょう。そのような場合には、症状に合ったほかの治療方法を併用したり、治療法を変えたりするケースもあります。
  • また、更年期障害にはストレスも関係しているといわれているため、ストレスを溜めないようにして生活習慣や食生活の改善を心掛けましょう。

更年期障害との向き合い方や対処法

ストレッチする女性

症状が辛いときはどう過ごしたら良いのでしょうか?

  • 更年期障害の症状が辛い時には無理をせずに、自分をいたわるようにゆったりと行動しましょう。
  • 真面目な人ほど、これまで通りに動けないことに罪悪感を持ってしまいがちですが、ストレスは更年期障害を悪化させる可能性があるため注意が必要です。
  • 無理をするとその分回復に時間がかかりがちになるので、とにかく無理をしないようにしましょう。

更年期障害をなかなか家族に理解してもらえないのですが…。

  • 更年期障害の辛さは実際に経験した人にしか分からないため、なかなか家族の理解を得られないケースもあるでしょう。
  • 身体症状や精神症状があるのに理解してもらえず、さぼっていると思われてしまったり、家事に完璧さを求められたりすると辛いものです。
  • 家族からの理解が得られない場合は、更年期障害によってどのような辛さがあるかを家族に話しておくのが大事でしょう。
  • 精神症状が強く家族に当たってしまうような場合には、更年期障害の症状によってイライラしてしまうことがあるとあらかじめ伝えておくことをおすすめします。
  • 日ごろからコミュニケーションを取り、更年期障害によって起こりうる症状などについて情報を共有しておくことで家族の理解も深まるでしょう。

症状を少しでも軽くする方法や予防する方法はありますか?

  • 更年期障害の症状を少しでも軽くするためには、生活習慣や食生活の見直しが欠かせません。
  • 睡眠時間をしっかりと確保し、バランスの良い食事を心掛けましょう。
  • また、適度な運動も必要です。運動は自律神経のバランスを整えるのにも有効だということが分かっています。
  • ウォーキングなどの軽い運動でよいので、運動をする時間が取れないという方は普段の生活の中で歩く時間を増やす工夫をしてみてください。

最後に、読者へメッセージがあればお願いします。

  • 更年期は、誰にでもやってくるものです。そして症状の出方には個人差があるものの、多くの女性が更年期障害を経験します。
  • 仕事や家事で忙しいのに更年期障害の症状が起こると辛いので、無理をせずに休むようにしましょう。
  • 真面目な人ほど休むことに対してうしろめたさを感じてしまうものですが、そんな必要はありません。
  • 自分をいたわって、辛い更年期障害を乗り切りましょう。

編集部まとめ

スーツを着た女性
更年期障害は、女性ホルモンのひとつであるエストロゲンの急激な減少などによって閉経前後の女性に起こりやすい心身の不調です。

症状の出方は人によってさまざまで、ほてり・のぼせ・頭痛などの身体症状のほか、イライラ・憂鬱感・気力の低下といった精神症状もみられます。

更年期障害にはホルモン補充療法(HRT)をはじめとした治療法があるので、症状が辛い方は婦人科の受診や治療も検討してみましょう。

更年期障害は50代後半ごろから60代後半くらいまでには症状がおさまる人が多いといわれています。

症状やそれに伴って起こる心身の不調などは事前に家族に共有し、理解ある環境でストレスを溜めずに過ごすことが大切です。

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