「ナルコレプシーの薬」にはどんな種類がある?副作用となる症状も解説!【医師監修】

ナルコレプシーは、日中に強い眠気や突然の脱力が起こる病気です。学業や仕事、自動車の運転など日常生活に大きな影響を及ぼす一方で、詳しく知られていないために当事者や周囲が戸惑うことも少なくありません。本記事では、ナルコレプシーの概要や原因と検査方法、病院で行われる治療内容、その効果と副作用、服薬時や生活上の注意点を解説します。

監修医師:
林 良典(医師)
名古屋市立大学
【経歴】
東京医療センター総合内科、西伊豆健育会病院内科、東京高輪病院感染症内科、順天堂大学総合診療科、NTT東日本関東病院予防医学センター・総合診療科を経て現職。
【資格】
医学博士、公認心理師、総合診療特任指導医、総合内科専門医、老年科専門医、認知症専門医・指導医、在宅医療連合学会専門医、禁煙サポーター
【診療科目】
総合診療科、老年科、感染症、緩和医療、消化器内科、呼吸器内科、皮膚科、整形外科、眼科、循環器内科、脳神経内科、精神科、膠原病内科
目次 -INDEX-
ナルコレプシーについて

ナルコレプシーとはどのような病気ですか?
参照:
『ナルコレプシーの診断・治療ガイドライン』(日本睡眠学会)
『International Classification of Sleep Disorders-Third Edition: Highlights and Modifications』(Chest)
『Narcolepsies, update in 2023』(Rev Neurol (Paris))
ナルコレプシーの原因を教えてください
免疫に関連する遺伝的背景として、HLA-DQB1*06:02という遺伝子型をもつ方は発症リスクが高いとされています。ただし、単一の遺伝子異常で生じる遺伝病ではなく、遺伝的な素因や環境要因が複合的に関わって発症すると考えられており、頭部外傷、脳卒中、睡眠サイクルの変化、感染症なども関連要因として指摘されています。
参照:『Narcolepsy: a review』(Neuropsychiatr Dis Treat)
ナルコレプシーの検査方法と診断基準を教えてください
睡眠検査には、睡眠ポリグラフ検査(PSG)と、反復睡眠潜時検査(MSLT)があります。
PSGでは、脳波、眼電図、筋電図、心電図、酸素飽和度、胸郭と下肢の動きなどを測定し、ほかの睡眠障害を除外します。
MSLTでは、日中に複数回昼寝をしてもらい、入眠までの時間(睡眠潜時)や、入眠から15分以内にREM睡眠へ移行する現象(SOREMP)の有無を確認します。
国際的に広く用いられているICSD-3-TRの診断基準では、3ヶ月以上ほぼ毎日続く日中の強い眠気に加えて、以下のいずれかを満たす場合にナルコレプシー1型と診断します。
- 情動脱力発作があり、MSLTで平均睡眠潜時8分以下かつSOREMPが2回以上
- 情動脱力発作があり、夜間PSGでSOREMPがみられる
- 脳脊髄液中のオレキシンA(ヒポクレチン1)濃度が110pg/mL以下または、正常者平均の3分の1以下
一方、情動脱力発作がなく、オレキシンA濃度が正常(または未測定)で、MSLTの基準を満たす場合にはナルコレプシー2型と診断されます。
参照:
『Narcolepsies, update in 2023』(Rev Neurol (Paris))
『ナルコレプシーの診断・治療ガイドライン』(日本睡眠学会)
病院でのナルコレプシーの治療法

ナルコレプシーの治療法を教えてください
治療は薬物療法と生活習慣の工夫を組み合わせて行います。規則正しい睡眠習慣を意識し、必要に応じて短い昼寝をとることで、眠気の軽減につながる場合があります。
薬物療法では、日中の過眠症状に対する治療と、カタプレキシーや入眠時幻覚などのREM関連症状に対する治療が区別して行われます。
ナルコレプシーの治療ではどのような薬が使用されますか?
REM関連症状(カタプレキシー、入眠時幻覚、睡眠麻痺)に対しては、REM睡眠を抑制する作用のある抗うつ薬が用いられます。例えば、以下のような薬剤があります。
- 三環系抗うつ薬:クロミプラミン、イミプラミン、アミトリプチリン
- SSRI:パロキセチン、フルボキサミン、セルトラリン
- SNRI:ベンラファキシン、ミルナシプラン 、デュロキセチン
さらに、ナルコレプシーでは夜中に目覚めてしまう睡眠分断も問題となることがあり、この場合には短時間型または中間型の睡眠薬が用いられることがあります。
参照:『ナルコレプシーの診断・治療ガイドライン』(日本睡眠学会)
ナルコレプシーの治療薬の効果を教えてください
また、抗うつ薬(三環系抗うつ薬、SSRI、SNRI)は、カタプレキシーや入眠時幻覚、睡眠麻痺といったREM関連症状の軽減に有効とされています。発作回数の減少や症状の緩和が期待できますが、残存症状がみられることも多く、生活習慣の工夫と併せて取り組むことがすすめられます。
ナルコレプシーの治療薬に副作用はありますか?
- モダフィニル:頭痛、不眠、吐き気、肝障害
- メチルフェニデート:依存性、頭痛、消化器症状、ほてり感、動悸
- 三環系抗うつ薬:口渇、便秘、起立性低血圧
- SSRI、SNRI:吐き気、不眠、性機能障害
参照:
『ナルコレプシーの診断・治療ガイドライン』(日本睡眠学会)
『抗うつ薬を使いこなす』(女性心身医)
ナルコレプシーの服薬治療に関する注意点

ナルコレプシーの薬を飲んでいるときはどのような点に気を付けるとよいですか?
参照:『ナルコレプシーの診断・治療ガイドライン』(日本睡眠学会)
ナルコレプシーの薬はいつまで飲み続けますか?
また、妊娠や授乳期、小児や高齢期などライフステージによっても薬の使い方を見直すことがすすめられます。いずれの場合も、自己判断で中止や調整を行わず、医師と相談しながら進めていく必要があります。
ナルコレプシーの薬を飲み忘れたときの対処法を教えてください
編集部まとめ

ナルコレプシーは、抑えがたい日中の眠気が特徴の病気です。十分な睡眠をとっていても突然眠り込んでしまうことがあり、日常生活や仕事に大きな影響を及ぼします。
しかし、適切な診断と日常生活の工夫や薬物療法によって、生活の質を高めることが期待できます。
病気の特徴を理解し、薬の性質や正しい飲み方を把握することが、よりよい生活への第一歩です。医師と相談しながら、症状や薬とうまく付き合い、それぞれの生活に合った日常を築いていきましょう。




