更年期には、女性ホルモンの減少により、心と身体にさまざまな変化が現れます。症状の出方には個人差があり、日常生活に支障をきたすようになると更年期障害と呼ばれます。一般的に閉経の前後5年間を合わせた期間が更年期とされ、必要に応じて治療が行われます。本記事では、更年期障害が起こるメカニズム、いつ頃から始まりいつまで続くのか、どのような準備ができるのかなどを解説します。
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東北大学病院 産婦人科
2019年浜松医科大学医学部医学科卒
[職歴]
2019年4月〜2021年3月 仙台厚生病院初期臨床研修医
2021年4月〜12月 石巻赤十字病院 産婦人科
2022年1月〜2023年6月 八戸市立中央市民病院 産婦人科
2023年7月〜2024年3月 東北大学病院 産婦人科
2024年4月〜2025年3月 宮城県立こども病院 産科
2025年4月〜 東北大学病院 産婦人科/東北大学大学院医学系研究科博士課程
[資格]
日本産科婦人科学会認定産婦人科専門医
厚生労働省指定 緊急避妊薬の処方にかかるオンライン診療研修 修了
厚生労働省指定 オンライン診療研修 修了
JCIMELS ベーシックコース インストラクター
[所属学会]
・日本産科婦人科学会
・日本周産期・新生児学会
・日本超音波学会
・日本人類遺伝学会
・日本産科婦人科遺伝診療学会
・日本DOHaD学会
・日本医療安全学会
更年期障害が始まる年齢の目安

更年期障害が起きるメカニズムを教えてください
更年期障害は、卵巣機能の低下によって起こります。卵巣機能が低下すると、女性ホルモンの一つであるエストロゲンが大きくゆらぎながら減少していきます。エストロゲンは、女性の卵巣でつくられるホルモンで、女性の身体の形成や妊娠に向けた身体の準備などに関与します。それ以外にも脳や心臓、骨などの多くの部位に作用し、健康を支える重要な役割を担っています。このエストロゲンの分泌量が不安定になると、さまざまな症状が現れます。また、更年期障害の発症には、エストロゲンの低下だけでなく、加齢による身体の変化、精神的な要因、仕事や家庭などの社会的な事柄など多くの要因が関わっていると考えられています。
更年期障害が始まる平均年齢は何歳ですか?
更年期は、
閉経前の5年間と閉経後の5年間を合わせた10年間と定義されています。日本人の平均的な閉経年齢は50.5歳であり、更年期は一般的に45歳から55歳頃と考えられています。このため更年期障害が始まる平均年齢は45歳頃といえます。ただし、実際には
閉経する年齢は個人差が大きく、40代前半で閉経を迎える方もいれば、50代後半で閉経を迎える方もいます。このように、更年期障害が始まる時期は
人それぞれ異なるため、年齢だけでなく、自分の身体の変化に注目することが大切です。
参照:
『更年期』( 働く女性の健康支援事業事務局 厚生労働省)
『更年期障害』( 公益社団法人 日本産科婦人科学会)
更年期障害が起きない人もいますか?
更年期を迎えたすべての女性に、日常生活に支障をきたすような強い症状が現れるわけではありません。更年期障害の症状の有無や程度には、性格や人間関係、環境要因なども関係しているといわれています。そのため、なかには、更年期に入っても大きな不調を感じない方もおり、症状の出方は人によって大きく異なります。
更年期障害が終わる年齢の目安を教えてください
更年期障害は、時間の経過とともに徐々に落ち着いてくることが多いとされています。更年期は一般的には、45歳から55歳頃といわれており、更年期障害が終わるのも55歳頃が一つの目安です。しかし、症状が続く期間には個人差があります。閉経時期に幅があるように、更年期障害が終わる時期も一概にいえず、55歳を過ぎても不調が続く可能性もあります。
更年期障害によってもたらされる心と身体の変化

更年期障害によって心はどのように変わりますか?
更年期障害による心の変化は、多くの方が経験します。更年期障害の心の症状には
不眠、イライラ、不安感、抑うつ気分、意欲の低下などが挙げられます。具体的に次のような症状がみられることがあります。感情がコントロールできず
イライラしてしまう、
何事にも意欲がわかない、急に
気分が落ち込む、ささいなことで涙が出る、などです。
女性ホルモンの変動が、うつ病の発症に関与するケースもあります。発汗、動悸、のぼせやほてり、といった身体の症状に加えてうつ病の症状がみられる場合、更年期に関連したうつの可能性があります。
更年期障害で生じる身体の変化について教えてください
更年期障害で生じる身体の変化の代表的なものが、
ホットフラッシュです。急に身体が熱くなり、ほてりや発汗、動悸、めまい、頭痛などの症状があらわれます。外出先や仕事中などに関わらず急に発生するため、日常生活に支障をきたす場合があります。そのほかの身体の症状は次のとおりです。
- めまい、頭痛
- 動悸、息切れ
- 肩こり、腰や背中の痛み、関節の痛み
- 食欲不振、吐き気
- 便秘、下痢
このほかにも、冷え、しびれ、疲れやすさ、萎縮性膣炎や性交時の痛み、頻尿や尿もれ、外陰部の違和感などが挙げられます。ただし、すべての症状が現れるわけではなく、人によってどのような症状が出るかや、その程度は大きく異なります。いくつかの症状が重なって出現したり、日によって違う症状が出たりします。注意が必要なのは、これらの症状が更年期障害以外の病気でも起こりうることです。甲状腺機能異常などほかの病気が隠れている可能性もあります。
プレ更年期とはどのような状態ですか?
プレ更年期とは、正式な医学用語ではありませんが、更年期が訪れる前の心身の不調が現れ始める時期を指します。一般的に30代後半から40代半ばにかけての時期をいい、更年期に似た症状がみられるケースがあります。プレ更年期は卵巣機能はまだ残っているものの、その機能がわずかに衰え始める時期です。
更年期障害が始まる前にできる予防と準備

生活習慣の改善などで更年期障害の症状を軽減することはできますか?
はい、生活習慣の改善などは、更年期障害の症状を軽減するのに効果的です。更年期障害の治療において、生活習慣の改善は大きな柱の一つです。栄養バランスの取れた食事を心がけ、適度な運動習慣を身につけます。十分な睡眠とストレス管理も欠かせません。質のよい睡眠を確保し、リラックスする時間を持つことで、心と身体のバランスを保つことができます。これらの生活習慣の改善は、更年期障害の症状の緩和につながります。
更年期障害に向けてどのような準備をしておくべきでしょうか?
更年期障害に向けての準備は、まず、更年期について正しい知識を持つことと、自分の健康状態を把握しておくことです。更年期は誰にでも訪れる自然な過程です。更年期以降に起こりやすい骨粗鬆症や生活習慣病の予防のために、血圧測定、骨密度検査、血液検査などの健診を定期的に受けるようにします。また、更年期障害は精神症状もみられることが少なくないため、ストレス対策や自分に合ったリラックス法などを見つけておくとよいでしょう。
また、家族や周囲の身近な方に、更年期について話しておくことも有効です。理解と協力を得ることで、症状が現れたときにサポートを受けやすくなります。
更年期障害で受診するタイミングを教えてください
更年期障害の受診タイミングは、症状がつらいと感じたときです。更年期障害は、我慢する必要はありません。ほてり、のぼせ、発汗、動悸などの症状が頻繁に現れ、日常生活に支障が出るようであれば早めに受診しましょう。また、イライラや気分の落ち込みなどの精神症状が続いている場合も、早めに受診を検討してください。精神および身体の症状は、更年期障害以外の原因でみられることもあるため、医師の判断によってはほかの科の受診を検討するケースもあります。
編集部まとめ

更年期障害は、正しい知識を持ち、生活習慣の改善や適切な治療を行うことで、症状の軽減が期待できます。症状の出方や期間には個人差がありますが、早めの対策で日常生活の負担を減らし、より快適に過ごせる可能性が高まります。更年期は誰にでも訪れる自然なライフステージの一つです。更年期が訪れる前の30代後半から40代半ばにかけて、自分の心と身体の変化に目を向け、健康診断やライフスタイルの見直しを進め、準備をしておくことが大切です。次のライフステージに向けて、自分のペースで心と身体を整えていきましょう。