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「子どものおねしょは治療で治せる」 夜尿症は何歳までなら正常?

 更新日:2023/03/27
「子どものおねしょは治療で治せる」 夜尿症は何歳までなら正常?

おねしょ(夜尿症)は、卒業できる年齢に幅がみられます。そのまま様子見でいいのか、しつけを開始すべきなのか、悩む親も多いことでしょう。ところが、「Sunnyキッズクリニック」の若林先生は、医療で解決すべきだと話します。どういうことなのか、詳しく聞いてみることにしました。

若林先生

監修医師
若林 大樹(Sunnyキッズクリニック 院長)

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慶應義塾大学医学部・医学研究科卒業。各基幹病院の小児科勤務や慶應義塾大学病院小児科助教を務めた後の2020年、埼玉県川口市に「Sunnyキッズクリニック」開院。子育てサポートという観点から、小児医療を地域に提供している。日本小児科学会認定専門医。日本小児アレルギー学会、日本周産期・新生児医学会の各会員。

夜尿症に定義はあるものの、「困ったとき」が受診時

夜尿症に定義はあるものの、「困ったとき」が受診時

編集部編集部

おねしょの卒業に年齢的な基準はあるのですか?

若林先生若林先生

はい。日本泌尿器科学会では、「(1)5歳以上で、(2)1か月に1回以上の頻度で夜間睡眠中の尿失禁を認めるものが、(3)3か月以上続く」症状を夜尿症と定義しています。ただし、そのことでご本人や保護者が悩んでいるなら“夜尿症”といっていいと思います。必要に応じて「お薬」で止めて、お子さんの自己肯定感を確立していきましょう。

参照:日本泌尿器科学会 『おねしょ』(夜尿症)が治らない
https://www.urol.or.jp/public/symptom/09.html

編集部編集部

年齢で一律に線引きされるものではなく、「困っているかどうか」で決まるのですか?

若林先生若林先生

夜尿症はほかの病気と異なり、いずれ治ります。ですから、治療の必要性が個々に異なりますよね。ご家族の誰もが困っていなかったら、「自然な卒業を待つ」考え方もありです。他方でお困りなら、夜尿症外来などをご活用ください。その際、小学校へ上がるタイミングが1つの目安になるでしょうか。移動教室などの“お泊まりイベント”があると、実際に困ると思います。お子さんが自己否定に陥らないよう、見守ってあげる必要もあるでしょう。

編集部編集部

おねしょって、治療で止められるのですね?

若林先生若林先生

はい。お子さんのおねしょの原因は、「寝ている間、あまりオシッコをつくらないようにしよう」とするホルモンの不足です。そこで、お薬でこのホルモンを補ってあげます。もちろん、寝る前の水分摂取を控えるといった生活習慣の改善も有効です。尿は数時間かけてつくられるので、お子さんの就寝時間を前提にすると、夕方以降の水分摂取量が問われます。

編集部編集部

周囲の「気持ち次第」ということになると、受診のタイミングが難しそうです。

若林先生若林先生

前述の「(2)1か月に1回以上の頻度や(3)3か月以上の継続期間」が広がってきたら、“治りはじめている”ということです。治ってきている気配があるのなら、無理に治療する必要はありません。その意味で、日本泌尿器科学会の定義は「目安」です。また、治ってきているとしても、困っているのであれば受診動機になります。

「卒業」といえるのか。薬で治すことの意味

「卒業」といえるのか。薬で治すことの意味

編集部編集部

ところで、薬でおねしょを止めても、本質的な解決になっていない気がします。

若林先生若林先生

「お薬の服用をやめたら、元に戻ってしまうかもしれない」ということですよね。その議論は多々なされています。しかし、夜尿症を止める目的も、一緒に考えていただきたいのです。単にぬれた寝具のお掃除という手間なのか、それとも、お子さんの「心の成長」を大切に思うのか、どちらが大切だと思いますか?

編集部編集部

「心の成長」を重視するなら、薬に頼るのもひとつの方法だと?

若林先生若林先生

お薬は治療の導入として、とても重要な効果があります。お薬と一緒に「夜尿症ノート」をつけていただくと、見た目でも効果がわかりますよね。そのときの自己肯定感が、最終的な卒業につながっていく印象です。生活指導も含めた治療介入をすると、自然経過に比べて治癒率や治療期間が短くなるとされています。

編集部編集部

その一方、おねしょが怖い病気のせいだったということはないのでしょうか?

若林先生若林先生

ありえる話です。ですから、医師としては、定義や問診だけで夜尿症と診断せず、考えられる各種検査を必ず挟みます。夜尿症のお薬が効くか効かないかも、怖い病気を推し量る重要な材料になるでしょう。

編集部編集部

そう考えると、やはり日本泌尿器科学会の定義が参考になりそうです。

若林先生若林先生

夜尿症の定義は、「一般的に考えると、なにかしらの病的な状態を抱えているかもしれませんね」という判断材料として用いるのが適切でしょう。このとき、「お子さんを叱って解決しよう」とは考えないことです。ご家庭でなんとかしようとせず、小児科へご相談ください。治療の必要性は、その後に考えましょう。

家庭で心がけたい「3つの“お”」

家庭で心がけたい「3つの“お”」

編集部編集部

家庭でできる工夫として、夜中に1度起こせば、おねしょを回避できそうですが?

若林先生若林先生

むしろ逆効果になりかねません。「寝ている間、あまりオシッコをつくらないようにしよう」とするホルモンの働きを阻害してしまうからです。また、長期間にわたって続けられるかどうかも問題です。やはり、本質的な解決を優先すべきだと思います。ただし、夜尿を検知すると音が鳴る「アラーム療法」は有意だと考えます。お子さんって、自分では夜尿に気づいていないのですよね。「夜間に起こす、起こさない」とは別に、「このタイミングでやっちゃった」という問題意識をもたせることも、解決につながるプロセスでしょう。

編集部編集部

そして“怒る”こともダメとのことでした。

若林先生若林先生

はい。怒ることも逆効果です。それよりも、おねしょをしなかった朝に褒めてあげてください。こうした成功体験を「夜尿症ノート」に付けて「見える化」することも大切です。そのとき、夜尿症の有無だけではなく、“量”にも注目しましょう。量が少なくなってきているのも、治りはじめているサインです。こうすれば、お子さんは「治ってきているな」という自覚をもち、落ち着いてきます。“起こさない、怒らない、落ち着かせる”の「3つの“お”」を、ご家庭で実践してください。

編集部編集部

ほか、家庭でできることはありますか?

若林先生若林先生

「暖かくして寝る」などいくつかありますが、まずは「3つの“お”」からはじめてください。たくさんあると覚えきれないですし、「3つの“お”」ができてから医師と相談して、できることを増やしてみてはいかがでしょうか。加えて、「夜尿症ノート」の活用ですね。

編集部編集部

最後に、読者へのメッセージがあれば。

若林先生若林先生

「夜尿症は治療で治せる」ということが、あまり知られていない印象です。「勝手に治る」と思われている保護者の方は一定数、いらっしゃると思います。このとき、「夜の蛇口を止める」ことも大切なのですが、お子さんの心の成長にも留意していただければなによりです。総じて、親子を問わず「困っているとき」が受診のタイミングだと思っています。

編集部まとめ

例えば、脳の病気でも、寝ている間に尿を漏らしてしまうことはあります。その意味で、日本泌尿器科学会定義の「5歳」は、なにかしらの病的な状態を疑うきっかけになるでしょう。一方、病気としての解決に限らず、実生活で困っていることの解決としても、医療機関が役立てるとのこと。子どもの自尊心など、器質的な疾患とは別の問題があるのでした。

医院情報

Sunnyキッズクリニック

Sunnyキッズクリニック
所在地 〒333-0801 埼玉県川口市戸塚南1-1-5
アクセス 埼玉高速鉄道「戸塚安行駅」徒歩2分

診療科目 小児科

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