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若くても脳卒中ってなるの? 原因と対策を脳卒中認定理学療法士に聞く

 更新日:2023/03/27

脳卒中」ってよく耳にしますが、具体的にどんな疾患なのでしょうか? 「高齢者の病気」というイメージがありますが、最近は若い人が突然発症するニュースも目にします。何歳くらいから発症のリスクが増えるのか、また「予備軍」にならないためにはどうしたらよいのか、「脳卒中認定理学療法士」の齋藤さんにお話を伺いました。

齋藤里美さん

監修
齋藤 里美(理学療法士)

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札幌医科大学保健医療学部理学療法学科卒業後、急性期の総合病院に約20年間勤務。理学療法士としてリハビリテーション業務のほか、重複障害をもつ患者さんの治療の適正化などに従事。2021年2月から医療ライターとして活動を開始。医療従事者としての知識や経験を自分の言葉で届けるほか、医療雑誌の校正や編集も勉強中。プライベートでは小中学生3人&チワワのママ。

脳卒中って?

脳卒中って?

編集部編集部

「脳卒中」とは、どのような疾患なのでしょうか?

齋藤里美さん齋藤さん

脳に血液が流れなくなることで発症する疾患の総称になります。脳がきちんと機能するために必要な酸素や栄養素は、血液によって脳のすみずみまで運ばれます。したがって、血流が悪くなると脳が正常に機能できなくなってしまうため、様々な症状があらわれます。

編集部編集部

どうして血液が流れなくなるのでしょうか?

齋藤里美さん齋藤さん

大きく分けると、脳の血管が詰まる場合と、脳の血管が破れる場合があります。

編集部編集部

具体的にはどのような症状が引き起こされるのでしょうか?

齋藤里美さん齋藤さん

脳卒中は大きく分けて、脳の血管が詰まる「脳梗塞」、脳の血管が破れて脳内に出血する「脳出血」、出血がくも膜下腔におこる「くも膜下出血」の3つがあります。症状は意識障害や手足に麻痺がでたり、言葉がしゃべれなくなったりとさまざまです。もちろんこれら全ての症状が出る方もいますし、中にはほとんど症状が出ない場合もあります。

好発年齢は? 若くてもなるの?

好発年齢は?若くてもなるの?

編集部編集部

どんな人が脳卒中になりやすいのでしょうか?

齋藤里美さん齋藤さん

脳梗塞の場合は、危険因子として動脈硬化や心疾患、高血圧などいくつかの要素があります。脳出血も原因は様々ですが、主に高血圧の方に多く発症します。くも膜下出血は主要な原因として脳動脈瘤(血管のこぶ)があります。

編集部編集部

好発年齢はありますか?

齋藤里美さん齋藤さん

脳梗塞、脳出血はいずれも中高年~超高齢者に多い疾患ですが、「若年性脳梗塞」といって若い世代に発症する脳梗塞(まれに脳出血)もあります。また、くも膜下出血は40~60代とやや若い世代に好発します。

編集部編集部

若年性脳梗塞について教えてください。

齋藤里美さん齋藤さん

最近では、俳優やアナウンサーの方が20代・30代で脳出血や脳梗塞を発症したというニュースもありました。原因は自己免疫疾患や心疾患によるものが多く、心内膜炎による脳出血などが考えられます。

編集部編集部

くも膜下出血は40代でも発症することがあるのでしょうか?

齋藤里美さん齋藤さん

はい。くも膜下出血の原因である脳動脈瘤が、40歳前後から発生することが多いためです。また、くも膜下出血全体の1割以下と確率はとても低いですが、原因が脳動脈瘤ではなく先天的な脳動静脈の奇形などの場合は20~30代の若年層でも発症します。

脳卒中の原因は? どうやったら予防できる?

脳卒中の原因は?どうやったら予防できる?

編集部編集部

脳卒中の原因をもう少し詳しく教えてください。

齋藤里美さん齋藤さん

動脈硬化の原因としては、高血圧のほか、糖尿病、脂質異常症、喫煙や大量飲酒があります。いわゆる「血液ドロドロ」の状態だと血管が詰まりやすかったり、詰まった血管が破れてしまったりするためです。ほかにも、心臓が正常に機能していないと「血栓」と呼ばれる血液の固まりができやすくなり、これが血管を塞いでしまうために発症します。

編集部編集部

くも膜下出血の主な原因である脳動脈瘤は、どうしてできるのでしょうか?

齋藤里美さん齋藤さん

まだ明確には解明されていないのですが、統計的に高血圧、喫煙、そして遺伝要素と相関があることが分かっています。ご家族や親戚に同様の病歴がある方は注意が必要です。

編集部編集部

脳卒中を予防するにはどのような対策がありますか?

齋藤里美さん齋藤さん

まずは血圧を意識してみましょう。高めだな、と思ったら塩分を控えたり、食べ過ぎに注意したりしてみて下さい。特に外食の多い方は、普通だと思っていても塩分過多になっている場合が多いので注意が必要です。あとは適度な運動を無理のない範囲で続けましょう。これは動脈硬化や糖尿病の予防にもなります。また、基本的なことですが飲酒や喫煙を控えるのもとても大切です。とくに喫煙は血管を収縮させてしまうますので、動脈硬化が進みやすくなります。

編集部編集部

ほかに気をつけることはありますか?

齋藤里美さん齋藤さん

脳梗塞は夏に多く、脳出血は冬に多く発症するといわれています。最近の家屋はエアコンなど冷暖房設備が充実していることもあり、季節によるバラつきは昔と比べ減少傾向ですが、たとえばスポーツやサウナで汗をかきすぎると血液から水分が失われて詰まりやすくなります。血流を維持するためには、適切な水分補給が大切です。また、冬などにお風呂上がりで急に寒い脱衣所に移動した時なども、入浴で血流が良くなったところに、寒さで急激に血管が収縮してしまうので危険です。あとはなるべくストレスをためずに日々を過ごしましょう。動脈硬化や心疾患を指摘されたり、ご家族や親戚に脳卒中を発症した方がいたりする場合は、脳ドックなどでリスクのチェックをするのもいいかもしれません。

編集部編集部

最後に読者へのメッセージがあれば。

齋藤里美さん齋藤さん

脳卒中は、かつては日本人の死亡原因の第一位でしたが、現在は予防法や治療法の進歩により減少してきています。しかし、「介護が必要となる原因」や「寝たきりになる原因」としては依然トップです。脳卒中の原因である高血圧や糖尿病、脂質異常症などは「生活習慣病」のひとつなので、食生活や運動習慣などの生活習慣を見直すことでリスクは大幅に減らすことができます。無理なく出来ることからコツコツとはじめてみて下さいね。

編集部まとめ

若い世代にも起こり得る「脳卒中」についてお話を伺いました。脳卒中にはいくつかの分類がありますが、注意することは共通しています。生活習慣に気をつける、血圧を少し意識してみる、必要に応じて脳ドックを受けてみるなど、突然の発症リスクを予防しましょう。

この記事の監修理学療法士