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歯周病になると糖尿病になるって本当?ふたつの病の不思議な関係

 更新日:2023/03/27


歯周病は長いあいだ、単に歯がなくなるだけの「口の中の病気」だと思われてきました。しかし近年の研究により、全身へ影響を及ぼすおそろしい病であることがわかってきたのです。
特に糖尿病との関係は密接で、切っても切り離せない深い相互関係にあるようです。厚生労働省によると、日本人の70%以上が歯周病を患っているそうですから、多くの方にとって他人事ではありません。
歯周病と糖尿病の関係性や、それぞれの体におよぼす影響について、Medical DOC編集部がお届けします。
この記事の監修ドクター:
古畑 和人 歯科医師 古畑歯科医院 院長

 歯周病の特徴

歯周病は日本人に多い病気といえるでしょう。20代でも有病率は70%、60代以上はなんと90%にもなるというのですから、ほとんどの方が気をつけなくてはならない、身近な病気ですよね。

歯周病の症状

歯周病は細菌に感染することによって起こる歯の病気で、最初のうちは歯肉(歯ぐき)が炎症を起こして赤くなったり腫れたりします。そのうち細菌が徐々に歯肉を蝕み、歯と歯肉のあいだに隙間ができ始めます。進行すると歯を支える歯肉や骨が溶けて、やがては歯が抜け落ちてしまうのです。

歯周病の原因

歯周病の原因となる菌の多くは、歯と歯ぐきのあいだの溝である「歯周ポケット」にひそんでいます。こうした歯周病菌は、歯磨きが十分でなかったり甘いものを摂りすぎたりすることで、プラークと呼ばれる細菌の塊になります。これが、徐々に歯や歯肉へ炎症をもたらすのです。

生活習慣病としての歯周病

歯周病は「生活習慣病」とされています。生活習慣病とは、自分の生活習慣が影響して発症する病気のこと。歯周病の場合は、喫煙や飲酒、ストレス、甘い物ややわらかい物ばかり食べる習慣などが関わっています。また、食べる回数の多い人は磨き残しができやすいため、歯周病になる可能性も高まるといわれています。

歯周病の治療

歯周病の原因はプラーク(細菌の塊)ですから、正しい歯磨きや治療でプラークを取り除けば歯周病は治るといわれています。生活習慣は歯周病の悪化を招くかもしれませんが、習慣そのものが歯周病の直接的な原因であるとはいえません。

 糖尿病の特徴

糖尿病とは、体内の血糖値が正常値を超えて上がりすぎてしまうことで併発する病気です。罹患予備軍も含めれば日本では約2,000万人、世界では約10人に1人がかかっているといわれ、社会問題にもなっている生活習慣病です。

糖尿病の症状

糖尿病の初期症状には、のどの渇き、頻尿、疲れやすいなどがあり、病気だとすぐわかるような自覚症状はありません。また、本当に怖いのは糖尿病によって誘発するかもしれない様々な「合併症」だといわれ、その内容は、脳梗塞から失明、肺炎、心筋梗塞、腎臓病、末梢神経障害まで、まさに全身に及びます。

糖尿病の原因

食べ物から摂取したブドウ糖などが体内に吸収されないまま血液の中に残ってしまう状態を「高血糖」といいます。糖尿病は、この「高血糖」が慢性的に続く状態のこと。したがって、一番の直接的な原因は「食べすぎ・飲みすぎ」による糖分の過剰摂取です。それに伴い、肥満や運動不足、遺伝的要因、ストレス、喫煙なども糖尿病を助長させるおそれがあります。

糖尿病の治療

例え糖尿病でも、血糖値の適正なコントロールによって症状をおさえることができます。それにはまず食事や運動といった生活習慣の改善が大切で、上がった血糖値を下げる薬を用いることもあります。

 歯周病から糖尿病への影響

ここからはふたつの病気の関連性について述べていきます。実は、「歯周病の方は、そうでない方に比べて糖尿病(あるいは糖尿病予備軍)になる確率が高い」と考えられています。どうしてでしょうか?

口から全身へ渡る歯周病菌

歯のまわりにある歯周ポケットは、その奥にある血管を通して体内とつながっています。したがって、歯周病患者のポケットにある菌は口の中にとどまっているだけではなく、血管から体の中へと運ばれていく可能性があるのです。
また、歯周病菌だけではなく、菌から放出される毒素や炎症性物質も体内へとばらまかれます。これらは、血糖値を下げる「インスリン」という体内物質を効きにくくする作用があり、糖尿病の発症や進行を促進してしまうおそれがあります。ですから、歯周病を治療することでインスリンの働きが正常に戻ったという例もあります。

歯がなくなるから起こる高血糖

また、歯周病が進行し歯を失うと、どうしてもやわらかいものばかり食べたり、よく噛めないまま飲み込んだりするようになります。すると、食後に血糖値が急上昇する「食後高血糖」を招くことにもなりかねません。こういった面からも、歯周病になると糖尿病にかかるリスクが増えるといえそうです。

 糖尿病から歯周病への影響

一方で、糖尿病にかかることで歯周病を患ってしまう場合もあるようです。実はこの歯周病、「糖尿病が引き起こす合併症のひとつ」ともいわれています。なぜ糖尿病の人が歯周病にかかりやすくなるのでしょうか?

高血糖による抵抗力の低下

糖尿病によって高血糖状態が続くと、体内の免疫力や抵抗力の低下を招き、感染症にかかりやすくなります。口の中も例外ではありません。高血糖値の人の口内では、以下のような症状があらわれます。

 乾燥して唾液が出にくい

糖尿病にかかると、浸透圧の関係で排尿が頻繁になり、口の中はカラカラに乾燥してしまいます。唾液は口内の抵抗力を高め、殺菌、浄化、組織修復などの役割も果たしてくれます。したがって、口内が渇いていると歯周病などの細菌感染のリスクが高まります。

 唾液の糖分濃度が高くなる

糖尿病の場合は、血液中だけではなく唾液にも糖分が多く含まれるようになります。プラークに糖分が与え続けられる状態となり、歯周病の発生リスクを高めてしまいます。

 血管が傷む

血糖値が高いと、体の細い血管に障害を起こします。口内にも小さな血管はたくさんありますから、血流が悪くなることで、感染症を長引かせたり自己治癒力を低下させたりするでしょう。こうした障害も歯周病の要因となりえます。

改善へのアプローチ

歯周病を治すことでインスリンの働きが元に戻りやすいと前述しましたが、「糖尿病を改善させることで歯周病が治りやすい」という結果も出ています。逆に血糖コントロールが上手くいっていないと、歯周病の治療だけを優先してもなかなか改善しにくいということですね。

 負のスパイラルが止まらなくなる前に治療&予防


歯周病と糖尿病は相互に影響し、互いの発病や進行を促進する可能性があります。そして、歯周病を患う→糖尿病を患う→歯周病がひどくなる→糖尿病がひどくなるというように、相互に作用しあいながら「エンドレスな負のスパイラルを招く」可能性も考えられます。ふたつの病気がどんどん重症化すれば、生活の質を衰えさせたり、つらい日常生活を強いられたりすることにもなりかねません。なるべく早く改善に向かわせることが大切です。
ふたつの病気の改善には、どちらも「症状をおさえる治療」と「根本的な原因を取り除くこと」の二点が重要になります。症状の治療へは各医療機関にかかってくたさい。どちらの病気も患っている場合は、医科・歯科の連携による治療が必要になってきます。
一方で根本的な原因を取り除く場合には、生活習慣の見直しが大切です。歯周病も糖尿病も「生活習慣病」ですから、生活習慣の改善によって症状の悪化を防ぐことができるのです。
正しく歯磨きをし、食べすぎや糖分の摂りすぎを避け、適度な運動をし、精神ストレスを溜めすぎないよう心がけることで、どちらの症状も改善が見込めます。予備軍以下の方なら、そもそも発病を防ぐことにもつながります。

古畑 和人 歯科医師 古畑歯科医院 院長監修ドクターのコメント
私たちが日々、患者さんと向き合う中で、歯周病とどのように付き合っていくのかは多くの患者さんに直面するテーマです。その中で、高血圧や血管障害とともに、糖尿病や自己免疫疾患といった全身疾患と歯周病の関わりを知ることは、多くの患者さんが想像している以上に大切なことです。糖尿病の患者さんは、歯周炎のリスクを高める一方、歯周炎の改善は代謝のコントロールを良くして糖尿病を改善することから、医科・歯科の双方からのアプローチが重要と考えられています。近年の保険医療制度にも、糖尿病の方の医科と歯科の連携には特別な項目が設定され、その注目の度合いが高いことが分かります。
この記事を読むことが、歯周病や糖尿病とどのように関わっていくかを考え始めるきっかけになると良いですね。そして、ぜひかかりつけの医師や歯科医師にご相談ください。 
監修ドクター:古畑 和人 歯科医師 古畑歯科医院 院長

 歯周病治療でおすすめの歯医者さん 関東編

古畑歯科医院

出典:https://doctorsfile.jp/h/179085/df/1/?page=2

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