マウスピース矯正とは?費用や治療期間、装着のメリット・デメリットについても紹介します
マウスピース矯正とは、専用の透明な器具であるマウスピースを装着し、歯並びの矯正を行う方法です。
ワイヤーなどによる矯正とは異なり、目立ちにくい点などが魅力に挙げられます。
しかし、マウスピース矯正の場合でも、ある程度の治療期間や費用が必要です。そのため、費用や治療期間の不安から、なかなか始められない人もいるのではないでしょうか。
そこで本記事では、マウスピース矯正とはどのような方法なのかを解説します。費用・治療期間・装着のメリット・デメリットについてもご紹介するので、参考にしてください。
監修歯科医師:
熊谷 靖司(歯科医師)
目次 -INDEX-
マウスピース矯正とは
マウスピース矯正とは、歯の矯正のために使う透明なマウスピースを使用して、歯並びの矯正を行う矯正方法です。
マウスピースは、樹脂などの素材から作られており、装着することで徐々に歯を動かしていきます。
個人差はありますが、ワイヤー矯正などの他の矯正方法と比較すると痛みが少ないため、近年注目を集めている矯正方法です。
また、マウスピースはワイヤーのように硬くないため、口腔内を傷つける心配もありません。そのため、口内炎などのトラブルの心配がない点も大きな特徴です。
ワイヤーの場合であれば、歯を磨くのも大変ですが、マウスピースの場合は取り外して歯磨きが行えます。マウスピースも清潔にできるため、口腔内トラブルも防げるでしょう。
マウスピース矯正の特徴
ワイヤー矯正とは違い、マウスピース矯正は口内トラブルを起こしにくい矯正方法とご紹介しました。そのため、近年では気軽に始められることから注目を集めています。
しかし、実際にマウスピース矯正を行うのであれば、特徴・費用・治療期間などの情報の把握が必要です。
ここでは、マウスピース矯正の特徴について詳しくご紹介します。
費用相場
マウスピース矯正の費用は、厳密にいくらかかると断定することは非常に難しいです。
マウスピース矯正の費用は、条件によって変動するため、非常に幅があります。費用が変わる理由としては、次のような項目が関係します。
- 矯正の範囲
- マウスピースの素材
まず関係があるのが、矯正の範囲です。奥歯まで含めて矯正するのか、部分的に矯正を行うかによってマウスピースの形状が異なります。
そして、矯正の範囲が違えば、治療の回数や治療期間にも影響します。そのため、費用も大きく異なるでしょう。
また、マウスピースのブランドによっても費用は変わります。代表的なマウスピースとしては、インビザラインが挙げられます。
アメリカの会社が開発したマウスピースです。世界的にも主流となっており50万円以上するケースもあります。
素材によっても異なり、プラスチックや樹脂などさまざまです。そのため、費用の幅も非常に広く、相場では10万円~100万円程度はかかると考えておいた方が良いでしょう。
治療期間
治療期間についても、個人差があります。しかし、一般的には5カ月~3年程度です。
このような幅がある理由は、矯正の範囲によって異なるためです。
ワイヤー矯正のように、奥歯を含めて歯の全体を動かす治療であれば、1年半~3年程度かかるケースがあります。
一方で、一番目につく上下前歯の12本の矯正であれば、5カ月~1年3カ月程度となります。
しかし、この期間も症状により個人差があるため、必ずこの期間内で終わるとは限りません。
一般的な治療期間を踏まえたうえで、歯科医に相談してご自身の矯正治療にかかる詳細の期間を確認しましょう。
マウスピース矯正のメリット
マウスピース矯正の費用相場や治療期間についてご紹介しました。マウスピース矯正も、他の矯正同様に、高額であることには変わりません。
しかし、他の矯正方法と比較するとマウスピース矯正ならではのメリットがあります。そこで、ここではマウスピース矯正のメリットをご紹介します。
透明で目立たない
メリットのひとつが、透明で目立たないことです。ワイヤー矯正の場合は、歯の表面に装着してあるワイヤーが、口を開いた時に見えてしまい目立ってしまいます。
しかし、先述したように、マウスピースは樹脂で作られており透明です。そのため、口を開いた時でも目立ちません。
さらに、透明で目立たないことは、日常生活においても大きく影響します。
目立つワイヤー矯正などであれば、見た目の問題から仕事や学校などでストレスを感じることもあるでしょう。
しかし、マウスピースを使えば目立たないため、ストレスを見た目によるストレスを軽減できます。
思い切り笑えなかったり、人との会話で気になって集中できなかったりといった不安も少ないでしょう。
どうしても見た目が気になる時には、必要に応じて自由に取り外しも可能なので、安心して使えます。
自分で取り外しができる
ご自身で取り外しができる点も大きなメリットのひとつです。ワイヤー矯正などの場合、常時装着する必要があり、自由に取り外しはできません。
また、その他の矯正方法としてインプラントなどもありますが、自由な取り外しができるものばかりではありません。
日常生活で気を使うなど支障が出ることもあるため、ストレスに感じることもあるでしょう。
しかし、マウスピース矯正の場合は、ご自身の都合に合わせて取り外しが可能です。
そのため、友人との会話や仕事など場合によっては矯正の見た目が気になって、日常生活に支障をきたす心配が少ないです。
さらに取り外し不可能なため、清掃しにくい点が挙げられます。清潔に保てないことでストレスを感じることもあるでしょう。
一方でマウスピースであれば、取り外して隅々まで手入れができるため、清潔に保てます。
歯周病や歯肉炎の予防にもつながるため、そういった面でもストレス軽減に役立ちます。
金属アレルギーでも矯正できる
金属アレルギーの人でも矯正できる点が、大きなメリットです。ワイヤー矯正などには、金属を使用します。
そのため、金属アレルギーの人の中には、アレルギー反応を示してしまう人もいます。しかし、マウスピースは樹脂製です。
金属を使っていないため、アレルギー反応の心配がありません。かゆみや赤みなどを発生させる心配はないです。
マウスピース矯正のデメリット
マウスピースのメリットをご紹介しました。見た目の心配がないためストレスの軽減にもつながり、取り外しも自由であることから清潔に保ちやすいです。
しかし、マウスピース矯正ならではのデメリットも存在します。デメリットも把握しておかなければ、ご自身の矯正には合わない可能性もあるでしょう。
長時間装着する必要がある
長時間装着する必要がある点が、デメリットのひとつにあげられます。先述したように、取り外しが自由にできる点は、大きなメリットです。
しかし、取り外し自由だからといって好きなように取り外してよいわけではありません。適切な効果を得るには、決められた時間に従って装着する必要があります。
一般的な装着時間としては、22時間程度です。そのため、食事や歯磨き以外の時間は、常に装着し続ける必要があります。
これによって、口の違和感を覚えることがあるかもしれません。また、長時間装着によって、口内環境が荒れてしまうケースもあるでしょう。
装着中は飲食に制限がある
デメリットとしては、装着中の飲食に制限がある点も挙げられます。マウスピースは、ワイヤー矯正のように、装着中の食事を想定していません。
そのため、虫歯の原因となるようなジュースやお菓子などの摂取は基本的に不可能です。また、硬いものや歯に強い力がかかる食べ物も食べられません。
さらに、歯が敏感な人やマウスピースが原因で歯に負担がかかるようなケースでは、食事制限を受ける可能性もあります。
また、虫歯の原因にならずとも、お茶やコーヒーなどは着色の原因にもなります。そのため避ける必要があり、食事のバリエーションが減ってしまう可能性は高いです。
マウスピースのお手入れが必要
お手入れが必要な点も、デメリットのひとつに挙げられます。ぬるま湯や水で洗浄するなどのひと手間が必要です。
ご自身の歯磨きとは別に、毎日行う必要があるため、細かいお手入れは面倒と感じてしまう人には向いていないかもしれません。
また、ご自身のお手入れ以外に、定期的に専門医の調整も必要です。気軽に取り外しが可能である一方で、このようなデメリットもあるため注意しましょう。
マウスピース矯正に向いている人
マウスピースのメリットとデメリットをご紹介しました。詳細な特徴を把握できはしましたが、ご自身に合う矯正方法か判断に困っている人も多いのではないでしょうか。
そこで、ここではマウスピース矯正に向いている人をご紹介します。
装着ルールが守れる人
装着ルールが守れる人は、マウスピース矯正に向いています。先述したように、この矯正方法では、1日に22時間程度の装着が必要です。
そのため、食事や歯磨き以外は極力装着し続けなければなりません。このルールが守れない場合、正しく矯正の効果が得られない可能性があります。
きちんと矯正効果を得るためにも、装着ルールを守る必要があり、このルールを守れる人には向いているといえるでしょう。
また、その他のルールとしては、定期的な受診やお手入れも挙げられます。歯科医に指示された通りに行えるかも重要であるため、これらのルールを守れる人であれば向いています。
見た目を気にする人
見た目を気にする人にも向いています。マウスピースは透明な樹脂製であり、矯正による見た目の変化が少ないです。
ワイヤー矯正のように、笑顔になった時に見えて心配といったことも少ないため、見た目を気にする人には最適です。
友人との会話や仕事場での仕様なども、気兼ねなく使用できるでしょう。
歯を抜かずに治療したい人
歯を抜かずに治療したい人にも向いている矯正方法です。マウスピース矯正であれば、抜歯をしなくても、歯を動かすスペースが作れます。
抜歯に伴って歯列が乱れる心配を感じている人にも、この方法であれば向いているといえるでしょう。
マウスピース矯正に失敗しないために
マウスピースの矯正は向き不向きがあります。矯正を失敗させないためには、注意すべきポイントを押さえておきましょう。
ここでは、失敗を防ぐための注意点をご紹介します。
装着時間・治療計画は守ろう
失敗しないためには、まず装着時間と治療計画を守りましょう。装着時間は1日22時間程度必要です。
これよりも短時間となると、正しい矯正の効果が得られない可能性があります。食事や清掃時以外は、基本的には装着しましょう。
治療計画についても同様です。適切な矯正の効果があるように、歯科医がご自身に合わせて計画を考えているため、治療計画は徹底しましょう。
また、治療には定期的な受診も必要です。歯科医により受診頻度やタイミングなども指示されますので、必ず守りましょう。
精度の高い歯型を作れる歯科医を選ぼう
矯正を失敗させないためには、精度の高い歯型を作れる歯科医を選びましょう。この矯正方法においては、マウスピースの精度が非常に重要です。
ご自身の骨格や目標に向けて、適切な効果がある形状の器具でなければ意味がありません。そのため、精度の高い歯型を作れる歯科医を選べるかが大切です。
そのためにも、歯科医へ相談して歯科医師免許を取得しているだけでなく、マウスピース矯正の知識や実績が豊富であるかを判断しましょう。
失敗しない歯科医の選び方
矯正を失敗しないためには、歯科医の選び方も重要です。歯科医によっても、矯正治療の得意分野が異なる可能性があります。
矯正の効果を正しく得るためにも、ここでは失敗しない歯科医の選び方をご紹介します。
ネットで口コミをチェックしよう
選び方の方法としては、ネットでの口コミのチェックが有効です。過去に治療された患者様の意見・評判・治療内容・効果などを参考にできます。
特にマウスピース矯正においての口コミについては、歯科医のスキル・対応力・効果の有無などを確認できるでしょう。
また、SNSなどを使用して口コミを確認する方法も有効です。治療された患者様の経験をもとに、その歯科医のもとでの治療がご自身に合うかを判断できます。
しかし、ネット上の口コミはあくまでも個人的な意見であることを忘れてはいけません。チェックをもとに、ご自身に合うかどうかの適切な判断が大切です。
歯科医院・歯科医師の実績を確認しよう
歯科医院や歯科医師の実績を確認する方法も有効です。治療を考えている歯科医院などのホームページから、実績を確認してみましょう。
ホームページ上では、資格や経験などが記載されているケースがあります。また、口コミなども記載されていることもあるでしょう。
これらの情報を参考に、ご自身の矯正目的に合うかどうかを判断して選ぶようにしましょう。
アフターケアがしっかりあるか確認しよう
アウターケアがしっかりあるかの確認も非常に大切です。矯正は、継続的に器具を取り付けることはもちろん、定期的な調整やケアが必要です。
そのため、その都度歯科医への相談を行いながら治療を進めます。時には、トラブルや悩み事が生じる可能性も考えられます。
その際に、アウターケアがしっかりと整っている歯科医であれば、安心して治療を進められるでしょう。アフターケアが充実しているかにも注目して、歯科医を選びましょう。
マウスピース矯正におすすめの歯並び
マウスピース矯正を失敗しないためのポイントや、歯科医の選び方をご紹介しました。しかし、この矯正方法では対応できない歯並びがあります。
その場合は、他の矯正方法を選ぶ必要があります。マウスピース矯正が適した歯並びとしては次のようなものが代表的です。
- 叢生
- 空隙歯列
- 捻転歯
叢生とは、歯並びがガタガタとなっているケースです。空隙歯列とは、歯と歯の間に隙間ができています。捻転歯とは、歯がねじれている歯並びです。
ただし、上記の歯並びであっても、状態によっては他の矯正方法の方が効果が高い可能性があります。歯科医へ相談し、適している矯正方法を選びましょう。
マウスピース矯正ができない人
マウスピース矯正が向いている人がいる一方で、できない人もいます。ご自身が対応可能かどうかを知るためにも、どのような人が不可能なのかを把握しましょう。
ここでは、マウスピース矯正ができない人をご紹介します。
抜歯が必要な人
できない人の特徴としては、まず抜歯が必要な人が挙げられます。矯正において、抜歯が必要不可欠なケースは次の通りです。
- 空いているスペースがない
- 歯の根に異常がある場合
矯正には、歯並びを整えるためのスペースが必要です。現状の歯並びで、歯を動かす空きスペースが足りない場合は、抜歯が必要となります。
また、歯の根に異常がある場合も抜歯が必要です。この場合も、歯の移動に支障をきたします。そのため、異常のある歯を抜いて、歯並びを整えます。
骨格的な問題がある人
骨格的な問題がある人もできません。あごや頬の骨格に問題がある場合、骨格を変化させてかみ合わせを正す必要があります。
しかし、これはマウスピースだけでは対応できない可能性があります。骨格的な問題がある場合は、より適切な矯正や治療方法が必要となるため、歯科医との相談が大切です。
編集部まとめ
マウスピース矯正は、他の矯正とは異なり、見た目が気になりにくく金属アレルギーの人でも装着できるメリットがあります。
しかし、もちろんメリットだけでなくデメリットもあり、場合によっては向いていない人もいます。
そのため、矯正を始める前に、歯科医との相談が非常に大切です。ご自身に合った方法を選ぶためにも、まずは一度相談してみましょう。
参考文献