「仕事が原因で適応障害」を発症することはある?なりやすい職場環境や業務の特徴も解説!
公開日:2025/10/17


監修医師:
前田 佳宏(医師)
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島根大学医学部卒業。東京大学医学部附属病院精神神経科に入局後、東京警察病院、国立精神神経医療研究センター、都内クリニックにて薬物依存症、トラウマ、児童精神科の専門外来を経験。現在は和クリニック院長。愛着障害やトラウマケアを専門に講座や情報発信に努める。診療科目は精神神経科、心療内科、精神科、神経内科、脳神経内科。 精神保健指定医、認定産業医の資格を有する。
目次 -INDEX-
適応障害の症状と原因
適応障害の主な症状を教えてください
適応障害では、精神面と身体面の両方にさまざまな症状が現れます。主な精神症状には、気分の落ち込み(抑うつ気分)、不安、イライラ、集中力の低下などがあります。身体症状としては、めまい、頭痛、倦怠感、食欲不振、不眠といった不調が出ることも特徴です。これらの症状はうつ病にも似ていますが、適応障害の場合は明確なストレス要因に反応して起こり、原因となるストレスから離れると症状の改善が期待できる点が特徴です。
適応障害を発症するメカニズムを教えてください
適応障害は、過度なストレスに対する心身の反応が長期間続いた結果、生じると考えられています。人間はストレスに対抗することで一時的に頑張れますが、ストレスが慢性的に続くとストレスにうまく対処できなくなります。その結果、疲労感や倦怠感、食欲不振、不眠、めまい、抑うつ気分などの症状が現れるようになります。このようにストレスに対処しきれなくなった状態で心と身体の不調が出るのが適応障害です。
適応障害になりやすい状況や仕事
仕事が原因で適応障害を発症することはありますか?
はい、仕事上のストレスは適応障害の大きな要因になりえます。実際、日本では適応障害の増加傾向が指摘されており、特に職場環境への不適応が原因で発症するケースが多いとされています。例えば、職場での過重労働や人間関係のトラブルが続くと、それが強い心理的ストレスとなって適応障害に陥ることがあります。仕事のプレッシャーや責任が重すぎる状況、ハラスメントを受けている状況などでは、心身がストレスに耐えきれず発症することがあります。
参照:『日本における「適応障害」患者数の増加』(社会政策学会誌『社会政策』)
どのような状況で適応障害になりやすいですか?
適応障害は生活環境の大きな変化やストレス要因によって引き起こされる傾向があります。具体的には、以下のような状況になることがあります。
こうした出来事が重なり、本人のストレス耐性を超えてしまうと適応障害を発症してしまいます。
| 適応障害を発症しやすい状況 | 具体例 |
|---|---|
| 環境の変化 | 就職・転職、転勤、引っ越し、結婚、出産など |
| 人間関係の問題 | 職場での上司あるいは同僚とのトラブル、いじめ、失恋など |
| 役割・業務の プレッシャー | 昇進による責任増加、大きなプロジェクトの失敗など |
適応障害になりやすい職場環境や業務の特徴を教えてください
適応障害を誘発しやすい職場にはいくつか共通する特徴があります。例えば以下のような環境や業務が挙げられます。
このような職場では、本人が我慢して頑張り続けた結果として心身に不調をきたし、適応障害に陥ることがあります。特にパワハラや長時間残業に耐え続けると徐々に憂うつ感や不眠などが現れ、やがて出社できなくなることもあります。
| 職場で適応障害を発症しやすい要因 | 内容 |
|---|---|
| 長時間労働・過重労働 | 慢性的な残業や休みなしの勤務が続くことで強いストレスとなる |
| ハラスメントの存在 | パワーハラスメントやセクシャルハラスメントなど、いじめ・嫌がらせがある |
| サポートの欠如 | 上司や同僚から支援が得られず孤立しやすい、相談相手がいない |
| 業務内容のミスマッチ | スキルや適性に合わない配置、急な部署異動で馴染めない |
| 人員不足・過度な責任 | 人手不足で業務が集中する、責任が過度に重いプロジェクトを任されているょ |
適応障害になったときの対処法と仕事との付き合い方
適応障害の治療法を教えてください
適応障害の治療は、休養と環境調整が基本です。まずはストレスの原因となった環境から離れてしっかり心身を休めること(休職など)が重要です。短い休みでは不十分なことがあり、長期間の休養を取る必要がある方もいらっしゃいます。
環境調整としては、職場であれば配置転換や業務内容の変更など、ストレス源を減らす対策を取ります。加えて、症状に応じて薬物療法(抗不安薬や抗うつ薬、睡眠薬など)や、精神療法、心理療法(カウンセリングや認知行動療法)を組み合わせます。医師と相談しながら無理のない範囲で治療を続けることが大切です。適応障害はストレス因子を除けば回復しやすい疾患ですので、焦らず治療と休養に専念しましょう。
適応障害になったら仕事を休むべきですか?
はい。適応障害と診断されたら、原因となったストレスから離れることが治療の第一歩です。仕事が原因の場合は休職することが治療のためには重要です。無理に出勤を続けてしまうと症状が悪化しかねません。「自分が弱いせいだ」と考えず、治療の一環として休むようにしましょう。十分な休養を取ることで心身の回復が期待できます。復帰までの期間は人それぞれですが、医師と相談しながら少なくとも数週間から数ヶ月は治療と休息に充てましょう。会社には主治医の診断書を提出して適切な休職手続きを取り、焦らず治療に専念するようにします。
適応障害で復職しても問題ない兆候はありますか?
職場復帰の目安としては、精神面および身体面の症状が十分に安定していることが挙げられます。具体的には、抑うつ気分や不安感、不眠などの症状がほとんど改善し、日常生活の活動が徐々に再開できている状態がひとつのサインです。
医師から「もう復職して大丈夫」という許可が出ることも大前提です。復職にあたっては主治医が現在の体調や精神状態を診断し、職場とも協議の上でタイミングを決めます。「朝起きて職場に行くことへの強い不安がなくなった」「休日に気分転換できるようになった」といった本人の感覚も参考にします。ただし、無理は禁物なので、「もう働いても大丈夫」と自信を持てるまで治療を続けるようにします。主治医の診断に従い、慎重に復職の可否を判断しましょう。
復職後に気を付けることを教えてください
職場復帰後は、再発を防ぐために以下の点に注意しましょう。
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| 無理をしない | 最初からもとのように働こうとせず、自分のペースを守ることが重要です。復職直後は業務量や責任を段階的に増やし、時短勤務や徐々に慣らす復帰から始めるとよいでしょう。 |
| 主治医やカウンセラーとの連携 | 復職後も定期的に通院し、心身の状態を医師に相談しましょう。体調不良時は早めに受診し、対応をあおぎましょう。 |
| 職場の理解と環境調整 | 上司や同僚に体調や希望を共有し、協力を得るようにします。業務の優先順位を見直し、仕事を抱え込み過ぎないようにしましょう。 |
| 再発時の対応と選択肢 | 項症状が再発したら無理をせず休職延長を検討しましょう。職場環境が合わない場合は転職など大きな環境変化も選択肢に入ります。 |
編集部まとめ
適応障害は、誰にでも起こりうる病気です。特に仕事は人生の多くの時間を占めるため、その影響は大きく、職場の環境や人間関係が原因となって発症することも少なくありません。
しかし、適応障害は、早めの気付きと適切な対応で回復が見込める疾患です。無理に頑張り続けるのではなく、心身からのサインを受け止め、医師に相談しながら治療や休養を進めていくことが大切です。
また、復職後も再発予防のために無理をせず、自分のペースを守ること、職場や周囲と連携しながら安心して働ける環境を整えていくことが求められます。適応障害をきっかけに、働き方や生活習慣を見直すことは、長期的に心身の健康を守るうえでも大きな意味を持ちます。
「自分だけが弱いのではないか」と思い込まず、必要なサポートを受けながら前に進むことが、再び安心して社会に出る第一歩となるでしょう。
参考文献




