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~ベーチェット病体験談~ 原因不明の痛みは「根性なし」扱い。若手女優の苦痛は難病だった

 更新日:2023/03/27

俳優の十條莉緒さんが患ったベーチェット病は、いくつもの病院を巡ってもなかなか診断確定されず、その間の体調不良を周囲に理解してもらえなかったそうです。「根性なし」「逃げ」、周囲からはそんな見方をされることも少なくなかったのだとか。病名がわかるまでの治療の日々、そんな過程で変化した価値観などについて、十條さんに話を聞きました。

※本記事は個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2021年7月取材。

十條 莉緒さん

体験者プロフィール
十條 莉緒さん

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東京都在住、2000年生まれ。診断時の職業は俳優(エヴァーグリーンエンタテイメント所属)。2020年1月頃より発症し、2020年夏に腸管ベーチェット病と診断される。現在はヒュミラを自己注射しながら生活しているが、副作用のためレミケードを検討中。自分の経験をSNSで日々発信している。@tojyo_rio

副島 裕太郎

記事監修医師
副島 裕太郎(医師)
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。

ベーチェット病と確定するまでの長くつらい道のり

診断確定までの長くつらい道のり

編集部編集部

早速ですが、最初はどのような症状でしたか?

十條 莉緒さん十條さん

2020年1月頃から、毎日37度後半ぐらいの熱に悩んでいました。平熱が約35.6℃のため、微熱程度とはいえ、レッスンに通ったり、芝居の勉強を夜遅くまでしたりすることが辛くなっていったんです。また胸痛や肋骨痛も始まり、絶対になにか変だと思って大学病院へ行ったものの、「ストレス性」とだけ言われ、原因はよくわかりませんでした。7月頃には40℃近くまで発熱するようになりましたが、コロナ禍もあって病院に行きにくい状況でしたね。

編集部編集部

お医者さんでもすぐにはわかってもらえなかったのですね。

十條 莉緒さん十條さん

しばらくはそうでした。体力の波が激しく、酷い時はベッドから起き上がることもできなかったり、そうかと思うと翌日は元気に仕事ができたりもしていました。全く痛みがない日はないのですが、一週間の中でも天と地くらいに病状が違うため、痛みが予測できず困ることもあります。徐々に歩くこともぎこちなくなり、関節痛で眠れず、次第に一人で起き上がることも、ペットボトルの蓋を開けることもできなくなりました。

編集部編集部

症状は徐々に悪化していったと?

十條 莉緒さん十條さん

前日まで動いていた身体が、次の日には動かなくなるのは本当に怖いことでした。藁にもすがる思いで何軒も病院を転々として、やっと良い主治医の先生に出会い、検査入院が始まりました。そこで自分が腸管型ベーチェット病だと知ることができました。

編集部編集部

周囲の方々に理解してもらえましたか?

十條 莉緒さん十條さん

外見ではわかりづらい病気かつ、若さゆえにメンタルの問題と思われたのか、「根性無し」「逃げ」「ネガティブ思考」「怠けている」「自堕落」などの傷つくような言葉も浴びせられました。

編集部編集部

ベーチェット病が判明した時はどのような心境でしたか?

十條 莉緒さん十條さん

「やっと病気がわかったー。これで安心」という気持ちでした。「難病」という言葉にたじろいだり、不安な気持ちになったりするよりも、診断がついたという喜び、治療が出来るという安心感が勝りました。ただ、決まっていた仕事を断ることが本当に悔しかったですね。

編集部編集部

お仕事柄、色んなタイミングを逃してしまうのは痛手ですよね。

十條 莉緒さん十條さん

そうですね。でも嘆いたところで何一つ状況は変わらないのだから、自分だけでも前向きに自分のすべてを受け入れてあげようと思いました。やっぱりみんな自分が生きることに精一杯なので、誰かの助けを待っていても時間が過ぎるだけ。自分は自分で救うしかない。自分らしい生き方や今の自分にできること、病気を持ったからこそ伝えられること、誰かの役に立てることについて色々と考えるようになりました。

ベーチェット病の治療を始めてからの変化

ベーチェット病の治療を始めてからの変化

編集部編集部

ベーチェット病はどのような治療を受けましたか?

十條 莉緒さん十條さん

仕事柄、太ることやむくむことが許されにくい環境だったので、なるべくステロイドは使わず、当初は飲み薬(コルヒチンやペンタサ)を使いました。しかし効果が弱く、関節痛で仕事に支障が出たり、不眠が続いたりしたため、自己注射のヒュミラに切り替えました。ヒュミラも使用開始から2ヶ月くらいで副作用のめまいが強く出てきたため、今現在はレミケードに切り替えました。まだ使用期間が短いので副作用はなく、経過観察中です。

編集部編集部

治療を開始してから日常生活はどう変化しましたか?

十條 莉緒さん十條さん

以前はストイックにスケジュールを詰め、自分の夢や目標に打ち込む事が好きだったのですが、病気になってからは身体と相談しながら進めています。私が頑張れば頑張るほど病気が悪化し、お医者さんや仕事に迷惑をかけることに気付いたからです。

編集部編集部

発症後、俳優のお仕事はどうなりましたか?

十條 莉緒さん十條さん

芸能活動は身体に無理のない範囲で続けていく予定ですが、一旦、所属事務所は辞めることになりました。社長さんやマネージャーさんもとても寄り添ってくださり、自分の意思で退所を決意するまで見守ってくださったことにはとても感謝しています。

編集部編集部

治療中は何が心の支えとなりましたか?

十條 莉緒さん十條さん

この治療は一生続くかもしれませんので、他者に委ねるよりも、自分自身に心の支えを見出そうと思いました。お金で買えるものであふれる中、私の経験や感情は私にしか手に入れられないので、自分自身に降り掛かってきたすべてのことを大切にしたいなと思ってます。不自由に見えるものがむしろ自由だったり、何かを失ったように見えて得ていたり、辛く悲しいように見えることがむしろ幸せに繋がっていたりすると思うので。

昔の自分、周囲、そして医療関係者に伝えたいこと

昔の自分、周囲、そして医療関係者に伝えたいこと

編集部編集部

もし以前の自分に声をかけるとしたら?

十條 莉緒さん十條さん

病気になる前の自分には、暗闇しか見えず、出口がないような気分でした。でも病気になってからは素敵な人に沢山出会い、温かさに触れて、自分の生き方に自信を持てました。人生何があるかわかりませんが、自分だけは見捨てないでと伝えたいですね。

編集部編集部

患者として医療関係者に伝えたいことは?

十條 莉緒さん十條さん

私の主治医の先生はすごく素敵な方で、本当に心から感謝しています。フィールドは違いますが、私も先生方のように人々の救いになれるような、笑顔にできるような存在になりたいです。

編集部編集部

最後に読者へのメッセージをお願いします。

十條 莉緒さん十條さん

他人に頼るのが苦手な人や、なかなか弱音を吐けない人もいますし、ベーチェット病のように、傍からは視覚的にわかりづらくても、病気と闘ってる人もたくさんいます。目に見えるものだけで判断しないで、人と関わる時は相手を尊重していただけると、救われる人も多いと思いますね。また、私事ですがもし興味があれば「難病のある暮らし」についてSNSで発信していますので、のぞいてみてください。

編集部まとめ

難病の病名確定までの長く、つらい日々。当事者ではない私たちからすれば、なかなか想像に及びません。だからこそ、確定診断を受けるときにはショックを受けそうな気もしますが、十條さんにとって「原因不明の苦しみ」に悩まされる日々はそれ以上につらかったのでしょう。まさに闘病者だからこそわかる体験談ですね。そんな苦しみがあることを、私たちは理解していく必要がありそうです。

この記事の監修医師