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【漫画付き】子どもの歯茎が腫れてしまった…その原因と正しい対処法を歯科医師が解説

 更新日:2023/03/27
【漫画付き】子供の歯茎が腫れたとき――その原因と正しい対処方法

お子さんの歯を仕上げ磨きしていて、歯茎の腫れや出血に気がついた経験をお持ちの方も少なくないはずです。重ねて、子供に尋ねても、痛みを感じていなかったり、まったく的外れな返答がかえってきたりと。そんな方も多数おられるのではないでしょうか。今回は、子どもの歯ぐきトラブルの原因と正しい対処方法について、Medical DOC編集部がお届けします。

この記事の監修歯科医師
荒井 千鶴 (ポニー小児歯科クリニック 院長)

子どもの歯茎の腫れとその原因。「白い」「発熱」「痛みなし」などさまざまなケースがある

子どもの歯茎の腫れとその原因の数々

虫歯予防のために口の中のチェックはしていても、歯ぐきのケアにまで手がまわっていなかった。そういった声もよく聞こえてきます。成人していれば、歯周病を疑うこともありますが、小児の場合はなかなかそういった思いにもならないもの。

しかし、子どもであっても、歯肉に何らかのトラブルが発生する可能性はあります。歯ぐきの腫れやできものは、何らかの問題が表面化したものかもしれません。成人とは少々事情が異なってきますので、保護者の理解が大変重要になります。特に痛みを訴えていなくても、常に注意を払い、ケアしていく必要があることをぜひご理解ください。ここでは、子どもの歯茎トラブルの原因をいくつか見ていきましょう。

小児特有の疾患のあらわれ

歯茎に腫れや出血が見られる場合、小児特有の疾患である可能性があります。この場合はまず、発熱の有無を確かめてみてください。歯肉が腫れ、発熱がある場合は、「ヘルペス性口内炎」の可能性があるため、小児科の受診が必要になります。

さらに、歯の根元に白いできものがある場合は、「フィステル」の恐れがあります。これは、歯の根っこに炎症が起こり、膿を出している状態。その膿の出口としてできた、歯ぐきのできものがフィステルです。転んだり物にぶつかったりした際の外傷、虫歯治療の際の不十分な消毒、歯肉炎などが、その原因。フィステルがあっても痛みがないケースが多いようですが、違和感があったり、口臭の原因になることもあります。痛みがないからと放置すると、膿の袋がその周囲の歯の根を溶かしたり、神経が駄目になってしまうこともあるため、早急に小児歯科を受診してください。

体調不良、ストレスのあらわれ

子どもにとっても、体調不良やストレスは避けられるものではありません。入学や転校、新学期、友達との関係などがきっかけで、大きなストレスを抱える場合があります。

こうしたストレスや睡眠不足、体力の低下が、原因かもしれません。抵抗力や免疫力が落ち、トラブルが起こりやすくなるのです。この場合は治療が必要なわけではありませんが、まずは歯科医院を受診し、他の病気の可能性がないとはっきりさせることが重要です。

歯肉炎のあらわれ

細菌の塊である歯垢は、歯肉の炎症を引き起こします。一般には、「歯周病」という言葉で知られていますが、歯周病の中で骨まで溶けてしまったものを「歯周炎」、歯ぐきの炎症だけにとどまったものを「歯肉炎」と言います。

当初の歯肉炎を放置したものが、歯周炎になるわけですが、小児の場合は歯肉炎の段階でとどまっているケースが多数。しかし歯肉炎は歯周炎の一歩手前という危機感を持って歯科医院を受診し、対策を講じる必要があります。

歯茎が赤くかかったり、ぶよぶよだったりしたら歯肉炎の可能性。3つの原因と若年性歯周炎を解説

子供の健康な歯茎は、薄いピンク色で引き締まっています。歯間部分が直線的な三角形をしているのが、その健康の証。しかし、いったん歯肉炎を起こせば、ピンク色から赤色に。腫れあがってしまうため、歯間部分も膨らんで、丸みを持ってきます。また、食事をしたり歯磨きをしたりといった行為で、出血する可能性もあります。ここでは、歯肉炎を引き起こす原因と、それが悪化した状態を順に見ていきましょう。

歯磨きが充分でないことが原因の歯肉炎

歯磨きが充分なものではなく、歯垢が溜まってしまった結果引き起こされる歯肉炎を、「不潔性歯肉炎」と言います。子どもの場合は、歯磨きの際の力加減がわからず力が入りすぎた結果、歯肉が傷ついてしまうことも。それに加えて、歯が磨けていないことで口内の細菌が増加し、傷に細菌が感染するケースが多くなるのです。

歯肉の傷に細菌が感染すると、歯肉炎になります。歯肉炎が原因で腫れや痛み、出血などの症状が出ますが、そのまま放置すれば歯周炎に悪化する可能性も。まずは歯科医院を受診し、歯磨き指導を受けたり、歯ブラシを各自に合ったものに取り換えるなど、改善の方法を探っていかねばなりません。

歯が生える際に引き起こされる歯周炎

乳歯から永久歯に生え変わるときに一時的に起こりがちなのが、「萌出性歯肉炎」です。これは、永久歯の奥歯が生える場合に多く見られるもの。永久歯が完全に生えるまでに歯ぐきの中で長い間隠れ、歯磨きが難しくなることが原因です。

歯が生え変わってしまえば治まりますが、油断は大敵です。一時的なものと甘く考えず、永久歯に生え変わりつつある歯をきれいに磨けるよう、目を配る必要があります。仕上げ磨きの際は、永久歯にかぶさる歯ぐきに対して横に歯ブラシを当て、汚れをかき出すように意識してください。

思春期特有のホルモンの分泌変化が原因の歯肉炎

どれほど清潔にしていても、起こる可能性があるのが「思春期性歯肉炎」です。主な原因が歯垢にあることは変わりませんが、思春期特有のホルモンの分泌変化によって炎症が引き起こされるもので、この際もより丁寧な歯磨きが重要になります。

歯肉炎を放置した結果発症する若年性歯周炎

子どもの歯肉炎だからと何とかなるだろう。そんな考えでそのままにしておくと、30歳以下でも歯周炎を発症することがあります。これを、「若年性歯周炎」もしくは「侵襲性歯周炎」と言います。13歳から15歳ほどでも発症する可能性があり、一般的な歯周炎に比べて急速に進行することが特徴。遺伝や免疫機能の異常が関係しているとも考えられていますが、前歯と第1大臼歯周辺の歯槽骨(あごの骨)が大きく破壊されます。

子どもの歯茎の腫れへの正しい対処方法

これまでに見てきたように、腫れやできものにはさまざまな原因が考えられます。歯肉炎を歯周炎に進展させないためにも、その原因を一つひとつ見極め、正しい対処方法を講じていくことが大切になります。ここでは、さまざまな原因で発症する歯ぐきトラブルの対処方法を確かめていきましょう。

フィステルへの対処方法

フィステルの原因は、細菌による感染です。その根本的な解決は、歯の根の中を消毒し、密閉して無菌状態にすること。これを、感染根管治療と言います。しかしこの治療でわずかでも細菌が残れば、そこから細菌が増え、再発してしまうことに。

感染根管治療の結果を大きく左右するのは歯医医師の技術だとも言われていますので、まずは信頼のおける歯科医師を慎重に探すことが重要になります。

不潔性歯肉炎への対処法

不潔性歯肉炎への対処方法は、歯の周りにこびりついた歯垢を取り除いていくこと。歯科医院で歯ブラシの指導を受け、親子が一緒に取り組むことが重要です。

歯ブラシの毛先を当てるのは、歯と歯ぐきの境目。そこで歯ブラシを小刻みに動かし、しっかり磨いていきます。ここで気をつけていただきたいのは、腫れてしまった部分を強くこすりすぎないこと。強く歯ブラシを当てることで、出血や痛みが出る可能性があるからです。子どもを歯磨き嫌いにしたいためにも、ご注意ください。

萌出性歯肉炎への対処法

萌出性歯肉炎の場合は、永久歯が成長し、歯ぐきから出た段階で炎症も治まります。しかし、油断は禁物。歯周炎などに進展させないためにも、歯が生え変わるまでは、普段以上に丁寧な歯磨きを行っていきましょう。ここでも、保護者による仕上げ磨きが非常に重要になります。

思春期性歯肉炎への対処法

思春期性歯肉炎の場合も、まずは歯垢をしっかり取り除くことが改善への近道ですが、ホルモンバランスの乱れにも対応していかねばなりません。栄養バランスのとれた食事、ストレスを溜めこまないことを意識していきましょう。

若年性歯周炎への対処法

通常の歯周病に比べ、若年性歯周炎は、急激に進行することにその特徴があります。そのため、早期治療は必須。歯石を除去したり、歯磨き指導を行ったりといった一般的な歯周病治療と平行して、抗菌剤や抗生物質による薬物療法もとられます。

重症の場合は、歯肉を切開して歯石を除去するといった外科的治療を行うこともあります。治療後も、自宅でのケアと定期的な歯科検診を欠かさないようにしましょう。

歯茎が腫れている場合の応急処置

口というのは、身近な存在のようでありながら、そこで起こっている問題などはなかなか把握できないもの。子どもの口の中を覗きこんでも、歯茎の内部や歯根がどうなっているかを理解することはできません。痛みはないと言うから、それほど荒れていないから。そんな言い訳をして受診を引き延ばしていると、歯周炎にまで発展してしまう可能性も。また、治療期間も長くなってしまいます。

こうした状態を避けるためにも、普段から口の中をよく観察して少しでも違和感があった段階ですぐに何らかの対応をする必要があります。ここでは、出血などへの応急処置を見ていきましょう。

大きく腫れている場合

大きく腫れている場合は、その患部を必要以上に刺激しないよう、柔らかい歯ブラシに取り換えたり、患部を冷やすといった対処が必要になります。その際は、タオルを冷水にひたしたのち、患部に当ててください。氷などで急激に冷やすことは、血行不良や症状の悪化も予想されるため、おすすめできません。

体力の低下や疲れが顕著な場合は、安静を第一に、消化に良いものを摂るなど食生活にも気を配りましょう。お口の状態が許せば、うがい薬もしくは塩水などでうがいをすることも有効です。

痛みが伴う場合

痛みを伴っている場合は、早めの受診をおすすめします。しかし、夜間や休日など受診がかなわないときには、痛み止めの市販薬を服用して痛みに対処しましょう。

この際、15歳以下は身体が発達していないことが多いため、解熱剤として小児科で処方される「カロナール」や「ブルフェン」、「小児用バファリン」や「新セデス」といった市販薬しか服用できないことにご注意ください。

日ごろからの観察と早めの受診が重要

日ごろからの観察と早めの受診が重要

子どものお口のトラブルは予想がしづらいもの。各症状に対応できるよう、日ごろから原因や対策法を知っておくこと、毎日の観察を続けることが重要です。

お口の状態を毎日確認し、普段の状態を知ることから始めてみてください。そして、子どもたちを守るためにもしっかり観察し、少しでも違和感があれば早めに受診しましょう。こうした知識や対策が、お口を守ることにつながります。

荒井 千鶴 歯科医師 ポニー小児歯科クリニック 院長監修ドクターのコメント
ブラッシング不足でおきるのが歯周炎ですが、最近は若年性の歯周炎にかかるお子さんが増えています。
5歳くらいまでは親御さんが歯磨きや仕上げ磨きをすると思いますが、小学生以降になると親の手を離れ、自分で磨くようになり、中学生くらいになると特に歯ぐきの病気になるお子さんが多くなるようです。

保健所では1歳半健診、3歳児健診がありますが、親御さんがそこで歯に関する気付き、関心が生まれるまで時間がかかるため、歯科医院に通うことが遅れることも原因と考えます。

まだまだ、フッ素塗布の理由や価値を知らない親御さんが多いのですが「何で?いつまで?どの位の感覚で塗布が必要?」と高い意識を持っていただきたいと思います。
塗布が必要な理由は「生えたての歯は、乳歯・永久歯に関わらず弱い」からです。乳歯なら生えてから3年、永久歯は4年で成熟します。ということは、実は永久歯で言えば高校生位までは歯が弱い、ということを知らない親御さんが多いのではないでしょうか。
なので、歯が成熟するまでは 3ヵ月ごとにフッ素を塗布することが望ましいのです。

またむし歯で言えば、甘いものだけが原因でなく、様々な要因が複合して起こるものです。ここで大切なのはお子さんの口にミュータンス菌を入れないことです。特に母子感染には注意をしてください。3歳、6歳、12歳が虫歯のリスクが高い年齢ですが、まず3歳まで感染をさせないことが大事で、そこを越えると虫歯になりにくいのですが、もちろん歯磨きしなくてよいわけではありません。
いくら虫歯になりにくい歯でも、歯磨きを怠ると歯ぐきの病気である、歯肉炎、歯周病が進行してしまうからです。

当院では歯ブラシ持参で来ていただき、指導を行っています。
歯ブラシは1ヵ月ごとに替えること、フッ素が配合されている歯磨き粉の併用もいいのですが、夜は「から磨き」をすすめています。水で汚れを落として、ジェルを仕上げに使う程度で、もしくはフッ素洗口液もいい、など、お子さんの生えたての歯を守るために大切なことをお伝えしています。

ぜひ、お子さんの歯が生えたらすぐに、歯科医院に相談なさることをおすすめします。

 
監修ドクター:荒井 千鶴 歯科医師 ポニー小児歯科クリニック 院長

小児歯科でおすすめの歯医者さん 関東編

ポニー小児歯科クリニック

出典:http://www.angelicsmile-ponyshika.jp/

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休診日 火曜午前、木曜、日曜、祝日 (祝日のある週の木曜日は診療)
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