「うつ病」を発症するとどれくらい「薬」を飲み続けるの?副作用となる症状も解説!
公開日:2025/12/08


監修医師:
前田 佳宏(医師)
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島根大学医学部卒業。東京大学医学部附属病院精神神経科に入局後、東京警察病院、国立精神神経医療研究センター、都内クリニックにて薬物依存症、トラウマ、児童精神科の専門外来を経験。現在は和クリニック院長。愛着障害やトラウマケアを専門に講座や情報発信に努める。診療科目は精神神経科、心療内科、精神科、神経内科、脳神経内科。 精神保健指定医、認定産業医の資格を有する。
目次 -INDEX-
うつ病の治療方法と用いられる薬の種類
うつ病とはどのような病気ですか?
うつ病は、気分の落ち込みや意欲の低下、何をしても楽しくないなど精神症状が出現する疾患です。また、不眠や過眠、疲労感、食欲の変化などの身体症状も現れることから日常生活にも大きな影響を与えます。原因は、遺伝、神経伝達物質、ストレス、環境要因などが関与しており、単なる気分の落ち込みではなく医学的な治療が必要です。 治療には精神療法、薬物療法などが組み合わせて用いられ、重症例では入院治療も検討されます。
うつ病の主な治療法を教えてください
うつ病治療には、 薬物療法と心理療法があります。薬物療法では、SSRIが用いられる場合が多く、セロトニンの再取り込みを阻害して抗うつ作用を発揮します。心理療法では、認知行動療法を中心に治療を実施します。患者さんのうつ病に対する認識を修正し、うつ症状を軽減します。心理療法は薬物療法と同じぐらいの効果があるとされています。
中等症以上では薬物療法と心理療法の併用が第一選択となることが多く、重症例で薬物療法や心理療法の効果が得られない場合は電気痙攣療法(ECT) や 反復経頭蓋磁気刺激法(rTMS) の実施も検討します。 ECTは、全身麻酔下で脳に電気刺激を与える治療です。一方、rTMSは頭部に磁気コイルを当てて、脳の特定部位を電気刺激で活性化する治療法です。
参照:
『うつ病の薬物療法』(昭和学士会誌)
『うつ病,うつ状態の薬物療法・心理療法』(心身医)
うつ病は薬を飲むことで治癒しますか?
うつ病は完治よりも寛解を目指す病気です。寛解とは、症状がほとんどなくなり、社会生活や仕事が支障なく送れる状態です。うつ病が治癒する確証は得られていませんが、多くの場合、薬物療法と心理療法によって症状が寛解する可能性はあります。ただし、再発リスクがあるため治療終了や減薬は慎重に判断されます。
うつ病の薬の効果と服用期間
うつ病の治療で用いられる薬の種類を教えてください
主に用いられる薬の種類は以下のとおりです。
- 選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)
- セロトニンノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)
- 三環系抗うつ薬
- モノアミン酸化酵素阻害薬
- ノルアドレナリン・ドパミン再取り込み阻害薬
うつ病の薬の種類別に効果を教えてください
うつ病の薬の効果を種類別に解説します。
上記のような効果があり、症状によって使い分けます。
参照:『うつ病の薬物療法』(昭和学士会誌)
| 薬の種類 | 効果 |
|---|---|
| 選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI) | セロトニンの再取り込みを選択的に阻害し、シナプス間隙のセロトニン濃度を高めることで抗うつ作用を発揮します。 |
| セロトニンノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI) | セロトニンとノルアドレナリンの再取り込みを阻害し、気分の安定と意欲の増加を促します。 |
| 三環系抗うつ薬 | セロトニンとノルアドレナリンの再取り込みを阻害し、これらの濃度を高めることで抗うつ作用を発揮します。 |
| モノアミン酸化酵素阻害薬 | 神経内でセロトニン、ノルアドレナリン、ドパミンを分解するモノアミン酸化酵素を阻害し、濃度を高めることで抗うつ作用を発揮します。 |
| ノルアドレナリン・ドパミン再取り込み阻害薬 | ノルアドレナリンとドパミンの再取り込みを阻害し、報酬系を活性化して意欲や集中力を高めます。SSRIとは異なり、眠気や性機能低下が少ないです。 |
うつ病の薬はどの程度の期間飲み続けるのですか?
薬を飲み続ける期間は個人差がありますが、研究ではSSRIを服薬した患者さんのうち50%は6週間以内に寛解しています。そのため、1ヶ月以上の服薬が必要です。途中で服用を中断すると、再発のリスクが高まってしまいます。症状が改善した後も維持療法として少なくとも 1年から3年ほど服用を続け、再発予防を図ることが大切です。複数回再発経験がある場合や重症例では、さらに長期間の継続も検討します。
参照:
『うつ病の薬物療法と電気けいれん療法』(昭和医会)
『うつ病のアルゴリズム治療』(精神経誌)
うつ病の薬でみられる副作用と注意点
うつ病の薬にはどのような副作用がありますか?
主な副作用には、吐き気、頭痛、眠気、不眠、性機能障害(性欲低下、勃起障害など)、体重変動、口渇、便秘、めまいなどがあります。副作用の出方には個人差がありますが、多くの場合服用初期に現れて時間とともに軽減していきます。各薬剤で出現しやすい副作用は以下のとおりです。
上記の副作用に注意しながら服用しましょう。
| 薬の種類 | 主な副作用 |
|---|---|
| SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬) | 吐き気、下痢、頭痛、眠気、不眠、性機能障害(性欲低下・射精遅延など) |
| SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬) | 吐き気、発汗、動悸、血圧上昇、便秘、不眠 |
| NaSSA(ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬) | 強い眠気、体重増加、口渇 |
| 三環系抗うつ薬例 | 口渇、便秘、尿が出にくい、眠気、ふらつき、動悸 |
うつ病の薬には依存性はありますか?
通常、抗うつ薬には睡眠薬やアルコールのような依存性はありません。 ただし、服用を急に中断すると離脱症状を起こすことがあり、依存性と間違われる場合があります。離脱症状では、めまい、頭痛、吐き気、不眠、不安などの症状が出現し、数日から数週間で治まります。そのため、医師の指示なしに自己判断で急な中断や減量を行うのは避けるべきです。減薬や断薬は必ず医師の指導のもとで段階的に行いましょう。
うつ病の薬を飲むときの注意点を教えてください
うつ病の薬を飲む際の注意点は下記のとおりです。
うつ病の薬は、医師の指示にしたがって服用しましょう。服用後すぐに効果がみられなかったからといって、服用を中止したり、自己判断で量を増やしたりすることは避けてください。副作用が気になる場合も服用を止めず、医師に相談をして対策を検討してもらいましょう。
| うつ病の薬を服用する際の注意点 | 内容 |
|---|---|
| 効果が出るまでに時間がかかる | 効果が出るまでに数週間から数ヶ月ほどかかるため、気長に効果を観察しましょう。 |
| 副作用をこまめに観察する | 服用初期には一時的な副作用が現れる場合があります。多くの場合1〜2週間で軽減しますが、症状が長く続く場合は医師に相談しましょう。 |
| ほかの薬やお酒との併用に注意する | 抗筒薬は、睡眠薬、抗不安薬、鎮痛薬などと相互作用があります。また、アルコールは薬の作用を強めたり、副作用を悪化させたりするため注意しましょう。 |
| 自己判断で中止、増減しない | 調子がよくなったからといって勝手に服用をやめると、離脱症状や再発のリスクが高まります。 |
編集部まとめ
うつ病は気分の落ち込みや意欲低下、睡眠、疲労などの症状があり、日常生活に支障を来す疾患で治療が必要です。主に薬物療法と心理療法による治療が基本で、中等症以上は併用、重症では電気痙攣療法(ECT) や 反復経頭蓋磁気刺激法(rTMS)も検討します。
薬は選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)、セロトニンノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)、三環系抗うつ薬、モノアミン酸化酵素阻害薬、ノルアドレナリン・ドパミン再取り込み阻害薬などを症状に応じて使用します。副作用は吐き気、頭痛、眠気、不眠、性機能障害、体重変動、口渇、便秘、めまいです。依存性は通常ほぼありませんが、急な中止で離脱症状が出るため自己判断の減量は避けましょう。




