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がん治療

 更新日:2023/03/27
がん治療

がんに対する治療は、医学の進歩とともに増えており、患者個々の状態に合う治療を選ぶことができるようになってきています。治療を受ける前に、どのような治療があるのか、また、治療のメリット・デメリットを確認していきましょう。

 

この記事の監修ドクター:
村上 友太 医師(東京予防クリニック)

がん治療とは

がんの治療には、大きく分けて

  • 手術療法
  • 化学療法(抗がん剤)
  • 放射線療法

があります。近年は、免疫療法も加わるようになり、がんの4大治療法とも言われます。

 

手術は病巣を取り除く局所治療に分類され、全身治療である化学療法や、手術+化学療法など複数組み合わせる集学的治療を行うこともあります。また、がんによる心と体の苦痛をやわらげる緩和ケアも行われます。

 

担当医師やコメディカルで形成するチームで、患者本人の意思、がんの病期分類(ステージ)、年齢や生活環境、既往症など、さまざまな要因を総合的に検討して、患者本人にとって最善な治療を決定・提案します。

がん治療の種類

続いて、がんの4大治療法について紹介していきます。それぞれの治療について理解が深めていきましょう。

手術

手術は、がんにとって最も重要な治療の一つです。

 

手術の目的は、根治を目指す場合と、根治ではなくがんによる不快な症状を取るために手術する場合があります。

 

かつて、手術といえば、直達手術(開腹/開胸など)という体に大きな傷跡がつく手術が主流でした。しかし、近年の技術発展によって、カメラ越しに行う鏡視下手術(腹腔鏡/胸腔鏡など)やロボット手術というような、患者にとってより低侵襲で精密な手術を行うことができるようになりました。

 

もちろん、各々の手術方法にも得意分野はあり、どの手術方法が最適かは患者ごとに異なります。また、手術では合併症(手術することで起こる患者への不都合なこと)が起こる可能性があります。

 

手術で得られるメリット・予想されるデメリット(合併症)を詳細に検討し、がんの進行度や患者の全身状態によっては手術適応がないと判断される場合もあります。

化学療法

化学療法は、内服/点滴で抗がん剤を投与することで行います。抗がん剤が血液によって全身に運ばれがん細胞に作用するため、手術が局所療法であるのに対して、化学療法は全身療法といわれます。

 

がん種によって適応ある抗がん剤の種類、期待される有効性などはまちまちですが、ほぼすべてのがんに適応になります。

 

単剤(1種類)で治療することもあれば、有効とされる薬剤を複数組み合わせること(多剤)で効果が強まることを狙う場合もあります。種類や組み合わせによって毎日内服する薬剤から、3週間おきに点滴する薬剤など投与方法はさまざまです。

 

投与後は、抗がん剤の効果があるかないかの判断を腫瘍マーカー値やCT検査などで行います。効果があると判断されれば投与を継続しますが、効果がないと判断されれば中止して他の薬剤に変更します。

 

抗がん剤のデメリットとして、副作用が挙げられます。目に見える副作用(脱毛など)や目に見えない副作用(倦怠感や脱力感、手足のしびれなど)などがあります。

 

副作用症状は抗がん剤によって異なり、時に命に関わることもあるため、化学療法は専門家による管理が望ましい治療です。

放射線治療

放射線療法は、人工的に作り出した放射線をがん細胞にあてることによって、がん細胞を死滅させる治療法です。ある特定部位に照射することから局所治療の一種で、脳腫瘍、すい臓がん、前立腺がんなど適応となるがん腫はさまざまあります。

 

放射線感受性の高いがん種では、根治目的の照射が適応になります。一方で、根治することを目指せなくても痛みの原因部分だけに照射し痛みを緩和する照射や再発予防目的、再発治療など、さまざまな目的で照射されます。

 

照射方法は、外から放射線を照射する外照射が一般的ですが、中には放射線性物質を内服する内照射といわれるものもあります。

 

放射線は、目的とするがん細胞周囲にある正常組織にも影響を与えるため、副作用(有害事象)が起きます。有害事象でみられる症状は、放射線が当たる正常組織(臓器)によって異なります。例えば、小腸の場合では下痢が起きることがあります。

 

放射線を全身に照射する全身療法としての活用ができないのは、有効性より被爆による有害事象が大きいためです。治療計画は放射線科医が行い、効果が最大で有害事象が最小になるように照射範囲や線量を計画し、決定後に平日週5日間の照射を何週間かにわたって治療します。

免疫療法

免疫療法は、人体が持つ免疫機能(体にとって害になるものを排除するシステム)を利用する治療です。治療薬を点滴投与すると、Tリンパ球(白血球の一種)が、がん細胞を攻撃する機能を補助/増強することで、がん組織が小さくなることを目指します。

 

治療薬はまだ少数であり、適応となるがん種も肺がん、腎がん、胃がんなどで、すべてのがん腫に適応があるわけではありません。単独で使用する場合と、抗がん剤を組み合わせて使う場合があり、効果判定や副作用などは化学療法と同様の管理をします。

緩和ケア

緩和ケアは、上記の4大治療法とは少し異なり、がんによる身体や心のつらい症状と取り除くために行います。がんと診断された時から全ての人に治療適応があり、がんによる痛み、今後の生活への不安などつらい症状はすべて対象です。

 

痛みに関しては、医療用麻薬を含めて疼痛コントロールのために投薬治療を行い、不安な気持ちは精神科医/心理士などが傾聴し心のつらさを和らげます。医療費の支払いなど金銭的な不安も対象で、患者本人だけでなく家族の不安や心配も相談できます。

がん治療の平均的な費用

がんの治療には、手術や抗がん剤などの治療費や入院費、差額ベッド代、入院中の日用品費用など、さまざまな費用がかかります。厚生労働省の統計によれば、入院がん治療に平均約70万円程度かかるとされ、手術代や抗がん剤代が大部分で、3割負担で20万円程度です。

 

ただし、保険診療外の治療、例えば自費診療の免疫療法や、重粒子線照射などの先進医療では数百万円という費用が実費でかかるものもあります。公的医療保険が適用される医療費に関しては高額療養費制度があり、月々の支払いが一定額以上の場合は還付を受けられますので、担当窓口に相談してください。

がん治療に関するよくある質問

ここでは、がん治療に関するよくある質問に回答します。

薬物療法について

薬によって副作用に差があるの?

抗がん剤によって起こりやすい副作用は異なります。投与前に担当医とよく相談し、場合によっては薬剤を変更することも検討しましょう。

分子標的治療薬とはどのような薬なの?

分子標的薬は、病気の原因となっている特定の分子にのみ作用する抗がん剤の一種です。がんに発現する遺伝子変異があるかどうかなどによって、その病気への有効性を検討した上で投与することになります。

副作用はあるの?

化学療法には、投与早期のアレルギーから、投与1-2週で起こる好中球減少、3-4週目で目立つ脱毛など、投与後の時期で起こりうる副作用が異なります。発熱など、化学療法中に気になることがあればすぐに医師に相談するようにしましょう。

 

放射線治療も同様に時期によって出現する副作用が異なります。照射直後からおきる倦怠感や皮膚の発赤など急性期障害や、治療終了後半年から数年たって起きる二次がん(放射線照射が原因で起きる皮膚がんなど)や生殖機能への影響などの晩期障害があります。

食事との関係は?

がん患者にとって食事は大切で、難しく考えるより、食べられるものを食べることが重要です。食事内容によってがんが進行するなどはほとんどありません。

ときに、抗がん剤治療中は生ものを避けるなどなど、がんの治療経過によって個別の注意点がありますが、その際は医師・栄養士から指示があります。

まとめ

がんの治療は、医学の進歩とともにどんどん高度に細分化されていますが、その代表的な内容を説明してきました。みなさんがすべてを理解することは難しいかもしれませんが、本記事を読んで少しでも不安を減らして治療に臨めることを祈っております。

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