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「乳幼児揺さぶられ症候群」の原因や症状を解説!重篤な障害が残る可能性も!

 公開日:2023/09/12
「乳幼児揺さぶられ症候群」の原因や症状を解説!重篤な障害が残る可能性も!

乳幼児揺さぶられ症候群で乳幼児が重症になってしまったというニュースを目にしたことはありませんか。

乳幼児揺さぶられ症候群とは首の筋肉が弱い赤ちゃんや幼児を激しく揺さぶることにより、脳を頭蓋骨の内側に打ち付けてしまい、重大な脳損傷を引き起こす頭部損傷です。

損傷した脳は元に戻ることはなく、視力低下や知的障害など重篤な障害が残る可能性があります。

乳幼児揺さぶられ症候群の原因としては親や周囲の保育者がイライラしたり、腹が立ったりすることによって発生するケースがほとんどで虐待の1つとも捉えられています。

本記事では、乳幼児揺さぶられ症候群の原因から症状・治療・予防方法も解説します。

これから子どもが生まれる方や子育てで悩んでいる方などはぜひ参考にしてみてください。

武井 智昭

監修医師
武井 智昭(高座渋谷つばさクリニック)

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【経歴】
平成14年慶應義塾大学医学部を卒業。同年4月より慶應義塾大学病院 にて小児科研修。平成16年に立川共済病院、平成17年平塚共済病院(小児科医長)で勤務のかたわら、平成22年北里大学北里研究所病原微生物分子疫学教室にて研究員を兼任。新生児医療・救急医療・障害者医療などの研鑽を積む。平成24年から横浜市内のクリニックの副院長として日々臨床にあたり、内科領域の診療・訪問診療を行う。平成29年2月より横浜市社会事業協会が開設する「なごみクリニック」の院長に就任。令和2年4月より「高座渋谷つばさクリニック」の院長に就任。

日本小児科学会専門医・指導医、日本小児感染症学会認定 インフェクションコントロールドクター(ICD)、臨床研修指導医(日本小児科学会)、抗菌化学療法認定医
医師+(いしぷらす)所属

乳幼児揺さぶられ症候群の原因や症状

子どもを抱き上げる親

乳幼児揺さぶられ症候群の原因を教えてください。

乳幼児揺さぶられ症候群は子どもの機嫌が悪かったり、なかなか泣き止まなかったりが続くと親や保育者がイライラしたり、腹がたったりするでしょう。その状態が続くと子供に対してイライラをぶつけてしまい、激しく揺さぶってしまうことで起きてしまいます。子どもを揺さぶる行為は虐待の1つとも捉えられており、保育者が冷静でいることが大切です。
乳幼児は頭が大きく重いので、自分で支えることが難しいです。そのため強く揺さぶられると頭を支えきれず大きく振られるため、脳にまで衝撃が伝わって損傷しやすくなります。
乳幼児揺さぶり症候群になるほどの激しい揺さぶりとは通常の子どもをあやすような程度ではなく、誰が見ても危険を感じるほど激しく揺さぶることです。

どのような初期症状が現れるのでしょうか?

乳幼児揺さぶられ症候群の初期症状としては、下記のような症状がみられます。

  • 元気がなくなる
  • 機嫌が悪くなる
  • すぐ眠ってしまう
  • 嘔吐

これらの症状は病気による体調不良時にもよくみられる症状であり、特に嘔吐はウイルス性の感染症によるものと思われがちです。特に揺さぶった行為者が激しく揺さぶったとの認識がない場合は乳幼児揺さぶられ症候群を疑うこともないでしょう。
乳幼児揺さぶられ症候群は強く揺さぶられたことで頭蓋骨に脳が打ちつけられることで損傷を受け、その後低酸素状態に陥ります。初期症状の時点で強く揺さぶられたことが疑われる場合はすぐに病院へ連れていきましょう。

乳幼児揺さぶられ症候群の特徴を教えてください。

乳幼児揺さぶられ症候群の特徴として、揺さぶられたことにより乳幼児が脳に損傷を受け、命が助かったとしても重篤な障害が残る可能性が高いということです。
損傷を受けた脳周辺や脳内で出血が起こり、適切な処置が行われたとしても視力障害・知的障害・後遺症としてのけいれん発作といった後遺症がみられる可能性が高いです。そして最悪の場合、命を落としてしまうこともあります。
このように乳幼児揺さぶられ症候群によって子どもの将来に影響を及ぼす可能性があることを理解しましょう。

症状は何歳ごろまででますか?

乳幼児揺さぶられ症候群は5歳未満の子どもを揺さぶることで発生すると定義されています。子どもが成長し、首まわりの筋肉の発達に伴って揺さぶられても自ら頭を支持できるようになると発生が比較的少なくなります。しかし子どもの発達は個体差がある上、揺さぶる行為自体が脳に損傷を与えやすいということを念頭におくべきであり、必ずしも5歳頃までと限定できません。
また、乳幼児揺さぶられ症候群により残った後遺症は完治することは難しいと考えられます。もっとも、乳幼児を揺さぶる行為自体が虐待につながるという認識を忘れてはなりません。

乳幼児揺さぶられ症候群の診断や治療

治療中の子どもの手

医療機関を受診する目安を教えてください。

乳幼児揺さぶられ症候群によってみられる症状として、元気がない・機嫌が悪い・嘔吐・顔色が悪い・けいれん・寝てばかりいる・意識がないなどが挙げられます。
脳に損傷を受けたことによって低酸素状態が長く続くと、非常に危険です。強く揺さぶられた可能性がある場合は直ちに病院を受診しましょう。

乳幼児揺さぶられ症候群はどのように診断されるのでしょうか?

乳幼児揺さぶられ症候群は眼底出血や硬膜下血腫がみられることが多いため、これらの所見がみられた場合は可能性が高いです。
眼底出血が起きていないか眼底カメラで出血状況の検査を行います。さらに脳内の出血や損傷の状態を確認するため、頭部CT、MRI検査を行います。
しかしこれらの症状のみで乳幼児揺さぶられ症候群と診断することは困難であり、可能性として疑われているのが現状です。強く揺さぶってしまった事実がある場合はその旨を医師に伝えましょう。

乳幼児揺さぶられ症候群の治療方法を教えてください。

硬膜下血腫が確認された場合は頭蓋骨を開けて血腫を除去する手術を行います。また急性の脳膨張がみられた場合は、膨張によって脳自体にかかっている圧力を抑えるため骨を外して皮膚だけ縫合する手術を併用します。
眼底出血は自然と消失していきますが、その後重い視力障害が残ったり弱視になったりする可能性が高いです。
また、後遺症として運動障害やけいれんなどが残ってしまった場合はリハビリ療法が必要になります。このリハビリ療法によって完治するのは大変難しいとされています。そのため、乳幼児揺さぶられ症候群を引き起こさないことが大切です。

乳幼児揺さぶられ症候群の予防

泣く子ども

乳幼児揺さぶられ症候群は予防できますか?

乳幼児揺さぶられ症候群は親や周囲の保育者によって強く揺さぶられることで発生することが多いです。特に子どもが泣き止まない状況で多く発生しています。子どもを泣き止まそうと抱っこしたり、あやしたりミルクを与えたり、おむつを替えたりと子どもが落ち着くよう世話をしてもなお泣き止まないとイライラしてしまいます。
長時間泣き止まず、保育者のイライラが募ってきた際は子どもを安全な状態にして、別部屋へ移動し冷静になる時間を作りましょう。少しの時間でも子どもと離れて自分を落ち着かせることで強く揺さぶってしまう行為は防げます。
またよく泣き止まないことがある場合は友人に相談して実践している方法を聞いてみたり、時にはかかりつけ医に相談してみたりするのも良いでしょう。

発症しないために気をつけることを教えてください。

乳幼児揺さぶられ症候群が起きないために、まずは親や周囲の保育者がストレスを溜めないことが大切です。イライラした状態で子どもが泣き止まないと冷静に対応できなくなってしまいます。
そして、揺さぶることで脳に大きなダメージを与えてしまうという認識をすることも重要です。子どもを叩いたり、殴ったりするのが危険であるということは誰もが理解していますが、それと同じくらい揺さぶる行為も子どもにとっては危険な行為であると理解する必要があります。ある研究では妊娠期に乳幼児揺さぶられ症候群に関する教育的動画の視聴を行うことで未然に防げる効果があることが分かりました。
特に第1子出生時や父親の視聴によって知識が向上する傾向にあります。子どもの泣きに対する対処や揺さぶる危険性を事前に知識として習得することで乳幼児揺さぶられ症候群を発生させないことが求められています。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

子どもは強く揺さぶられることで脳に大きなダメージを受けてしまうということを改めて認識しましょう。揺さぶることが子どもにとって非常に危険であり、そのことを理解していない方もいますので、子どもを揺さぶってはいけないということを周囲に伝えることも効果的です。
そして乳幼児揺さぶられ症候群が疑われる場合は直ちに病院で処置を受けることが重要です。脳の損傷による低酸素状態を少しでも短時間にすると後遺症の可能性を抑えられます。
子どもが泣き止まないとストレスを抱えてしまいがちですが、いずれは泣き止むと広い心で受け止めるようにしましょう。

編集部まとめ

笑顔の赤ちゃん
乳幼児揺さぶられ症候群は親や周囲の保育者がその危険性を認識し、子どもの泣きに対して落ち着いて対応することで未然に防げます。
子どもが小さいうちは外出することが難しく、自宅で子育てを強いられる状況が多くなりがちです。

この状況下で人との関わりが希薄になってしまうことによる乳幼児揺さぶられ症候群の発生が危惧されます。

子どもが泣き始めたらおむつを替えてみたり、おもちゃであやしてみたりして子どもが泣き止むことを1つずつやってみましょう。

それでも子どもが泣き止まずイライラすることが多い場合は、少し子どもから離れてリラックスすることが大切です。

乳幼児揺さぶられ症候群によって命の危険があること、子どもの将来に影響を与えてしまうことを再認識しましょう。

この記事の監修医師