「PTSDの治療薬」はどんな種類がある?副作用や同時に服用してはいけない薬も解説!

心的外傷後ストレス障害(PTSD)は、極めて大きな精神的衝撃を伴う出来事によって生じる精神疾患です。PTSDは、適切な治療により症状が軽減する可能性があります。治療の中心は精神療法ですが、症状に応じて薬物療法も行われます。本記事では、PTSDの治療で使用される薬の種類や効果、副作用、服用する際の注意点などを解説します。

監修医師:
前田 佳宏(医師)
目次 -INDEX-
PTSD治療と薬物療法

PTSDの主な治療法を教えてください
PTSDの治療は、このトラウマに焦点を当てた精神療法が第一選択として推奨されています。精神療法とは、対話を通して、患者さんが自分の考え方や感情を見直し問題を理解することで、対処法をみつけ克服しようとする治療法をいいます。
PTSDにおける精神療法は、安全な環境でトラウマと向き合い、反応や思考のパターンを整理します。少しずつ不安や恐怖を軽減し、トラウマに対応できるようになることを目指します。代表的な精神療法の手法には、次のようなものがあります。
- 持続エクスポージャー療法
- 認知処理療法
- EMDR(眼球運動による脱感作と再処理法)
PTSDの代表的な治療法として、精神療法のほかに薬物療法があります。薬物療法は医師の判断によって、それぞれの患者さんの状態に合わせて選択されます。
PTSD治療において薬物療法はどのような位置付けですか?
PTSD治療に用いられる薬の種類と効果、副作用

PTSDの治療に用いられる薬の種類を教えてください
また、抗うつ薬の一種であるSNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)や抗精神病薬が使用されることもあります。そのほか、個別の症状に応じてさまざまな薬剤が検討されます。例えば、不眠に対しては睡眠薬、不安や緊張が強い場合には、一時的に抗不安薬が使われることもあります。
PTSDの治療薬の種類別に効果を教えてください
以下で説明する治療薬は、いずれもPTSDへの保険適用はありませんが、個別の症状に対する医師の診断に基づいて使用される薬剤です。SNRIは、セロトニンに加えてノルアドレナリンという神経伝達物質の働きも調整します。ノルアドレナリンは意欲や活力に関わります。このためSNRIは抑うつ気分、意欲の低下などに対しても効果が期待されますが、個人差があります。
抗精神病薬は、幻覚や妄想、興奮状態などを落ち着かせる薬剤です。抗精神病薬のうち、従来の抗精神病薬より副作用が出にくく、不安や気分の落ち込みにも効果が期待できる新しい世代の薬剤を非定型抗精神病薬と呼びます。PTSDではこの非定型抗精神病薬が使用されるケースがあります。
睡眠薬は、寝つきが悪い、途中で目が覚める、などの不眠に効果が期待できます。また、抗不安薬は、強い不安や緊張を一時的に和らげる作用が期待できます。
PTSDの治療薬にはどのような副作用がありますか?
また、注意が必要な副作用に、賦活(ふかつ)症候群(アクチベーションシンドローム)が挙げられます。これはSSRIやSNRIの服用開始時や増量時にみられる可能性があり、具体的な症状は次のとおりです。
- 不安
- 焦燥感
- 興奮
- 不眠
- 衝動性
- 易刺激性(刺激に過敏に反応してイライラしやすくなる)
こうした賦活症候群を考慮し、抗うつ薬は少量から開始し徐々に増量するなどの対応が取られます。また、急な薬の中止でも離脱症候群と呼ばれる病態が生じることがあります。主な症状はめまい、耳鳴り、しびれ感、頭痛、吐き気、不安などです。
このほかに、一部の抗不安薬は依存を形成しやすいとされており、慎重に使用されます。
PTSDの薬はどの程度の期間服用しますか?
参考:『PTSD の薬物療法ガイドライン:プライマリケア医のために』(一般社団法人 日本トラウマティック・ストレス学会)
このため少なくとも4~6週間は経過をみながら薬を継続します。ガイドラインでは、効果が確認された後も、症状の改善を維持するために、少なくとも1年間継続することと記載されています。なお、必ずしもガイドラインどおりではなく、個々の患者さんの状態に応じて、診療する医師の判断で調整が行われる場合があります。
PTSD|薬との付き合い方と日常生活のポイント

PTSDの薬を服用する際の注意点を教えてください
PTSDの薬と同時に服用しない方がよい薬はありますか?
また、ベンゾジアゼピン系の抗不安薬や睡眠薬は、眠気や判断力低下につながるリスクがあります。このほかにも、抗凝固薬や抗血小板薬など血液をさらさらにする薬も、SSRIとの併用に注意する必要があります。非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)も出血リスクを高める可能性があります。
PTSDの人は薬とどのように付き合えばよいのでしょうか
薬を使用することに抵抗を感じる方もいるかもしれません。しかし、PTSDの症状で苦しんだり辛い状況に置かれたりしている場合、薬物療法は大切な治療方法の一つです。副作用や不安な点など気になることがあれば医師や薬剤師に相談し、適切に使用しましょう。
編集部まとめ

PTSDの治療は、トラウマに焦点を当てた精神療法が第一選択とされています。精神療法を中心として薬物療法を併用することで、症状が和らぐ可能性があります。抗うつ薬の一種であるSSRIが使用されることがあり、再体験症状などの軽減に効果が期待できます。一方で効果が現れるまでに時間がかかること、副作用が生じる可能性があることなどを理解しておく必要があります。薬物療法と精神療法を組み合わせ、医師や支援者と協力しながら、治療に取り組みましょう。
参考文献




