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健康診断の「脂質異常」が示すリスクと、そのとき取るべき正しい行動

 更新日:2023/03/27

「メタボ宣告」に近いイメージをもつ血中の脂質異常値。カロリーの取りすぎが懸念されるものの、この異常値はどんなリスクを指摘しているのでしょうか。そして、何からとりかかればいいのでしょう。「家族にコレステロール異常者がいないかの確認」「脂質異常になった原因をハッキリさせる」「継続可能な簡単なことから生活習慣を改善する」このあたりが大切そうです。健診後に踏み出す正しい一歩について、「国分寺内科クリニック」の木村先生が解説します。

木村武史

監修医師
木村 武史(国分寺内科クリニック 院長)

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北海道大学医学部医学科卒業。東京大学大学院医学系研究科修了。東京大学医学部附属病院糖尿病・代謝内科での診療経験を元に、2020年、東京都国分寺市に「国分寺内科クリニック」開院。糖尿病患者会「国分寺糖尿病友の会」を設立するなど、地域医療に尽くしている。医学博士。日本内科学会認定内科医、日本糖尿病学会認定専門医、日本糖尿病協会認定療養指導医。

家族の既往歴を知っておく

家族の既往歴を知っておく

編集部編集部

自覚はなんともないのに、健診で脂質の異常値が出ました。

木村武史木村先生

悪玉コレステロールが多い場合は、まず、「家族にコレステロール異常の方がいないかどうか」を確認してみましょう。なぜなら、遺伝性の「家族性高コレステロール血症」かもしれないからです。この病気は多くの場合、50%の確率で親から子へ受け継がれ、単一遺伝子疾患としては最多とされています。そして、心筋梗塞や狭心症にかかりやすいことが知られています。

編集部編集部

自分の体形は、そんなに崩れていないんですよね。

木村武史木村先生

「メタボ」でなければ「心筋梗塞にならない」とは言いきれません。脂質異常は体質に左右されるところもあります。脂質異常になる体質を遺伝で受け継いでいるとしたら、悠長に構えてはいられないでしょう。現に、「家族性高コレステロール血症」は200~300人に1人の割合で存在するとされています。

編集部編集部

お腹が出ていないのに、血中の爆弾を抱えていると?

木村武史木村先生

その可能性があるということです。ですから、「もう少し様子を見よう」とか「痩せているんだから、何かの間違いではないのか」などと放置せず、早めに受診していただきたいですね。心筋梗塞が起きてからでは遅いですからね。

編集部編集部

「中性脂肪」の異常値だったら、良くも悪くもないですよね?

木村武史木村先生

いいえ。中性脂肪が多くても、心筋梗塞や急性すい炎を起こしかねません。中性脂肪にも注意することをお勧めします。

「体質」が関わる病気は、治すより正す

「体質」が関わる病気は、治すより正す

編集部編集部

精密検査でひっかかった場合、どんな治療へ進むのでしょう?

木村武史木村先生

脂質異常症は糖尿病と同じで、「一生、付き合っていくタイプの病気」です。まずは、脂質異常になった原因をハッキリさせましょう。メタボ体質に限らず、先ほどの遺伝要因もありえますし、甲状腺機能の異常など他の疾患に伴うケースも考えられます。原因に応じた対策が必要となります。

編集部編集部

とはいえ、食事の改善が避けられない印象です。

木村武史木村先生

不適切な食事で脂質異常症をさらに悪化させないことが大切です。食事のみで改善させようとして「炭水化物を一切食べない」などの極端な生活をすると、かえって健康を損なう恐れがあります。体質が脂質異常症の原因となっている場合は、無理に食事だけで改善させようとするのではなく、必要に応じて適切に薬を使用した方が良いと考えられます。

編集部編集部

脂質異常の改善に有効な食べ物でも、かえってほかの病気のリスクをはらんでいる可能性があると?

木村武史木村先生

体に良いとされている食べ物でも、過剰に摂取すれば健康を損ないます。例えば、オリーブオイルが体に良いと言われていますが、食べ過ぎれば病気の原因になります。バランスの良い食事をすることが重要です。

編集部編集部

間違いなく「どんな人でもNG」なモノってありますか?

木村武史木村先生

喫煙はどんな人でも体に良くないとされています。過剰な飲酒もよくありません。これらは依存性がありますので、量を減らして続けるよりも一切やめてしまう方がかえって楽になれることもあります。

今までと違った意識改革を

今までと違った意識改革を

編集部編集部

一生かかわっていくとすると、通院先の立地も問われそうです。

木村武史木村先生

そうかもしれませんね。医療機関とは長いお付き合いになりますから、無理なく通えるところがいいでしょう。しかし、一度は専門性の高い医療機関の受診をお勧めします。病状が安定したら、普段は近場の内科で経過観察するという方法も考えられます。

編集部編集部

食事の見直しと共に、運動にも取り組んだほうがいいのでしょうか?

木村武史木村先生

運動というと、本格的なスポーツや、1日1万歩の散歩などといった、大がかりなものをイメージされることがあります。しかし、座っている時間が長い場合には、30分に1回立ち上がるだけでも効果があると言われています。簡単なことから生活習慣を改善していきましょう。

編集部編集部

その手の「簡便なこと」って、インターネット上に氾濫していませんか?

木村武史木村先生

いかに情報を取捨選択するかが重要になっていると思います。公的機関などの責任ある立場から発表された情報であれば、比較的信用できることが多いと思います。また、「発信されている情報にどのような裏付けがあるのか」を確認することも大事です。例えば、参考文献などの根拠を提示しているか、などを確認していただくと良いと思います。

編集部編集部

最後に、読者へのメッセージがあれば。

木村武史木村先生

脂質異常症は心筋梗塞や狭心症などの原因となりますが、多くの場合は無症状のまま動脈硬化を進行させますので、早期から適切な治療を開始することが重要です。日本糖尿病学会の糖尿病専門医は、脂質異常症や糖尿病などの代謝疾患を専門としています。ぜひ、専門医に相談することをお勧めします。

編集部まとめ

「最初に確認すべきは、家族の既往歴」という点が意外でした。「家族性高コレステロール血症」という病気は、生活習慣やメタボの有無と関係なく、遺伝によってもたらされます。そして、むしろメタボな人より重篤化リスクが高いとのこと。仮に「家族性高コレステロール血症」ではなかったとしても、脂質異常症に至った原因は人によって違います。その点では、アレルギーに似ているのかもしれないですね。自分がどのような体質なのか、専門性の高い医療機関で調べてもらうのがいいでしょう。

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医院情報

国分寺内科クリニック

国分寺内科クリニック
所在地 〒185-0012 東京都国分寺市本町2丁目2-1 cocobunji EAST 2F
アクセス JR中央線、西武国分寺線・多摩湖線国分寺駅北口から徒歩1分
診療科目 内分泌内科、内科、糖尿病内科

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