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「女性で更年期障害になりやすい人」の特徴はご存知ですか?【医師監修】

 公開日:2025/12/27
「女性で更年期障害になりやすい人」の特徴はご存知ですか?【医師監修】

40代から50代にかけて、ほてりやイライラ、眠れないなどの不調を感じる方は少なくありません。この時期に、誰でも起こりうる身体の変化の一つが更年期障害です。
この記事では、更年期障害の基礎知識やなりやすい方の特徴、生活習慣との関係、セルフケア、病院での治療法などを解説します。

森 亘平

監修医師
森 亘平(医師)

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東北大学病院 産婦人科

2019年浜松医科大学医学部医学科卒

 [職歴]
2019年4月〜2021年3月 仙台厚生病院初期臨床研修医
2021年4月〜12月    石巻赤十字病院 産婦人科
2022年1月〜2023年6月  八戸市立中央市民病院 産婦人科
2023年7月〜2024年3月  東北大学病院 産婦人科
2024年4月〜2025年3月  宮城県立こども病院 産科
2025年4月〜      東北大学病院 産婦人科/東北大学大学院医学系研究科博士課程

 [資格]
日本産科婦人科学会認定産婦人科専門医
厚生労働省指定 緊急避妊薬の処方にかかるオンライン診療研修 修了 
厚生労働省指定 オンライン診療研修 修了 
JCIMELS ベーシックコース インストラクター

 [所属学会]
・日本産科婦人科学会
・日本周産期・新生児学会
・日本超音波学会
・日本人類遺伝学会
・日本産科婦人科遺伝診療学会
・日本DOHaD学会
・日本医療安全学会

更年期障害の基礎知識

更年期障害の基礎知識

更年期障害とはどのような状態ですか?

加齢に伴って卵巣の働きが徐々に低下し、やがて月経が1年以上停止した状態を閉経といいます。閉経したタイミングは最後の月経がきたタイミングです。
日本では、閉経の前後5年間を更年期と呼びます。

この時期には、主に女性ホルモン(エストロゲン)の分泌がゆらぎながら減少することによって、身体や心にさまざまな変化が生じます。
そのなかで、更年期以外の特定の病気によらない不調を総じて更年期症状といい、さらにこれらの症状が強く、日常生活に支障をきたす状態が更年期障害と定義されています。

更年期障害が始まる時期の目安を教えてください

日本人女性の平均閉経年齢はおよそ50歳前後です。
そのため、更年期障害が始まる時期の目安としては、おおむね40歳代半ばと考えられます。ただし個人差が大きく、40歳代半ばより早く始まる方や、50歳代になってから症状が出始める方もいます。月経周期が短くなったり、長くなったりする周期の乱れは、更年期にさしかかるサインの一つとなることがあります。

また、40歳未満で卵巣の働きが低下する早発卵巣不全という状態になる方もいます。早発卵巣不全では、更年期障害と同様のほてりや発汗などの症状が生じる場合があります。
明らかな原因がなく、40歳前に月経が3ヶ月以上続けてみられないときは、早めに産婦人科を受診して原因を確認しましょう。

参照:
『ホルモン補充療法の正しい理解をすすめるために』(日本女性医学学会)
『早発卵巣不全』(日本内分泌学会)

更年期障害が始まるとどのような症状が現れますか?

更年期障害の症状は、血管運動神経症状、身体症状、精神症状の3つに大別されます。

血管運動神経症状とは、血管の拡張や体温調節の変化によって起こる症状で、短時間のほてりやのぼせ、発汗などが含まれます。これらの症状は、まとめてホットフラッシュとも呼ばれます。

身体症状には、めまい、耳鳴り、頭痛、吐き気、動悸、息切れ、肩こり、背中や腰の痛み、関節痛、手足のしびれなどがあります。

また、精神的な変化として、不眠、不安、気分の落ち込み、意欲の低下、イライラなどが挙げられます。

これらの症状は多岐にわたり、現れ方や組み合わせには個人差があります
さらに、甲状腺の病気やそのほかの内科疾患、耳鼻科や整形外科疾患、精神疾患などでも似た症状がみられることがあるため、症状が続くときは一度、医療機関に相談しましょう。

参照:
『更年期障害』(日本産科婦人科学会)
『よくある女性の病気【更年期女性に認められる症状】』(日本女性医学学会)

更年期障害になりやすい人の特徴

更年期障害になりやすい人の特徴

女性の更年期障害になりやすい人の特徴を教えてください

更年期障害の主な症状とされる血管運動神経症状(ほてりや発汗)は、BMI 25以上の肥満喫煙によって起こりやすくなることが知られています。

また、生まれ持った性格が更年期症状に影響を与える可能性を指摘した研究もあります。
例えば、内向的な性格や神経症傾向のある女性では、更年期症状を感じやすい傾向があるとする報告があります。

更年期障害の症状には個人差がありますか?

更年期障害の症状や程度には個人差があります
同じ年齢や閉経時期でも、症状が軽い方もいれば強く出る方もおり、内容も異なります。
これは、ホルモン分泌の変化に対する自律神経の感受性やストレス耐性、生活習慣の違いが関係しているためです。

また、職場や家庭の状況などの環境によっても、症状の感じ方が変わることがあります。
さらに、同じ方でも日によって症状の程度や内容が変わることは少なくありません。

更年期障害の長さは人によって違いますか?

更年期障害の長さにも大きな個人差があります。
ほてりや発汗などの血管運動神経症状に着目した研究では、症状の持続期間は中央値で7.4年と報告され、閉経後も中央値で4年半続いたとされています。

ただし、症状の持続には生まれ持った体質に加え、ストレスのかかり方、生活リズムの乱れ、セルフケアや治療への取り組みなど、複数の要因が関わると考えられています。そのため、短期間で落ち着く方もいれば、長く続く方もいます。

これまでの生活習慣や病歴は更年期障害の症状に影響を与えますか?

生活習慣や、これまでに抱えている病気によっては、更年期の症状の感じ方に影響する可能性があります

喫煙、運動不足、睡眠不足などの生活習慣は、ホルモンバランスや自律神経の働きが不安定になりやすく、症状を強めることがあります。
また、甲状腺疾患、糖尿病、高血圧、うつ病などの持病がある場合には、更年期の体調変化と重なって症状が重く感じられることがあります。

参照:
『Obesity, smoking, and risk of vasomotor menopausal symptoms: a pooled analysis of eight cohort studies』(American Journal of Obstetrics and Gynecology)
『The correlation between menopausal complaints and personality traits』(Perspectives in Psychiatric Care)
『The relationship between social support, stressful events, and menopause symptoms』(PLOS ONE)
『Duration of menopausal vasomotor symptoms over the menopause transition』(JAMA Intern Med)

更年期障害|セルフケアと病院での治療法

更年期障害|セルフケアと病院での治療法

更年期障害の症状をセルフケアで抑えることはできますか?

セルフケアによって、更年期障害の症状を和らげられる場合があります。
基本となるのは、運動、食事、睡眠、リラクゼーションの4つです。

運動は、ウォーキングや水泳などの有酸素運動と、ダンベル体操やスクワットなど筋肉に負荷をかけるレジスタンス運動を組み合わせると効果的です。無理のない範囲から始め、少しずつ続けることを意識しましょう。
食事面では、これさえ食べれば症状が改善するという食品は知られていません。さまざまな栄養素をバランスよく摂取することが大切です。特に、良質なたんぱく質、ビタミン、ミネラルを意識してとりましょう。

また、質のよい睡眠心身をほぐす時間を確保することも重要です。入浴やアロマの香り、お茶、自然にふれるなど、自分に合ったセルフケアを選びましょう。
ただし、症状が強くセルフケアで改善が不十分な場合には、ためらわずに医療機関で相談しましょう。

更年期障害の治療法を教えてください

更年期障害の治療は、薬物療法と非薬物療法に分けられます。

非薬物療法としては、食事、睡眠、運動などの生活習慣の改善に加えて、カウンセリングによる心理療法が用いられることがあります。
一方、症状が強い場合には薬物療法が検討されます。薬物療法には、主に以下の3つがあります。

  • ホルモン補充療法(HRT)
  • 漢方
  • 抗うつ薬、抗不安薬

HRTは、低下したエストロゲンを補う治療です。更年期症状の緩和と、閉経後に進みやすい病気を予防することが目的です。飲み薬、貼り薬、塗り薬などがあり、現在の症状や健康状態、病歴、子宮の有無、皮膚の状態などを考慮して選択されます。

漢方薬は、複数の生薬を組み合わせた薬で、更年期症状の緩和に使われることがあります。当帰芍薬散や加味逍遙散、桂枝茯苓丸などが代表的で、体質や症状に合わせて処方される場合があります。

また、精神症状が目立つ場合には、抗うつ薬や抗不安薬が用いられることもあります。

編集部まとめ

編集部まとめ

更年期障害は、どなたにも起こりうる身体の変化です。しかし、症状の現れ方や強さには個人差があり、同じ年代でも感じ方が大きく異なることがあります。
生活習慣を整えたり、セルフケアを取り入れたりすることで、負担が軽くなる場合もありますが、つらい症状が続くときは、一人で我慢せず医療機関で相談して原因を確認しましょう。自分の体調と向き合い、変化に気付くことが、これからの生活をより過ごしやすくする第一歩です。

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