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「白内障の検査後」に気を付けるべきことは何?【医師監修】

 公開日:2025/12/06
「白内障の検査後」に気を付けるべきことは何?【医師監修】

白いかすみがかったように視界がぼやけたり、明るい場所でまぶしく感じることはありませんか?それは白内障の初期症状かもしれません。白内障とは主に加齢によって目の中のレンズ(水晶体)が濁り、視力が低下する病気です。初期は自覚症状がほとんどないため「年のせいかな」と見過ごされがちですが、進行すると視界がかすんだり強い光がまぶしく感じられたりなど日常生活に支障をきたします。本記事では白内障の基礎知識や症状、検査の内容と所要時間、検査前後の注意点や検査後の流れを解説します。

栗原 大智

監修医師
栗原 大智(医師)

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2017年、横浜市立大学医学部卒業。済生会横浜市南部病院にて初期研修修了。2019年、横浜市立大学眼科学教室に入局。日々の診察の傍らライターとしても活動しており、m3や日経メディカルなどでも連載中。「視界の質=Quality of vision(QOV)」を下げないため、診察はもちろん、SNSなどを通じて眼科関連の情報発信の重要性を感じ、日々情報発信にも努めている。日本眼科学会専門医。

白内障の基礎知識

白内障の基礎知識

白内障の症状を教えてください

白内障は初期のうちは自覚症状を感じないこともあります。しかし水晶体の濁りが進行すると、次のような症状が現れます。

  • 視界のかすみ・ぼやけ
  • 光がまぶしく感じる
  • ものが二重(三重)に見える
  • 眼鏡の度数が合わなくなる
以上のような症状が徐々に進行するため、ご本人が変化に気付きにくいこともあります。また、症状は1つのこともあれば、2つ以上のこともあります。このように「最近急に見えづらい」「明るい場所でまぶしくて物が見えにくい」などの症状に心当たりがあれば、早めに眼科を受診しましょう。

なぜ白内障になるのですか?

白内障の主な原因は加齢によるものです。 年齢とともに水晶体を構成するタンパク質が変質しやすくなり、誰でも高齢になるほど白内障になるリスクが高まります。早い方では40代から白内障が始まり、80代では検査をすれば大部分の方に白内障が見つかるほどです。

さらに、長年にわたる紫外線の蓄積も原因の一つです。強い日差しを浴び続けると水晶体が濁り、白内障の発症や進行を早めます。そのほか、糖尿病やステロイド薬の長期使用も白内障の原因です。糖尿病の方や喘息、自己免疫疾患でステロイドを常用している方は定期的に眼科検診を受けましょう。

目のケガ(外傷)や先天的要因も原因となりえます。強い衝撃で水晶体が損傷すると外傷性白内障を生じることがあり、場合によっては急速に濁りが進むことがあります。また、生まれつき水晶体が濁る先天性白内障は遺伝や胎内感染が原因で起こり、幼少期から視力に影響を及ぼします。

このように、さまざまな要因によって白内障は進行していきます。

参照:『白内障と手術』(日本眼科医会)

白内障を放置するとどうなりますか?

白内障は自然によくなることはなく、放置すれば最終的には失明してしまいます。また、白内障を長期間放置すると、手術の合併症が増える可能性があります。 水晶体が硬くなるため破砕に必要なエネルギーが増えることで、手術後に見えるようになるまでに時間がかかることがあります。また、濁った水晶体から炎症を起こして緑内障やぶどう膜炎を併発するおそれもあります。したがって、白内障と診断されたら放置せず、適切なタイミングで手術することが重要です。進行の速さには個人差がありますが、視力低下や見えにくさを自覚したら手術適応の可能性を考え、眼科医と相談して治療計画を立てましょう。

白内障の検査と診断

白内障の検査と診断

白内障の検査はどのようなときに行われますか?

白内障の検査は、視界のかすみやぼやけの自覚症状があるときに行います。しかし、視力検査や屈折検査で明らかな検索異常を認めれば、自覚症状がなくても白内障を調べる検査を行うことがあります。また、80歳以上であれば白内障はほとんどの方にありますので、自覚症状や検査で異常がなくても、白内障の検査を行うことがあります。

しかし、これらの場合も突然に白内障の検査を行うことはありません。白内障を調べるための検査はいくつかありますので、事前に白内障の可能性を伝え、それぞれの検査に進んでいきます。

白内障検査の内容を教えてください

見えにくさなどの自覚症状があれば、視力検査や屈折検査、眼圧検査を行います。その後の診察で、白内障の有無は細隙灯顕微鏡を用いれば簡単に判断することができます。しかし、見えにくさの原因がほかの目の病気の可能性もあるため、眼底検査や光干渉断層計(OCT)などの検査も併せて行います。

これら検査は簡便に行えるものが多いですが、眼底検査では瞳孔を開く検査を行うことがあり、その検査に時間を要することがあります。瞳孔を開く検査を行うと、5~6時間はピント調整が難しく、まぶしさを感じやすくなるため、車などの運転ができません。そのため、見えにくさなどの自覚症状があれば、来院時は公共交通機関の利用あるいは家族などに運転してもらうようにしてください。

白内障の検査はどの程度の時間がかかりますか?

検査内容にもよりますが、1~2時間程度と考えましょう。視力検査や眼圧検査だけなら短時間で終わりますが、散瞳して詳しく調べる場合は瞳孔が開くのに30分ほど待機時間が必要です。さらに、光干渉断層計(OCT)など複数の検査機器で細かく調べると、全体で約2時間かかることもあります。特に、手術前の検査ではさまざまな検査を行い、詳細に目の状態を確認します。患者さんによって必要な検査項目が異なるため一概にはいえませんが、少なくとも1時間以上の余裕をもって受診するとよいでしょう。また、散瞳検査を行った後は数時間ピントが合いにくくなりますので、その後の予定にもご注意ください。

白内障の診断基準を教えてください

明確な白内障の数値での診断基準はありませんが、水晶体に濁りが認められれば白内障と診断されます。 診察では細隙灯顕微鏡で水晶体の混濁の有無や程度を観察し、濁りの位置や範囲から種類を総合的に判断します。

初期で視力に影響しない軽い濁りも含めれば中高年ではかなり多くの方に白内障が見られますが、一般的には白内障によって視力低下が生じている場合に治療の対象です。また、視力検査での視力が低下していなくても、自覚症状が強いために日常生活に支障があれば白内障を行うことがあります。そのため、白内障の治療はその程度によらず、症状によることが多いので、眼科医とよく相談して決めることが大切です。

白内障検査の注意点と検査後の流れ

白内障検査の注意点と検査後の流れ

白内障検査を受ける前の注意点を教えてください

白内障検査を受ける前の事前準備はほとんど必要ありません。

ただし、白内障検査のために散瞳検査を行うと、5~6時間ほど眩しさとピントの合いづらさが続きます。その間は車やバイク、自転車の運転ができません。事故防止のため、検査当日は公共交通機関を利用するか家族に送迎をお願いしましょう。

また、コンタクトレンズは検査の妨げになることがあるため、コンタクトレンズではなく眼鏡を使うか、レンズを入れるケースを持参しましょう。

これらの点を守れば、白内障検査をスムーズに行うことができます。

白内障の検査を受けた後に気を付けることはありますか?

白内障の検査では、散瞳検査をします。散瞳検査後はしばらく見えにくい状態が続くため、安全に配慮しましょう。 瞳孔が開いた状態では5~6時間ほど手元の細かい字が読みにくく、光もまぶしく感じます。

また、スーパーでの買い物程度の外出は可能ですが、いつもと見え方が違うことを自覚して段差につまずかないよう注意するなど慎重に行動してください。できれば誰かと一緒に行動するか、見えづらい間は無理をせず休息することをおすすめします。

白内障の検査が終わった後の流れを教えてください

検査結果に基づき、医師と今後の方針を相談します。白内障があっても初期で日常生活に支障がない場合は、目薬による進行抑制と経過観察になるでしょう。白内障用の目薬は、白内障を治すものではありませんが、濁りの進行を遅らせる効果が期待できるため処方されることがあります。

一方で、自覚症状が強かったり、視力が低下していたりする場合は、白内障手術の予定をたてます。また、白内障手術を行う場合には必要な検査がいくつかあるため、その検査の日程を併せて取ります。

このように、白内障の程度と日常生活への影響によって、今後の治療計画を立てます。

編集部まとめ

編集部まとめ

白内障は加齢とともに誰にでも起こりうる身近な目の病気です。珍しい病気ではないからこそ「年だから仕方ない」と放置せず、早めに対応することが重要です。放置すれば視力低下が進み、日常生活の質が大きく損なわれてしまいます。一方、早期に発見できれば点眼治療で進行を遅らせ、適切なタイミングで手術を受けて良好な視力を取り戻すことが可能です。「最近どうも見えづらい」「眩しさで困る」といった変化に気付いたら、なるべく早く眼科で検査を受けましょう。定期的な眼科検診で目の健康状態を把握し、症状を決して放置しないことが、いつまでも快適な視力を維持するために大切です。

この記事の監修医師