【目の病気】「加齢黄斑変性の初期症状」はご存知ですか?進行すると現れる症状も解説!

加齢黄斑変性は、中高年以降に発症しうる目の病気です。視界の中心部分がぼやけたり歪んだりするなど、初期には本人が気付きにくい症状で進行することもあります。放置すれば視力低下が進み、日常生活に支障をきたすおそれがありますが、近年は治療法の進歩により早期発見と早期治療によって視力を維持あるいは改善できる可能性も出てきました。本記事ではそんな加齢黄斑変性の概要や前兆・初期症状、受診すべきサインと眼科での検査内容、さらに治療法までを解説します。

監修医師:
栗原 大智(医師)
目次 -INDEX-
加齢黄斑変性の概要

加齢黄斑変性とはどのような病気ですか?
黄斑は物の形や色を識別するのに重要な部分であり、ここが障害されると、ものが歪んで見える、視力が低下してぼやけるなどの症状が現れます。加齢黄斑変性には萎縮型と滲出型の2種類があります。以前は有効な治療が少ない病気でしたが、現在では新しい治療法により、多くの患者さんで視力の維持あるいは改善が可能になってきています。
加齢黄斑変性のリスクが高くなる世代を教えてください
そのほか、喫煙習慣のある方はない方に比べ、加齢黄斑変性のリスクが高まることが知られており、肥満や強い日光曝露、遺伝的要因なども発症リスク因子とされています。
参照:『3.高齢者と加齢黄斑変性』(日本老年医学会)
加齢黄斑変性が進行するとどうなりますか?
視力低下は徐々に進むことが多いですが、治療をしない場合、多くの患者さんで最終的な視力が0.1以下まで低下してしまいます。これは新聞の見出しや大きな文字が判別できないレベルです。
特に、滲出型加齢黄斑変性では進行が速く、網膜下で大きな出血が起これば急激に視力が悪化することもあります。
ただし、現在は適切な治療介入によって多くの場合で進行を食い止め、視力の維持あるいは向上が期待できます。よって、見えにくくなっていることを放置せず、見えにくさがあれば眼科を受診して精密検査をすることをおすすめしています。
加齢黄斑変性の前兆や初期症状

加齢黄斑変性には前兆はありますか?
自覚症状が出る前の段階では、眼科の眼底検査で黄斑部に老廃物(ドルーゼン)の蓄積が確認される場合があります。これは加齢黄斑変性の前兆の一つと考えられており、必ずしも全員が発症するわけではありませんが、将来の加齢黄斑変性の発症リスクがあります。
そのため、ドルーゼンを指摘された場合には定期的に経過を追い、喫煙している方は早めに禁煙するなど生活習慣の改善を図ることが予防につながります。なお、目がかすむ、なんとなく見えにくい、といった違和感が続く場合も加齢黄斑変性の初期にみられることがありますが、老眼や白内障などほかの目の異常とも区別がつきにくいです。そのような症状があれば、眼科を受診して精密検査を受けるようにしましょう。
加齢黄斑変性の初期症状を教えてください
また、見ている視野の中心部分が薄暗く見えたり、欠けたりする中心暗点もよくみられる症状です。具体的には、人の顔を見ても中央だけぼやけて判別しにくい、読書時に視界の真ん中が黒っぽくなり字が読めない、といった症状で気付かれることがあります。
このほか、症状が進むと色の見え方にも変化が現れ、全体に色が判別しづらくなる(色覚異常)こともあります。
初期には片目のみに症状が出てもう片方の目がカバーしてしまうため気付きにくいですが、片目ずつ確認すれば早期から異常を感じ取れることがあります。
加齢黄斑変性と同じような症状を持つ病気はありますか?
中心性漿液性脈絡網膜症では、網膜の黄斑部に液体が溜まってものが歪んだり、暗く見えたりする症状を生じます。しかし、多くは自然軽快し、加齢黄斑変性のように新生血管を伴う進行性の病態ではありません。
また、黄斑前膜や黄斑円孔といった黄斑部の別の疾患、糖尿病網膜症などでも中心部の歪みや視力低下が起こりえます。
これらは50歳未満でも発症するため、若い方で黄斑部の異常が疑われる場合はこれらの可能性を考えます。最終的な診断には眼科での精密検査が必要ですが、見え方の異常だけでは判断が難しいため、自己判断せず眼科を受診することが望ましいでしょう。
参照:『中心性漿液性脈絡網膜症』(日本眼科学会)
加齢黄斑変性のセルフチェック方法を教えてください
やり方は簡単で、普段お使いのメガネやコンタクトを着用したまま片目ずつ確認します。チャートを約30cm離して持ち、まず片方の目を手で隠して、開いている方の目で中央の黒い点を見つめます。
すべてのマス目の線がまっすぐに見えているか、途切れや欠けがないか、中心付近が暗く見える部分はないかを確認してください。同じ手順を反対の目でも繰り返します。
もし線が波打って見えたり、中心部が暗く欠けて見えるようであれば、加齢黄斑変性など何らかの目の病気が疑われます。
このセルフチェックを毎月1回行うと、加齢黄斑変性などの病気の早期発見に役立つでしょう。
加齢黄斑変性の受診サインと眼科での対応

どのような症状が現れたら眼科を受診すべきですか?
- 直線が歪んで見える
- 視野の中心に見えにくい部分がある
- 片方の目をつむると、もう片方の目の視界の見え方に異常がある
こうした症状は加齢黄斑変性のサインの可能性があり、放置すると知らぬ間に病気が進行してしまうことがあります。特に、50歳以上の方で少しでも目に違和感を覚えたら、念のため早めに眼科で検査を受けてください。早期発見できれば適切な治療によって視力を保てる可能性があります。
加齢黄斑変性が疑われるときの眼科での検査内容を教えてください
黄斑部に出血や浮腫、黄斑下に新生血管がないかなどを調べるために、必要に応じて蛍光眼底造影検査を行います。これは腕の静脈から蛍光色素剤を注射して眼底写真を連続撮影する検査で、網膜や脈絡膜の血管の漏れや異常を写し出すことができます。
また、光干渉断層計(OCT)という機器を用いた網膜断層検査も行われます。OCT検査では網膜を輪切りにした断面画像が得られ、黄斑部にむくみ(浮腫)や網膜下液の有無、網膜下に新生血管による盛り上がりがないかなどを非侵襲的に確認できます。
これらの検査結果を総合して、加齢黄斑変性の有無や種類、進行度を判断し、治療方針を決定します。
加齢黄斑変性はどのように治療しますか?
一方、滲出型加齢黄斑変性に対して現在、一般的なのが抗VEGF(抗血管内皮増殖因子)薬の硝子体内注射による治療です。これは、新生血管の成長を促すVEGFという物質の働きを抑える薬剤を眼球内に直接注射し、異常血管からの漏出や出血を止めたり縮小させたりする治療法です。そのほかに光線力学的療法やレーザー光凝固術が選択されることもあります。しかし、これら治療は実施可能な施設や医師が限られているなどの理由から、硝子体内注射に比べて行われることは限定的です。
このように滲出型に対してはさまざまな治療手段がありますが、根本的に加齢そのものを止めることはできないため、完治というより、病気と共存しながら視力を維持していくことを目標とします。
編集部まとめ

加齢黄斑変性は、高齢の方に多い目の病気で、失明原因の上位を占めています。しかし、早期に発見し適切な治療を行うことで、失明するリスクを大きく下げることが可能になってきました。初期の段階では自覚症状が乏しく見逃されがちですが、ものが歪んで見えるなど少しでも異常を感じたら年齢に関わらず眼科を受診して確認するようにしましょう。早期発見と治療が加齢黄斑変性の予後を大きく変えます。日常生活では禁煙や食生活の見直しなど目に優しい習慣を心がけ、ご自身の大切な視力を守っていきましょう。




