「慢性骨髄性白血病の症状」はご存知ですか?慢性期・急性期・進行期の症状も解説!
慢性骨髄性白血病にはどんな症状があるのか知っていますか?Medical DOC監修医が慢性骨髄性白血病の症状などを解説します。気になる症状がある場合は迷わず病院を受診してください。本記事では慢性骨髄性白血病の症状について以下の点を中心にご紹介します。
- ・慢性骨髄性白血病とは
- ・慢性骨髄性白血病の慢性期の症状
- ・慢性骨髄性白血病の段階
慢性骨髄性白血病の症状について理解するためにもご参考いただけると幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
監修医師:
甲斐沼 孟(上場企業産業医)
目次 -INDEX-
そもそも慢性骨髄性白血病とは?
慢性骨髄性白血病(CML)は、造血幹細胞に異常が生じ、白血球、赤血球、血小板が異常に増加する骨髄増殖性腫瘍の一種です。主な特徴は、末梢血中の白血球数が通常よりも増加し、BCR-ABL1融合遺伝子の存在です。この遺伝子によってBCR-ABL1チロシンキナーゼと呼ばれる異常なタンパク質が生成され、白血病細胞が異常に増殖します。
この病気はBCR-ABL1融合遺伝子を標的とした標準治療薬(テキサネル、イマチニブなど)が開発され、治療法が進化しています。しかし、長期にわたる治療が必要で、患者さんの経過をしっかりとモニタリングすることが求められます。
慢性骨髄性白血病は、骨髄増殖性腫瘍の一部であり、他にも真性多血症、本態性血小板増多症、原発性骨髄線維症、慢性好中球性白血病、慢性好酸球性白血病などが含まれます。それぞれ異なる特徴と治療法を持つ骨髄増殖性腫瘍です。
慢性骨髄性白血病の原因
慢性骨髄性白血病(CML)の原因は複雑で、特定の要因や状況によって発症することが知られていますが、明確な原因はまだ完全に解明されていない点が挙げられます。
遺伝的要因:CMLは遺伝的な要因との関連があることが知られています。特定の遺伝子変異や家族歴がCMLの発症リスクを高める可能性があります。
放射線被ばく: 原子力関連の業界や放射線療法を経験した人たちの中で、CMLの発症が増えていることがわかっています。
化学物質曝露: 特定の有害な化学物質に曝露されることがCMLのリスク因子となることがあります。これにはベンゼン、一部の殺虫剤、タバコの煙に含まれる有害物質などが含まれます。
遺伝性疾患: ダウン症候群やファンコニ貧血などの特定の遺伝性疾患が存在する場合、CMLのリスクが高まることが報告されています。
染色体異常: CMLの発症には、BCR-ABL1融合遺伝子による染色体異常が関与しています。この遺伝子融合はCMLの特徴的な変化であり、白血病の進行に重要な役割を果たします。
CMLの原因については、これらの要因が相互に影響し合う複雑なプロセスであると考えられています。ただし、これらのリスク要因に曝露しているからといって必ずしもCMLになるわけではなく、発症する確率は低いとされています。慢性骨髄性白血病の発症には他にも多くの要因が影響する可能性があり、今後の研究により詳細が解明されることが期待されています。
慢性骨髄性白血病は症状が現れないことがある?
慢性骨髄性白血病(CML)の初期段階である慢性期には、症状が全く現れないことがあることが知られています。これは、CMLがゆっくりと進行する場合があるためです。しかし、一部の患者さんにはさまざまな症状や不快感が現れることもあります。
初期のCMLの症状には、疲労感や脱力感が含まれることが一般的です。患者さんは何らかの原因なしに疲れやすく感じ、日常の活動に対するエネルギーが不足していると感じることがあります。また、食欲不振や体重減少も一部の患者さんに影響を与えることがあります。これらの症状は、慢性期のCMLにおいては他の疾患と混同されやすいため、正確な診断が重要です。
さらに、寝汗や膨満感(通常は脾腫が原因)が症状として現れることもあります。脾臓が異常に腫れることで、腹部に圧迫感や不快感をもたらし、寝汗が増加することがあります。
CMLの症状が明らかになった場合、早期の診断と適切な治療が重要です。特に、CMLの治療法の進歩により、早期に治療を開始することが生存率を向上させる鍵となります。したがって、不明熱や上記の症状が現れた場合、医師の診察を受けることが大切です。
慢性骨髄性白血病の慢性期の症状
慢性骨髄性白血病(CML)の慢性期は、しばしば無症状であり、疲労感や脱力感が一般的な初期症状です。
疲労感
慢性骨髄性白血病(CML)の慢性期に現れる症状の中で、一般的なものは疲労感です。患者さんはしばしば持続的な疲労や脱力感を経験し、日常の活動に対するエネルギーが不足していることを感じます。この疲労感は休息や睡眠によって改善されにくく、日々の生活に支障をきたすことがあります。
食欲不振
慢性骨髄性白血病(CML)の初期段階、つまり慢性期においては、特定の症状が明確に現れないことが一般的です。しかし、患者さんによっては非特異的な症状がみられ、その中に「食欲不振」が含まれます。
食欲不振は、CMLの初期症状の一つとして報告されており、患者さんが食事を摂ることに対する興味を失ったり、食べることが苦痛に感じられたりすることがあります。この症状は他の健康問題やストレスと混同されることもあり、CMLの診断には至らないことがあります。
体重減少
慢性骨髄性白血病(CML)の慢性期には、特定の症状が顕著に現れない場合が多く、非特異的な不快感や身体の変化が見られることがあります。その中でも、体重減少はよく見られる症状の一つです。
CMLの慢性期では、異常な白血球が増加し、末梢血中での白血球数が通常よりも高くなります。これにより、体全体の状態が微妙に変化し、患者さんは疲労感や食欲不振を感じやすくなります。食事量の減少や栄養吸収の問題が体重減少につながることがあります。
CMLの慢性期の症状は一般的にはっきりとしないことが多いため、体重減少などの症状が持続する場合、医療専門家に相談し、必要な検査を受けることが、適切な診断と治療につながります。白血病の症状は他の健康問題と混同されやすいため、早期の対応が生命の質を向上させる鍵となります。
慢性骨髄性白血病の移行期・急性期の症状
慢性骨髄性白血病(CML)の移行期・急性期は、急速に進行し、症状が悪化します。
感染症
慢性骨髄性白血病(CML)の移行期・急性期では、白血球が異常に増え、その一方で正常な白血球の数が減少します。このため、免疫力が低下し、感染症が頻繁に発生しやすくなります。CML患者さんは通常、疲労感、発熱、喉の痛み、咳、頭痛、皮膚の発疹など、感染症に関連する症状を経験します。
白血球は免疫システムの一部であり、体を病原体から守る役割を果たしています。CMLによる白血球の異常増加は、正常な白血球の機能を制限し、細菌やウイルスなどの病原体に対する抵抗力を低下させます。その結果、感染症が身近なものから重篤なものまで、さまざまな形で現れることがあります。
CML患者さんは免疫抑制療法や抗生物質の使用を通じて感染症に対処することがありますが、感染症の予防も重要です。医師の指示に従い、適切な予防策を取ることが、CML患者さんの健康を保つために不可欠です。
貧血
慢性骨髄性白血病(CML)の移行期・急性期において、患者さんは貧血という症状に直面することがあります。貧血は、赤血球の数や機能が低下することによって引き起こされます。
CMLは骨髄での異常な白血球の増加と同時に、正常な造血過程を妨げることがあります。これが赤血球の生産に影響を及ぼし、貧血の原因となります。貧血は体の酸素供給を減少させ、疲労感、息切れ、めまい、頭痛、ほてりなどの症状を引き起こすことがあります。また、皮膚や爪の色が異常になることも観察されます。
貧血はCML患者さんにとって生活の質を低下させる要因の1つとなり、日常生活に支障をきたすことがあります。そのため、貧血の管理は治療の一環として非常に重要です。医師の指示に従い、鉄補給や赤血球増加剤の使用などが行われることがあります。
CMLの処置と同じように、貧血の症状も適切に管理されることで、患者さんの生活の質を向上させる助けとなります。定期的な検査と医師との協力により、貧血に対処し、症状を和らげる方法が見つかることが期待されます。
アザができやすくなる
慢性骨髄性白血病(CML)の移行期・急性期において、患者さんはアザができやすくなるという症状に直面することがあります。この現象は、血小板の数が減少することによって引き起こされます。
血小板は、血液凝固に重要な役割を果たす細胞片です。血小板の数が減少すると、体の出血止めの能力が低下し、さまざまな場所で出血やアザが発生しやすくなります。具体的には、鼻からの出血や歯肉からの出血が頻繁に起こることがあります。小さな切り傷や打撲でもアザができやすく、これらの症状はCML患者さんにとって特に顕著です。
アザや出血は、日常生活において不便さをもたらすだけでなく、重度になると健康に危険をもたらすことがあります。例えば、内出血や頻繁な出血が続くと、貧血や感染症のリスクが増大する可能性があります。
CMLの治療において、血小板数の管理は非常に重要です。医師は、患者さんの血小板数を定期的にモニタリングし、必要に応じて輸血や特定の薬物療法を提供することがあります。患者さん自身も、出血やアザが現れた際には迅速に医師に報告し、適切な処置を受けることが大切です。
骨痛
慢性骨髄性白血病(CML)の移行期・急性期において、患者さんは骨痛という症状に直面することがあります。この痛みは、白血病細胞が骨髄内で異常に増殖する結果として発生します。
CMLは通常、骨髄における造血幹細胞の一部がBCR-ABL1融合遺伝子の影響を受けてがん化し、増殖し続けることによって特徴づけられます。この増殖が骨髄内で進行すると、周囲の骨に圧迫感や痛みを引き起こすことがあります。特に腰や背中、骨盤周辺など、大きな骨に影響が及ぶことが多いです。
骨痛は個人差があり、程度や場所にもばらつきがありますが、患者さんにとっては非常に不快で苦痛な症状となります。この痛みは通常、他の一般的な原因(怪我や骨折など)によるものと区別するのが難しいため、定期的な医師の診察が重要です。
CMLの治療において、骨痛の管理も考慮されます。治療には、特定の標的治療薬や化学療法が含まれ、これによって白血病細胞の増殖を制御することが試みられます。骨痛の緩和には、鎮痛剤や抗炎症薬が処方されることもあります。
頭痛や吐き気
慢性骨髄性白血病(CML)の移行期・急性期において、中枢神経への影響が現れることがあり、その一環として頭痛や吐き気といった症状が生じます。これらの症状は、白血病細胞の異常な増殖が中枢神経系に及ぶことによって引き起こされます。
CMLはBCR-ABL1融合遺伝子の存在によって特徴づけられ、この遺伝子が白血病細胞によって生成されるBCR-ABL1キナーゼを活性化します。この活性化が中枢神経系に影響を及ぼし、神経系の正常な機能に乱れを生じることがあります。
頭痛は、この神経系への影響により、頭部に圧迫感や鈍痛として現れることがあります。吐き気は、中枢神経系の不調によって引き起こされることがあり、特に朝や特定の活動後に症状が顕著になることがあります。
これらの症状はCMLの進行に伴って重症化する可能性があり、患者さんの生活の質に影響を与えることがあります。そのため、早期に医師の診察を受け、適切な治療プランが立てられるようにすることが大切です。
慢性骨髄性白血病の段階
慢性骨髄性白血病(CML)は、進行段階によって異なる症状と治療が必要な、骨髄性腫瘍の一つです。
慢性期
慢性骨髄性白血病(CML)の段階の最初は「慢性期」です。この段階は、CMLの中でも病気が進行するスピードが遅いという特徴を持っています。慢性期は通常、5~6年以上にわたります。
慢性期において、骨髄における異常な白血球の数が増加し、末梢血(血液中の白血球数)でもそれが現れます。しかし、症状は一般的には軽度で、特定の身体的な不調が感じられることは少ないです。患者さんは疲労感を感じることがありますが、これは非特異的な症状であり、他の健康問題と混同されることがあります。
慢性期のCMLは、通常、薬物療法(チロシンキナーゼ阻害剤など)を用いて病状をコントロールし、寛解状態を維持することが可能です。治療により、患者さんは健康な生活を続けられます。
ただし、慢性期から急性期への進行があるため、定期的なフォローアップと治療が必要です。早期の段階で治療を開始し、病気を管理することが、より長い寛解期を実現し、患者さんの生活の質を向上させる鍵となります。
移行期
慢性骨髄性白血病(CML)の進行段階の次にあたるのが「移行期」です。この段階では、病気の進行がより速く、患者さんの症状が顕著に悪化します。通常、慢性期から移行期への移行には数年かかることが一般的です。
移行期になると、骨髄内で異常な白血球が急激に増加し、末梢血中でもその影響が現れます。この段階では、患者さんはより重度の疲労感、白血球が過剰に増加するための全身の症状、体重減少、発熱、夜間の発汗、脾臓の腫れ、骨痛などが現れることがあります。
慢性期のように容易に病状をコントロールできなくなるため、治療戦略が再評価されることがあります。通常、この段階ではより強力な薬物療法や骨髄移植などの選択肢が検討されます。
移行期のCMLは治療が難しく、患者さんにとっては悪化した症状との闘いが続きます。この段階での早期治療が重要であり、医師のもとで治療計画が立てられるべきです。
急性転化期
慢性骨髄性白血病(CML)の進行段階の中で重篤なものが「急性転化期」です。この段階では、病気が急速に悪化し、未熟な白血病細胞である芽球が増加します。急性転化期に入ると、以下のような状態がみられることがあります。
急性転化期に入ると、CMLはさらに進行し、白血病細胞の数が急増します。これにより、患者さんの一般的な健康状態が急速に悪化することがあります。
急性転化期では、重篤な合併症が発生するリスクが高まります。特に感染症への感受性が増加し、高熱、喉の痛み、咳、息切れなどが現れることがあります。また、過剰な出血や瘀血(おけつ)、皮下出血、内出血なども起こりやすくなります。
急性転化期のCMLは治療が難しく、通常の標準治療法が結果を示さないことがあります。この段階では、高度な薬物療法や骨髄移植などの集中的な治療が必要とされることがあります。
急性転化期はCMLの進行が速く、治療が難しい段階です。したがって、CMLの患者さんはできるだけ早期に診断し、慢性期や移行期での適切な治療を受けることが、急性転化期への進行を遅らせ、生存率を向上させる鍵です。医師との定期的なフォローアップと密な連携が不可欠です。
「慢性骨髄性白血病」についてよくある質問
ここまで慢性骨髄性白血病の症状を紹介しました。ここでは「慢性骨髄性白血病」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
慢性骨髄性白血病の症状は患者さんによって異なりますか?
甲斐沼 孟(医師)
慢性骨髄性白血病(CML)の症状は、患者さんによって異なることがあります。CMLは通常、慢性期、移行期、急性転化期という進行段階を経て進行するため、症状も段階ごとに変化します。
慢性期: この段階では、多くの患者さんが特定の症状を感じないか、非特異的な症状がみられます。疲労感、体重減少、食欲不振、腹部の不快感などが一般的ですが、これらの症状は他の健康問題と混同されることがあります。
移行期: 移行期に入ると、病気が進行し、症状がより明確になります。貧血、多発する骨痛、感染症にかかりやすさ、出血傾向、脾臓の腫れなどがみられます。
急性転化期: 急性転化期は重篤な段階で、白血病細胞が急激に増加し、重篤な合併症が発生することがあります。高熱、喉の痛み、咳、息切れ、内出血、出血傾向が顕著です。
症状は患者さん個人によって異なるため、特定の症状が必ずしもすべての患者さんに当てはまるわけではありません。しかし、早期の診断と適切な治療は、病気の進行を遅らせ、生存率を向上させるために極めて重要です。したがって、不安や症状がある場合は、医師の診察を受け、必要な検査を受けることが勧められます。
慢性骨髄性白血病の症状を抑えるための治療法はありますか?
甲斐沼 孟(医師)
慢性骨髄性白血病(CML)の症状を抑えるための主要な治療法は、ターゲット治療薬を使用することです。これらの治療法は、BCR-ABL1遺伝子融合タンパク質を標的とし、白血病細胞の増殖を制御します。
チロシンキナーゼ阻害剤(TKI): これらの薬物はCMLの特定の分子標的であるBCR-ABL1タンパク質を阻害し、白血病細胞の増殖を抑制します。一部の一次治療として、イマチニブ(イムニックス)やダスチナブ(スプリシオン)などのTKIが使用されます。
幹細胞移植: 一部の患者さんには幹細胞移植が適しており、治療法の1つです。しかし、幹細胞移植は高いリスクと合併症を伴うことがあり、適切な患者さんにのみ検討されます。
定期的なモニタリング: 白血病の進行を管理するために、定期的な血液検査と医師の観察が不可欠です。症状の変化や治療応答を確認し、必要に応じて治療計画を調整します。
ターゲット治療薬により、多くの患者さんは高品質な生活を維持でき、CMLの進行を遅らせることが可能です。しかし、治療法には副作用があるため、治療に関する疑問や懸念は医師と共有することが大切です。
編集部まとめ
ここまで慢性骨髄性白血病の症状についてお伝えしてきました。
慢性骨髄性白血病の症状はどのくらいなのかの要点をまとめると以下の通りです。
- ・慢性骨髄性白血病(CML)は、造血幹細胞に異常が生じ、白血球、赤血球、血小板が異常に増加する骨髄増殖性腫瘍の一種のことである。
- ・慢性骨髄性白血病の慢性期は、一般的には軽度で特定の身体的な不調が感じられることは少ない。しかし疲労感を感じる患者さんもいる。
- ・慢性骨髄性白血病の段階は「慢性期」「移行期」「急性転化期」に分かれている。
「慢性骨髄性白血病」で考えられる病気と特徴
「慢性骨髄性白血病」と関連する病気は1個あります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
血液の病気
「慢性骨髄性白血病」と関連する症状
「慢性骨髄性白血病」と関連している、似ている症状は4個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
参考文献