「痛風」を発症するとどんな「治療薬」が処方される?副作用となる症状も解説!
公開日:2025/12/01


監修医師:
林 良典(医師)
プロフィールをもっと見る
名古屋市立大学卒業。東京医療センター総合内科、西伊豆健育会病院内科、東京高輪病院感染症内科、順天堂大学総合診療科、 NTT東日本関東病院予防医学センター・総合診療科を経て現職。医学博士。公認心理師。日本専門医機構総合診療特任指導医、日本内科学会総合内科専門医、日本老年医学会老年科専門医、日本認知症学会認知症専門医・指導医、禁煙サポーター。
消化器内科
呼吸器内科
皮膚科
整形外科
眼科
循環器内科
脳神経内科
眼科(角膜外来)
消化器内科
呼吸器内科
皮膚科
整形外科
眼科
循環器内科
脳神経内科
眼科(角膜外来)
目次 -INDEX-
痛風の概要と主な治療法
痛風とはどのような病気ですか?
痛風は、高尿酸血症という状態を背景にして起こる関節の炎症性疾患です。血液中に尿酸が過剰にたまると、やがて結晶が形成されて関節に沈着します。その結晶を異物と認識した免疫細胞が炎症を引き起こすことで、関節が赤く腫れ、突然強烈な痛みが生じます。典型的には足の親指の付け根に発作が出ますが、足首や膝などに起こることもあります。発作は夜間や早朝に突然現れることが多く、痛みは数日から1週間ほど続きます。治療をせず放置すると発作を繰り返し、関節に白いしこりができる痛風結節、腎障害や尿路結石につながる危険もあります。
痛風の原因を教えてください
痛風の原因は、体質や生活習慣など複数の要因が重なり合って生じます。尿酸は、プリン体という物質が体内で代謝される過程で生じる老廃物です。プリン体は肉や魚介類、アルコールに多く含まれますが、体内でも自然に作られています。食生活でプリン体を摂り過ぎたり、肥満や運動不足によって代謝が低下したりすると、尿酸値が上がりやすくなります。また、腎機能が低下すると尿酸をうまく排泄できず、血液中にたまりやすくなります。さらに遺伝的に尿酸をため込みやすい体質の方もいて、家族に痛風を発症した方がいる場合は注意が必要です。脱水や過度の飲酒なども発作を誘発します。
病院での痛風の治療法を教えてください
痛風の治療は、大きく急性期と長期管理に分けて行います。急性期には、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)やコルヒチン、副腎皮質ステロイドを用い、まず強い痛みや炎症を抑えることが優先されます。これにより歩行や睡眠に支障をきたすほどの強い症状をできるだけ早く和らげることが目的です。
長期管理では、尿酸降下薬を用いて血清尿酸値を安定させる薬物療法を中心に、食事療法と運動療法を組み合わせていきます。食事療法ではプリン体を多く含む食品やアルコールを控え、水分を十分にとり、体重を適正に保つことが基本です。運動療法としては、無理のない有酸素運動やストレッチを継続することで代謝を改善し、薬の効果が安定しやすいです。
痛風の治療に用いられる薬の種類と効果
痛風を完治させる薬はありますか?
痛風を完全に治す薬は現時点では存在しません。しかし、尿酸値を適切に管理することで、発作を繰り返さずに過ごすことができます。尿酸降下薬を服用して尿酸値を安定させれば、新しい結晶は作られにくくなり、すでに体内に沈着している結晶も少しずつ溶けていきます。その結果、数年間にわたって発作が起こらない状態を維持できることも珍しくありません。つまり、完治という言葉は使えないものの、症状のない安定した生活を取り戻すことは十分に可能です。
痛風の発作を抑える薬の種類を教えてください
痛風の発作を繰り返さないように予防するには、尿酸値を下げて安定させる薬が使われます。代表的なのはアロプリノールやフェブキソスタットといった尿酸生成を抑える薬、ベンズブロマロンなど尿酸の排泄を促す薬です。これらは血清尿酸値を6mg/dL未満に維持し、結晶ができにくい状態を保つことを目標とします。尿酸値が安定すれば、強い痛みを伴う発作の再発や、関節の変形・腎障害といった合併症のリスクを減らすことができます。また、尿酸降下薬を新しく開始した直後は発作が起こりやすいため、数ヶ月間は少量のコルヒチンやNSAIDsを併用して発作予防(コルヒチンカバー)を行うこともあります。
参照:
『高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン 第3版』(日本痛風・核酸代謝学会)
『高尿酸血症・痛風の診断と治療』(山中 寿、日本内科学会雑誌, 2015, 104巻, 9号, p. 2039-2045)
痛風の発作中に服用する薬にはどのようなものがありますか?
発作時には、まず痛みと炎症を抑える薬を使います。NSAIDsは速やかに症状を和らげ、コルヒチンは初期に服用すると炎症の悪化を防ぎます。副腎皮質ステロイドはNSAIDsが使えない場合や症状が強い場合に選ばれ、内服薬や関節内注射として使われることもあります。これらはいずれも尿酸値を下げるのではなく、あくまで痛みや腫れを抑えることを目的としています。
なお、日本のガイドラインでは発作中に尿酸降下薬を新たに始めることは控えるとされています。ただし、米国のガイドラインでは条件付きで開始を認める考え方も示されており、実際の診療では発作中に開始される場合もあります。
参照:
『高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン 第3版』(日本痛風・核酸代謝学会)
『2020 American College of Rheumatology Guideline for the Management of Gout』(American College of Rheumatology)
痛風の薬はいつまで飲み続けるのですか?
尿酸降下薬は、尿酸値を長期にわたって安定させるために続けて服用する必要があります。症状が落ち着いたからといって自己判断でやめてしまうと、再び尿酸値が上がり発作を繰り返すおそれがあります。多くの場合は生涯にわたって飲み続けることを前提に考える必要がありますが、生活習慣を整えることで医師が中止を検討できる場合もあります。重要なのは、必ず医師の判断に基づいて服薬の調整を行うことです。
痛風の治療薬で生じる可能性がある副作用と注意点
痛風の薬に副作用はありますか?
痛風の薬にはいくつか副作用があります。NSAIDsは胃の不快感や腎機能への影響、コルヒチンは下痢や吐き気を起こすことがあります。副腎皮質ステロイドは短期間の使用では大きな問題は少ないものの、長期的に使うと糖尿病や骨粗しょう症の悪化、感染症のリスクが高まります。尿酸降下薬では、アロプリノールやフェブキソスタット、ベンズブロマロンなどで発疹や肝機能異常が起こることがあります。
痛風の薬を服用する際の注意点を教えてください
薬は必ず医師の指示通りに毎日決まった時間に服用することが大切です。症状が出ていないときも尿酸値を安定させるために薬を続ける必要があります。服薬を始めた直後は、尿酸値の変動によって一時的に発作が起こることがあり、その際はコルヒチンを予防的に併用することがあります。また、水分をしっかりとることで尿酸が排泄されやすくなり、結晶ができにくくなるため、日常生活ではこまめな水分補給を意識することも欠かせません。定期的に血液検査や肝機能検査を受け、体調に変化を感じた場合はすぐに医師へ相談することが望まれます。
痛風の薬を飲み忘れたらどうすればよいですか?
薬を飲み忘れた場合は、気付いた時点ですぐに1回分を服用します。ただし次の服薬時間が近い場合は1回分を飛ばし、二重に服用することは避けるようにします。飲み忘れが続くと治療効果が不十分となり、再発のリスクが高まります。毎日の習慣として服薬を定着させるために、ピルケースやアラーム機能を利用するのも有効です。
編集部まとめ
痛風は、発作の痛みを抑える薬と、再発を防ぐために尿酸値を安定させる薬を組み合わせて治療していく病気です。薬には副作用の可能性もありますが、医師の指示に従い、定期的に検査を受けながら続けていけば、発作の予防や合併症の防止につながります。大切なのは、自己判断で中止せずに、必要な薬を正しく使い分けながら継続していくことです。
参考文献




