親知らずと歯周病の意外な関係!?
こんにちは。日本歯周病学会専門医で稲毛デンタルクリニックに所属させていただいております飯島佑斗と申します。
親知らずという言葉は聞いたことはあるでしょうか。別の言い方では智歯と言われますがみなさんは親知らずに対してどのようなイメージを持たれているでしょうか。知人から抜いた後すごい腫れて痛かったなど聞いたことはあるのではないでしょうか。親知らずというと抜かなくてはならないけど抜くのは腫れたりするし痛そうだから怖いというイメージを持たれている方は多いかと思います。
本日はそんな親知らずについて歯周病との関係も含めてお話しさせていただきたいと思います。
目次 -INDEX-
◆親知らず(智歯)とは
親知らずとは、大臼歯という奥歯の中でも一番奥に位置する歯のことで正式には第3大臼歯と言われます。その他の名称として智歯と呼ばれることもあります。正常に生えている方もいますが、生えていく途中で手前の歯に当たってしまい中途半端なところで止まってしまう方もいます。また中には親知らずが先天的に存在していない方もいます。親知らずは概ね20歳を超えてから生えてくる方が多いと言われているのでその位の年齢で生えてきてないなと感じる方は途中で止まっているか元々親知らずがないのかもしれません。
◆親知らずが原因で起こることとは
①智歯周囲炎
親知らずが手前の歯にあたってしまって生えきらずに途中でとまってしまった場合、歯槽骨からは歯はでていますが歯肉は親知らずに覆いかぶさってしまっていることが多くあります。その場合に歯と歯肉の間は狭い空洞になっているため汚れがたまりやすく汚れがずっとそこに停滞しているとその周囲の歯肉が炎症をおこしてしまいます。そうなると歯肉の腫れや痛み、歯肉から膿みがでるなどの症状を起こします。
②虫歯(齲蝕)
親知らずが生える途中で手前の第2大臼歯という歯に当たってとまったままの状態が続くと親知らずもしくは手前の第2大臼歯に虫歯ができてしまうことがあります。親知らずが虫歯になってしまった場合は親知らずを抜歯することで解決しますが、第2大臼歯が虫歯になってしまうと少し大変です。多くは第2大臼歯の深い部分(歯肉より下、場合によっては歯槽骨の中)で親知らずが接触してしまうため、その深い部分で虫歯になってしまった場合は治療が非常に複雑化するか、最悪第2大臼歯が抜歯となってしまうこともあります。
③親知らずの周囲の骨の吸収
親知らずが生える途中で手前の第2大臼歯に当たって止まってしまうと智歯周囲炎が起こることがあります。その智歯周囲炎を放置していると親知らず周囲の歯槽骨が吸収してしまうことがあります。
④親知らずの手前の歯の歯根の吸収
親知らずが第2大臼歯の歯根に当たって止まってしまっている場合に、稀に第2大臼歯の歯根という歯の根の部分を吸収してしまうことがあります。歯根が吸収してしまうことで歯の神経への細菌感染などの問題を起こしてしまうことがあります。
⑤歯列の不正
親知らずが手前の歯を圧迫することによって歯の並びがずれてくることがあります。
⑥含歯性嚢胞
身体のなかに生じた病的な袋状の病変を嚢胞(のうほう)と呼びます。その袋の中には液状の内容物が入っており、ほとんどの嚢胞は、その内側が上皮によって覆われています。含歯性嚢胞は歯の原基(歯が発生する組織)の上皮から生じる嚢胞で、その嚢胞の内側に親知らずの頭(歯冠)を含んでいます。無症状に経過し、エックス線写真撮影で偶然に発見される場合が多くみられます。無症状に経過しますが嚢胞が大きくなるにつれ歯槽骨が吸収していきます。
⑦歯の萌出異常
親知らずが邪魔になって手前の歯が生えていくのを邪魔してしまうことがあります。
⑧下顎の下顎角という部位の骨折を起こしやすい
親知らずがあることで、外傷などで下顎をつよくぶつけた際に下顎角という俗に言う”えら”といわれる部分に骨折を起こしやすいと言われています。
親知らずは必ず抜かないといけないの?
必ず抜かないといけないという訳ではありません。
斜めや横にならずに普通に生えていて上の歯としっかり咬み合わさっている場合などは抜かずにそのまま様子をみます。しかし上記のような親知らずが原因で何らかの問題が生じている場合に関しては抜歯を検討したほうが良いことが多いです。
親知らずはどうやって抜くの?
親知らずの状況によって変わりますが、歯肉に埋まっている場合は切開していく必要があります。また骨に囲まれていたり、手前の歯にぶつかって抜くスペースがない場合は骨を一部削ったり、歯を分割して少しずつ抜いていきます。最後に縫合して終わります。
歯周病と親知らず
歯周病はほとんどが歯周病を起こす細菌による感染症と言われています。歯周病は虫歯と違い、歯の周囲の歯茎(歯肉)や骨(歯槽骨)などの歯周組織と言われる部分に問題が起こります。
歯周病が進行すると歯の周囲の歯槽骨が吸収してしまうこともあります。親知らずにおいても手前の歯に当たってしまい斜めや真横の状態で止まってしまっている場合そこには深い歯周ポケットが歯周病が進行せずともできてしまいます。そこに汚れが溜まってしまい炎症を起こすと歯肉が腫れたり、痛みがでたり、その症状を放置したまま病状が進行すると親知らず周囲の歯槽骨が吸収してしまうこともあります。
親知らず周囲の歯肉に症状がでなくても徐々に歯槽骨の吸収が進んでいくこともあります。そのため気付いた時には歯周病が重度に進行していて第2大臼歯にまで影響がでてしまうこともありますので、親知らずが生え切らずに途中でとまっているなと自覚されている場合は早めに歯科医院へ受診して親知らずの状態を診てもらったほうが良いでしょう。
まとめ
今回は親知らずについてお話しをさせていただきました。親知らずは必ず抜かないといけないというわけではないですが状況によっては早期に抜歯をして親知らず以外の部分への影響を回避するべき場合もあります。そのためまずはご自身のお口の中がどういう状態かをチェックするために歯科医院へ受診し親知らずがあるのか、親知らずがあった場合はどういう状況か抜いたほうがいいのかを診てもらったほうが良いでしょう。