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「統合失調症」を発症するとどんな「幻覚」を感じるかご存知ですか?幻覚の特徴を解説!

 公開日:2026/05/18
「統合失調症」を発症するとどんな「幻覚」を感じるかご存知ですか?幻覚の特徴を解説!

統合失調症という言葉を聞くと、幻覚という症状を思い浮かべる方も多いかもしれません。なかでも、誰もいないのに声が聞こえる、人が見えるといった体験は、本人にとってはとても現実的であり、不安や戸惑いを伴うことがあります。
一方で、幻覚といってもその内容や現れ方はさまざまで、すべてが同じ意味を持つわけではありません。また、統合失調症における幻覚には特徴があり、ほかの病気や一時的な体調変化によるものとは異なる側面もあります。
この記事では、統合失調症における幻覚の特徴や種類、なぜ起こるのかという仕組み、そして治療や対応の考え方について解説します。

前田 佳宏

監修医師
前田 佳宏(医師)

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・和クリニック 院長
・精神科/心療内科医
・精神保健指定医
「泣きたくなったら壁を押せ」著者
大人と子どもの双方で、トラウマや愛着障害に心理療法的アプローチを用いる医師。これまでのべ3,000人以上の臨床に携わる。
島根大学医学部卒業。その後、東京大学医学部附属病院精神神経科に入局、東京警察病院や国立精神神経医療研究センター等を経て、児童精神科外来を3年間、トラウマ専門外来を2年間担当。著書『泣きたくなったら壁を押せ』(サンマーク出版、2026年)では、心理療法のプロセスを物語として描き、私たちの感情の奥にある“適応の物語”をたどった。その視点をともに探る場として、オンラインコミュニティ「しなここメイト」を主宰。cotree顧問医。産業医。日本小児精神神経学会所属。

幻覚と統合失調症の関係

幻覚と統合失調症の関係

統合失調症の幻覚とはどのような症状ですか?

統合失調症では、実際には存在しないものを現実のように感じる幻覚がみられることがあります。なかでも多いのは、誰もいないのに声が聞こえるという聴覚の幻覚です。自分の行動について話しかけてくる声や、批判するような内容が聞こえることがあります。
一方で、視覚的な幻覚が現れることもあり、人影や人物の姿として見える場合もあります。ただし、統合失調症では音に関する症状が中心となることが多く、見える幻覚だけが単独で現れるケースはそれほど多くありません。

幻覚と妄想の違いを教えてください

幻覚は、実際には存在しないものを感覚として体験する状態を指します。例えば、誰もいないのに声が聞こえる、存在しない人が見えるといったものです。
一方で妄想は、事実とは異なる内容を強く信じてしまう状態を指します。例えば、誰かに監視されている、周りの方が自分を害そうとしているといった考えを、周囲が否定しても揺らがずに信じ続ける状態です。
つまり、幻覚は感覚の異常、妄想は考え方の異常という違いがあります。

統合失調症で幻覚が生じる理由を教えてください

統合失調症では、脳内の情報処理や神経伝達のバランスが崩れることで、外界からの刺激と内的な思考や記憶との区別がつきにくくなると考えられています。
その結果、自分の頭の中で生じた考えやイメージが、外から与えられたもののように感じられ、幻覚として認識されることがあります。特に聴覚の幻覚では、内的な言語活動が外からの声のように感じられる仕組みが関係しているとされています。
こうした背景には、ドパミンなどの神経伝達物質の働きの変化が関与していると考えられています。

すべての統合失調症の患者さんに幻覚が現れますか?

統合失調症の患者さんすべてに幻覚が現れるわけではありません。幻覚は代表的な症状の一つではありますが、症状の出方には個人差があります。
幻覚が目立つ場合もあれば、妄想や意欲の低下、感情の平坦化といった症状が中心となることもあります。また、経過のなかで症状の内容が変化することもあります。
そのため、統合失調症は特定の症状だけで判断されるものではなく、全体的な状態や経過を踏まえて診断される疾患です。

統合失調症でみられる幻覚の種類

統合失調症でみられる幻覚の種類

統合失調症で多くみられる幻覚を教えてください

統合失調症で最も多くみられるのは、聴覚の幻覚です。誰もいないのに声が聞こえる状態で、内容はさまざまですが、自分の行動について話す声や、批判的な声、命令するような声として感じられることがあります。

このような声は現実のものと区別がつきにくく、強い影響を受けることもあります。一方で、視覚的な幻覚として人影や人物が見える場合もありますが、頻度としては聴覚の幻覚のほうが多いとされています。

聴覚や嗅覚でも存在しないものが感じられることはありますか?

統合失調症では、視覚だけでなく、さまざまな感覚で幻覚が生じることがあります。聴覚の幻覚が代表的ですが、それ以外にも、実際には存在しないにおいを感じる嗅覚の幻覚や、触られているように感じる触覚の幻覚がみられることもあります。

嗅覚の幻覚では、焦げたにおいや薬品のようなにおいなど、現実には存在しないにおいを感じることがあります。また、触覚の幻覚では、皮膚に何かが触れている、虫がはっているように感じるといった体験がみられることがあります。
このように、幻覚は特定の感覚に限らず、複数の感覚にわたって現れることがあります。

統合失調症|幻覚への対処法

統合失調症|幻覚への対処法

統合失調症の幻覚は治療で改善しますか?

統合失調症の幻覚は、抗精神病薬を中心とした適切な治療によって軽減することがあります。また、治療開始までの未治療期間が長いほど、その後の症状や機能面が不良になりやすいことが報告されており、早期に治療へつなげることが重要と考えられています。
一方で、症状の経過には個人差があり、すぐに完全に消えるとは限りません。治療を継続することで徐々に影響が弱くなり、日常生活への支障が少なくなることもあります。
参照:『Association between duration of untreated psychosis and outcome in cohorts of first-episode patients: a systematic review』(Arch Gen Psychiatry)

幻覚に対する主な治療法を教えてください

治療の中心となるのは抗精神病薬による薬物療法です。脳内の神経伝達物質のバランスを整えることで、幻覚や妄想といった症状の改善を目指します。

これに加えて、心理社会的な支援も重要です。例えば、症状との付き合い方を学ぶ心理教育や心理療法、生活リズムを整える支援、社会復帰に向けたリハビリテーションなどが行われます。
薬物療法とこうした支援を組み合わせることで、症状の安定と生活の質の向上が期待されます。

幻覚が見えているとき、家族はどのように対応すればよいですか?

家族が幻覚を訴えているときは、まずその体験を否定せずに受け止める姿勢が大切です。本人にとっては実際に見えている、あるいは聞こえている体験であるため、強く否定すると不安や混乱が強まることがあります。
そのうえで、落ち着いた環境を整え、安心できる状況を保つことが重要です。症状の内容や頻度、変化の様子を把握しておくと、医療機関での評価にも役立ちます。

幻覚が現れたらすぐに受診した方がよいですか?

幻覚が初めて現れた場合や、急に症状が強くなった場合、日常生活に影響が出ている場合には、医療機関での評価が必要です。
特に、不安や恐怖が強い場合や、行動に影響している場合には、早めの対応が望まれます。また、発熱や意識の変化などを伴う場合には、身体的な原因が関係している可能性もあるため、速やかな対応が求められます。
症状の経過や状況を整理して受診することで、より適切な評価と対応につながります。

編集部まとめ

編集部まとめ

統合失調症における幻覚は、脳の情報処理の変化によって生じる症状の一つであり、特に聴覚の幻覚が多くみられます。実際には存在しない声や人物が現実のように感じられるため、日常生活に影響を及ぼすこともあります。
また、幻覚と妄想は異なる症状であり、感覚として体験されるのが幻覚、考えとして強く確信されるのが妄想です。さらに、すべての患者さんに幻覚が現れるわけではなく、症状の出方には個人差があります。
治療の中心は抗精神病薬による薬物療法であり、心理社会的な支援と組み合わせることで症状の安定が図られます。発症から治療までの期間が長くなるほど、その後の経過に影響することも報告されており、早期に評価と治療につなげることが重要とされています。
統合失調症における幻覚は、その方の状態を理解するための重要な手がかりの一つです。症状の特徴や経過を踏まえて全体像をとらえることが、適切な対応につながります。

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