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「扁桃周囲膿瘍」とは?症状・原因についても解説!

 更新日:2023/03/27
「扁桃周囲膿瘍」とは?症状・原因についても解説!

風邪をひいて「扁桃腺が腫れている」というのは、よく聞く症状です。

これは扁桃腺が炎症を起こす扁桃炎という病気ですが、扁桃周囲膿瘍(へんとうしゅういのうよう)とは違うのでしょうか。ここでは扁桃周囲膿瘍と扁桃炎の違いを解説します。

扁桃周囲膿瘍は、激しい痛みを伴い、ときには命に関わるリスクもある病気です。扁桃周囲膿瘍の原因・治療法・予防法を紹介します。

和佐野 浩一郎

監修医師
和佐野 浩一郎(医師)

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慶應義塾大学医学部卒業、同大学院修了。2018年より独立行政法人国立病院機構東京医療センター臨床研究センター聴覚・平衡覚研究部室長。日本耳鼻咽喉科学会専門医・指導医・補聴器相談医、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医、日本耳科学会耳科手術暫定指導医、頭頸部がん専門医・指導医、日本がん治療認定医機構日本がん治療認定医、日本気管食道科学会気管食道科専門医。

扁桃周囲膿瘍とは

扁桃周囲膿瘍とは

扁桃周囲膿瘍はどのような病気ですか?

  • 喉の奥の両側にある口蓋扁桃が炎症している状態を扁桃炎、扁桃周囲に炎症が広がっている状態を扁桃周囲炎といいます。悪化して、膿がたまっている状態が扁桃周囲膿瘍です。
  • 膿瘍とは、膿がたまっている状態のことをいいます。激しい喉の痛み・高熱・口が完全に開けられないなどの症状が特徴です。重症化すると呼吸するのも苦しくなり、睡眠障害も引き起こします。膿を取り出さないかぎり完治しないため、外科的処置で膿を排出しなければなりません。
  • また、扁桃炎は両側のことがほとんどですが、扁桃周囲炎と扁桃周囲膿瘍では片側の場合が多いと報告されています。

扁桃炎との違いはなんですか?

  • 風邪をひいたなど体力が落ちているときには、免疫力も落ちています。免疫力が低い時に免疫器官である口蓋扁桃が細菌やウィルスと闘って、炎症を起している状態が扁桃炎です。炎症を起こし膿が溜まると扁桃周囲膿瘍です。
  • 扁桃は喉の左右両側にありますが、そのどちらかに膿が溜まり痛むのが特徴です。
  • 扁桃炎の状態ならば、抗菌薬や解熱剤の投与で完治が見込めます。しかし、扁桃周囲膿瘍は外科的な処置で膿を取り除く必要があります。

具体的な症状について教えてください。

  • 扁桃周囲膿瘍と扁桃炎では、同じように下記の症状が現れます。
  • 喉の痛み
  • 物が食べられない
  • 発熱
  • リンパの腫れ
  • 喉の痛みは左右どちらかというのが、扁桃周囲膿瘍の特徴です。また、38°C〜40℃の高熱を伴い、吐き気を感じることもあります。
  • さらに病状が悪化すると、唾液を飲み込むにも激しい痛みがあり、首を曲げても激しく痛むという状態になります。痛みにより飲食ができなくなるため、脱水症状には注意が必要です。また、きつい口臭を伴うという特徴も報告されています。

重症化するリスクはありますか?

  • 扁桃周囲膿瘍が重症化すると頸部膿瘍や縦隔膿瘍になることもあり、気道が塞がるリスクがあります。
  • 呼吸困難に陥り、最悪の場合には死に至ることもあります。
  • 扁桃周囲膿瘍は自然治癒はしません。重症化する前に耳鼻咽喉科を受診することをおすすめします。

どれくらいの年代の人に多くみられますか?

  • 20〜30代の人、特に男性に多く見られると報告されています。
  • また、扁桃炎は子どもに多い病気ですが、子どもが扁桃周囲膿瘍になることは少ないと考えられています。

扁桃周囲膿瘍の原因と治療法

扁桃周囲膿瘍の原因と治療法

扁桃周囲膿瘍の原因はなんですか?

  • 原因は、インフルエンザウィルス・レンサ菌・ブドウ球菌などの細菌に感染することです。
  • 扁桃炎とは違い、両側にある扁桃の左右どちらか一方に炎症が集中するのが特徴です。

診断はどのように行われるのですか?

  • 喉の奥を見ることで、診断します。左右どちらかの扁桃が赤黒く腫れていて、表面に白い膜がついていると扁桃周囲膿瘍と診断されます。目視で膿瘍が確認できないときには、CT検査で膿瘍の確認が可能です。
  • 扁桃周囲膿瘍の場合は、原因となる菌やウィルスの種類を判別する必要があります。これには、針を刺して膿瘍の1部や粘膜を採取して調べることとなります。
  • また、病状の程度を確認するためは、血液検査が有効です。

薬物投与のみで治療できますか?

  • 膿瘍がない扁桃炎や扁桃周囲炎ならば、抗菌薬の投与のみで治療が可能です。炎症の度合いが高く食事摂取も難しい場合は、入院して抗生剤の投与や点滴を行います。
  • しかし、扁桃周囲膿瘍の場合は、溜まった膿を出さなければなりません。注射針を刺して溜まった膿を吸引する処置を行いますが、1回の吸引だけで膿を取りきれないことも少なくありません。
  • この場合は2~3回と吸引することもありますが、切開手術が一般的です。切開手術を行って再び膿が溜まらないために、術後に数日は通院が必要となります。また、入院が必要となることもあります。

手術後の飲食はいつごろから可能ですか?

  • 手術後の痛みが和らげば、飲食が可能になります。
  • 手術後は刺激物や硬いものは避け、粥などの柔らかい食事を摂るようにしてください。症状が重く飲食が難しい場合は、入院して点滴で栄養を補充します。食事ができるようになれば、病院では粥食が提供されます。
  • 普通の食事が摂れるようになれば退院です。通常、入院期間は3日~1週間程度です。

扁桃周囲膿瘍の予防法

扁桃周囲膿瘍の予防法

扁桃周囲膿瘍は再発するのでしょうか?

  • 扁桃周囲膿瘍は、耳鼻咽喉科担当の病気のなかでは再発のリスクの高い病気の1つです。扁桃周囲膿瘍の患者さんのうち、約3分の1が再発したと報告されています。
  • 特に20~30代の若い世代の再発が目立ち、半数以上は3ヶ月以内での再発です。これは、再発した患者さんの多くが、膿瘍が完治していなかったからと考えられています。
  • 20~30代は忙しい世代のため、術後の通院が続かない人が多いからです。そのため、扁桃周囲膿瘍の治療後も3ヶ月は通院で様子をみる必要があります。

再発した場合、扁桃腺は摘出しなければなりませんか?

  • 扁桃周囲膿瘍は重症になると、重篤な合併症を引き起こすことがあります。再発防止のために扁桃腺を摘出する手術をすすめる医師も多くいます。
  • 扁桃炎や扁桃周囲膿瘍を繰り返すようなら耳鼻咽喉科の医師と相談して摘出手術も視野に入れましょう。
  • 手術は全身麻酔下で行われ、入院期間は平均1週間程度です。

扁桃周囲膿瘍の予防法について教えてください。

  • 扁桃周囲膿瘍は扁桃炎が悪化して発症します。そのため、扁桃炎にかかってしまったら、こじらせて扁桃周囲膿瘍へ悪化しないように注意しましょう。
  • 扁桃炎ならば、解熱剤や抗生物質の投与などで4~5日で治ることが期待できます。もちろん、扁桃炎にならないように注意することも大切です。扁桃炎は免疫力が低下したときに発症しやすくなります。そのため、風邪をひかないよう注意しましょう。
  • バランスの良い食事・適度な運動・規則正しい生活を心掛けてください。免疫力が下がらないようにすることが風邪を予防し、扁桃周囲膿瘍の予防となります。

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

  • 風邪をひかなければ、扁桃炎や扁桃周囲膿瘍になる確率は低くなると考えられています。実際は細菌やウィルスの感染が原因のため、風邪が直接の原因ではありません。
  • しかし、風邪によって免疫力が低下することが扁桃炎を発症するきっかけになっています。
  • 「風邪は万病の元」ということです。日頃から健康的な生活を心掛けていれば、扁桃周囲膿瘍になる確率も低くなると考えられています。

編集部まとめ

編集部まとめ
喉の奥の片側だけに痛みがある場合は、早めに耳鼻咽喉科を受診することをおすすめします。もしかすると扁桃周囲膿瘍かもしれません。

悪化すると食事が摂れなくなり、回復が遅れてしまいます。早めの受診が重症化を防いでくれます。

また、扁桃周囲膿瘍は再発のリスクの高い病気です。症状が治まったからといって、通院をやめることはしないでください。

医師の診断のもと、きちんと完治させることが大切です。

幼少期において、扁桃はウィルスや細菌から身体をまもってくれる器官です。しかし、大人にとっては扁桃はさほど重要な器官ではなくなります。

扁桃炎や扁桃周囲膿瘍になった場合は、扁桃線の摘出手術も検討しましょう。

この記事の監修医師