スポーツ障がいの相談先で迷ったら整形外科、接骨院、整体院のどこに行くべき?
スポーツをしている際にぶり返す痛みなどは、自然と治ることが多いのでわざわざお医者さんに診せなくてもいいと思いがちです。また「少し休んだら楽になった」という経験もあるでしょう。そこで、スポーツ障がいはどこに相談すべきなのか、医学的なアプローチが必要なのか、「所沢あかだ整形外科」の朱田尚徳先生に伺いました。
監修医師:
朱田 尚徳(所沢あかだ整形外科 院長)
富山医科薬科大学医学部医学科卒業。国内外の整形外科病院勤務ほか、Jリーグのチームドクターなどを歴任。2020年、埼玉県所沢市に「所沢あかだ整形外科」開院。理学療法士や鍼灸師とともに、チーム医療に務めている。日本整形外科学会認定整形外科専門医、日本体育協会公認スポーツドクター、義肢装具等適合判定医。
そもそもスポーツ障がいとは
編集部
さっそくですが、ケガとスポーツ障がいの違いは何ですか?
朱田先生
一回だけのケガは「外傷」です。他方、繰り返しの刺激や負荷によって同じ箇所に痛みなどが出る状態を「障がい」と考えてください。テニスプレイヤーなどに多い「テニス肘」やスポーツ全般に見られる“ランナー膝”、成長期の骨端核障害などが、スポーツ障がいの代表例です。しかし、初めて症状が出た「急性」なのか、再発を繰り返す「慢性」なのかは、それほど問いません。
編集部
捻挫などの“なりやすさ”もスポーツ障がいでしょうか?
朱田先生
初回の捻挫は「外傷」でしょう。ただし、関節を緩めたり、靱帯(じんたい)の感覚が薄れたりすることでたびたび再発するようになったとしたら、「スポーツ障がい」といえるのではないでしょうか。ご本人からすると、関節の緩みや感覚の鈍化には気付きません。そのことで再発しやすくなります。
編集部
スポーツを前提とすると、いわゆる「未病」も含まれますか?
朱田先生
テーピングなどで“ごまかしている”ケースも「スポーツ障がい」といえるでしょう。気付かない間に、繰り返し負荷をかけて痛めている状態が、スポーツ障がいだからですね。テーピングによって周囲の皮膚を覆いますから、引っ張られるなどして、患部周辺の皮膚感覚が全体的に向上します。スポーツ障害がある場合、関節周辺の皮膚感覚が低減していることがあり、それをテーピングが補っているイメージです。
編集部
アスリートではない一般人でも、スポーツ障がいの予防に努めるべきでしょうか?
朱田先生
私個人としては、アスリートと一般の方を分けていません。むしろ一般の方ほど、自分がどういう動きをしているのか、把握できていないと思います。なんとなくのイメージで体にかかる負担をうけとめているものの、もしかしたら、自分で思っているよりも負荷がかかりすぎているのかもしれません。スポーツ障害の予防のイメージとしては「狂いやすい時計のメンテナンス」でしょう。トップアスリートほど頻回に歯車調整をしています。一般の方でも、なるべく正しい動きへと修正が必要です。
医師以外はX線画像診断ができない
編集部
問題はどの診療科を受診すべきかです。外傷は「形成外科」というイメージがあります。
朱田先生
標ぼう科の定義としては、やけどや傷といった「外見的に見た目の良くない状態を元に戻す」のが形成外科で、主に「運動器の機能改善を担っている」のが整形外科です。しかし、スポーツに限っていえば、出血を伴う外傷も一緒に整形外科で診てもらっていいのではないでしょうか。骨や筋肉の状態も診ておくべきだからです。
編集部
であれば、スポーツ障がいの受診先は整形外科がお勧めですか?
朱田先生
スポーツ障害を治療できる場所は病院以外にもあります。ただし、接骨院に在籍する施術者は「柔道整復師」という国家資格保有者ですが、医療行為は禁じられています。たとえばX線検査や超音波検査などはできません。また、整体院は国家資格がなくても開業できます。それらを踏まえたうえで、ホームページの内容などを調べて、自分の希望する治療内容からどこへ行くべきか判断すべきでしょう。
編集部
医療行為以外だったら、医師資格の有無は問われないのですか?
朱田先生
はい。入口としては、整形外科、接骨院、整体院のいずれでも構わないでしょう。医療行為が必要なら、整形外科の受診を勧められるはずです。なお、個人的な感想ですが、いわゆる医療機関“以外”だと、X線検査や超音波検査などで診断できないため、疾患を見逃す懸念があると思います。
スポーツ医・スポーツドクターという選択肢もある
編集部
いずれにしても、受診先の選択ミスや迷いが生じそうです。
朱田先生
あくまで1つの目安ですが、「スポーツ医」という制度が、日本整形外科学会によって整えられています。スポーツ医は、医学的な知見に加えて、スポーツや競技への理解があります。一般的な医師とは異なる角度から治療するのと同時に「どうしたらスポーツを続けられるか」という角度からも検討しています。同学会の公式サイトで都道府県別のスポーツ医が探せますので、活用してみてはいかがでしょうか。
日本整形外科学会「日本整形外科学会認定スポーツ医名簿」
https://www.joa.or.jp/public/speciality_search/sports.html
編集部
「スポーツドクター」という言葉も耳にするのですが、こちらについて教えてください。
朱田先生
日本整形外科学会や日本スポーツ協会の公認する医師で、整形外科以外の医師も含むのがスポーツドクターです。アスリートに対し内科や神経外科などと一緒におこなう総合診療といったイメージでしょうか。スポーツによる怪我を治療する場合、個人でスポーツドクターの診察を受けても構いません。その際は、整形外科を掲げ、かつスポーツドクターのいる医療機関を選びましょう。
編集部
新たな選択肢が加わりましたね。
朱田先生
身近で速やかなアドバイスを求めるなら、整骨院・整体院でもいいでしょう。スポーツ指導者とのお付き合いも深いはずです。一方、早急な治療が必要で、通院のしやすさなどを加味するなら、最寄りの整形外科へ相談してください。スポーツ復帰も含めた本格的な指導を求めるなら、スポーツ医、または整形外科出身のスポーツドクターにお声かけください。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
朱田先生
新型コロナウイルスの影響でストレス解消や運動不足解消を目的に運動をはじめようという方が多いと思います。運動器のコントロールはあらゆる“感覚”を脳で受け取って処理しています。具体的には視覚、耳の平衡感覚、筋肉などの固有感覚、皮膚から得られる表在感覚の4つがあります。赤ちゃんのうちは、これらの感覚が未発達なので、満足に歩けません。では大人ならこれらが十分に発達しているのかというと、そうではないこともあるため、ケガをするのです。ぜひ事故防止の観点から、それぞれの感覚を総合的に高めてください。そのためには整形外科医にご相談ください。
編集部まとめ
スポーツ障害の迷った時の相談先は、本人が何を望んでいるかによります。気持ちのいいマッサージなのか、スポーツを中断してでも完治したいのか、なんとか大会へ進出しつつ回復を願うのか、など様々です。いずれにしても、スポーツ医やスポーツドクターという制度は大きな発見でした。それぞれ医師でありつつ「スポーツに理解がある」点が安心できます。
医院情報
所在地 | 〒359-0037 埼玉県所沢市くすのき台3丁目18-2 マルナカビレッジ壱番館 2階 |
アクセス | 西武新宿線、西武池袋線「所沢駅」東口 徒歩3分 |
診療科目 | 整形外科、リハビリテーション科 |