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社員が「適応障害」になったとき企業が取るべき対応や復帰のサポート【専門医解説】

 公開日:2024/09/23

自分の置かれた環境にうまく馴染めず、出社拒否などに至ることもある適応障害。そんな社員に対し、企業はどのようなサポートができるのでしょうか? 職場の対応や復帰のサポートについて、ペディ汐留こころとからだのクリニックの岩谷先生に教えてもらいました。

岩谷泰志

監修医師
岩谷泰志(ペディ汐留こころとからだクリニック)

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筑波大学医学専門学群卒業後、京都大学病院麻酔科で研修を2年間行う。その後、東京慈恵医科大学精神医学講座に入局し、東京慈恵医科大学付属病院の平川病院を含む関連病院にて精神科医として勤務。2003年に「いわたにクリニック」を開業。2022年には「ペディ汐留こころとからだクリニック」院長に就任。

適応障害とは?

適応障害とは?

編集部編集部

適応障害とはどのような病気ですか?

岩谷 泰志先生岩谷先生

確認できるストレス要因に反応して、3ヶ月以内に情動面または行動面で症状が出現する疾患のことを、適応障害といいます。

編集部編集部

もう少し具体的に教えてください。

岩谷 泰志先生岩谷先生

企業における適応障害として多く見られるのは、異動や転勤など、新しい環境になったとき、その状況や出来事にうまく慣れることができず、さまざまな精神症状を引き起こすというものです。リーダー的立場になるなど、責任ある仕事を任された途端に行き詰ってしまう、あるいは「自分は周りよりも能力が劣っているのではないか」ということばかり気にしてしまう、自己肯定感が持てない、というのもよくあるケースです。

編集部編集部

どのような症状が見られるのですか?

岩谷 泰志先生岩谷先生

症状はさまざまで、抑うつ、不安、無気力、思考力や集中力の欠如、絶望感、イライラなどが見られることがあります。身体症状としては、全身倦怠感や不眠、動悸、めまい、頭痛などが見られることがあります。

編集部編集部

放置するとどうなるのですか?

岩谷 泰志先生岩谷先生

症状を放置するとうつ病や不安障害などの症状が見られたり、攻撃的な行動になって周りに影響を与えたりすることがあります。そのため、おかしいなと感じたら早めに受診することが必要です。

編集部編集部

どんな症状が見られたら受診したら良いのでしょうか?

岩谷 泰志先生岩谷先生

先述のような抑うつ、不眠などの精神症状や全身倦怠感、不眠、動悸などの身体症状が2週間程度続いたら受診することをお勧めします。

適応障害の社員への対応

適応障害の社員への対応

編集部編集部

適応障害と診断されたら、会社へ伝えるべきでしょうか?

岩谷 泰志先生岩谷先生

適応障害がひどくなると会社へ行けなくなるなど、仕事にも支障が及んできます。そのため、適応障害と診断され、仕事に支障が及び始めたら医師に診断書を作成してもらって会社へ報告しましょう。その後、上司などと相談し、何らかの配慮をしてもらえないか相談してみましょう。

編集部編集部

一方、企業側は適応障害の社員に対し、どのように対処すれば良いでしょうか?

岩谷 泰志先生岩谷先生

当該社員の仕事のパフォーマンスが低下し、医師により適応障害と診断された場合には、仕事を休ませる必要があるか検討します。企業により休職制度は異なるため、就業規則に応じて休職の手続きを進めます。休職期間は症状にもよりますが、約2~3ヶ月とされています。

編集部編集部

当該社員の休職中、企業は何をすべきでしょうか?

岩谷 泰志先生岩谷先生

その社員が休職した場合は、「病気休業開始及び休業中のケア」「主治医による職場復帰可能の判断」「職場復帰の可否の判断及び職場復帰支援プランの作成」「最終的な職場復帰の決定」「職場復帰」という5つのステップを行うよう、厚生労働省より定められています。これに沿って休職中の社員をサポートすることが必要です。

編集部編集部

ステップが定められているのですね。

岩谷 泰志先生岩谷先生

はい。たとえば第1ステップの「病気休業開始及び休業中のケア」では、社員が安心して療養に専念できるよう、傷病手当金などの経済的な保障や不安・悩みの相談先の紹介を行ったり、公的または民間の職場復帰支援サービスを紹介したりすることが必要です。

復職までに企業がすべきこと

復職までに企業がすべきこと

編集部編集部

その後は回復状況に応じて復職までのプランを考えるのですね。

岩谷 泰志先生岩谷先生

はい。同時にほかの社員が適応障害になるのを予防するため、適切に対処する必要があります。たとえば社員に対してストレスチェックを行い、ストレスの程度が高いと思われる社員には産業医による面談を行います。

編集部編集部

そのほかにはどのような予防法がありますか?

岩谷 泰志先生岩谷先生

産業医による健康相談を行ったり、社内メンタルヘルス相談窓口を設けたり、日頃から社員のストレス環境について情報収集に努めることが大切です。あわせて必要に応じ、社員の家族へ情報を提供し、企業と家族が一緒に対策を講じることもあります。

編集部編集部

適応障害と診断された社員が復職するにあたって、企業はどのようなことに気をつけなければならないのでしょうか?

岩谷 泰志先生岩谷先生

大切なのは再発を予防することです。そのため、主治医と連携してきちんと回復状況を確認することや、職場復帰の可否について総合的に判断することが必要です。また、軽作業や定型作業に従事する、出張は制限するというように、少しずつ段階的に復職できるように配慮しましょう。なかには試し出勤の制度を設け、まずは短時間の勤務から開始させる企業もあります。そのように、社員が無理なく確実にステップを踏んで復職できるよう、体制を整えることが必要です。

編集部編集部

最後に、読者へのメッセージがあれば。

岩谷 泰志先生岩谷先生

社員が適応障害に陥ったとき、企業に求められるのは、その社員がなぜ自分の環境に適応が困難なのか、適切に分析することです。それにはSPIなどのツールが非常に有効であり、そうしたテストを社員に行わせることで、社員一人ひとりが個別に持っている能力特性を把握することができます。適応障害を発症した社員が復職するにあたって重要なのは、病気が治ることだけではなく、以前のパフォーマンスを取り戻せることです。以前のパフォーマンスを取り戻すには、本人の特性に適した職場環境を整えることが重要。そのためにもSPIなどのツールを活用し、一人ひとりの特性をきちんと把握することが必要です。どのようなツールを用いれば良いのか困ったら、社員のメンタルヘルスケアに詳しい専門医に相談することをお勧めします。

編集部まとめ

適応障害を発症した場合に大事なのは、病気が治ることだけではなく、以前のような仕事のパフォーマンスを発揮できること。そのため、企業は無理のないプロセスを講じ、社員の復職をサポートすることが必要です。産業医など医師の力を借りながら、企業独自のサポート体制を考えてみましょう。

医院情報

ペディ汐留こころとからだのクリニック

ペディ汐留こころとからだのクリニック
所在地 〒105-7390 東京都港区東新橋1-9-1東京汐留ビルディング地下2階
アクセス 都営地下鉄大江戸線・ゆりかもめ線「汐留駅」 徒歩1分
JR・東京メトロ「新橋駅」 徒歩7分
診療科目 精神科、心療内科

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