【管理栄養士が解説】朝食抜きが体に悪いワケ「肥満や糖尿病につながる」


朝食抜きだとどうなる?

編集部
朝食を摂らなければ、その分痩せるのではないのでしょうか?
長井さん
実はその逆で、朝食抜きは肥満につながる可能性があります。お相撲の力士は「朝食を摂らない」という話を聞いたことはないでしょうか? 朝食を摂らずに早朝から2~3時間ほど激しい稽古をし、1日の最初の食事として昼食を多めに摂ることで体重を増加させているのです。
編集部
朝食抜きは、なぜ体重増加につながるのでしょうか?
長井さん
朝食を抜くことで脳のエネルギーが不足するだけでなく、体を動かすエネルギーも不足し活動量が減ってしまうことや、食事の回数が少ないと野菜や果物の摂取量も減り、肥満を招きやすい食生活になっていることなどが挙げられます。また、朝食を抜くと昼食後、夕食後の血糖値が上昇しやすく、肥満につながるという研究結果もあります。
編集部
朝食抜きと肥満には相関関係があるということでしょうか?
長井さん
疫学研究の結果でも、そういった報告がされています。また、子どもの頃に朝食抜きに慣れてしまうと、大人になってからも習慣化してしまうことが多く、若い世代では4人に1人が朝食を抜いているということが厚生労働省の国民健康・栄養調査で分かっています。
朝食抜きが及ぼす体への影響

編集部
朝食抜きが体に悪いというのは、太るからだけなのでしょうか?
長井さん
そのほかにも、肥満が原因で様々な疾患につながる可能性があるため注意が必要です。例えば内臓脂肪型肥満をきっかけに脂質代謝異常、高血糖、高血圧となる状態をメタボリックシンドロームといい、心臓病や脳卒中などを引き起こしやすくなります。
編集部
朝食抜きでも痩せていれば大丈夫ですか?
長井さん
いいえ、肥満でなくても朝食を抜くと糖尿病になるリスクが高まることも分かっています。糖尿病とはインスリンの作用が十分に機能しないことで血液中にブドウ糖が多い状態で、症状が進むと神経障害や腎症、網膜症などの三大合併症を引き起こす可能性があります。三大合併症になると結果的に足を切断したり、人工透析が必要になったり、また失明したりすることもあるのです。
編集部
血糖値が高いことによる体への影響は、ほかにもありますか?
長井さん
はい、血糖値が高いということは、最終糖化産物であるAGEsが血液中に蓄積され、脳梗塞や心筋梗塞、動脈硬化、がん、アレルギー、老化などにもつながる可能性が高まります。
朝食を摂るのがが大切な理由

編集部
朝食を食べることによるメリットはありますか?
長井さん
なんといっても1日の生活リズムを整えてくれることではないでしょうか。朝食を食べることで体が目覚め、朝の時間を有意義に過ごすことができます。健康のために朝食を食べるというだけではなく、ぜひ朝食の時間を楽しんでもらいたいと思います。また、3食のうち朝食で摂るエネルギー量を多くすることで、1日をとても元気に過ごすことができます。
編集部
朝食にお勧めの食材はありますか?
長井さん
美しくバランスのとれた筋肉を付けたい人は、朝食でたんぱく質を多く摂ることをお勧めします。具体的には、卵、納豆、魚、肉などです。良質なたんぱく質をしっかり摂取することがいい筋肉をつくり、病気の予防にもつながることは良く知られていますが、1回あたりのたんぱく質の消化吸収量に限界があることはあまり知られていません。例えば、「朝食を抜き、昼食ではサラダとパスタ、夕食にしっかり肉を食べる」。こんな食べ方よりも朝、昼、夕と均等にたんぱく質を摂る方が効率的に消化吸収でき、結果として美しくバランスのとれた筋肉を付けることができるのです。
編集部
朝は食欲がないのですが、どうすればいいでしょうか?
長井さん
まずは口にできそうなものを、少しでも食べてみることから始めてみてはいかがでしょうか。ゼリーなら食べられる、バナナなら食べられるなど、食べられるものから始めると、体がだんだんと慣れてきます。また、朝に空腹を感じるためには、夕食を早い時間にすませることがポイントとなります。さらに早寝・早起きは、朝の時間に余裕がうまれ朝食を食べるという行動にもつながります。朝食を美味しく食べるポイントは、実は夜の過ごし方にあるということなのです。




