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「目に黒い点」が見えたら「網膜剥離」を疑った方がいいの?【医師監修】

 公開日:2025/12/20
「目に黒い点」が見えたら「網膜剥離」を疑った方がいいの?【医師監修】

視界に黒い点や糸くずのようなものが浮いて見える、飛蚊症(ひぶんしょう)という症状があります。年齢とともに現れることも多いのですが、なかには網膜剥離など重大な目の病気のサインの場合もあります。黒い点が見えると不安になりますが、どのような場合にすぐ受診すべきか判断が難しいこともあります。本記事では、黒い点と網膜剥離の関係や見え方の特徴、さらに黒い点が見えるそのほかの病気や受診の目安について解説します。

栗原 大智

監修医師
栗原 大智(医師)

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2017年、横浜市立大学医学部卒業。済生会横浜市南部病院にて初期研修修了。2019年、横浜市立大学眼科学教室に入局。日々の診察の傍らライターとしても活動しており、m3や日経メディカルなどでも連載中。「視界の質=Quality of vision(QOV)」を下げないため、診察はもちろん、SNSなどを通じて眼科関連の情報発信の重要性を感じ、日々情報発信にも努めている。日本眼科学会専門医。

目の黒い点と網膜剥離の関係

目の黒い点と網膜剥離の関係

網膜剥離とはどのような病気ですか?

網膜剥離は、目の奥にある網膜という神経の膜が本来貼り付いている膜(網膜色素上皮)から何らかの原因で剥がれてしまう病気です。網膜は光を感じる大切な組織で、網膜が剥がれるとその部分は光を感じられなくなります。

痛みがないため自覚しにくいものの、放置すれば症状が進行して視野が欠け、黄斑と呼ばれる網膜中央部にまで剥離が及ぶと急激な視力低下をきたし、最悪の場合失明してしまうこともあります。網膜剥離は放っておくと失明につながる危険な病気ですが、早期発見と治療によって多くの場合は重症化を避けることが可能です。

網膜剥離になると目に黒い点が見えますか?

はい、網膜剥離の初期症状の一つとして、視界に小さな黒い点やゴミのようなものが飛んで見える飛蚊症が現れることがあります。網膜が裂けたり剥がれ始めると、眼球内の硝子体に混濁や出血が生じて、小さな点や影が見えるようになるのです。

ただし、網膜剥離でも症状がまったく出ない場合もあり、黒い点が見えたからといって必ず網膜剥離とは限りませんが、突然飛蚊症が現れた場合は注意が必要です。

また、網膜剝離による飛蚊症の場合、その数が増えたり、その大きさが大きくなったりと変化していくこともあります。その場合は網膜剝離が進行している状態の可能性があり、早期に適切な治療を行う必要がある状態です。

視界に黒い点が見られるようになったら、できるだけ早めに眼科を受診して、原因をしらべてもらうのがよいでしょう。

網膜剥離で見える黒い点の形を教えてください

網膜剥離で現れる黒い点(飛蚊症)は、人によって見え方がさまざまです。小さなホコリや蚊のような点に見えたり、糸くず状や蜘蛛の巣状に見えたりすることもあります。実際、「目の前に糸くずや髪の毛のようなものが浮いて見える」「ごま粒のような黒い点がいくつも見える」など、点の形や大きさはいろいろとあります。

網膜剥離で見える黒い点以外の形と特徴

網膜剥離で見える黒い点以外の形と特徴

黒い点以外にも網膜剥離で見えるものはありますか?

網膜剥離では黒い点だけでなく、光がピカッと走るような閃光が見えることがあります。これは光視症(こうししょう)と呼ばれ、網膜が引っ張られたり裂けたりする際に生じる症状です。暗い所で光が視界の端に瞬間的に見え、黒い点と同様に網膜剥離の重要な初期症状です。

また、網膜剥離が進行すると黒い影が視野の一部にかかる(視野欠損)ようになります。視界の端からカーテンが降りてくるように一部が見えなくなる感じや、視野の一部が急に暗く欠ける症状が現れます。このように網膜剥離では、飛蚊症以外に閃光(光視症)や視野欠損などの特徴的な症状を伴うことがあります。

網膜剥離になると黒い点と同時にどのような症状が現れますか?

網膜剥離では黒い点(飛蚊症)と同時期に、閃光(光視症)を自覚することがあります。つまり、「黒い点が増えたな」と感じると同時に、「視界の隅で光が光ったように見える」といった症状が起こりえます。

また、病状が進むと先述のように視野の一部が見えにくくなったり(視野欠損)、急激な視力低下が起こることもあります。なお、網膜には痛みを感じる神経がないため、網膜剥離だけでは痛みは生じません。

網膜剥離はどのように進行するのか教えてください

網膜剥離は初期には網膜に小さな裂け目(網膜裂孔)が生じ、そこから網膜が剥がれ始めます。初期の段階では飛蚊症や光視症といった前兆症状のみで、視力自体は保たれていることも少なくありません。

しかし、一度剥がれ始めた網膜は放っておくとどんどん剥離範囲が広がり、次第に視野の一部が黒く欠ける、視野欠損の状態になります。さらに、網膜中心部である黄斑部まで剥がれると急激に視力が低下し、最終的には失明にいたることもあります。

進行スピードは裂孔の大きさや場所、年齢などによりますが、症状が出たらできるだけ早く治療しないと回復が難しくなるため、早期発見と早期手術がとても重要です。

目に黒い点が現れる網膜剥離以外の病気と受診の目安

目に黒い点が現れる網膜剥離以外の病気と受診の目安

網膜剥離以外に黒い点が見える病気はありますか?

黒い点が見える原因は網膜剥離以外にもいくつかあります。代表的なものとしては、加齢や強度近視による後部硝子体剥離があります。これは病気というより生理的現象で、中高年で硝子体が萎縮、液化する際に濁りが生じて飛蚊症が起こるものです。

一方、病気が原因で飛蚊症が生じることもあります。例えば、硝子体出血は、糖尿病網膜症や網膜静脈閉塞症などの疾患で網膜の血管が破れ、血液が硝子体内に漏れ出すことで発症します。この場合、突然視界に大量の黒い点やすすのような粒が降るように見えることがあります。出血の程度によっては視界が一部遮られることもあり、眼科的な緊急対応が必要なこともあります。

また、ぶどう膜炎と呼ばれる目の中の炎症性疾患でも、炎症により白血球や色素細胞が硝子体に浮遊し、黒い点として見えることがあります。ぶどう膜炎は感染や自己免疫異常など原因が多岐にわたり、放置すれば視力低下や合併症を引き起こすこともあるため、適切な治療が求められます。

さらに、網膜裂孔も注意すべき疾患のひとつです。これは網膜に小さな裂け目ができる状態で、裂孔から硝子体中に色素や微小な出血が流れ込み、飛蚊症として現れることがあります。特に、光視症を伴う場合は、網膜剥離の前兆である可能性もあるため、早急な診察が必要です。

そのほか、目の病気とは異なりますが、閃輝暗点(せんきあんてん)と呼ばれる片頭痛の前兆で、視界にギザギザ模様やチカチカとした光が見えることがあります。これは神経学的な現象であり、飛蚊症とは異なる視覚症状です。

このように、黒い点が見える原因には生理的なものから病的なものまで多岐にわたり、特に急激な変化や光が見える症状を伴う場合は、網膜裂孔や硝子体出血といった緊急性の高い疾患が潜んでいる可能性があります。少しでも異変を感じたら、早めに眼科で診察を受けることが大切です。

目に黒い点が見えるときはすぐに受診すべきですか?

基本的には早めに眼科を受診することをおすすめします。飛蚊症自体は必ずしも緊急性のある病気とは限りませんが、眼科医に検査してもらわないと原因の良性、悪性の判断がつかないためです。

網膜剝離だけでなく、先述した硝子体出血やぶどう膜炎などの目の病気が隠れていれば早期発見と治療が大切です。何も異常がなければそれに越したことはなく、その結果で安心することができるでしょう。

特に、黒い点の数が急に増えた場合や光が見える場合、視野の一部に欠けを感じる場合には網膜剥離などの可能性がありますので、できるだけ速やかに受診してください。

受診が必要な黒い点と様子を見てよい黒い点の違いを教えてください

黒い点のうち、すぐ受診が必要な状態は次のとおりです。

  • 黒い点の量や範囲が急に増えた
  • 暗い場所で稲妻のような光が走る
  • 視野の一部が欠けたり暗くなる

これらは網膜裂孔や網膜剥離の前兆や症状であり、放置すると視力が失われる危険があります。自己判断は禁物で、少しでもおかしいと感じたら、眼科で精密検査を受けてください。

一方で、加齢による生理的な飛蚊症など、しばらく前からある少数の黒い点が変化なく続いている場合は、緊急性は高くありません。そのような黒い点は硝子体の濁りが原因で、心配のいらないものであることが多く、治療の必要も基本的にありません。ただし、自己判断は禁物ですし、放置してよいかの判断も含め眼科医の検査を受けることが大切です。

編集部まとめ

編集部まとめ
黒い点が見える飛蚊症は、多くの場合は加齢などによる生理的な現象で、大きな心配はないことも少なくありません。しかし、突然現れた飛蚊症や増えてきた飛蚊症は網膜剥離など重大な疾患のサインである可能性があります。網膜剥離は放置すると失明につながる怖い病気ですが、初期に発見して適切に治療すれば視力を損なわずにすみます。

黒い点に気付いたとき、「歳のせいだから」と自己判断せずに、一度眼科で眼底検査を受けて原因を調べることが大切です。早期発見と治療によって網膜剥離による失明リスクを減らすことができますし、異常がなければ安心して日常を過ごせるでしょう。日頃から定期検診を受け、万一症状が現れたら迅速に対処することが、目の健康と視力を守るためには大切です。

この記事の監修医師