女性に多い「ヘバーデン結節」&「ブシャール結節」の症状・治療法を医師が解説

指の関節が腫れたり痛んだり、場合によっては変形したりすることもあるヘバーデン結節とブシャール結節。医療機関で加齢変化と言われ、その痛みに悩んでいる人も多いかもしれません。そこで二つの疾患について『志村三丁目駅前ねもと整形外科・手のクリニック』の根本先生が解説。原因や症状、治療法を教えてもらいました。

監修医師:
根本 高幸(志村三丁目駅前ねもと整形外科)
へバーデン結節、ブシャール結節とは?

編集部
へバーデン結節、ブシャール結節とはなんですか?
根本先生
指関節の腫れや痛み、しびれなどが生じる疾患で、変形性関節症の一種です。指先から数えて1番目に当たる第一関節に生じるものをヘバーデン結節、第二関節に生じるものをブシャール結節といいます。
編集部
もう少し詳しく教えてください。
根本先生
変形性関節症とは関節の軟骨がすり減り、骨が変形することでさまざまな症状が引き起こされる病態をいいます。膝や腰など、あらゆる関節で起こることがありますが、へバーデン結節やブシャール結節はこれが手の指に起きたもの。1本の指だけが罹患することもありますが、複数の指が罹患することもあります。
編集部
なぜ、発症するのですか?
根本先生
加齢、体質のほか、指を使いすぎることも発症の要因になるとされていますが、明確な原因は明らかではありません。また、最近では痛みの原因として女性ホルモンの関与も注目されています。
編集部
どんな人に多く発症するのですか?
根本先生
痛みの症状で病院を受診する人の多くが40歳以降の女性で、料理人や美容師、工場の流れ作業で働く人、パソコン業務などで指をたくさん使う人のほか、家事労働などでしか手を使わない主婦の人も多く受診します。したがって、「指を使う職業ではないから大丈夫」ということではありません。
編集部
なぜ女性に多く発症するのですか?
根本先生
女性ホルモンの一種であるエストロゲンは関節の健康を維持するのに重要な働きをしています。そして、更年期に入り、エストロゲンの分泌量が減少することによって、関節炎や腱鞘炎を発症する人が多いのです。レントゲン検査による疫学的調査では、へバーデン結節の男女の有病率に差が無いとの報告もあります。しかし、男性に比べて女性の受診率が圧倒的に高いのは、女性ホルモンの変動に伴う更年期症状の1つであると最近では考えられてきています。
どのような症状が起きるのか?

編集部
どのような症状が見られますか?
根本先生
へバーデン結節、ブシャール結節ともに症状は同様で、関節の腫れや痛みが見られるようになり、さらに可動域が制限されるようになります。また水イボのような膨らみが見られることもあります。
編集部
水イボのような膨らみができることもあるのですね。
根本先生
はい。なかにはこの水イボのような膨らみをご自分で潰してしまう人もいらっしゃいますが、もし感染を起こしてしまうと、化膿性関節炎を発症して急速に関節が壊れてしまうこともあります。そのため水イボのような膨らみができても、自分で潰さないようにしましょう。
編集部
さらに進行するとどうなるのですか?
根本先生
関節軟骨のすり減りがさらに進むと関節の変形が進行し、骨の棘(とげ)が出てきたり、関節がグラグラして物が上手くつまめなくなったりする人もいます。一方、指の関節は太くなってしまったものの、痛みは慢性的にならずに自然治癒する人も多くいます。慢性的な指の痛みに悩む人は治療が必要です。
編集部
どのような検査で診断されるのですか?
根本先生
まずはレントゲン検査をおこないます。病期の初期の方では関節軟骨のすり減りがあまり見られず、レントゲンでは診断がつかないこともあるため、注意が必要です。そのほか、レントゲン検査では関節リウマチのように骨が萎縮するびらん型のへバーデンかどうかの診断も重要です。また、更年期の女性で問診上、女性ホルモンの異常が疑われる場合にはホルモン検査をおこなうこともあります。
編集部
ほかにはどのような検査をおこないますか?
根本先生
へバーデン結節やブシャール結節で重要なのは、関節リウマチとの鑑別です。関節リウマチは自己免疫疾患のひとつであり、体中のさまざまな関節で炎症が起きる疾患で、へバーデン結節やブシャール結節と同じく、指に発症した場合には骨の変形が見られます。しかし、ヘバーデン結節やブシャール結節と関節リウマチでは進行や治療法がまったく異なるので、まずは採血検査により、正確に鑑別することが必要になります。
ヘバーデン結節、ブシャール結節の治療法

編集部
どのようにして治療するのでしょうか?
根本先生
指装具や局所のテーピングにより、痛い指を安静に固定することが必要です。さらに、痛みを和らげるためにリハビリテーションをしたり、消炎鎮痛剤や漢方薬などによる内服薬や湿布薬を処方したりします。また、炎症期では少量の関節内ステロイド注射をおこなうこともあります。
編集部
それでもよくならない場合には?
根本先生
それらの治療をおこなっても痛みが改善しない場合には手術をおこなうこともあります。一般に、へバーデン結節ではスクリューなどで関節を固定する手術がおこなわれ、またブシャール結節では傷んだ関節を人工関節に置換する手術がおこなわれることがあります。
編集部
手術をすると治癒が期待できるのですか?
根本先生
痛みの改善は期待できますが、、それぞれの術式には問題点もあります。へバーデン結節に関節を固定する手術をおこなった場合、指の第一関節が動かなくなってしまうので日常生活で不自由さが生じることがあります。一方、ブシャール結節に人工関節手術をおこなった場合、指の人工関節は人工膝関節や人工股関節に比べてその耐久性に問題があるので、スポーツをしたり重い荷物を持ったりといった行動は制限されます。また、可動域も正常の半分くらいしか回復を見込むことができません。そのため、手術をするメリットとデメリットを理解した上で、慎重に選択することが必要です。
編集部
どのような症状に気づいたら、医療機関を受診すればよいでしょうか?
根本先生
へバーデン結節、ブシャール結節とも進行は非常にゆっくりで、数年から10年くらいの期間をかけてゆっくりと悪化していきます。しかし、いったん指が変形してしまうと元に戻すのは困難であるため、できるだけ早期に治療を開始することが大切。指先の腫れや痛みが続いたり、痛みのために日常生活で制限が出たりしている場合には、早めに医療機関を受診しましょう。発症の要因に遺伝的な素因もあるため、身内にヘバーデン結節やブシャール結節になった人がいる場合には体質が似ているかもしれないので、一層注意が必要です。
編集部
最後に読者へのメッセージがあれば。
根本先生
へバーデン結節やブシャール結節で困っているとき、一般的な整形外科を受診しても「問題ありません」「年のせいですよ」と済まされてしまうことがあるかもしれません。手の治療は専門性が高いため、手に特化した医師でなければ正しく診断したり、治療したりすることが難しい場合もあります。もし、一般的な整形外科で治療がが難渋するようでしたら、ぜひ「手外科」を受診を検討してみてください。
編集部まとめ
あまり知られていないことですが、整形外科と一口にいっても、手を専門とする医師や脊椎を専門とする医師などさまざまいます。「餅は餅屋」という言葉もある通り、必ず専門医を受診するようにしましょう。
医院情報
所在地 | 〒174-0056 東京都板橋区志村3丁目7-14 Wellness Square 志村3階 |
アクセス | 都営三田線「志村三丁目」駅より徒歩0分 |
診療科目 | 整形外科・リハビリテーション科・リウマチ科 |