【闘病】婚約者を事故で亡くし「喪失体験による抑うつ状態」に… 誰もがなり得る病
SAKUさん(仮称)は、2018年に婚約者を事故で失い「喪失体験による抑うつ状態」をきたしました。薬物治療を開始するとともにカウンセリング治療を半年間受けたものの、症状は悪化。その後、薬物治療を継続して1度は完治したものの、再発してしまい、薬物治療を再開したといいます。SAKUさんに、発症から再発、完治までどのような経緯があったのか、話を聞きました。
※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2022年7月取材。
体験者プロフィール:
SAKUさん(仮称)
大阪在住。1989年生まれ。独身・一人暮らし。 診断時の職業は事務職。2018年に婚約者を事故で失い喪失体験による抑うつ状態を発症。1年半後に一度は治るも、半年後に再発。薬物治療開始から3年目で完治。
記事監修医師:
別府 拓紀(精神科医)
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。
大切な人を失い抑うつ状態に
編集部
病気が判明した経緯について教えてください。
SAKUさん
2018年に婚約者を事故で亡くしました。それから他人と関わりを持ちたくなくなり、不眠、感情消失などの不調が2週間以上続いたことで、精神科を受診しました。カウンセリングの結果「喪失体験による抑うつ状態」と診断されました。
編集部
どのように治療を進めていくと医師から説明がありましたか?
SAKUさん
私の場合、カウンセリング治療は逆効果になってしまうため、薬物治療のみで様子をみていくと説明がありました。
編集部
病気が判明したときの心境について教えてください。
SAKUさん
自分のことなのに、他人事のような感覚で、何も感じられませんでした。いま思えば、これもうつ症状が原因だったのではないかと思っています。
編集部
発症後、生活にはどのような変化がありましたか?
SAKUさん
当時、1日30分〜2時間ぐらいしか睡眠ができず、ひどい時は一睡もできない状態が続いていました。ものごとへの意欲や感情、食欲も無くなり、誰とも連絡を取らずに家の中で1人で過ごす状態が続いていました。
薬物療法とカウンセリングで治癒
編集部
SAKUさんが経験した治療の内容を教えてください。
SAKUさん
入院はせず、自宅で療養を行いました。抗うつ剤、抗不安薬、睡眠導入剤、非定型抗精神病薬などの薬物治療で、多い時は10錠の薬を服用していました。当時の記憶が一部ありませんので、曖昧ではっきりはわからないですね。1日2回(朝10時、夕方17時)病院に電話をしていたのを覚えています。
編集部
そのお電話は、なんのために行っていたのですか?
SAKUさん
「SAKU(実際は本名)です」と言うだけの短い電話でした。発症時は「なぜこんなことを?」と思っていましたが、治療の一環だったのだと思います。病院への電話は先生からの指示でしたが、それがなければ今の自分はいなかったかもしれません。
編集部
その後、症状は安定したのでしょうか?
SAKUさん
1年半が経過して、一度は完治したのですが、そこから婚約者の命日が近づくにつれて、思い出すことも増え、不眠がひどくなりました。そこから感情のコントロールができなくなり、再発してしまいました。深刻化しないように、薬物治療から開始し、自宅での治療が再び始まりました。少し症状が落ちついてきたころから、カウンセリングと薬物治療をおこないました。
寄り添って助けて欲しい
編集部
現在の体調や生活の様子について教えてください。
SAKUさん
体調は崩しやすいですが、今では人とコミュニケーションをとり、笑える様になりました。現在は治療も終了し、仕事にも復帰することができています。
編集部
もし昔の自分に声をかけられたら、どんな助言をしますか?
SAKUさん
「つらいだろうけど、泣いて迷惑をかけてもいいから、もっと人に助けを求めていいんだよ」と助言したいです。
編集部
あなたが「喪失体験による抑うつ状態」を体験し、これを読んでいる人にメッセージがあればお願いします。
SAKUさん
うつ病は「病気ではなく、心が弱いからだ」と言う人がいます。しかし、心が弱いからだけではなく、望んでいなくても誰でもなるものだと思います。近くに同じような人がいたら、理解できなくてもいいので、せめて手を差し伸べて、助けてあげて欲しいです。
編集部
医療従事者に望むことはありますか?
SAKUさん
ありがたいことに、自分は救ってもらいましたが、困っている人はほかにもたくさんいます。大変だとは思いますが、できるだけ多くの人を救ってあげて欲しいです。
編集部
最後に、読者に向けてのメッセージをお願いします。
SAKUさん
周りに助けを求めたくても、声をあげられない人がたくさんいます。もしそういう人が身近にいたら、何も言わなくていいのでそばにいてあげて欲しいです。中には命を落とす人もいます。少しの理解や歩みよりが、助けになる部分もあると思います。
編集部まとめ
喪失体験による抑うつ状態は、気をつけていれば予防できるというものではなく、誰にでも身近に起こりうる病気で他人事ではありません。「大事な人がいるなら後悔しない様にして欲しい」と最後に話されていました。身近に悩まれている人がいたら、そっと寄り添ってあげてください。