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「ナルコレプシーの薬」にはどんな種類がある?副作用となる症状も解説!【医師監修】

 公開日:2025/10/16
「ナルコレプシーの薬」にはどんな種類がある?副作用となる症状も解説!【医師監修】

ナルコレプシーは、日中に強い眠気や突然の脱力が起こる病気です。学業や仕事、自動車の運転など日常生活に大きな影響を及ぼす一方で、詳しく知られていないために当事者や周囲が戸惑うことも少なくありません。本記事では、ナルコレプシーの概要や原因と検査方法、病院で行われる治療内容、その効果と副作用、服薬時や生活上の注意点を解説します。

林 良典

監修医師
林 良典(医師)

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名古屋市立大学卒業。東京医療センター総合内科、西伊豆健育会病院内科、東京高輪病院感染症内科、順天堂大学総合診療科、 NTT東日本関東病院予防医学センター・総合診療科を経て現職。医学博士。公認心理師。日本専門医機構総合診療特任指導医、日本内科学会総合内科専門医、日本老年医学会老年科専門医、日本認知症学会認知症専門医・指導医、禁煙サポーター。
消化器内科
呼吸器内科
皮膚科
整形外科
眼科
循環器内科
脳神経内科
眼科(角膜外来)

ナルコレプシーについて

ナルコレプシーについて

ナルコレプシーとはどのような病気ですか?

脳を覚醒させる機能が低下するために日中に強い眠気が続く状態を過眠症と呼びます。ナルコレプシーはその一種で、夜間に十分な睡眠をとっていても、昼間に強い眠気で居眠りをしてしまいます。さらに、入眠時に幻覚や身体を動かせない感覚(睡眠麻痺)を経験することや、感情をきっかけに突然力が入らなくなる発作(情動脱力発作、カタプレキシー)がみられることがあります。カタプレキシーの有無や脳脊髄液中のオレキシン濃度によって1型と2型に分類されます。

参照: 『ナルコレプシーの診断・治療ガイドライン』(日本睡眠学会) 『International Classification of Sleep Disorders-Third Edition: Highlights and Modifications』(Chest) 『Narcolepsies, update in 2023』(Rev Neurol (Paris))

ナルコレプシーの原因を教えてください

ナルコレプシーの主な病態は、脳の視床下部にあるオレキシンを産生する神経細胞が減少し、覚醒の維持が難しくなることです。その背景には自己免疫反応を含め、複数の要因が関与すると考えられています。

免疫に関連する遺伝的背景として、HLA-DQB1*06:02という遺伝子型をもつ方は発症リスクが高いとされています。ただし、単一の遺伝子異常で生じる遺伝病ではなく、遺伝的な素因や環境要因が複合的に関わって発症すると考えられており、頭部外傷、脳卒中、睡眠サイクルの変化、感染症なども関連要因として指摘されています。

参照:『Narcolepsy: a review』(Neuropsychiatr Dis Treat)

ナルコレプシーの検査方法と診断基準を教えてください

ナルコレプシーの診断には、過眠の自覚症状と睡眠検査が用いられ、必要に応じて脳脊髄液検査も行われます。

睡眠検査には、睡眠ポリグラフ検査(PSG)と、反復睡眠潜時検査(MSLT)があります。 PSGでは、脳波、眼電図、筋電図、心電図、酸素飽和度、胸郭と下肢の動きなどを測定し、ほかの睡眠障害を除外します。 MSLTでは、日中に複数回昼寝をしてもらい、入眠までの時間(睡眠潜時)や、入眠から15分以内にREM睡眠へ移行する現象(SOREMP)の有無を確認します。

国際的に広く用いられているICSD-3-TRの診断基準では、3ヶ月以上ほぼ毎日続く日中の強い眠気に加えて、以下のいずれかを満たす場合にナルコレプシー1型と診断します。

  • 情動脱力発作があり、MSLTで平均睡眠潜時8分以下かつSOREMPが2回以上
  • 情動脱力発作があり、夜間PSGでSOREMPがみられる
  • 脳脊髄液中のオレキシンA(ヒポクレチン1)濃度が110pg/mL以下または、正常者平均の3分の1以下

一方、情動脱力発作がなく、オレキシンA濃度が正常(または未測定)で、MSLTの基準を満たす場合にはナルコレプシー2型と診断されます。

参照: 『Narcolepsies, update in 2023』(Rev Neurol (Paris)) 『ナルコレプシーの診断・治療ガイドライン』(日本睡眠学会)

病院でのナルコレプシーの治療法

病院でのナルコレプシーの治療法

ナルコレプシーの治療法を教えてください

現時点では根治的な治療法はなく、目標は対症療法によって日中の眠気をコントロールし、副作用や依存のリスクを抑えながら社会生活への影響をできるだけ減らすことです。

治療は薬物療法と生活習慣の工夫を組み合わせて行います。規則正しい睡眠習慣を意識し、必要に応じて短い昼寝をとることで、眠気の軽減につながる場合があります。

薬物療法では、日中の過眠症状に対する治療と、カタプレキシーや入眠時幻覚などのREM関連症状に対する治療が区別して行われます。

ナルコレプシーの治療ではどのような薬が使用されますか?

日中の強い眠気に対しては、中枢神経刺激薬が用いられます。モダフィニルやメチルフェニデートなどが代表的です。一般的には依存性を避けやすい点でモダフィニルが第一選択ですが、効果や副作用に応じて適した薬剤を選択します。 REM関連症状(カタプレキシー、入眠時幻覚、睡眠麻痺)に対しては、REM睡眠を抑制する作用のある抗うつ薬が用いられます。例えば、以下のような薬剤があります。

  • 三環系抗うつ薬:クロミプラミン、イミプラミン、アミトリプチリン
  • SSRI:パロキセチン、フルボキサミン、セルトラリン
  • SNRI:ベンラファキシン、ミルナシプラン 、デュロキセチン

さらに、ナルコレプシーでは夜中に目覚めてしまう睡眠分断も問題となることがあり、この場合には短時間型または中間型の睡眠薬が用いられることがあります。

参照:『ナルコレプシーの診断・治療ガイドライン』(日本睡眠学会)

ナルコレプシーの治療薬の効果を教えてください

中枢神経刺激薬(モダフィニルやメチルフェニデート)は、日中の過度な眠気を抑える効果があるとされています。強い眠気が常に続く状態から、ある程度軽減されて日常生活を送りやすくなるケースもありますが、効果には個人差があります。

また、抗うつ薬(三環系抗うつ薬、SSRI、SNRI)は、カタプレキシーや入眠時幻覚、睡眠麻痺といったREM関連症状の軽減に有効とされています。発作回数の減少や症状の緩和が期待できますが、残存症状がみられることも多く、生活習慣の工夫と併せて取り組むことがすすめられます。

ナルコレプシーの治療薬に副作用はありますか?

ナルコレプシーの治療薬にはさまざまな副作用が知られており、代表的なものは以下のとおりです。

  • モダフィニル:頭痛、不眠、吐き気、肝障害
  • メチルフェニデート:依存性、頭痛、消化器症状、ほてり感、動悸
  • 三環系抗うつ薬:口渇、便秘、起立性低血圧
  • SSRI、SNRI:吐き気、不眠、性機能障害

参照: 『ナルコレプシーの診断・治療ガイドライン』(日本睡眠学会) 『抗うつ薬を使いこなす』(女性心身医)

ナルコレプシーの服薬治療に関する注意点

ナルコレプシーの服薬治療に関する注意点

ナルコレプシーの薬を飲んでいるときはどのような点に気を付けるとよいですか?

アルコールとの併用は、薬の効果や副作用が予測しにくくなるため控えましょう。また薬剤を急に中断すると、症状が悪化するおそれがあります。不眠や頭痛、口渇など副作用が疑われる症状が出た場合でも、自己判断では中止せず、速やかに医師や薬剤師に相談することが望まれます。薬の効き方や副作用には個人差があるため、定期的に通院して状態を共有し、薬の量や種類を調整していくことが大切です。

参照:『ナルコレプシーの診断・治療ガイドライン』(日本睡眠学会)

ナルコレプシーの薬はいつまで飲み続けますか?

ナルコレプシーは慢性的に経過するため、薬を長期にわたり使用することが一般的です。ただし、症状が安定している場合や副作用が問題となる場合には、減量や中止を検討することもあります。

また、妊娠や授乳期、小児や高齢期などライフステージによっても薬の使い方を見直すことがすすめられます。いずれの場合も、自己判断で中止や調整を行わず、医師と相談しながら進めていく必要があります。

ナルコレプシーの薬を飲み忘れたときの対処法を教えてください

薬によって対応は異なりますが、2回分をまとめて服用しないことが基本です。ただし、飲み忘れたときの細かな対応は異なるため、あらかじめ医師や薬剤師に確認しておくとよいでしょう。

編集部まとめ

編集部まとめ ナルコレプシーは、抑えがたい日中の眠気が特徴の病気です。十分な睡眠をとっていても突然眠り込んでしまうことがあり、日常生活や仕事に大きな影響を及ぼします。 しかし、適切な診断と日常生活の工夫や薬物療法によって、生活の質を高めることが期待できます。

病気の特徴を理解し、薬の性質や正しい飲み方を把握することが、よりよい生活への第一歩です。医師と相談しながら、症状や薬とうまく付き合い、それぞれの生活に合った日常を築いていきましょう。

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