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「ADHDの女性は顔つき」でわかるの?ADHDの女性が困りやすいことも解説!

 公開日:2025/11/19
「ADHDの女性は顔つき」でわかるの?ADHDの女性が困りやすいことも解説!

ADHDは、不注意や衝動性などの症状によって日常生活に支障をきたす疾患です。ADHDは顔つきや外見ではなく、国際的に広く用いられている診断基準に基づいて、医師の診察によって診断されます。本記事では、ADHDの特徴と症状、診断基準や治療法を解説します。

前田 佳宏

監修医師
前田 佳宏(医師)

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島根大学医学部卒業。東京大学医学部附属病院精神神経科に入局後、東京警察病院、国立精神神経医療研究センター、都内クリニックにて薬物依存症、トラウマ、児童精神科の専門外来を経験。現在は和クリニック院長。愛着障害やトラウマケアを専門に講座や情報発信に努める。診療科目は精神神経科、心療内科、精神科、神経内科、脳神経内科。 精神保健指定医、認定産業医の資格を有する。

ADHDの女性にみられる顔つきや外観上の特徴

ADHDの女性にみられる顔つきや外観上の特徴

ADHDの女性には特徴的な顔つきはありますか?

ADHDの女性には特徴的な顔つきはありません。ADHDは注意欠如多動症という発達障害(神経発達症)の一つです。顔つきや目鼻立ちといった身体的特徴とはまったく関係がありません。ADHDの診断は、行動の特性やそれによる日常生活での困難さなどを総合的に評価して行われるものであり、顔つきで判断することはできません。

顔つき以外の外見でADHDの女性を見分けることはできますか?

顔つき以外の外見でも、ADHDの女性を見分けることはできません。ADHDに特徴的な顔つきがないのと同様に、ADHDに外見上の特徴はありません。ADHDに関連付けた外見への言及は、根拠がありません。これは、ADHDの方への偏見や誤解を助長するおそれがあり、絶対にあってはなりません。

ADHDの女性によくみられる表情や仕草を教えてください

ADHDの女性によくみられる表情というものはありません。一方で、仕草にはADHDの特性が表れる可能性があります。例えば、手足を落ち着きなく絶えず動かす、などの行動です。ただし、ADHDは仕草で診断されるものではありません

私はADHDかも?特徴や症状、困りごととは

私はADHDかも?特徴や症状、困りごととは

ADHDとはどのような病気ですか?

ADHDは、注意欠如多動症と呼ばれる発達障害(神経発達症)の一つです。発達の水準からみて不相応な不注意や多動性・衝動性といった特性が、持続的に認められます。そのために日常生活に支障をきたしている状態を指します。適切な対処法や環境調整、薬物療法などの治療によって、困りごとの軽減が期待できる疾患です。

ADHDの特徴と症状を教えてください

ADHDの特性は、主に不注意と多動性・衝動性の2つに分類されます。ここでは、それぞれの特性が、どのような症状としてみられるかを解説します。

不注意の具体的な症状は、活動への集中が難しく、すぐに気が散ってしまい、課題を最後までやり遂げることが難しい、といったことが挙げられます。また、時間の管理や持ち物の整理整頓が苦手であるため、約束や提出期限を忘れたり、必要なものを頻繁になくしたりすることも少なくありません。さらに、細部に注意が向かず、仕事や学習でケアレスミスを繰り返すといった形で現れることもあります。

一方、多動性・衝動性の症状は、落ち着きや行動の抑制に関する困難さとして現れます。多動性は、じっとしていられない、座席を離れてしまう、といった症状がみられます。衝動性は、深く考えずに言葉を発したり、行動に移したりするなどの症状があります。結果を待つことが苦手で、順番を待てない、などもみられます。

ADHDの女性はどのようなことに困りやすいですか?

ADHDの女性は、多動性・衝動性の症状が現れにくいといわれています。落ち着きなく動き回る、などの症状が出にくい一方で、集中力の維持や時間管理、整理整頓などに苦労するケースがあります。また、精神疾患や身体疾患を合併する割合が多いといわれています。

参照:
『ADHD in Women: Symptoms, Diagnosis & Treatment』(Cleveland Clinic)
『成人の発達障害に合併する精神及び身体症状・疾患に関する研究』(厚生労働科学研究費補助金 障害者対策総合研究事業)

ADHDが疑われるときの対処法と検査、治療法

ADHDが疑われるときの対処法と検査、治療法

ADHDかもしれないときは何科を受診すればよいですか?

ADHDが疑われる場合、精神科や心療内科を受診しましょう。18歳未満であれば、児童精神科など、子どもの発達に関する専門的診療を行っている医療機関を検討します。なお、精神科や心療内科でも発達障害の診療を行っていない場合もあるため、事前に確認するとよいでしょう。

ADHDが疑われる際の病院での検査法と診断基準を教えてください

ADHDが疑われる際、病院では問診を中心とした診療が行われます。問診とは、症状の経緯やこれまでの病歴を聞き取る作業です。生まれてからこれまでの生育歴と現在の困りごとなどを確認します。また、心理検査が行われることもあります。心理検査とは、患者さんの気分や思考、行動の特徴や心理状態などを質問紙や面接、課題などを通じて客観的に評価する検査のことです。ADHDが疑われる際には、現在の状態を把握するために、知能検査などの心理検査が検討されます。

ADHDの診断は、国際的に広く用いられている診断基準に基づいて行われます。日本では、主にアメリカ精神医学会が作成した精神障害の診断と統計マニュアル(DSM-5-TR)や、世界保健機関(WHO)が作成した国際疾病分類(ICD-11)が用いられます。ここではDSM-5-TRの診断基準に沿って解説します。

ADHDは、不注意と多動性・衝動性の二つの症状によって診断します。どちらも9項目ずつあり、合計18項目を確認します。不注意に関する9項目は次のとおりです。

  • 細部に注意を払えない、または不注意な間違いをする
  • 課題や遊びで注意を維持することが難しい
  • 直接話しかけられても、聞いていないように見える
  • 指示に従えず、課題をやり遂げられないことが多い
  • 課題や活動を手際よく行えないことが多い
  • 精神的な集中力の持続が必要な課題を避けたり嫌ったりする
  • 課題や活動に必要なものをなくしやすい
  • 外からの刺激によってすぐに気が散る
  • もの忘れが多い

多動性・衝動性に関する9項目は次のとおりです。

  • 手足を落ち着きなく絶えず動かしたり、身体をくねらせるなど動かしたりする
  • 離れるべきではない状況で、席を離れる
  • 不適切な状況で走り回ったり、よじ登ったりする
  • 静かに遊ぶこと、活動することが難しい
  • 絶えず動き回り、エンジンで動かされているように止まることなく活動する
  • 過度にしゃべる
  • 質問が終わる前に答えを出し始める
  • 順番を待つことが難しい
  • 他者の活動を邪魔したり、割り込んだりする

どちらのカテゴリも6項目以上(17歳以上は5項目以上)が基準となり、少なくとも6ヶ月以上にわたり持続していることとされています。また、以下の条件を満たす必要があります。

  • 少なくともいくつかの症状が、12歳になる前に現れている
  • これらの症状が2つ以上の状況(学校と家庭など)において存在する
  • 症状が、ほかの精神疾患によるものではない
  • 症状が、社会的、学業的、職業的機能に臨床的に意味のある障害を引き起こしている

なお、不注意のみが基準を満たす場合は不注意優勢型、多動性・衝動性のみが基準を満たす場合は多動性・衝動性優勢型、両方ともに基準を満たす場合は混合型、の3つに分類されます。

ADHDと診断された場合はどのように治療しますか?

ADHDの治療は、個別の状況に応じて実施されます。まず、非薬物療法には環境調整心理療法があります。環境調整は、日常生活のなかで、わかりやすく指示を伝える、学習などの課題を小分けにして休憩を挟むといったような工夫を行います。心理療法は、症状そのものへの理解を深めて、それに対処するためのスキルを身につけることを目的とします。その一つに認知行動療法があります。考え方や行動の癖やパターンを見直し、衝動的な行動や注意の偏りなどを少なくしていきます。

薬物療法は、脳内の神経伝達物質に作用する薬剤で症状の緩和を目指します。中枢神経刺激薬(メチルフェニデート塩酸塩徐放剤)や非刺激薬(アトモキセチン、グアンファシン塩酸塩徐放剤)が使用されます。

ADHDの女性が気を付けることを教えてください

ADHDを持つ女性は、多動性が目立ちにくいことで診断が遅れやすいケースがあります。また、周囲にうまく合わせようと努力する傾向があり、その結果、ADHDの症状が表面的には目立たなくなることもあります。一見問題がないようにみえても、目立たないために周囲の理解が得にくく、日常生活で困り感やストレスが大きくなる可能性があります。そのほかにも、精神疾患や身体疾患を合併する割合が多いともいわれています。これらの点から、早めに医療機関を受診し、継続的に通院することが大切です。なお、治療で使用する中枢神経刺激薬には食欲減退の副作用がみられることがあります。摂食障害を抱えている方は注意が必要です。

編集部まとめ

編集部まとめ

ADHDは、顔つきや外見では判断できません。行動や生活上の特徴を総合的に評価して診断します。大人になってから生活上の問題として顕在化するケースもあります。気になる症状がある場合は、早めに精神科や心療内科を受診しましょう。環境調整や精神療法、必要に応じて薬物療法を受けることで、生活における困難さの軽減が期待できます。

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