目次 -INDEX-

  1. Medical DOCTOP
  2. 医科TOP
  3. 病気Q&A(医科)
  4. 「緑内障を予防」することはできるの?発症のリスクを高める行動も解説!【医師監修】

「緑内障を予防」することはできるの?発症のリスクを高める行動も解説!【医師監修】

 公開日:2025/12/17
「緑内障を予防」することはできるの?発症のリスクを高める行動も解説!【医師監修】

緑内障は白内障と名前が似ていますが、白内障とは大きく異なります。緑内障は視野が欠けてくる病気で、日本の失明原因の第1位です。しかし、初期には自覚症状を感じづらいため、自分では気付きにくいとされています。現在の医療では一度進行した緑内障をもとに戻すことができないため、早期発見や予防がとても大切です。本記事では、緑内障の基礎知識や主な症状、予防につながる生活習慣のポイント、そして早期発見のための定期検診の重要性を解説します。

栗原 大智

監修医師
栗原 大智(医師)

プロフィールをもっと見る
2017年、横浜市立大学医学部卒業。済生会横浜市南部病院にて初期研修修了。2019年、横浜市立大学眼科学教室に入局。日々の診察の傍らライターとしても活動しており、m3や日経メディカルなどでも連載中。「視界の質=Quality of vision(QOV)」を下げないため、診察はもちろん、SNSなどを通じて眼科関連の情報発信の重要性を感じ、日々情報発信にも努めている。日本眼科学会専門医。

緑内障の概要

緑内障の概要

緑内障とはどのような病気ですか?

緑内障とは、目と脳をつなぐ視神経が障害されることで徐々に視野(見える範囲)が狭くなっていく病気です。初期のうちは自覚症状がなく気付かないうちに進行し、視野の一部に見えにくい部分がゆっくり広がっていきます。多くの場合、片目で欠けた視野をもう一方の目が補うため、かなり進行するまで本人は異常を感じません。

緑内障には開放隅角緑内障、正常眼圧緑内障閉塞隅角緑内障など複数の種類があります。いずれの種類でも放置すれば最終的に失明につながる可能性はありますが、早期に発見して適切に治療すれば生涯にわたり視力と視野を保つことも可能です。

緑内障の主な症状を教えてください

初期の緑内障ではほとんど症状がありません。自覚できる症状が出るのは視野欠損がかなり進行してからで、典型的なのは視野の一部が見えない、または狭くなる症状です。例えば、視界の周辺から見えにくい部分が広がったり、見えにくい箇所がぽっかりと抜け落ちたように感じたりすることがあります。ただし、視野の中心は末期まで保たれることが多く、末期になるまで視力検査で異常が出ない場合もあります。

なお、一部には急激に眼圧が上がる急性緑内障発作を起こす種類もあり、その場合は目の痛みや充血、かすみ、頭痛や吐き気などの激しい症状が突然現れることがあります。急性緑内障発作が起きた場合は短期間で失明に至る危険があるため、これらの症状を感じたら緊急で眼科を受診する必要があります。

なぜ緑内障になるのですか?

緑内障の明確な原因はまだ解明されていません。一因としては目の中の圧力である眼圧の上昇が挙げられます。通常、眼圧が20mmHg程度までの正常範囲で保たれていれば問題ありませんが、それを大きく超える高い眼圧の状態が続くと視神経が圧迫され障害を受けやすくなります。

ただし、日本人の緑内障では正常な眼圧でも発症する正常眼圧緑内障が多く、眼圧以外の要因も関与すると考えられています。そのほかのリスク要因としては、加齢による発症リスクの増加が顕著です。40歳以上では約20人に1人、60歳以上では10人に1人が緑内障を有するとされています。そのほか強度近視の方家族に緑内障患者さんがいる方も発症リスクが高いとされています。

また、ほかの病気や要因による続発緑内障というタイプもあります。具体的にはぶどう膜炎など目の炎症や糖尿病長期のステロイド薬使用目のケガなどで眼圧が上昇し緑内障を引き起こすことがあります。

以上のようにさまざまな要因が絡んで緑内障を発症すると考えられています。

参照:『よくわかる緑内障―診断と治療―』(日本眼科医会)

緑内障の予防に効果的な生活習慣

緑内障の予防に効果的な生活習慣

緑内障は予防できる病気ですか?

残念ながら完全に防ぐ方法はありません。緑内障は上記のとおり要因が一つではなく、複数の要因が絡む複雑な病気のため、「これをすれば絶対ならない」という方法は現在知られていません。

ただし、発症リスクを下げたり進行を遅らせたりするうえで、有益と考えられる習慣はいくつかあります。また、定期的な眼科検診を受けて早期発見・早期治療することが重大な視力あるいは視野障害を防ぐ対策です。

緑内障を予防するために今すぐ実践できることを教えてください

緑内障を予防するために今すぐ実践できることは下記のとおりです。

  • 禁煙と節度ある飲酒
  • 十分な休養と睡眠
  • 適度な運動習慣
  • バランスの取れた食事
  • 眼科検診を受ける

緑内障はさまざまな要因が絡んで発症します。特に、糖尿病などが原因となる続発緑内障は、生活習慣の改善が重要です。これら予防策を実践することで、糖尿病になりにくいだけではなく、その合併症として続発緑内障を避けることにつながります。

さらに、眼科での検診あるいは人間ドックなどで眼科項目の検査を受けることは、緑内障の早期発見につながります。緑内障は早期発見と早期治療で進行を防ぐことができます。これらの生活習慣を心がけ、定期的に眼科検診を受けるようにしましょう。

緑内障のリスクを高める行動はありますか?

上記とは反対に、緑内障のリスクを高める恐れがある行動として知られているものもあります。代表的なものを挙げると、喫煙や過度の飲酒は視神経の血流障害などを引き起こし、視神経を障害する可能性があります。そのため、禁煙や節度ある飲酒が大切です。そして、暴飲暴食や運動不足などは、糖尿病などの生活習慣病の原因になることもあるため、注意が必要です。

そのほか、医薬品ではステロイド薬の長期使用が副作用で眼圧を上げ、緑内障の誘因となりえます。このような薬を医師の指示なく自己判断で使用するのは避け、どうしても必要な場合も定期的に眼圧検査を受けるようにしてください。

さらに、目のケガは続発緑内障の原因となる場合がありますから、スポーツや作業時には保護メガネを装用するなどして眼球を守ることも大切です。普段からリスクの高い行動を避け、健康的な生活を送ることが緑内障予防につながります。

眼科での緑内障予防

眼科での緑内障予防

眼科での定期検診で緑内障を予防することはできますか?

定期検診によって緑内障そのものの発症を完全に防ぐことはできませんが、早期発見と早期治療によって失明など重大な視覚障害を予防することは可能です。緑内障は一度視野が欠けてしまうともとに戻す治療法がないため、症状が出る前に見つけて進行を食い止めることがとても重要です。

眼科で定期的に検査を受ければ、本人が気付かないごく初期の視神経の異常視野のわずかな欠損を発見できます。そうして早期に治療を開始すれば、進行を止めることも期待できます。逆に検診を受けず放置していると、気付いたときには視野の多くが失われて取り返しがつかないということもあります。

自覚症状の有無に関わらず、40歳以上になったら眼科検診を受けることをおすすめします。

病気ではないのに眼科を受診しても問題はありませんか?

もちろん問題ありません。特に、緑内障や糖尿病網膜症などは自覚症状の出にくい病気で、気付いたときにはかなり進行していることも少なくありません。そのため、40歳以上の方やリスク因子を持つ方は年に1回程度の眼科検診を受けるとよいでしょう。

また、健康診断の眼底検査などで異常を指摘された場合は、症状がなくても必ず精密検査を受けましょう。病気の有無に関わらず遠慮なく受診し、自分の目の状態を定期的にチェックしておきましょう。

眼科で行われる緑内障の検査について教えてください

緑内障が疑われる場合、眼科では以下のような各種検査を行います。

  • 屈折検査
  • 視力検査
  • 眼圧検査
  • 隅角検査
  • 細隙灯顕微鏡検査
  • 眼底検査
  • 光干渉断層計(OCT)
  • 視野検査

以上のように眼科では複数の検査を組み合わせて総合的に診断します。一連の検査結果から、緑内障の有無と種類、進行状況を評価します。

初期の緑内障が見つかったらどのような治療をしますか?

初期の緑内障が見つかった場合は、まずは目薬を用いて治療を行います。緑内障で一度失った視野はもとに戻すことはできません。そのため、治療の目的はこれ以上視野を失わないよう、進行を止めることです。

眼圧を下げる目薬にはさまざまな種類があります。毎日決められた回数を忘れずに点眼し、継続的に眼圧をコントロールすることで視野障害の進行を抑えます。点眼治療で目標とする眼圧まで十分下がらない場合や、目薬だけではなお視野が悪化する場合にはレーザー治療手術を検討します。

編集部まとめ

編集部まとめ

緑内障は中高年以降に誰にでも起こりうる目の病気です。日本では40歳以上の20人に1人が罹患するとされ、高齢になるほど有病率が高まります。一度発症すると治療しても失った視野は取り戻せないため、いかに早期に見つけて進行を食い止めるかが大切です。最近見え方が変だと感じたら、年齢のせいと放置せず眼科を受診しましょう。また、自覚症状がなくても40歳以上になったら、定期検診を受ける習慣を持つことをおすすめします。適切に治療すれば緑内障は失明せず一生付き合える病気です。大切な視力を守るため、早めの対策でいつまでも快適な生活を送りましょう。

この記事の監修医師