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「ナルコレプシー」とは?原因についても詳しく解説!

 更新日:2023/03/27
「ナルコレプシー」とは?原因についても詳しく解説!

ナルコレプシーとは睡眠障害の1種です。日中いきなり居眠りを繰り返す、一見怠けているようにも見える病気です。

学業や仕事にも差し障り、なによりも周りの理解が得られないことが大きな苦痛になります。

自分ではコントロールができない眠気のため、仕事や日常生活にも制限がかかります。

そのため、会社勤めの場合は退職を余儀なくされることも少なくありません。ここでは、ナルコレプシーという病気を解説します。

また、ナルコレプシーの患者さんが日常生活を送るためのポイントも解説します。

工藤 孝文 医師

監修医師
工藤 孝文(医師)

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みやま市工藤内科 院長・糖尿病内科医・漢方医・統合医療医。福岡大学医学部を卒業後、アイルランド、オーストラリアへ留学。現在は、福岡県みやま市の工藤内科にて、糖尿病内科・ダイエット外来・漢方治療を専門に、地域診療を行っている。NHK「ガッテン!」「あさイチ」、日本テレビ「世界一受けたい授業」などテレビ出演多数。著書は50冊以上におよび、Amazonベストセラー多数。YouTube「工藤孝文のかかりつけ医チャンネル」が現在人気を集めている。 
日本内科学会・日本糖尿病学会・日本肥満学会・日本東洋医学会・日本抗加齢医学会・日本女性医学学会・日本高血圧学会、日本甲状腺学会・日本遠隔医療学会・小児慢性疾病指定医。

ナルコレプシーとは

ソファで眠る男性

ナルコレプシーはどんな病気ですか?

  • ナルコレプシーは過眠症の1つで、自分では制御できない強い眠気に襲われ、居眠りをしてしまう病気です。眠気を自覚する前に眠り込んでしまうこともあり、自分で眠気をコントロールすることは困難です。
  • 多くの場合、十分な睡眠を摂っていても日中の眠気は軽減できません。コントロールできない眠気は睡眠発作と呼ばれ、1日のうちに何度も襲ってくることがあります。睡眠発作は、長時間の運転中などの単調な状況下で起こりやすくなります。
  • 本人に病気という自覚がない場合が多く、発症して何年も治療されずに悪化している方も少なくありません。

特徴的な症状はありますか?

  • ナルコレプシーの特徴的な症状は、睡眠発作です。そして、寝入りばなに幻覚を見たり金縛りにあったりするのも、よくみられる症状です。
  • 主な症状には次のようなものがあります。
  • 睡眠発作
  • 入眠時幻覚
  • 睡眠麻痺
  • 情緒脱力発作
  • びっくりしたときなど、喜怒哀楽が激しいときに身体の脱力がみられる情緒脱力発作も知られた症状です。
  • この他にも、夜間に熟睡できない夜間睡眠分断や眠りながら行動する睡眠自動症、ものが2重に見える複視などがみられます。

単なる居眠りとは違うのですね。

  • ナルコレプシーは「居眠り病」といわれますが、単なる居眠りとは違います。
  • 睡眠不足や満腹のときには、誰しも眠気を感じることがあります。しかし、睡眠が足りていようが空腹だろうが、条件に関係なく眠気が襲ってくる病気です。しかも毎日、1日に何度も眠気が起こります。
  • 眠気を感じる前に眠り込むことも多く、自分で眠気をコントロールすることが不可能です。
  • また、半分眠りながら、仕事をするなどの行動もあります。
  • ナルコレプシーはれっきとした病気です。

ナルコレプシーの原因はなんでしょうか?

  • ナルコレプシーの原因は、完全には解明されていません。
  • しかし、患者さんの脳脊髄液中のオレキシン濃度が低いことが報告されています。そのことから、脳の中のヒポクレチン(オレキシン)を作り出す神経細胞が働かなくなることで引き起こされると考えられています。
  • また、インフルエンザなど感染症をきっかけに発症することが多い病気です。そのことから、免疫細胞の異常により、感染源と間違ってオレキシンを作る神経細胞を攻撃するからと推察されています。
  • また、頭部外傷も原因の1つです。
  • 近年では、遺伝的要素も原因となるのではないかと考えられています。

ナルコレプシーは周囲の理解を得るのが難しい

悩む女性

どのくらいの人がナルコレプシーに悩んでいるのですか?

  • 日本においてナルコレプシーの発症は、約600人に1人(約0.16%)と報告されています。
  • 全ての人種に発病しますが、世界中で1番有病率の高いのが日本です。欧米での発症率は4,000人に1人(約0,025%)のため、日本人の有病率が高いことが判ります。
  • 発症年齢は10代が多く、ピークは14~15歳です。
  • 男女関係なく発病すると考えられていますが、医療機関で実際に治療を受けているのは男性が多くなっています。これは、男性が会社などで、居眠りをして指摘を受けることが要因です。

「居眠り病」と聞くと、あまり良いイメージがありません…

  • 睡眠発作は退屈な会議や授業、長距離の運転中など単調な時間に起こりやすくなります。そのため「居眠り病」と呼ばれます。
  • 「なまけもの」などのレッテルを貼られ、社会的に誤解や偏見にさらされやすい病気です。また、本人も病気と自覚していない方も少なくありません。
  • 医療機関を受診しても、睡眠障害の専門医でなければ「眠れないのは問題があるが、眠れるのなら大丈夫だろう」というような無理解な診断をされることもあります。
  • 正しい処置をすれば怖い病気ではないため、専門医にかかることがおすすめです。

本人も病気と気づくのは難しそうですね。

  • 発症ピークは14〜15歳です。本人が病気と自覚していないことが多く、発症から診断までの期間が平均15年と報告されています。
  • つまり、中学生のときに発症して、30歳頃に初めて受診するということです。学生時代に「よく居眠りをする」といわれ、社会人になって「病気ではないのか」と指摘をされて受診するといったケースが多いと推察されます。
  • ナルコレプシーは約600人に1人(0.16%程度)と珍しい病気ではありません。認知度向上のため、日本ナルコレプシー協会は全国の中等学校・高等学校に向けてパンフレットを配布しています。
  • 病気との自覚がないまま社会人になり、運転中に睡眠発作を起こすなどのリスクを防ぐ必要があります。

治療法はあるのですか?

  • ナルコレプシーは、原因が解明されていない病気です。そのため、根本的な治療法はありません。
  • 一般的な治療法は規則正しい生活をして、薬で眠気をコントロールするというものです。
  • ナルコレプシーは昼に居眠りをする反面、夜はよく眠れないという病気です。そのため、夜には睡眠誘導剤を、昼には入眠幻覚などを抑える薬を処方します。
  • 症状が軽い場合は、薬を用いずに規則正しい生活と昼寝することで、症状の改善が可能です。軽症の方なら、日中に1〜2回の昼寝をするだけで、格段に楽になることもあります。
  • 理解のある職場では、30分程の短時間の昼寝を許可してもらっているケースもあります。逆にいうと、理解のない職場でナルコレプシーの患者さんが働くのは困難です。

患者さんが無理なく日常生活を送るポイント

笑顔で目覚める女性

周囲はどのようにサポートすればいいですか?

  • ナルコレプシーという病気に対して、理解することが大切です。患者さんは、目が覚めているときは能力を発揮しますが、すぐに居眠りをしてしまいます。また、半分眠りながら仕事をして、失敗をすることも少なくありません。
  • 周りの理解がないと「さぼっている」「能力が低い」という評価になります。そのため、休職・復職・転職を繰り返す傾向があるのがナルコレプシーです。
  • 家族を含め周囲は、まず病気であることを理解してあげましょう。
  • 周りの理解が得られないことで、症状が悪化する可能性もあります。勤務先も昼寝タイムを用意して、本人が能力を発揮できる体制を整えることを期待されています。

患者さん自身が気をつけることはなんでしょうか?

  • ナルコレプシーの症状を改善するためには、規則正しい生活が必須です。
  • まず夜更かしを避けて、早く寝るようにしましょう。患者さんには、夜型生活をする人が多い傾向があります。特にフリーランスなどで在宅で働く方は「昼は眠くなるから夜に働く」という人も少なくありません。しかし、夜更かし生活は症状を悪化させるリスクがあります。
  • 治療は何十年と続くことが予想されます。完治を目指すのではなく、薬を服用せずに病気をコントロールできるようになるのが治療のゴールです。

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

  • 居眠りが続くようなら、医療機関に相談することをおすすめします。
  • 多くの人は内科を訪れますが、ナルコレプシーに詳しい内科医はあまりいません。ナルコレプシーの診察なら精神科、できれば睡眠障害を研究している精神科がおすすめです。遠くて通院が大変ならば、病院に相談して近くの専門医を紹介してもらいましょう。
  • また、自分自身で病気を理解することが肝心です。社会生活では、他の人に病気に対する理解を求めることが必要になります。そのときに、きちんとナルコレプシーの説明をする必要があるからです。

編集部まとめ

医療スタッフ
ナルコレプシーは命に別状はなく、「眠れるのだから問題ない」という医師もいるほどです。しかし、患者さん本人には特有の悩みや苦しみがあります。

さらに「居眠りでしょ」という、周りの理解の無さが追い打ちをかけます。完治する可能性は低く、発症から10年20年と治療が続くケースが多いのも苦痛です。

しかし、きちんと専門医にかかり、通院を続けていると上手に病気と付き合っていくことも可能です。

また、10年も治療を続けると半分近くの患者さんが、薬がいらない程度に改善すると報告されています。

まずは信頼できる睡眠障害の専門医に相談をしましょう。

この記事の監修医師