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乳幼児期からのスキンケアの重要性を皮膚科医が解説。乾燥肌は様々なアレルギー性疾患の原因

 更新日:2023/03/27
乳幼児期からのスキンケアの重要性を皮膚科医が解説。乾燥肌は様々なアレルギー性疾患の原因

赤ちゃんは「たまご肌」と言われますが、肌のバリア機能という点で考えるなら、それだけ繊細でデリケートな状態であるといえます。生まれつき乾燥肌の傾向があれば、しっかりと保湿剤を使用してお肌のケアをしてあげないといけません。乾燥肌傾向のある赤ちゃんに対するスキンケアは、その後発症するさまざまなアレルギー性疾患の予防になることがわかっています。「よしき皮膚科・形成外科」の吉木竜太郎先生に、詳しく解説してもらいました。

吉木竜太郎先生

監修医師
吉木 竜太郎(よしき皮膚科・形成外科 院長)

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産業医科大学医学部医学科卒業。大学病院や大学講師、民間企業の産業医などを経た2013年、福岡県福津市に「よしき皮膚科・形成外科」開院。法人化に伴い、「医療法人隼会」理事長就任。皮膚のことならなんも相談できる地域のかかりつけ医として診療に尽くしている。医学博士。日本皮膚科学会認定専門医。

アレルギー性疾患の予防には「スキンケア」が重要

アレルギー性疾患の予防には「スキンケア」が重要

編集部編集部

赤ちゃんの肌に見られる赤いブツブツが気になります。

吉木竜太郎先生吉木先生

赤ちゃんの肌は大人と比べて弱いため、空気が乾燥するとお肌も乾燥しやすく、また汗をかくと汗によるかぶれを起こしやすいです。このような状態になったら、すぐに皮膚科の受診をお勧めします。

編集部編集部

お肌の乾燥が原因なら保湿剤を使用しておけばいいのでしょうか?

吉木竜太郎先生吉木先生

すでに湿疹を生じている状態ですので、保湿剤だけ使っても湿疹が改善することはありません。ステロイド外用剤など皮膚の炎症を抑える外用剤が必要です。保湿剤はあくまで「潤った状態のお肌を維持するために継続して使用するお薬」と認識した方がよいでしょう。

編集部編集部

それであれば、湿疹が治ってからも保湿剤を継続して使用した方がいいのでしょうか?

吉木竜太郎先生吉木先生

乾燥肌の方というのは、皮膚のバリア機能が低下しているため、様々な物質がそこから侵入します。皮膚はそれに対する防御反応として、湿疹を生じさせます。それが継続すると、その物質に対する過剰な免疫反応、いわゆる「アレルギー反応」を生じるようになることがわかっています。よく話題になる食物アレルギーも、この「経皮感作」という現象が原因ということがわかってきました。

編集部編集部

アレルギーというのは、生まれつき持っているものではないのですね?

吉木竜太郎先生吉木先生

もともとの体質で、過剰な免疫反応を起こしやすい方がいます。そういった素因を持っていらっしゃる方で、皮膚のバリア機能が弱い方にアレルギー性疾患は発症しやすいです。食物アレルギーは先ほどお話ししたように、バリア機能の低下した皮膚から食物アレルゲンが継続的に侵入することで成立します。逆に口腔を含めた消化管粘膜には、外部からの物質に対してアレルギー反応を抑制する機能があることがわかっています。つまり皮膚から侵入するも物質は敵として排除し、口から摂取するものについては敵とみなさず食物、栄養分としてしっかり吸収できるような機能が備わっています。

スキンケアを継続するうえで大切なポイント

スキンケアを継続するうえで大切なポイント

編集部編集部

乾燥肌傾向で湿疹を繰り返しやすい赤ちゃんは、しっかりとした保湿でバリア機能の維持を行うということが重要ということですね?

吉木竜太郎先生吉木先生

はい。皮膚バリア機能の低下によって生じる幼少期からの湿疹は、5~6歳くらいで約半数のお子さんが起こしにくくなってきます。それまでは、できるだけ保湿剤を使用したケアを行ってほしいです。保湿は、生後直後からおこなっていただいて構いません。保湿剤を塗る頻度としては、「1日のうち、起きたときと風呂上がりの2回」が理想です。また保湿剤自体にはほとんど水分は含まれていないので、入浴直後、浴室や脱衣所などの湿度の高いところで塗るのがベストです。水分のないカサカサ皮膚の状態で保湿剤を使っても、あまり効果が望めません。

編集部編集部

保湿剤にもいろいろありますが、お勧めできるもの、お勧めできないものなどはありますか?

吉木竜太郎先生吉木先生

市販で手に入りやすいのは、ワセリンですね。最近はドラッグストアでも、ヘパリン類似物質入りの保湿剤が手に入るようになったので、そちらもお勧めです。保湿剤はあくまで乾燥肌とそれに続いて生じる湿疹の予防で使用しますので、湿疹を繰り返すようであれば必ず皮膚科、小児科を受診して、保湿剤だけでなく炎症を抑えるステロイド外用剤なども処方してもらうようにしてください。お勧めできない保湿剤としては、食物由来成分入りの保湿剤が挙げられます。先にお話ししたように、皮膚から継続して侵入してくるものは、アレルギー反応を生じさせやすいためです。ある国ではピーナッツ由来の保湿成分が入った保湿剤を使用していたことで、ピーナッツアレルギーのお子さんがとても多いというデータがありました。

編集部編集部

保湿ケアは、子どもが何歳になるまで続けるべきでしょう?

吉木竜太郎先生吉木先生

正直その辺の判断は難しいところですが、成長とともに湿疹は起こしにくくなっていくのも事実です。普段は湿疹を起こさなくなっていても、湿度の変化が起きやすい季節の変わり目だけ、夏の暑い時期だけまた冬の空気が乾燥している時期だけという方など、様々なパターンがあります。そういった湿疹を起こしやすい時期は、積極的に保湿して予防すると考えていただいた方がよいと思います。

編集部編集部

「塗る」ことに関して、子どもが成長するとベタつくのを嫌がったり、面倒くさがったりして、自分では塗らなくなることもあるようですが?

吉木竜太郎先生吉木先生

そうですね。なので「朝起きたら歯を磨く」「トイレに行ったら手を洗う」という感じで、「朝起きたら、風呂からあがったら保湿剤を塗る」ということを幼少期から普段の習慣づけにしたいですね。その時、上手にできたらしっかり褒めてあげることで、さらに自分で保湿剤を塗る気になってくれると思います。

その他、周辺情報のあるある

その他、周辺情報のあるある

編集部編集部

入浴時に洗いすぎて、自ら皮膚バリア機能を破壊している方も多いようですね。

吉木竜太郎先生吉木先生

特に、年配男性の方に多いですね。「熱い湯に入って、ゴシゴシこすらないと洗った気がしない」とおっしゃる方もいますが、それは肌から出ている天然の保湿成分をすべて除去して、自分で乾燥肌を作り出している状態です。じつは浴槽に浸かるだけ、シャワーを浴びるだけでも汚れは十分に落ちています。ちなみに私は入浴時には首回り、腋の下、陰部だけしか石鹸を使いません(笑)。

編集部編集部

風呂上がりにタオルで体を拭くときも、こするのではなくボンボン押さえる程度でいいと。

吉木竜太郎先生吉木先生

はい。そしてできれば柔軟剤を使った、ふわふわのタオルで拭いてください。以前、「柔軟剤は肌に悪いので使用してはいけない」という意見が出回りましたが、現在それは否定されており、逆に「柔軟剤を使用したお肌に優しいタオル」の使用が推奨されています。

編集部編集部

乾燥した冬は、踵の皮膚もカサカサになりやすいですが、それを予防するために靴下を履いたまま寝た場合、足が蒸れて水虫になりやすいということはありませんか?

吉木竜太郎先生吉木先生

カサカサになった角質の皮膚は、水虫菌が付着して増殖しやすいと考えられるため、靴下を履くことで菌の付着防止と踵の乾燥を予防することになると思います。もしそれでもカサカサしたら、尿素入りクリームなどを外用してから靴下を履くと、ツルツルした踵を維持しやすいですよ。

編集部編集部

最後に、読者へのメッセージがあれば。

吉木竜太郎先生吉木先生

肌質は人それぞれで、どうしても強い弱いがあります。「お肌が弱い」と認識したら、幼少期からしっかりと保湿する習慣をつけてください。また自分で肌を傷めないよう、優しく洗うということも意識してみましょう。スキンケアこそが様々なアレルギー性疾患の予防につながるということを覚えておいてください。

編集部まとめ

お子さんが乾燥肌だ、とわかった時点で親御さんはしっかりとスキンケアしてあげることが、それに続くアレルギー性疾患を予防することにつながるのですね。また特定の物質に対して、アレルギーを発症する機序として皮膚から侵入してくる物質が原因であるというのは、あまり知られていないかもしれません。幼少期からのスキンケアというのは、まさに親が与えてあげられるその子にとっての一生の財産と言えるかもしれません。

医院情報

よしき皮膚科・形成外科

よしき皮膚科・形成外科
所在地 〒811-3209 福岡県福津市日蒔野5丁目14-6 メディカルプレイス福津内
アクセス JR九州バス 福間線/水光会総合病院前下車 徒歩1分
西鉄バス 赤間(急行)福岡線/イオンモール福津前下車 徒歩15分
診療科目 皮膚科、形成外科、美容皮膚科

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