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「1型糖尿病」を発症すると現れる症状や避けた方がいい生活習慣はご存知ですか?

 公開日:2026/02/09
「1型糖尿病」を発症すると現れる症状や避けた方がいい生活習慣はご存知ですか?

1型糖尿病は、主に小児などの若年の方に発症することの多い糖尿病です。インスリンが体内でほとんど分泌されなくなる病気で、2型糖尿病とは原因や治療の考え方が大きく異なります。本記事では、1型糖尿病の基礎知識から症状、治療法、日常生活での注意点までを解説します。

江口 瑠衣子

監修医師
江口 瑠衣子(医師)

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2009年長崎大学医学部卒業。大学病院での初期臨床研修終了後、10年以上にわたり地域の基幹病院で腎臓内科の診療に従事。患者さん一人ひとりに寄り添った医療を心がけており、現在は内科・精神科の診療を行っている。腎臓専門医。総合内科専門医。

1型糖尿病の基礎知識

1型糖尿病の基礎知識

1型糖尿病とはどのような病気ですか?

膵臓にはβ細胞と呼ばれるインスリンを出す細胞があります。インスリンとは、血液中のブドウ糖を細胞に取り込み、血糖値を一定の範囲に保つホルモンです。1型糖尿病は、膵臓にあるβ細胞が破壊され、インスリンがほとんど分泌されなくなることで、慢性的に血糖値が高くなってしまう病気です。生活習慣病の一種である2型糖尿病とは、発症の機序がまったく異なります。また、1型糖尿病は若年の方(小児)に多い病気で、発症のピークは思春期とされています。

1型糖尿病の患者数を教えてください

日本における1型糖尿病の患者さんの正確な人数はわかっていません。平成30年に報告された厚生労働科学研究班による調査の推計では、全年齢での患者数は約10〜14万人 と考えられています。1型糖尿病は毎年新しく発症する人が少ない疾患です。小児における1型糖尿病の発症率は、日本では10万人あたり年間1.4〜2.2人とされています。これは世界的に見ると少ない傾向にあります。

参考:
『インスリン分泌が枯渇した 1 型糖尿病」とは 』(厚生労働科学研究班)
『1型糖尿病』(一般社団法人 日本内分泌学会)

なぜ1型糖尿病になるのですか?

1型糖尿病は膵臓のβ細胞が壊されることで引き起こされる病気です。このβ細胞が壊される原因は完全には解明されていません。原因の一つとして、自己免疫が関わっていると考えられています。自己免疫とは、本来外敵から身体を守るために働くはずの免疫が、何らかのきっかけで自分自身の細胞を攻撃してしまうことをいいます。1型糖尿病では、この自己免疫によって誤って膵臓のβ細胞が破壊されると考えられています。

1型糖尿病の原因の約90%が自己免疫性、残りの10%が特発性(原因不明)といわれています。また、ウイルス感染が発症に関わっている可能性を示す報告もあります。関連するとされる主なウイルスは、ムンプス、麻疹、エンテロウイルスなどです。

参考:『1型糖尿病』(一般社団法人 日本内分泌学会)

1型糖尿病は遺伝しますか?

1型糖尿病は、通常は遺伝しないといわれています。ただし、疾患感受性遺伝子(病気のなりやすさに関わる遺伝子)が存在することがわかっています。具体的には、HLA遺伝子、インスリン遺伝子、CTLA4遺伝子、PTPN22遺伝子などが報告されています。これらの遺伝子を持つ患者さんでは、家族内での発症も認められます。

1型糖尿病の症状と治療法

1型糖尿病の症状と治療法

1型糖尿病の症状を教えてください

1型糖尿病の症状は、インスリンの欠乏によって血糖値が高い状態が続くことで現れます。主な症状は、のどの渇き、多飲、多尿、体重減少です。小児では、夜尿(おねしょ)で気付かれる場合があります。血糖値が高くなると尿に糖が排出されやすくなり、その影響で尿の量が増え、脱水になることがあります。 また、インスリンが不足すると、体内でエネルギーを蓄えることができなくなり、体重が減少します。全身のだるさや疲れやすさを感じる方もいます。1型糖尿病の症状は、短期間で現れることが多く、前年の健康診断などで血糖値の異常はなかったという患者さんも少なくありません。また、発症前に風邪のような症状がみられるなど、感染症を思わせる体調不良を伴う場合があります。

1型糖尿病を治療しないとどのような結果をたどりますか?

1型糖尿病を治療せずに放置すると、インスリンがほとんど分泌されない状態となり、ケトン体が産生されます。ケトン体とは、インスリンの不足によってブドウ糖を十分に使えない際に、代わりに脂肪を分解してエネルギーを得る過程で作られる物質をいいます。 ケトン体が増加すると、糖尿病ケトアシドーシスと呼ばれる危険な状態となることがあります。具体的な症状は、吐き気や腹痛、呼吸が荒くなるなどです。糖尿病性ケトアシドーシスは、意識障害や命に関わる場合があります。

1型糖尿病の治療法を教えてください

1型糖尿病の治療の基本は、インスリン療法です。1型糖尿病では体内でインスリンがほとんど分泌されなくなるため、インスリンを補う治療が欠かせません。1型糖尿病のインスリン療法は、健康な人のインスリン分泌に近づけることを目的とした強化インスリン療法が基本です。インスリン分泌には、1日を通して分泌される基礎分泌と、食事の際に分泌される追加分泌があります。強化インスリン療法ではこの分泌の2つのタイプをインスリン製剤で補います。

インスリンの投与方法には、1日に複数回注射を行う方法と、インスリンポンプを用いる方法があります。頻回注射法は、基礎分泌の役割を果たすインスリンを1日1~2回注射し、食事の前に追加分泌の役割を果たすインスリンを注射します。インスリンポンプを用いる方法では、インスリンを持続的に皮下へ注入することで基礎分泌を補います。また、食事の前には必要に応じて追加でインスリンを投与します。

1型糖尿病ではインスリン療法が中心となりますが、状況に応じてインスリン以外の薬が併用されることもあります。食後の血糖値が高くなりやすい場合には、αグルコシダーゼ阻害薬が使用されることがあります。近年では、SGLT2阻害薬と呼ばれる薬の一部が1型糖尿病にも使用できるようになりました。ただし、これらの薬は正常血糖ケトアシドーシスと呼ばれる重篤な副作用を引き起こすリスクがあるため、使用にあたって十分な注意が必要です。

さらに、膵臓移植や膵島移植などの外科的治療が行われる場合もあります。ただし、日本で行われることは少なく、一般的な治療法とはいえません。

1型糖尿病は治療を続ければ普通の生活を送ることができますか?

適切な治療を続ければ、1型糖尿病の患者さんも糖尿病ではない方と同じような日常生活を送ることができます。ただし、血糖値の管理がうまくいかないと、神経、眼、腎臓の合併症を来す可能性があります。また、動脈硬化、がん、認知症などの病気を引き起こす可能性も指摘されています。

1型糖尿病|日常生活の注意点

1型糖尿病|日常生活の注意点

1型糖尿病の人は食生活にも気を付ける必要がありますか?

1型糖尿病は、基本的に厳しい食事制限を行う必要はなく、通常の食事を摂取してよいとされています。特に、小児や成長期のお子さんの1型糖尿病では、成長に見合った十分なエネルギーを摂取しなければなりません。ただし、過食は避け、バランスの取れた食事を心がける必要はあります。1型糖尿病でも食事管理をおろそかにすると、肥満や脂質異常症、高血圧を発症する可能性は出てきます。 なお、1型糖尿病の食事では、その内容とインスリン量のバランスが重要といわれています。炭水化物は、食事をした直後の血糖値がたんぱく質や脂質に比べて短時間で上昇します。炭水化物の量を把握し、その量に合わせて食事直前のインスリン量を調整する方法もあります。

1型糖尿病の人が避けた方がよい生活習慣を教えてください

1型糖尿病の方が避けた方がよい生活習慣は、喫煙と過度の飲酒です。喫煙は動脈硬化が起こりやすくなるほか、目・腎臓・神経などの合併症の悪化につながります。加熱式タバコも電子タバコも害があるとされています。飲酒については、飲酒後に低血糖(アルコール性低血糖)を起こしやすく、脱水になる可能性も高くなります。また、酔っていると、お酒に酔っているのだろうと思ってしまい、低血糖が見逃される可能性が高まります。 また、夜更かしや不規則な生活も避けるべき習慣です。食事やインスリンのタイミングが乱れると、血糖コントロールが不安定になります。

編集部まとめ

編集部まとめ

1型糖尿病は、自己免疫などによって膵臓のβ細胞が破壊され、インスリンがほとんど分泌されなくなる疾患です。インスリン治療が生涯にわたり必要となりますが、適切な血糖コントロールと食事などの生活習慣管理により、多くの方は通常の生活を送ることができます。正しい知識を身につけ、医療機関や周囲の方と協力しながら治療を継続しましょう。

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