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「うつ病の診断書」は診断から何日でもらえる?うつ病の診断基準も解説!

 公開日:2025/12/15
「うつ病の診断書」は診断から何日でもらえる?うつ病の診断基準も解説!

うつ病で職場や学校を休む際、医療機関の診断書が必要となることがあります。しかし、診断書をどのように取得すればよいのか、発行までにどれくらいの期間がかかるのか、不安に感じる方も多いでしょう。本記事では、うつ病の診断書が必要となるシーンや取得方法、診断書に記載される内容、そして取得することで生じるデメリットなどを解説します。診断書の取得を検討している方は、ぜひ参考にしてください。

前田 佳宏

監修医師
前田 佳宏(医師)

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島根大学医学部卒業。東京大学医学部附属病院精神神経科に入局後、東京警察病院、国立精神神経医療研究センター、都内クリニックにて薬物依存症、トラウマ、児童精神科の専門外来を経験。現在は和クリニック院長。愛着障害やトラウマケアを専門に講座や情報発信に努める。診療科目は精神神経科、心療内科、精神科、神経内科、脳神経内科。 精神保健指定医、認定産業医の資格を有する。

うつ病で診断書が必要なシーンともらえるまでの流れ

うつ病で診断書が必要なシーンともらえるまでの流れ

うつ病の診断書はどのようなときに必要ですか?

うつ病の診断書は、さまざまな場面で必要となります。主に会社や学校を長期で休む際や、公的な手当・支援を申請する際に診断書が必要です。会社を休職する際に提出を求められるケースはよくみられ、休職時に診断書の提出を義務付けている企業が少なくありません。

うつ病と診断される基準を教えてください

うつ病の診断は、主に以下に示す、二つの国際的な診断基準に基づいて行われます。

  • 精神疾患の診断・統計マニュアル第5版改訂版(DSM-5-TR)
  • 国際疾病分類第11版(ICD-11)

今回はDSM-5-TRによる診断基準を解説します。以下の9つの症状項目のうち5つ以上が2週間の間ほぼ毎日続く場合に、うつ病と診断されます。なお、そのうち1つは、抑うつ気分または興味、喜びの喪失である必要があります。

  • 抑うつ気分(絶望感・虚しさ・悲しみなどを伴う強い憂鬱な気分)
  • 興味、喜びの喪失
  • 体重変化または食欲異常
  • 不眠または過眠
  • 精神運動の焦燥または制止
  • 疲労感または気力減退
  • 無価値感または過剰な罪悪感
  • 思考力や集中力の低下、または決断困難
  • 死についての反復思考や自殺企図

さらに、これらの症状がほかの疾患によって引き起こされていない、という点も重要です。

うつ病の診断書はどのように依頼すればよいですか?

診断書を取得するには、まず精神科や心療内科を受診する必要があります。診断書の申請方法は医療機関によって異なります。診察中に医師へ直接依頼する場合もあれば、受付や専用の窓口が設けられている医療機関もあります。受付する際に確認してみるとよいでしょう。診断書の利用目的と提出先を具体的に伝えることが大切です。なお、学校や会社から指定された様式がある場合は、その用紙を持参する必要があります。

うつ病の診断書がもらえるまでの所要日数を教えてください

診断書の発行までにかかる日数は、医療機関や診断書の内容によって大きく異なります。多くの医療機関では、申請から発行まで1週間~2週間程度かかるのが一般的です。大学病院などの大規模な医療機関では、2週間~3週間ほど必要となる場合もあります。

初診時に診断書をもらえるかどうかは、症状や経過によります。うつ病などの精神疾患は、症状が一定期間続いていることが診断基準となっているため、初診時に必ずしも発行されるとは限りません。医師による診断がつかなければうつ病の診断書は発行できません。基本的には医師が経過を観察し、診断が確定した後に発行されます。ただし、医師の診察や経過から初診時に診断がつく場合や、症状が重くすぐに休養が必要と医師が判断した場合などは、初診当日に発行されるケースもあります。

うつ病の診断書に書いてあること

うつ病の診断書に書いてあること

うつ病の診断書にはどのようなことが書いてありますか?

うつ病の診断書には、患者さんの氏名、性別、生年月日などの基本情報が記載されます。そのほか、診断名、症状の詳細、治療内容、必要な休養の期間の見込みなどが含まれます。期間については、症状に合わせて具体的な日付で示されることが一般的です。診断書は、休学・休職などの必要性を医学的に証明するとともに、学校や職場が適切な配慮を行うための情報を提供する役割を果たします。そのため、療養や環境調整などに必要な情報が適切に記載されます。

うつ病の診断書の記載内容には患者さんのニーズは反映されますか?

診断書の内容は、医師の医学的判断に基づいて作成されます。そのため、記載内容を患者さんが指定はできず、患者さんのニーズは反映されません。これは、診断書が医師の専門的な見解を示す公的な文書であり、事実と異なることは記載できないためです。ただし、診断書の利用目的や提出先によって、必要な記載事項が異なる場合はあります。そのため、診断書を依頼する際に、どのような目的で使用するのかを医師に伝える必要があります。医師はその情報をもとに、適切な内容を記載します。

患者さんのニーズと医学的な判断が異なる場合もあります。例えば、患者さんが休職を希望していても、医師が休職は必要ないと判断し、仕事を続けながらの治療を推奨する場合もあります。このような場合は、医師と十分に相談し治療方針を決定しましょう。

うつ病の診断書の内容を変更してもらうことはできますか?

原則として、一度発行された診断書の内容を後から変更できません。診断書の内容に誤りがある場合や、記載事項に不足がある場合は、医師に相談して修正してもらうことができます。例えば、提出先から追加の記載を求められた場合や、記載内容が実際の症状と異なる場合などは、医師に説明して対応を依頼しましょう。

ただし、医学的な根拠がない内容の変更や追記を求めることはできません。診断書は医師の専門的な判断を示す文書であり、患者さんの都合で記載事項を書き換えることはありません。症状が変化した場合や、症状が改善せず休職期間が延長になる場合などは、新たに診断書を発行してもらう必要があります。医師は定期的な診察を通じて病状の変化を確認し、必要に応じて診断書の内容を更新します。

うつ病の診断書に従って療養していても治らないことはありますか?

うつ病の診断書に従って療養していても、治らないことはあります。うつ病の治療経過は個人差があり、診断書に記載された療養期間内に必ずしも改善するとは限りません。うつ病の治療には時間がかかることも少なくなく、症状の改善には数ヶ月から1年以上を要する場合もあります。

診断書に記載される療養期間は、医師が診察時点での病状をもとに見込みを示したものです。治療経過は患者さんによって異なるため、予想よりも回復に時間がかかったり、反対に予想よりも短期間で軽快したりするケースもあります。治療を続けていても症状が思うように改善しない場合は、治療方法の見直しも検討されます。

うつ病で診断書を取得するデメリット

うつ病で診断書を取得することで患者さんに不都合が生じることはありますか?

診断書を取得することには、いくつかのデメリットがあります。まず、診断書の発行には費用がかかります。健康保険が適用されないため全額自己負担です。診断書の発行には、通常3,000~5,000円程度の費用が必要ですが、医療機関によって異なるため事前に問い合わせておくとよいでしょう。また、診断書の発行までに時間がかかることもデメリットといえます。

診断書を取得することで、将来的に民間の生命保険や医療保険に加入する際など、告知事項として申告が必要になる場合があります。保険会社によっては、精神疾患の既往歴があることで、加入が制限されたり、保険料が高くなったりする場合があります。ただし、病気の診断や治療が必要かどうかと、保険加入などへの影響は別の問題です。体調に不安がある場合は、適切な診断と治療を受けることが大切です。

うつ病の診断書を職場に提出することによるデメリットを教えてください

診断書を職場に提出することで、うつ病であることが職場(上司や人事)に知られることになります。職場での理解が得られれば適切なサポートを受けられますが、精神疾患に対する偏見や誤解により、不当な扱いを受けることを心配する方も少なくありません。ただし法律上、病気を理由とした不当な扱いは禁止されています。必要な休養を確保し、治療に専念することを優先しましょう。

また、休職後の復帰にあたって、以前とは異なる業務に配置されることもあります。負担の軽い業務への配置転換は配慮の一環ですが、患者さんの希望と異なる場合もあります。

編集部まとめ

編集部まとめ

うつ病の診断書は、休学・休職や公的支援を受けるために必要な書類です。発行までに数日~1週間程度かかることが多く、費用も発生しますが、適切な休養やサポートを得るためには欠かせません。診断書には病名や休養期間などが記載され、内容は医師の判断で決まります。取得や提出に関して不安もあるかもしれませんが、診断書を取得して療養することで、症状の悪化を防ぎ、回復を目指すことができます。気になる症状がある方は、まず心療内科や精神科を受診し、ご自身の状態について相談しましょう。

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