「適応障害」になりやすい人の特徴はご存じですか? 症状や対処法も医師が解説!
日常生活において何らかのストレスが原因となり、心身のバランスが崩れた状態になる「適応障害」。なかには、仕事や職場での人間関係がストレスとなり、会社へ着いた途端に動悸や吐き気がする人もいるかもしれません。一体なぜ、そのような症状が出現するのか、どのように対処すべきなのかについて、「船堀ふじたメンタルクリニック」の藤田先生に解説していただきました。
監修医師:
藤田 雅也(船堀ふじたメンタルクリニック)
会社に行くと動悸や吐き気がするのはなぜ?
編集部
会社へ行くと、動悸や吐き気がするなど体調が悪くなります。これはなぜですか?
藤田先生
もしかすると、適応障害かもしれません。適応障害は「うつ病の一歩手前」の状態で、文字通り、社会や環境に適応するのが難しくなり、心身に様々な症状をもたらす疾患です。
編集部
「適応するのが難しい」とは、どういうことですか?
藤田先生
人間は誰もが様々な環境に身を置いて生活しています。会社、家庭、学校など様々な環境で生活していますし、転職や結婚などを契機に環境が変わることもあります。しかし、なかには環境にうまく馴染めず、強いストレスを感じる人もいます。そのような場合には適応障害を発症しやすくなります。
編集部
なかなか環境に馴染めない人が、適応障害になりやすいのですね。
藤田先生
環境に馴染もうと頑張りすぎてしまって、過剰反応で強いストレスを感じ、適応障害になる人もいます。
編集部
しかし、会社や学校などでストレスを感じている人は多いと思います。
藤田先生
たしかに、会社や学校などにまったくストレスを感じていないという人は少なく、多くの人が何らかのストレスを抱えているでしょう。しかし、なかにはストレスをうまく処理し、上司や同僚に頼ったり、適宜休養を取ったりして、環境に適応している人もいます。
編集部
適応障害になりやすい人の特徴はありますか?
藤田先生
一般的には「とても真面目で責任感が強い人」が適応障害になりやすいとされています。また、「自分の感情を抑制して相手を優先してしまう人」「何でも完璧を目指そうとする人」「繊細で敏感な人」「几帳面で細かいことが気になる人」なども適応障害になりやすいかもしれません。
適応障害の症状
編集部
適応障害になると、どのような症状がみられるのですか?
藤田先生
例えば、憂鬱な気分が続いたり、不安を感じたりするほか、頭痛や不眠などの様々な症状が出現します。これらは一般的な人にも多くみられる症状ですが、適応障害の場合には日常生活に支障をきたすレベルで強い症状が出ることもあります。
編集部
そのほかには、どのような症状がありますか?
藤田先生
全身倦怠感、動悸、めまい、手足のしびれ、肩こり、腰痛、食欲不振などの身体症状や、集中力の低下、注意力散漫、イライラ感などの精神症状がみられることがあります。場合によっては、会社や学校に行けなくなることもあるでしょう。
編集部
適応障害は、うつ病とは違うのですか?
藤田先生
適応障害と似た症状が表れる疾患に、うつ病があります。しかし、両者には明確な違いがあり、うつ病の場合にはストレスの原因から離れても抑うつなどの症状が続きます。その一方、適応障害はストレスの原因から距離を置けば症状が改善します。
編集部
そのほかにも、適応障害と見極めるための基準はありますか?
藤田先生
適応障害と診断するには、「ストレスの原因となることが起きてから1カ月以内に症状が出現する」ということを満たす必要があります。また、症状が6カ月以上続いた場合は適応障害ではなく、うつ病などの別の疾患が疑われます。
編集部
適応障害を放置すると、どうなるのですか?
藤田先生
放置すると、うつ病へ進行するケースもあります。適応障害は「うつ病の一歩手前」とも呼ばれており、この段階で適切な治療をおこなうことが大切です。
編集部
早めに治療を開始することが大事なのですね。
藤田先生
はい。1年で適応障害が増えるのは、6月です。新年度のはじまりである4月や5月に頑張りすぎて、調子を崩してしまう人が多いのです。そのため、この時期は自分の気分の浮き沈みや抑うつ状態に気をつけるとともに、周囲の人の様子にも気を配ってあげるといいでしょう。
適応障害の治療法
編集部
適応障害はどのように治していくのでしょうか?
藤田先生
まずは、ストレスを取り除くことが重要です。仕事の内容や量がストレスとなっているなら、上司などに相談して調整してもらったり、人間関係がストレスになっているなら部署やチームの配置換えをしてもらったりと、ストレス環境を改善することを考えてみましょう。
編集部
そのほかには?
藤田先生
適度に休養をとったり、ストレスの解消法を見つけたりして、ストレスを溜め込まないようにしましょう。また、メンタルクリニックや心療内科などを受診し、カウンセリングを受けるのもおすすめです。
編集部
ストレスの扱い方が重要なのですね。
藤田先生
そもそもストレスは悪いものではありません。人間の成長を促すためには、適度なストレスが必要です。そのため、ストレスをなくすのではなく、感じとって上手に付き合っていくことが大切です。メンタルクリニックや心療内科では、ストレスコントロールのサポートをしています。
編集部
医療機関では、どのような治療がおこなわれるのですか?
藤田先生
カウンセリングを受けることで改めて自分のストレスに気づき、現状を正しく知ることができます。また、物事の受け取り方(認知)の偏りを修正し、ストレスで硬く凝り固まった考え方を解きほぐす「認知行動療法」によって、ストレスの軽減を目指していきます。
編集部
薬を使用することもあるのでしょうか?
藤田先生
必要があれば薬物療法をおこない、抑うつ症状や不安感、睡眠障害などを改善します。
編集部
治療で症状が改善しても、適応障害は再発するのでしょうか?
藤田先生
適応障害はストレスが誘因となるため、ストレスの多い環境にいると再発するリスクが高くなります。そのため、一度症状が治っても医師の指示に従って治療を継続すること、また休職した場合は復職を焦らないことなども大切です。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
藤田先生
適応障害にかかった人の多くは「自分はダメなんだ」と否定的になり、落ち込んでしまいます。しかし、適応障害は誰でも発症する可能性がある病気で、決して珍しいものでもありません。適応障害と診断されても悲観することなく、上司や同僚、家族、医療従事者などの手助けを借りながら、前向きに治療に取り組んでほしいと思います。
編集部まとめ
適応障害と診断されることは、決して恥ずかしいことでも残念なことでもありません。頑張りすぎている証拠であり、休養が必要というサインです。まずはストレス環境を改善するとともに、心と体をゆっくり休めることを意識してみましょう。
医院情報
所在地 | 〒134-0091 東京都江戸川区船堀4-7-8 グランシャリオ1階 |
アクセス | 都営新宿線「船堀駅」 徒歩3分 |
診療科目 | 心療内科、精神科、内科 |