溶連菌感染症は、主に喉に炎症を起こす感染症で、子どもを中心にみられます。正式にはA群β溶血性連鎖球菌による感染で、発熱や強い喉の痛みを特徴とし、学童期の急性咽頭炎の原因として知られています。園や学校など集団生活の場で広がりやすく、毎年流行の波を繰り返します。適切な治療を行えば多くは数日で症状が落ち着きますが、治療が不十分な場合には合併症につながることもあります。そのため、症状の特徴を知り、早めに受診して指示された治療を最後まで続ける姿勢が重要です。また、登園や登校を再開できる時期について悩む保護者の方も少なくありません。
この記事では、溶連菌感染症の基本的な特徴や症状、治療の考え方、家庭での感染対策、登園・登校の目安を解説します。
プロフィールをもっと見る
【出身大学】
名古屋市立大学
【経歴】
東京医療センター総合内科、西伊豆健育会病院内科、東京高輪病院感染症内科、順天堂大学総合診療科、NTT東日本関東病院予防医学センター・総合診療科を経て現職。
【資格】
医学博士、公認心理師、総合診療特任指導医、総合内科専門医、老年科専門医、認知症専門医・指導医、在宅医療連合学会専門医、禁煙サポーター
【診療科目】
総合診療科、老年科、感染症、緩和医療、消化器内科、呼吸器内科、皮膚科、整形外科、眼科、循環器内科、脳神経内科、精神科、膠原病内科
溶連菌感染症の特徴と症状

溶連菌感染症について教えてください
溶連菌感染症は、A群β溶血性連鎖球菌という細菌によって起こる感染症です。主に喉に感染して急性咽頭炎を引き起こし、発熱や強い喉の痛みを伴います。小児の咽頭炎の原因の1つで、迅速検査を用いて診断されることが一般的です。また、溶連菌による咽頭炎の経過のなかで、菌が産生する毒素の影響により発疹などの全身症状が加わることがあり、この状態は猩紅熱と呼ばれます。皮膚に感染してとびひや蜂窩織炎を起こす場合もあります。
溶連菌感染症が子どもに多い理由を教えてください
この感染症は、免疫がまだ十分に成熟していない学童期の方に起こりやすい特徴があります。保育園や学校などで集団生活を送ることで、咳や会話を通じた接触の機会が増える点も関係します。また、健康な子どもの喉に菌が一時的に存在する場合があり、流行期には感染が広がりやすくなります。
溶連菌感染症はどのように感染しますか?
主な感染経路は飛沫感染です。咳やくしゃみ、会話の際に飛び散った唾液を吸い込むことで感染します。家族間は、同じ食器を使う、タオルを共有するといった日常的な接触を通じてうつることもあります。症状が出ていなくても菌を保有している方がいるため、流行期には周囲への配慮が求められます。
溶連菌感染症の代表的な症状を教えてください
代表的な症状は、急な発熱と強い喉の痛みです。喉や扁桃が赤く腫れ、白い付着物がみられることがあります。前頸部のリンパ節が腫れて押すと痛みを感じる場合もあります。頭痛や腹痛、吐き気を伴うことがあり、全身のつらさが目立つケースもあります。咳や鼻水が目立ちにくい点は、風邪との見分けに役立つ特徴です。猩紅熱と呼ばれる状態では、発疹や舌が赤くなる変化が現れることもあります。
大人が感染した場合、症状は違いますか?
大人でも感染しますが、子どもに比べて症状が軽い場合があります。喉の痛みや発熱が中心で、発疹を伴わないケースも少なくありません。ただし、強い喉の痛みが続く、全身のだるさが目立つといった場合には、受診して検査を受けることがすすめられます。
溶連菌感染症が重症化するとどうなりますか?
溶連菌感染症で適切な治療が行われない場合、炎症が周囲に広がり、
扁桃周囲膿瘍や
中耳炎、頸部リンパ節炎などの合併症につながることがあります。これらでは、喉の痛みが強く続く、お口を開けにくくなる、耳の痛みや発熱がみられるなど、症状が長引くことがあります。
また、感染が落ち着いた後、しばらく経過してから、免疫の反応によって急性糸球体腎炎やリウマチ熱といった病気が起こることがあります。これらは頻度は高くありませんが、溶連菌感染症に関連して知られている経過であり、適切な診断と治療が行われていない場合に起こる可能性があります。
溶連菌感染症の治療と注意点

溶連菌感染症はどのように治療しますか?
溶連菌感染症の治療は、原因となる細菌に効果のある抗菌薬を内服する方法が基本です。第一選択としてはペニシリン系の抗菌薬が用いられ、医師から指示された期間、最後まで飲み切ることが重要です。服薬を開始すると、発熱や喉の痛みは数日で和らぐことが多いですが、症状が軽くなった段階で自己判断で中断すると、菌が残る可能性があります。
治療中に気を付ける生活上のポイントを教えてください
治療中は十分な休養をとり、
無理をせず身体を休めることが大切です。発熱や喉の痛みがある時期は、外出や運動を控え、睡眠時間をしっかり確保するよう心がけましょう。喉の痛みが強い場合には、刺激の少ない食事を選び、こまめな水分補給を行うことで負担が軽くなります。
抗菌薬は、症状が和らいでも自己判断で中止せず、医師から指示された回数と期間を守って内服することが重要です。飲み忘れた場合の対応や、副作用が気になる場合には、医師や薬剤師へ相談してください。また、発熱や喉の症状が落ち着いた後も、尿の色が濃くなる、むくみが出る、関節の痛みが続くといった変化がみられる場合があります。こうした体調の変化に気付いた際には、早めに医療機関へ連絡するようにしましょう。
溶連菌感染症の感染予防のポイント

溶連菌感染症はいつまで感染力がありますか?
溶連菌感染症は、
治療を始める前や
治療初期に感染力が強いと考えられています。抗菌薬を内服していない状態では、咳や会話などを通じて周囲に菌が広がりやすくなります。一方、抗菌薬の内服を開始すると、通常は
24時間ほどで感染力が大きく下がるとされています。そのため、診断後はできるだけ早く治療を始め、指示どおり内服を続けることが、家庭や集団生活での感染拡大を防ぐうえで重要です。
参照:『学校において予防すべき感染症の解説〈令和5年度改訂〉』(日本学校保健会)
家庭内でできる感染対策を教えてください
家庭内では、日常生活のなかでの基本的な対策が役立ちます。まず、手洗いをこまめに行い、石けんを使って指先や手のひらを丁寧に洗うようにしましょう。咳やくしゃみが出る場合は、マスクなどでお口を覆い、飛沫が周囲に広がらないようにします。タオルやコップ、食器の共用は避け、個別に用意することも大切です。寝具や衣類は、体調が回復するまでは分けて管理し、洗濯をこまめに行うとよいでしょう。また、室内の換気を行い、空気がこもらない環境を保つことも、家族への広がりを抑える助けになります。
登園・登校できるタイミングはいつからでしょうか
登園や登校の再開時期は、抗菌薬の内服開始から一定時間が経過し、全身状態が落ち着いているかを目安に判断します。一般的には、
抗菌薬を飲み始めて24時間以上が経過していれば周囲への感染力が低下するため、集団生活に戻ることを検討できます。ただし、元気が戻っていない場合や、食事や水分が十分にとれない状態では、無理をせず自宅での休養を続ける選択も必要です。園や学校ごとに定められた対応がある場合もあるため、登園・登校前には担任や保健担当へ確認しておくと安心感につながります。
参照:『学校において予防すべき感染症の解説〈令和5年度改訂〉』(日本学校保健会)
編集部まとめ

溶連菌感染症は、子どもを中心にみられる喉の感染症で、発熱や強い喉の痛みが主な症状です。園や学校で広がりやすい病気ですが、医療機関で診断を受け、抗菌薬による治療を行うことで多くは順調に回復します。症状が和らいでも、指示された期間は内服を続けることが重要です。
また、家庭内での手洗いや物の共用を避ける工夫は、周囲への感染を防ぐうえで役立ちます。登園・登校は、抗菌薬の内服開始後に体調が落ち着いてから判断しますが、無理をせず休養を優先する姿勢も大切です。回復後に気になる変化がみられた場合には、早めに医療機関へ相談するようにしましょう。