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【闘病】20代で「ベーチェット病」一時は命を絶つことも考える痛み…『自分は幸運だった』

 公開日:2024/03/05
【闘病】20代で「ベーチェット病」一時は命を絶つことも考える痛み…『自分は幸運だった』

原因不明の難病は、だれがいつ発症するか分かりません。今回お話を伺ったいずみさんも、ある日突然起きた腕や陰部の痛み、肌や目の異変から病院を受診したところ「ベーチェット病」と診断されました。そんないずみさんに、ベーチェット病と診断されるまでの経緯や投薬治療、仕事や家庭との両立などについて詳しくお聞きしました。

※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2024年2月取材。

いずみさん

体験者プロフィール
いずみさん(仮称)

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夫と2人暮らしの20代女性。2021年3月に腕が上がらないほどの肩痛、陰部潰瘍、左瞼の充血、大量のニキビなどの症状が現れる。最初の産婦人科では「性器ヘルペス」との診断だったが、2件目の産婦人科を受診したところ「ベーチェット病の可能性がある」と言われ、大学病院を紹介された。2021年4月に大学病院の検査で「結節性紅斑」と「不全型ベーチェット病」と診断された。

副島 裕太郎

記事監修医師
副島 裕太郎(横浜市立大学医学部血液・免疫・感染症内科)
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。

肩痛から始まり、次々と異変が現れる体

肩痛から始まり、次々と異変が現れる体

編集部編集部

初めにいずみさんが発症した「ベーチェット病」について教えていただけますか?

いずみさんいずみさん

ベーチェット病は「口腔内の潰瘍(再発性アフタ性潰瘍)」「外陰部の潰瘍」「皮膚症状」「眼症状」の4つの症状を主症状とする全身性炎症性疾患です。4つの主症状すべてに当てはまると完全型ベーチェット病、主症状が1~2個と副症状で診断されるのが不全型ベーチェット病です。私の場合は主症状のうち口内炎以外の3つに当てはまっていたため、不全型ベーチェット病との診断を受けました。

編集部編集部

ベーチェット病の発症と診断までの経過を教えてください。

いずみさんいずみさん

私が現在の仕事に転職して半年ほど経過した2021年3月末頃、突然腕が上がらないほどの肩の痛みに襲われました。受診した整形外科で痛み止めのセレコキシブを処方され、しばらく様子を見ていました。しかし、痛みが現れて1週間後に今度は陰部がおかしくなっており、産婦人科を受診しました。産婦人科では「性器ヘルペス」との診断でしたが、それと並行するように左目に重度の充血、顔から胸部にかけて大量のニキビも現れました。

編集部編集部

いろんな症状があらわれたのですね。病院での診断はどうでしたか?

いずみさんいずみさん

性器ヘルペスの薬をもらって1週間ほど内服しましたが、一向に良くなりませんでした。むしろ陰部潰瘍の痛みはどんどん強くなり、耐えがたい激痛と不正出血も出てくるようになりました。そして、別の産婦人科を受診したところ、「陰部潰瘍からベーチェット病の疑いあり」と診断され、大学病院への紹介状をもらいました。大学病院では皮膚科を受診してニキビ部分を一部切除し、病理検査を行いました。皮膚科からはコルヒチン(抗炎症薬)が処方され、関節炎は少し和らいだものの、排尿痛も襲ってきて我慢の限界でした。

編集部編集部

ベーチェット病の可能性が出てきたのですね。そこからどう診断が進みましたか?

いずみさんいずみさん

痛みに我慢できず予約日を早めて大学病院を受診したところ、プレドニン20mgが処方されました。今でもはっきり覚えているのですが、プレドニンを内服した日は体の痛みを忘れてぐっすりと眠ることができました。その後、「不全型ベーチェット病」と診断され、私がニキビだと思っていたものは結節性紅斑、左目の充血はぶどう膜炎の眼底出血との説明がありました。

編集部編集部

ベーチェット病は眼症状で視力低下を起こす方が多いですが、いずみさんはどうでしたか?

いずみさんいずみさん

私は幸いにもリンデロン点眼が良く効いたらしく、視力低下は起こりませんでした。ベーチェット病は診断確定が難しく、疑いの状態で何十年も過ごす方がいるそうなので、私は早期発見できたほうだと思います。

難病・失明・キャリアへの不安で一時は命を絶つことも考えた

難病・失明・キャリアへの不安で一時は命を絶つことも考えた

編集部編集部

不全型ベーチェット病との確定診断がされ、具体的にはどのような治療の説明がありましたか?

いずみさんいずみさん

まずはコルヒチンの内服とリンデロン点眼を行い、炎症が抑えられるか経過観察する」と説明されました。ただ、私は陰部潰瘍による痛みが強かったため、プレドニン治療に切り替えました。プレドニンの量は徐々に減らしていくとの説明も丁寧にしてもらいました。幸い、私はプレドニン20mgを飲み始めた日からぐんぐん回復したため、順調にプレドニンの量を減らすことができました。

編集部編集部

20代という若さで病気が判明した時は大きなショックを受けたかと思います。

いずみさんいずみさん

聞いたこともない病気だったので、最初は何がなんだかわかりませんでした。「ベーチェット病」で調べると「難病」「治らない病気」「失明する恐れ」と出てきますし、耐えられないほど強い痛みを感じたことからプレドニン内服前は「痛みから逃れるには命を絶つしかない」と本気で思いました。また、仕事を続けられるかどうかもわからず、とにかく怖かったです。当時は転職して半年で、会社でも認められて責任ある立場に任命されたばかりだったこともあり、キャリアが途絶えてしまうかもしれないという不安で一杯でした。

編集部編集部

それほどのショックがあった中で、心の支えになったものは何でしょうか?

いずみさんいずみさん

家族の存在と仕事が続けられたことです。仕事中は忙しくて病気のことを考えずに済みます。一生付き合っていく必要がある病気なので「医療を受けつつ、どうやって働き続けるか」という課題はありますが、現在の職場は私の病気にも深く理解を示してくれています。出社の調整や出張も強制されず、通院で休みを頻繁に取得することができるので、会社からの理解はとても助かっています。また、私はベーチェット病の診断後に結婚、寛解後には妊娠もしました。死産でしたが、会社の方はいつも体調を気遣ってくださいます。

編集部編集部

もし過去の自分にアドバイスできるなら、どのように声をかけますか?

いずみさんいずみさん

私の場合、早期にベーチェット病疑いと診断され、大学病院への受診につなげられました。視力低下もせずにすみましたから、過去の自分の行動はベストだったと思います。

自由に旅行を楽しめる今だからこそ海外旅行を楽しみたい

自由に旅行を楽しめる今だからこそ海外旅行を楽しみたい

編集部編集部

いずみさんの現在の生活の様子について、体調も含めて教えていただけますか?

いずみさんいずみさん

私の場合は予後が良く、関節炎の症状が酷くないのでベーチェット病になる前とさほど変わらない生活を送ることができています。とはいえ、「健康な人のふり」をして無理するのではなく、周囲の人や会社についての説明と私がしてほしい配慮をお伝えしています。2022年には結婚、2023年2月には海外で挙式もできました。実はベーチェット病とわかる前、生理の度に背中に大量のニキビができ、痕も酷いことがありました。しかし、プレドニンのおかげで痕もすっかり綺麗になり、背中の開いたウエディングドレスも着られて嬉しかったです。2024年1月にはプレドニンがゼロになり、主症状の再燃もないため、これからは夫とたくさん海外旅行をしたいと思っています。

編集部編集部

ベーチェット病について知らない方、普段意識されていない方に向けてアドバイスをお願いします。

いずみさんいずみさん

ベーチェット病の好発年齢は20~40歳で、30代の働き盛りがピークになります。ベーチェット病は原因不明で、どんな症状から現れるのかも人それぞれです。健康な方、若い方でもある日突然患者になってしまう可能性があることを知ってほしいです。そして、小さな異変であっても、おかしいと感じたらすぐに病院へ行ってください。特に目の充血は「疲れかな」「ドライアイかな」と軽くみられがちですが、ベーチェット病のように失明の恐れがある病気の可能性があります。

編集部編集部

いずみさんの体験を通して、医療従事者に望むことはありますか?

いずみさんいずみさん

私はコロナ禍でベーチェット病を発症しましたが、そんな中でも適切な医療を受けられたのは、医療従事者の方々がいつも通りに働いてくれたからこそです。いつも本当にありがとうございます、と伝えたいです。また、ベーチェット病は一昔前だと失明する病気でしたが、現在は視力低下を防げる患者もいます。ベーチェット病を研究してくれている方々には、感謝の気持ちを伝えたいです。

編集部編集部

医療の進歩でベーチェット病もコントロールできる病気になったということですね。

いずみさんいずみさん

ただ、薬剤師さんへのカルテ開示がされないことで少し辛い思いをしました。薬剤師さんは私が伝えない限り病名や状況を知ることができません。妊娠中はコルヒチンを中断しておりましたが、死産した後、コルヒチンを処方してもらうことになりました。そのとき、薬剤師さんに自ら死産という辛い出来事を伝える必要がありました。個人情報なので開示が難しいのは分かりますが、とても辛かったですね。

編集部編集部

いずみさんのこれまでの経験を通して、本記事の読者に伝えたいメッセージをお願いします。

いずみさんいずみさん

原因不明の難病は、誰にでも発症する可能性があります。厄介なのは「健康ではないにせよ、命に関わるような病気ではなく、寿命が来るまで付き合う必要がある病気」という点です。私は職場が在宅勤務となったので、仕事を辞めることなく闘病を続けられていますが、幸運なケースであると自覚しています。この記事を読んでくれた方が、難病患者の就労について少しでも興味・関心を持ってくれると嬉しいです。「見た目にはわかりづらい」「健康な人と同じように見える」難病患者もいることを知ってもらえれば、私達も働きやすくなります。

編集部まとめ

ベーチェット病と付き合いながら、仕事も趣味もどちらも頑張り続けているいずみさん。ベーチェット病の症状はすぐに確定できるものが少なく、専門医も少ないのが現状です。一方で、いずみさんのように早期受診、早期治療を行えば、寛解状態を維持して元とほぼ同じ生活を続けられる方もいます。どのような病気にも共通して言えることですが、早期発見が何より大切です。ぜひこの記事を読んでいる方は、自分の体の異変には早めに気づき、適切な診療科で治療することを心掛けましょう。

なお、Medical DOCでは病気の認知拡大や定期検診の重要性を伝えるため、闘病者の方の声を募集しております。皆さまからのご応募お待ちしております。

この記事の監修医師