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「うつ病の人」が避けた方がいい「食べ物や飲み物」はご存知ですか?【医師監修】

 公開日:2025/11/04
「うつ病の人」が避けた方がいい「食べ物や飲み物」はご存知ですか?【医師監修】

うつ病の改善には薬物療法や心理療法が欠かせませんが、実は食生活も心の健康に深く関わっています。近年の研究では、栄養バランスの乱れや特定の食習慣がうつ症状の悪化に影響する可能性が指摘されています。特に、加工食品や糖質、アルコールやカフェインの摂り過ぎは、気分の不安定や睡眠障害を引き起こすリスクにつながります。

本記事では、うつ病の方が避けるべき食べ物や飲み物、摂りたい栄養素、日々の食習慣の整え方を解説します。

前田 佳宏

監修医師
前田 佳宏(医師)

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島根大学医学部卒業。東京大学医学部附属病院精神神経科に入局後、東京警察病院、国立精神神経医療研究センター、都内クリニックにて薬物依存症、トラウマ、児童精神科の専門外来を経験。現在は和クリニック院長。愛着障害やトラウマケアを専門に講座や情報発信に努める。診療科目は精神神経科、心療内科、精神科、神経内科、脳神経内科。 精神保健指定医、認定産業医の資格を有する。

うつ病の人が食べてはいけない食べ物や飲み物

うつ病の人が食べてはいけない食べ物や飲み物

食べ物や飲み物によってうつ病が悪化することはありますか?

食べ物や飲み物が直接うつ病を悪化させる根拠はありません。ただし、うつ病ではいくつかの栄養学的な異常がみられています。例えば、うつ病の方は肥満や脂質異常の割合が多く、葉酸を摂取している方は少ない傾向があると報告されています。また、炭水化物は血糖値の変動から気分の不安定さを招いたり、加工食品では含まれるトランス脂肪酸や添加物が悪影響を与えうつ病を悪化させたりする場合があります。

参照:『1.うつ病患者における栄養学的異常』(Japanese Journal of Biological Psychiatry Vol.26, No.1)

うつ病の人が摂取しない方がよい食べ物や飲み物を教えてください

うつ病の方は、カフェインやアルコールの過剰摂取は避けた方がよいでしょう。カフェインは利尿作用、交感神経刺激作用などを持ち、薬効に影響を与えやすいからです。カフェインを過剰摂取が薬の効き目を弱めたり、副作用を強めたりする可能性があります。また、カフェインは覚醒作用があるため、中途覚醒や入眠困難、不眠を増悪させる場合もあります。

アルコールも三環系抗うつ薬などの中枢抑制作用を強めたり、副作用が増強させたりするリスクがあります。飲酒をすると寝付きがよくなると感じやすいですが、実際には睡眠の質は悪化しやすい傾向です。

参照:『食品・嗜好品との相互作用 カフェイン・喫煙・ドリンク剤・チアミン含有食品』(Vol.50 No.7 ファルマシア)

うつ病の人が避けた方がよい食習慣はありますか?

避けるべき食習慣は3つあります。1つめは、朝食を抜く習慣です。朝食を抜く習慣を続けると抑うつを発症リスクが高まるとされています。2つ目は不規則な食習慣です。食事の栄養が偏っていたり、摂取頻度がバラバラだったりするとうつ傾向になりやすいです。3つ目は糖分を過剰に摂取する食習慣です。糖分による血糖値の変動は不安や抑うつ症状を誘発しやすいため注意が必要です。また、糖尿病を抱えている方はうつ病を発症しやすいことからも血糖値のコントロールが大切です。

参照:
『勤労者における朝食欠食と抑うつ発症の関連:愛知職域コホート研究』 (東海公衆衛生雑誌)
『糖尿病とうつ』(日本老年医学会学術集会記録)

うつ病のときに摂りたい栄養素とおすすめの食習慣

うつ病のときに摂りたい栄養素とおすすめの食習慣

食習慣の改善でうつ病が改善することはありますか?

食習慣を改善すると、うつ症状が改善する場合があります。例えば、野菜、果物、魚などを多く摂取するように食事を改善した場合、うつ症状が改善したという研究があります。これは、脳の働きを整える栄養素や抗酸化物質、オメガ3脂肪酸などが含まれ、神経伝達や炎症の調整に関与するためです。ただし、食習慣改善だけでうつ病を完全に治せる確証は現時点では乏しく、薬物療法や心理療法との併用が必要です。

参照:『科学的根拠に基づく食によるメンタルヘルスへのアプローチ』(行動医学研究 vol.25、No.2,113-118,2020)

うつ病の改善効果が期待できる栄養素はありますか?

うつ病患者さんでは、葉酸、ビタミンB6、B12、亜鉛、オメガ3脂肪酸などの栄養素が足りていないという報告があります。これらは神経伝達系や炎症反応などに関与する可能性があるため、積極的な摂取が必要です。各栄養素の作用や含まれる食品を以下で解説します。

栄養素 主な作用 主な食品
葉酸 セロトニン、ドーパミン、ノルアドレナリンの合成に関与しています。 ほうれん草、ブロッコリー、枝豆、納豆、アボカド
ビタミンB6 セロトニンやドーパミンなど神経伝達物質の生成に不可欠です。B6不足は気分の不安定化やストレス耐性の低下を招きます。 鶏むね肉、まぐろ、さけ、バナナ、ナッツ、玄米
ビタミンB12 葉酸と協働してホモシステイン代謝を促進し、神経細胞の保護に関与します。 あさり、牡蠣、サンマ、牛レバー、卵、乳製品
亜鉛 神経細胞のシナプス形成、可塑性を維持します。 牡蠣、赤身肉、レバー、卵、ナッツ、納豆
オメガ3脂肪酸 抗炎症作用を通じて抑うつ症状に関与します。 サバ、イワシ、サンマ、サーモン、アマニ油、チアシード

上記のような作用があり、うつ病の症状に関与します。

参照:
『1.うつ病患者における栄養学的異常』(Japanese Journal of Biological Psychiatry Vol.26, No.1)
『精神科通院中の男性患者の精神症状と血清葉酸濃度、葉酸・VB2・VB6摂取量の逆相関』(日本栄養・食料学会誌)
『メンタルヘルスケアに資する栄養学的観点』(J-stage)
『オメガ3系脂肪酸の抗炎症作用と抗うつ効果(総説)』(日本生物学的精神医学会誌)

うつ病の人が積極的に摂りたい食べ物や飲み物を教えてください

うつ病の方では、脳の働きを支える食材を意識して選ぶことが大切です。魚類ではサバ、イワシ、サンマなどの青魚がオメガ3脂肪酸を豊富に含み、神経伝達を整えます。納豆、豆腐、卵はトリプトファンを含み、セロトニンの生成を助けます。

飲み物では緑茶に含まれるテアニンがリラックスを促すという報告もあります。カフェインの摂取は抑うつ症状のリスク低下と関連しており、コーヒーやお茶を適度に摂取するのが大切です。ただし、カフェインやアルコールの過剰摂取は自律神経を乱しやすいため控えましょう。

参照:『カフェイン及びカフェイン含有食品・ドリンク摂取とうつ症状との関連に関するシステマティックレビュー』(四国公衛誌)

うつ病の人が取り入れるとよい食習慣を教えてください

うつ病の改善を助けるには、規則正しい食事リズムと、バランスのとれた内容が重要です。1日3食を一定の時間にとり、血糖値の乱高下を防ぐことで情緒の安定につながります。研究では、朝食を欠食する方ほど抑うつ傾向が強い傾向が示されており、特に朝食でたんぱく質とビタミンB群を摂ることが推奨されています。また、腸内環境の乱れはストレス耐性の低下につながりやすいです。そのため、ヨーグルト、納豆、味噌などの発酵食品を摂取するとよいでしょう。

参照:『勤労者における朝食欠食と抑うつ発症の関連:愛知職域コホート研究』東海公衆衛生雑誌 第12巻第2号 2025年

うつ病を悪化させないための生活習慣

うつ病を悪化させないための生活習慣

うつ病の人はどのような生活習慣を心がけるとよいですか?

うつ病を抱える方は、まず規則正しい睡眠リズムを維持し、毎日同じ時間に就寝、起床するように心がけましょう。よく眠るためには、朝は日光を浴びて、寝る前にはスマートフォンやパソコンの使用を控えて目を休ませるとよいです。

また、運動は抑うつ症状の軽減に効果的です。研究によっては運動が薬物療法と同じぐらいの効果を示しているものもあります。いきなり強度が高い運動をするのは大変なので、30分ほどの運動を少しずつ増やしていきましょう。運動の種類では、有酸素運動や筋力トレーニング、ストレッチなどがおすすめです。

参照:
『睡眠障害の社会生活に及ぼす影響』(日本心身医学会)
『抑うつ改善に及ぼす運動の効果』(Jpn J Gen Hosp Psychiatry)

うつ病の人が避けた方がよい生活習慣を教えてください

睡眠不足はうつ病を悪化させる可能性があります。また、運動不足もうつ病との関連が示唆されています。身体活動量が多いほど抑うつリスクは低い傾向のため、運動習慣を持つのは大切です。実際に、1週間で10分以上身体活動を行っている方は抑うつの割合が少ないと報告されています。

参照:
『日本人成人における仕事・移動・余暇の身体活動と抑うつの関連:横断研究』(生涯スポーツ学研究)
『睡眠障害の社会生活に及ぼす影響』(日本心身医学会)

編集部まとめ

編集部まとめ
うつ病を悪化させないためには、食事内容と生活習慣の見直しが欠かせません。特定の食品が直接うつ病を悪化させる根拠はありませんが、加工食品や糖分の過剰摂取は血糖値の変動や神経機能に影響し、気分の不安定を招く可能性があります。カフェインやアルコールも薬効や自律神経に悪影響を与えるため控えめにしましょう。

一方、うつ症状の改善には、葉酸、ビタミンB群、亜鉛などの栄養素を含む食品の摂取が有効とされています。特に青魚のオメガ3脂肪酸や大豆、卵のトリプトファンは、神経伝達物質の働きを整え、精神の安定を助けます。また、1日3食を一定の時間にとり、朝食でたんぱく質やビタミンB群を摂ることが推奨されます。

規則正しい睡眠、軽い運動、節度ある飲酒を心がけることで、うつ病の悪化を防ぎ、回復につながります。

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