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「顔にアトピー」ができるとどんな症状が現れるかご存知ですか?【医師監修】

 公開日:2025/10/01
「顔にアトピー」ができるとどんな症状が現れるかご存知ですか?【医師監修】

アトピー性皮膚炎は、小児から成人まで幅広い年代でみられる皮膚の慢性疾患です。特に顔に症状が現れる場合は、かゆみや赤みといった不快な症状に加えて、人前に出ることへの不安や生活のしづらさなど、心理的な負担が大きくなることがあります。顔は皮膚が薄く外気や紫外線などの刺激を受けやすいため、症状が強く出やすい部位のひとつです。

上田 莉子

監修医師
上田 莉子(医師)

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関西医科大学卒業。滋賀医科大学医学部付属病院研修医修了。滋賀医科大学医学部付属病院糖尿病内分泌内科専修医、 京都岡本記念病院糖尿病内分泌内科医員、関西医科大学付属病院糖尿病科病院助教などを経て現職。日本糖尿病学会専門医、 日本内分泌学会内分泌代謝科専門医、日本内科学会総合内科専門医、日本医師会認定産業医、日本専門医機構認定内分泌代謝・糖尿病内科領域 専門研修指導医、内科臨床研修指導医

顔のアトピー性皮膚炎について

顔のアトピー性皮膚炎について

アトピー性皮膚炎とはどのような病気ですか?

アトピー性皮膚炎は、皮膚のバリア機能が十分に働かないことが大きな特徴の一つです。皮膚の角層は本来、外からの刺激や異物の侵入を防ぎ、体内の水分を保持する役割を担っています。しかし、このバリアが弱くなると、乾燥しやすくなり、外部の小さな刺激にも過敏に反応してしまいます。その結果、皮膚に炎症が生じ、かゆみや赤みが繰り返し現れます。強いかゆみのために無意識のうちに掻いてしまうことが多く、掻く動作によってさらに皮膚が傷つき、炎症が広がって悪循環に陥ります。症状は一時的に改善しても再び悪化することが多く、長期にわたって経過をみていく必要がある病気とされています。発症には、遺伝的に皮膚バリアや免疫応答に関わる体質の影響があるといわれていますが、生活習慣や環境要因が加わることで発症・悪化しやすくなります。

アトピー性皮膚炎の原因を教えてください

原因は複数の要因が重なり合っています。まず、遺伝的な要因として、皮膚の角層に含まれるフィラグリンというたんぱく質の働きが弱い場合、皮膚のバリア機能が低下し、水分保持が不十分になります。その結果、乾燥しやすくなるだけでなく、外部から侵入する花粉やダニ、ほこり、化学物質などに対して過敏に反応してしまいます。さらに、免疫システムが刺激に対して強く反応しやすい体質があることも知られています。環境要因としては、気候の変化や大気汚染、ハウスダストや動物の毛、食生活の乱れ、ストレス、睡眠不足などが悪化因子となります。これらの因子は単独で症状を引き起こすわけではなく、複雑に関わり合いながら炎症やかゆみを繰り返す原因となります。

アトピー性皮膚炎は顔にもできやすいですか?

顔は常に外気にさらされ、紫外線や気温、湿度の変化を受けやすい部位です。また皮膚が薄くデリケートであるため、ほかの部位に比べて刺激に敏感です。そのため、アトピー性皮膚炎の症状は顔にできやすいです。特にまぶたや口の周り、頬や首の境目などは、乾燥や摩擦、汗の影響を受けやすいため、赤みやかゆみが出やすい場所です。顔は見た目にも影響が大きいため、心理的な負担も強く、日常生活の支障につながることがあります。加えて、顔は化粧品やスキンケア製品を使う機会が多く、それらの成分による刺激が症状の悪化につながることもあります。

顔にできたアトピー性皮膚炎の症状

顔にできたアトピー性皮膚炎の症状

顔に生じたアトピー性皮膚炎の症状を教えてください

顔に症状が出ると、赤み、かゆみ、乾燥、粉をふいたような皮むけ、炎症による腫れや熱感などがみられます。軽症であっても皮膚のつっぱり感やかさつきによる不快感があり、症状が強いと掻き壊しによるかさぶたや出血を伴うこともあります。目の周囲や口の周りは腫れが出やすく、痛みやヒリヒリ感で日常生活に影響する場合もあります。

顔のアトピー性皮膚炎で痕が残ることはありますか?

炎症が落ち着いた後に、赤みや茶色っぽい色素沈着、逆に白っぽく見える色素の抜けた部分が残ることがあります。これらは多くの場合、数ヶ月から半年ほどで少しずつ改善していきますが、紫外線の影響で色素沈着が濃くなることもあるため、日常的に紫外線対策を行うことが大切です。

【顔のアトピー性皮膚炎】治療法とセルフケア

【顔のアトピー性皮膚炎】治療法とセルフケア

顔のアトピー性皮膚炎はどのように治療しますか?

顔のアトピー性皮膚炎の治療は、症状を落ち着かせることと、皮膚のバリア機能を回復させることの両方を目的として進められます。炎症が強いときには薬を使って症状を抑えることが必要であり、同時に日常のスキンケアを行うことで皮膚を守ることが大切です。

まず症状の程度に応じて外用薬が処方されます。炎症を抑えるための基本的な治療薬としてはステロイド外用薬があります。これらは炎症を落ち着かせる効果がありますが、顔は皮膚が薄く敏感なため、作用の弱いタイプが選ばれることが多いです。

顔に適した薬として、タクロリムスなどのカルシニューリン阻害薬があります。これらは非ステロイド性の薬で、長期的に使いやすく、まぶたやお口の周囲などデリケートな場所にも使用できます。かゆみや炎症を抑える作用があり、特に再発を繰り返す方に処方されることがあります。

さらに、最近ではPDE4阻害薬やJAK阻害薬といった新しい外用薬も登場しています。これらは炎症やかゆみに関わる仕組みに働きかけ、従来の薬と組み合わせて使用されることがあります。

症状が広範囲に出ている、炎症が長く続く場合には、外用薬だけでは十分に改善が得られないこともあります。そのようなときには、全身に作用する治療薬が検討されることがあります。具体的には、生物学的製剤と呼ばれる注射薬があり、免疫の過剰な反応を調整して炎症を抑えます。これらは中等症から重症のアトピー性皮膚炎に対して用いられます。 薬による治療とあわせて欠かせないのがスキンケアです。保湿剤を用いて皮膚を乾燥から守ることが、炎症を起こしにくくする基本です。薬を使って炎症を落ち着かせるだけでなく、日常的にバリア機能を補う工夫を続けることが、治療の効果を持続させるために大切です。

顔と身体のアトピー性皮膚炎治療に違いはありますか?

身体ではステロイド外用薬を使用できる場合もありますが、顔は皮膚がデリケートなため、弱い薬や非ステロイド性の薬が選ばれることが多いです。

顔にアトピー性皮膚炎ができたときのスキンケアのポイントを教えてください

スキンケアの基本は、やさしく洗うこと、十分に保湿を行うこと、刺激を避けることです。洗顔は1日1回から2回を目安とし、泡でやさしく洗い、こすらずに水分を拭き取ることが大切です。入浴や洗顔後は皮膚がまだ湿っている状態で保湿剤を塗布すると、水分を逃さずに閉じ込められます。正常にみえる部分もドライスキン状態にあるため全身に塗った方がよいです。

顔にアトピー性皮膚炎があるときにメイクをしてもよいですか?

炎症が強いときには、皮膚に余計な負担をかけないためにもメイクは控えることが推奨されます。症状が落ち着いている場合には、低刺激性の化粧品を選ぶことで使用できることもあります。メイクを行う際には事前に保湿を行い、使用後はお肌に負担をかけないようにやさしく洗浄して落とすことが大切です。

編集部まとめ

編集部まとめ

顔のアトピー性皮膚炎は、皮膚のバリア機能低下が原因で炎症や乾燥、かゆみを繰り返す病気です。顔は皮膚が薄く外部からの刺激を受けやすいため、症状が現れやすい部位のひとつです。赤みやかゆみ、乾燥、腫れといった症状が特徴であり、炎症後には一時的に色素沈着が残ることもあります。治療ではステロイド外用薬やカルシニューリン阻害薬など新しい外用薬や生物学的製剤が用いられる場合があります。日常生活では洗顔、保湿をしっかり行い、紫外線や刺激物を避けることが大切です。正しい知識を持って治療とスキンケアを継続することで、顔のアトピー性皮膚炎は改善とコントロールが期待できます。

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