「便秘を解消するツボ」は本当に効果がある?ツボの種類も解説!【医師監修】

便秘に悩む方は少なくありません。便秘は「病気ではない」「たかが便秘」と思われがちですが、長く続くとさまざまな不調を引き起こし、生活の質を低下させます。
手軽に試せる便秘の解消方法のひとつにツボ押しがあります。ツボ押しは身体の働きを整えるとされていますが、便秘にも効果が期待できるのでしょうか。
本記事では、便秘とツボの関係や、便秘の解消に期待できるツボの種類とツボの押し方、ツボ以外の簡単にできる便秘の改善方法についても解説します。

監修医師:
林 良典(医師)
消化器内科
呼吸器内科
皮膚科
整形外科
眼科
循環器内科
脳神経内科
眼科(角膜外来)
目次 -INDEX-
便秘の基礎知識

便秘の症状を教えてください
現在の日本で便秘に悩む方は多く、厚生労働省の調査では、女性の43.7%、男性の27.5%が便秘の症状を自覚していると報告されています。
便秘になると、便の回数の減少以外にもさまざまな身体の不調があらわれます。主な症状は以下のとおりです。
- 排便の回数が週に3回未満
- 便が硬く、コロコロしていて出にくい
- 排便時に強くいきむ必要がある
- 残便感があり、すっきりしない
- 下腹部の張りや痛み、ガスの増加
- 食欲の低下や吐き気
便秘は多くの場合、病気ではありませんが、長く続くと腹部の不快感や倦怠感などが起こり、日常生活や心理面に大きな影響を及ぼします。
参照:
『便通異常症診療ガイドライン2023 慢性便秘症』(日本消化管学会)
『2022(令和4)年 国民生活基礎調査の概況』(厚生労働省)
なぜ便秘になるのですか?
そのほかに考えられる便秘の主な原因には下記のようなものがあります。
- 水分や食物繊維の摂取不足
- 腸の動きや腹筋の低下
- 過度の緊張やストレス
- 便意の慢性的な我慢
- 加齢による筋肉や感覚の衰え
- 妊娠、病気や手術、薬の影響
これらの要因が重なると、便が腸内に長く留まり、硬くなって排出しにくくなります。その結果、便の回数の減少や、排便時のつらさといった症状があらわれます。
参照:
『便通異常症診療ガイドライン2023 慢性便秘症』(日本消化管学会)
『Prevalence of, and Risk Factors for, Chronic Idiopathic Constipation in the Community: Systematic Review and Meta-analysis』(American Journal of Gastroenterology)
『prevalence of Chronic Constipation and Its Associated Factors in Pars Cohort Study: A Study of 9000 Adults in Southern Iran』(Middle East J Dig Dis)
『Chronic Constipation, Irritable Bowel Syndrome With Constipation and Constipation With Pain/Discomfort: Similarities and Differences』(American Journal of Gastroenterology)
『便秘』(国立がん研究センター東病院)
便秘とツボの関係

ツボとは何ですか?
ツボは経絡(けいらく)と呼ばれる体内の気の流れの要所に位置すると考えられています。現在では、ツボ付近の組織に特別な構造があるかどうかはまだ明確ではありません。しかし、世界保健機構では、鍼灸で用いる経穴(ツボ)の国際標準部位を定め、その使用を公式に認めています。
また、最近では、科学的にツボの機能を解析する試みも行われています。例えば、鍼を刺した際の組織の硬さの変化や、筋肉、神経系への影響を計測する研究により、ツボ刺激が身体の調整効果をもたらす可能性が示されています。
ツボは日本でも古来から民間療法として利用されてきました。ただし、効果には個人差があるため、すべての方に同じように効果があらわれるわけではありません。
参照:
『経穴とは何か』(佐々木和郎)
『WHO/WPRO標準経穴部位 日本語公式版』(WHO西太平洋地域事務局 )
ツボによる便秘の解消について調べた研究は存在しますか?
例えば、冠動脈バイパス移植手術をした患者さんに対する指圧の影響を調査した研究では、ツボ刺激により排便回数が改善したと報告されています。
また、高齢や妊婦の便秘症の患者さんに対して指圧を実施した事例では、ツボ刺激が便秘の改善につながる可能性を示唆しています。
これらの研究から、ツボ刺激は便秘改善の効果が期待できることがわかります。
ツボ押しは特別な道具が不要で、ちょっとした知識があれば手軽に行えます。便秘解消のためのセルフケアのひとつとして取り入れてみるのもよいでしょう。
参照:
『Effects of acupressure on intestinal function in patients with coronary artery bypass graft surgery: a randomized clinical trial』(Gastroenterology and Hepatology from Bed to Bench)
『老健施設における便秘改善の試み −慢性便秘に対する指圧の効果−』(公益財団法人脳血管研究所)
『排便困難に対するツボ刺激の効果』(医中誌Web)
便秘の改善効果が期待できるツボの種類と場所を教えてください
| ツボの種類 | 場所 | 位置 |
|---|---|---|
| 天枢(てんすう) | お腹 | おへそから左右それぞれ指3本分外側 |
| 大巨(だいこ) | お腹 | 天枢から左右それぞれ指3本分下 |
| 合谷(ごうこく) | 手 | 手の甲側、親指と人差し指の骨の合流部のくぼみ |
| 足三里(あしさんり) | 足 | 膝を軽く曲げると、膝のお皿すぐ下に2つのくぼみがある。このうち外側の窪みから指4本分下がったところ |
| 大腸兪(だいちょうゆ) | 背中 | 腸骨稜の高さで背骨から左右それぞれ指2本分外側 |
特に手の甲にある合谷は押してみたことがある方も多いのではないでしょうか。合谷は便秘だけでなく、肩こりや頭痛などにも効果がある万能のツボと考えられています。合谷以外のツボはいずれも消化器の動きを促進する作用があるとされています。
参照:
『便秘改善』(明治東洋医学院専門学校 付属治療所)
『ヒト腸蠕動に及ぼす鍼灸刺激の効果(第2報) −刺激部位の検討−』(明治鍼灸医学)
ツボの押し方を教えてください
親指の先や腹で、ひとつのツボを2〜3回を目安に押します。1回につき6秒ほど、少しずつ圧をかけて指圧します。指を離すときも、ゆっくりと圧を抜いていきます。ツボを押している間は息をゆっくり吐くと副交感神経が優位になり、効果が高まります。
背中にあるツボを押すときは、仰向きに寝て、ゴルフボールや野球ボールなどをツボの位置に当てるとよいでしょう。
ツボの効果を高めるために、心身ともにリラックスした状態で行います。また、指圧前にツボの周辺を温めておくと血行が促進され、より効果が期待できます。
参照:
『正しいツボの押し方』(四国医療専門学校)
『ツボ刺激のやり方と注意』(明治国際医療大学)
ツボを押しても便秘が治らないときの対処法

ツボ以外に今すぐ試せる便秘を改善する方法はありますか?
まずは、水分の摂取です。1日に2リットルを目安に、こまめな水分補給を心がけましょう。体内の水分が不足すると便が硬くなり、便秘の原因となります。
また、下腹部の筋肉を鍛えることも有効です。例えば、デスクに座った状態で両足を浮かせるだけでも、下腹部の筋肉が刺激され、腸の動きをサポートします。
便秘はつらいものですが、まずはできることから試してみましょう。それでも改善がみられない場合は、医師や薬を活用することも考えてみてください。
参照:『便通異常症診療ガイドライン2023 慢性便秘症』(日本消化管学会)
便秘を改善する効果がある薬の成分を教えてください
| 種類 | 成分 | 効果、特徴 |
|---|---|---|
| 浸透圧性下剤 | 酸化マグネシウム、ラクツロース、ポリエチレングリコールなど | 腸内の水分量を増やし、便をやわらかくする |
| 刺激性下剤 | センナ、ダイオウ、ビサコジルなど | 腸のぜん動運動を促進する |
| 膨張性下剤 | カルボキシメチルセルロース、ポリカルボフィルカルシウム、サイリウムなど | 水分を吸収して膨らみ、便のかさを増やして腸を刺激し、排便を促す |
市販薬として購入できるのは、酸化マグネシウム、センナやダイオウ、サイリウムなどを含むものです。
膨張性下剤を服用する際は、水分を吸収する薬剤の特性上、十分な水分摂取が必要です。刺激性下剤は、常用すると腸の動きが鈍くなり、薬がないと排便できなくなる下剤依存を起こす可能性があります。
便秘薬を使用する際は、医師や薬剤師の指導に従い、長期的な服用は避けた方がよいでしょう。
参照:『便通異常症診療ガイドライン2023 慢性便秘症』(日本消化管学会)
便秘の予防、改善効果が期待できる生活習慣はありますか?
- 規則正しい食生活
- 適度な有酸素運動
- ストレス管理
便秘予防のため、水分だけでなく食物繊維も意識的に摂取しましょう。食物繊維は、野菜、海藻、豆類、きのこなどに多く含まれます。また、プルーンやキウイは便秘の改善に効果があると報告されています。無理のない範囲で毎日の食事にバランスよく取り入れましょう。
食後は腸の動きが活発になる時間帯です。この時間に数分便座に座っていると、便意が自然に催すこともあります。食後、本やスマートフォンを手に、毎日数分間便座に座ってみるのもよいでしょう。
適度な運動は腸の動きを促進させます。ウォーキングやジョギング、サイクリングなどで日常的に身体を動かす習慣は、便秘の改善に効果が期待できます。
参照:『便通異常症診療ガイドライン2023 慢性便秘症』(日本消化管学会)
編集部まとめ

便秘は病気ではありませんが、長く続くと心身ともにつらく、生活の質を低下させます。
便秘の改善には、日々のちょっとした工夫で効果が期待できます。まずはツボ押しや水分の摂取など、できることから取り入れてみましょう。日々の積み重ねが便通の改善につながります。
それでも便秘が続いてつらい場合は、無理をせず医師や薬の力を借りることも考えましょう。
参考文献
- 『便通異常症診療ガイドライン2023 慢性便秘症』(日本消化管学会)
- 『2022(令和4)年 国民生活基礎調査の概況』(厚生労働省)
- 『Effects of acupressure on function in patients with coronary artery bypass graft surgery: a randomized clinical trial』(Gastroenterology and Hepatology from Bed to Bench)
- 『老健施設における便秘改善の試み −慢性便秘に対する指圧の効果−』(公益財団法人脳血管研究所)
- 『正しいツボの押し方』(四国医療専門学校)
- 『ツボ刺激のやり方と注意』(明治国際医療大学)




