「一過性脳虚血」とは?症状・原因についても解説!
更新日:2023/03/27
一過性脳虚血は脳卒中の前触れとしてあらわれます。症状が消失するため放置されがちですが、そのまま脳梗塞に発展することは少なくありません。
その後の重症化を避けるためにも、発症した時点で治療を受けることが大切です。
今回は、一過性脳虚血の特徴や症状について解説します。治療法や予後についても触れています。ぜひ最後までご覧ください。
監修医師:
松澤 宗範(青山メディカルクリニック)
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2014年3月 近畿大学医学部医学科卒業
2014年4月 慶應義塾大学病院初期臨床研修医
2016年4月 慶應義塾大学病院形成外科入局
2016年10月 佐野厚生総合病院形成外科
2017年4月 横浜市立市民病院形成外科
2018年4月 埼玉医科総合医療センター形成外科・美容外科
2018年10月 慶應義塾大学病院形成外科助教休職
2019年2月 銀座美容外科クリニック 分院長
2020年5月 青山メディカルクリニック 開業
所属学会:日本形成外科学会・日本抗加齢医学会・日本アンチエイジング外科学会・日本医学脱毛学会
2014年4月 慶應義塾大学病院初期臨床研修医
2016年4月 慶應義塾大学病院形成外科入局
2016年10月 佐野厚生総合病院形成外科
2017年4月 横浜市立市民病院形成外科
2018年4月 埼玉医科総合医療センター形成外科・美容外科
2018年10月 慶應義塾大学病院形成外科助教休職
2019年2月 銀座美容外科クリニック 分院長
2020年5月 青山メディカルクリニック 開業
所属学会:日本形成外科学会・日本抗加齢医学会・日本アンチエイジング外科学会・日本医学脱毛学会
一過性脳虚血は危険な病気?
一過性脳虚血とはどんな病気なのですか?
- 一過性脳虚血とは脳血管障害の1種で、症状が短時間にあらわれて消失します。
- 発症原因は血流が一時的に停止し、脳が酸欠に陥ることです。
- 脳卒中とよく似ていますが、こちらはあくまで一時的な発作です。多くの場合、血流は数分~1時間程度で再開します。血流の再開に伴って発作・症状も消失します。
一過性脳虚血の症状を教えてください。
- 一過性脳虚血の症状は脳卒中の症状とほぼ変わりません。たとえば下記のような症状が代表的です。
- 麻痺:手足に力が入らない・顔の片側がゆがむ
- 感覚障害:手足のしびれ・感覚の鈍麻あるいは過敏化
- 運動失調:歩行時に足をひきずる・まっすぐ歩けない
- 言語障害:ろれつが回らない・言葉が出てきづらい
- 視野障害:片目が見えない・二重映しに見える・視野の一部が欠ける
- 症状の種類・程度は脳の損傷部位によって異なります。症状は、身体の左右どちらかにのみあらわれることがほとんどです。症状は損傷した脳の反対側にあらわれます。たとえば右脳の障害の場合、症状があらわれるのは左半身です。
一過性脳虚血は脳梗塞の危険性があると聞いたのですが…
- 発症者のうち、約15%の方がその後の脳梗塞を経験しています。特に目立つのは48時間以内の発症です。
- 発症後速やかに適切な治療を行えば、その後の脳梗塞のリスクを低減できます。
- しかし一過性脳虚血は症状が短時間で消失するため、そのまま放置する方は少なくありません。重症化を防ぐためにも、発症後は速やかに医療機関を受診してください。
一過性脳虚血は何が原因で発症するのでしょうか?
- 一過性脳虚血の原因は主に3つあります。
- 塞栓性
- 心原性塞栓性
- 血行力学性
- 塞栓性とは、血管内でできた血の塊(血栓)が脳血管に詰まることです。心臓でできた血栓が脳血管を詰まらせる場合は、心原性塞栓性と呼ばれます。血行力学性とは、簡単にいえば血管内部が狭くなることです。ひどい場合は血管が完全に閉塞することもあります。
- いずれの場合でも血流が著しく悪くなるため、脳に血液が届きにくくなり、一過性脳虚血に至ります。塞栓性・血行力学性の原因としては、動脈硬化が代表的です。動脈硬化とは血管が柔軟性を失って収縮する状態です。血管内部が狭くなるため、血流に支障が出やすくなります。また、動脈硬化は血栓の原因でもあります。
一過性脳虚血になりやすい人の特徴を教えてください。
- 一過性脳虚血発作の原因としては、生活習慣の乱れ・生活習慣病が代表的です。
- 生活習慣病がある(糖尿病・高脂血症・高血圧・不整脈)
- 栄養の偏った食事
- 運動不足
- ストレス・過度の疲労
- 肥満
- 喫煙
- 上記は動脈硬化の危険因子です。動脈硬化が進むと血管が損傷しやすくなるため、発症リスクが高まります。
一過性脳虚血の検査内容や受診目安
一過性脳虚血はどんな検査を行うのでしょうか?
- 医師による問診・診察の後、脳画像検査を行うことが一般的です。
- CT検査
- MRI検査
- CT検査・MRI検査では、脳の血流停滞・梗塞の有無などを検査できます。脳の血流に異常がある場合は、一過性脳虚血が強く疑われます。あわせて下記のような検査が行われることも多いです。
- 血液検査
- 心臓超音波検査
- 心電図
- 上記の検査の目的は、一過性脳虚血の原因疾患の特定です。原因疾患を特定することで、より適切な治療が可能となります。
検査にはどのくらい時間がかかりますか?
- 検査の所要時間は総合で60分が平均的です。内訳をみると、CT検査・MRI検査の所要時間は平均30分前後です。血液検査・エコー検査なども30分ほどかかります。
- 検査内容は症状に応じて異なるため、所要時間は個人差が大きいのが実情です。
一過性脳虚血を疑う症状や受診の目安を教えてください。
- 目安となる症状には下記があります。
- 片方の手足に力が入らない
- 片方の手足のしびれ
- まっすぐ歩けない
- ろれつがまわらない
- 片目が見えない
- 一過性脳虚血は症状が短時間であらわれて消える点が最大の特徴です。突然あらわれた症状が、30〜60分程度で消えた場合は注意してください。
- 受診の目安は症状に気づいた時点です。一過性脳虚血は脳卒中の前触れとしてあらわれることが少なくありません。脳卒中を防ぐためにも、異変に気づいた時点ですぐに病院を受診してください。なお、受診の目安として「ABCD2テストスコア」を利用する方法もあります。
- Age(年齢):60歳以上【1点】
- Blood pressure(血圧):最高140mmHgまたは最低90mmHg以上【1点】
- Clinical features(臨床症状):片側の脱力【2点】・脱力を伴わない言語障害【1点】
- Duration of symptoms(症状持続時間):60分以上【2点】・10-59分【1点】
- Diabetes(糖尿病):あり【1点】
- 上記を採点し、点数が高いほど危険度も高くなります。具体的に、3点以上の場合は速やかに病院を受診してください。たとえ3点未満でも、過信はせずにできる限り早く医師の診察を受けましょう。
一過性脳虚血の治療方法や予防方法は?
一過性脳虚血の治療方法が知りたいです。
- 薬物療法が基本的です。利用する薬剤は、原因疾患などにあわせて処方されることが一般的です。代表的な薬剤と対応する疾患を下記に挙げます。
- 抗凝固薬:不整脈・心疾患がある場合
- 抗血小板薬:心疾患以外
- 抗凝固薬と抗血小板薬は、まとめて「抗血栓薬」とも呼ばれます。その名の通り、血栓の生成を防止する薬剤です。具体的には血液をサラサラにして、血管内で詰まるのを防ぐ作用があります。血管が著しく狭窄している場合は、血管を拡張するために外科手術が選択されることもあります。あわせて原因疾患の治療を行うことも大切です。
治療中の副作用や注意点があれば教えてください。
- 治療に用いる抗凝固薬・抗血小板薬では、稀に副作用があらわれます。
【抗凝固薬の副作用】 - 出血:鼻血・歯茎の出血・血尿
- 肝機能障害:倦怠感・食欲不振・吐き気・嘔吐・黄疸
- 消化器官の不調:腹痛・吐き気・嘔吐
- 肺線維症
- 出血:外傷時に出血が止まりにくい
- 消化器官の不調:食欲不振・吐き気・嘔吐
- 肝機能障害:倦怠感・食欲不振・吐き気・嘔吐・黄疸
- 蕁麻疹
- もっとも代表的なのは出血です。鼻・歯茎の出血のほか、傷を負った際に血が止まりにくくなります。そのほか、発熱・倦怠感などの不調があらわれた場合は、念のため医師の診察を受けましょう。
- なお、抗凝固薬のうちワーファリンを服用している方は、ビタミンKの摂取を控える必要があります。ビタミンKはワーファリンの作用を弱めるためです。たとえば下記のような食品を避けてください。
【ワーファリンの作用を弱める食品】 - ビタミンKを含むサプリメント
- 納豆
- 青汁
- クロレラ
【抗血小板薬の副作用】
一過性脳虚血は完治するものですか?
-
一過性脳虚血自体は一時的な症状であるため、治ります。しかしその後、脳卒中に発展した場合、完治は期待できません。脳卒中は脳の細胞が損傷する疾患であり、損傷した脳細胞は再生しないためです。脳卒中を回避するには、発作があらわれた時点で、適切な治療を受けることが大切です。
一過性脳虚血を予防する方法はありますか?
- 脳血管障害の多くは、生活習慣の乱れに起因します。生活習慣病の乱れは、危険因子である生活習慣病を招くためです。一過性脳虚血を予防するには、生活習慣を見直すとともに生活習慣病を予防することが大切です。
- 栄養バランスのよい食事
- 塩分・糖分・脂質の過剰摂取を避ける
- 適度な運動
- 十分な休息
- ストレス発散
- 禁酒・禁煙
- 定期的な検診
最後に、読者へメッセージがあればお願いします。
- 一過性脳虚血は脳梗塞の前触れともいわれています。しかし発症後に適切な治療を受ければ、その後の脳梗塞のリスクは低減できます。
- 少しでも「おかしい」と感じる症状があれば、迷わずに病院を受診してください。あわせて、普段から規則正しい生活習慣を心がけることも大切です。
編集部まとめ
一過性脳虚血は症状が短時間で消失するため、放置する方は少なくありません。しかし脳卒中の前触れの可能性が高いため、たとえ短時間で回復しても放置はしないでください。
また、健常者の脳構造では、多くの重要な血管が張り巡らされており、そこから脳実質に必要な栄養と酸素が供給されていますが、血管の動脈硬化性変化などによって脳血管の一部が細くなり閉塞してしまうと、脳組織へ十分な酸素や栄養が供給されなくなることで、血流を受けている部分の脳に障害が生じて片麻痺や呂律困難などの症状が引き起こされます。
気になる症状がある場合は、必ず病院を受診しましょう。
参考文献
- 一過性脳虚血発作(TIA)|聖マリアンナ医科大学 東横病院 脳卒中センター
- 一過性脳虚血発作(TIA)について|東京逓信病院
- 片麻痺とは?主な原因と効果的なリハビリ方法を紹介|フランスベッド
- 脳卒中インタビュー|先進医療.net
- 脳血管障害・脳卒|厚生労働省 生活習慣病予防のための健康情報サイト
- 脳梗塞を防ぐ生活|総合南東北病院
- 一過性脳虚血発作(TIA)について|伊月病院
- 一過性脳虚血発作(TIA)|お医者オンライン
- 脳ドック検診Q&A|塩竈市立病院
- 上対馬病院だより「なんじゃもんじゃ地域版」|上対馬病院だより
- 早期治療がかぎ 脳梗塞のt-PAと血管内治療を徹底解説|NHK健康チャンネル
- 抗凝固薬(ワルファリン以外)|お医者さんオンライン
- 抗血小板薬|名古屋徳洲会総合病院
- 脳梗塞、脳出血は治りません|高知東クリニック
- 脳卒中(脳梗塞・脳出血)の予防|浅草橋総合内科
- 脳卒中の症状と予防法|千葉脳神経外科病院
- 脳卒中インタビュー|先進医療.net