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「スマホ急性内斜視」になるとどんな「見え方」になる?なりやすい人の特徴も解説!

 公開日:2025/10/11
「スマホ急性内斜視」になるとどんな「見え方」になる?なりやすい人の特徴も解説!

スマートフォンの長時間使用が原因の、スマホ急性内斜視が若い世代で増えています。スマホ急性内斜視は、スマートフォンやタブレットゲーム機など近くの画面を長時間見続けた後に、片方の目が内側に寄ってしまう急性の内斜視です。

だんだんと物が二重に見えはじめることもあり、自覚しづらいまま症状が進行してしまうケースもあります。本記事ではスマホ急性内斜視の症状や原因、検査、治療と予防について解説します。
栗原 大智

監修医師
栗原 大智(医師)

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2017年、横浜市立大学医学部卒業。済生会横浜市南部病院にて初期研修修了。2019年、横浜市立大学眼科学教室に入局。日々の診察の傍らライターとしても活動しており、m3や日経メディカルなどでも連載中。「視界の質=Quality of vision(QOV)」を下げないため、診察はもちろん、SNSなどを通じて眼科関連の情報発信の重要性を感じ、日々情報発信にも努めている。日本眼科学会専門医。

スマホ急性内斜視の症状

スマホ急性内斜視の症状

スマホ急性内斜視とはどのような病気ですか?

スマホ急性内斜視は、それまで正常に両目で見えていた方が、スマートフォンなどの長時間使用をきっかけに片目が内側へ寄ってしまう状態を指します。眼球を内側に動かす筋肉の緊張が強まりすぎることで、正面を向いたときにも視線が鼻側にずれてしまい、両目でものを見る能力(両眼視)が弱まる病気です。

スマホ急性内斜視になったときの見え方を教えてください

スマホ急性内斜視になると、主に 目が内側に寄る症状と物が二重に見える(複視)という2つの症状が現れます。

正常な場合、物を見るとき両目の黒目はその対象にまっすぐ向きますが、スマホ急性内斜視では片方または両方の黒目が鼻の方へ寄ってしまい、正面から見たとき視線が内側にずれて見えます。それに伴って右目と左目で見ている映像がずれて重ならなくなるため、ものが2つにダブって見える複視を自覚します。

実際には、横に並んだ同じ物体が同時に見えるような像になり、手元の文字が読みにくい、遠くの景色がぼやけて二重に見えるなど日常生活に支障をきたします。大人の場合は複視による目の疲れや頭痛、目の奥の痛みを訴えることもあります。一方、小児では脳が片目の映像を無意識に抑えて複視が一時的に消失してしまうことも多く、症状に気付きにくい傾向があります。

スマホ急性内斜視は一時的なものですか?

初期であれば、一時的にスマートフォンの使用を控えることで症状が改善する場合があります。しかし、長期間放置すると内斜視が固定化し、常に片目が内側に寄った状態になることもあります。進行すると自然に治ることは難しく、プリズムメガネによる調整や斜視手術による治療が必要です。

スマホ急性内斜視と似た症状を持つ病気を教えてください

スマホ急性内斜視と症状が似ている主な病気は下記のとおりです。

  • 先天的な内斜視
  • 調節性内斜視
  • 脳梗塞や脳腫瘍による外転神経麻痺

スマホ急性内斜視は、それ以前は両眼視が正常だった方に起こる後天的な内斜視です。幼少期からみられる先天的な内斜視や、遠視が原因で幼児期に発症する調節性内斜視とは発症年齢や原因が異なります。調節性内斜視の場合は遠視用の適切な眼鏡をかければ斜視が大きく改善しますが、スマホ急性内斜視では眼鏡をかけてもずれが治らないことが診断のポイントです。

また、成人で急に片目が内側に寄って複視が出る場合、脳梗塞や脳腫瘍による外転神経麻痺などが原因のこともありますが、その場合は麻痺した目の動きが制限され、特定の方向を向くときだけ複視が悪化するなどの特徴があります。スマホ急性内斜視では両眼の筋肉や神経に異常がないため眼球は全方向に問題なく動き、どの方向を見てもずれの角度がほぼ一定であることが多い点で、麻痺による斜視と区別できます。

診察では眼球運動が正常か確認し、必要に応じてMRIなど画像検査で脳の異常がないか調べることでほかの病気との鑑別が行われます。スマホ急性内斜視は基本的に目の使い過ぎによる機能的な障害であり、目そのものの器質的疾患や神経の麻痺を伴わない点が大きな違いです。

スマホ急性内斜視の原因となりやすい方の特徴

スマホ急性内斜視の原因となりやすい方の特徴

スマホ急性内斜視の原因を教えてください

スマホ急性内斜視の直接的な原因は、近い距離での長時間の画面凝視による、目を内側に寄せる筋肉(内直筋)の過剰な緊張だと考えられています。スマートフォンの画面は手元約30cm程度の至近距離で見ることが多く、本来であれば近くを見る間だけ両目を内側に寄せてピントを合わせます。しかし、30cm未満の距離で長時間連続して近くを見続ける生活を何ヶ月も繰り返すことで、目の筋肉のバランスが崩れて遠くを見るときに両目を外側に開く動きができにくくなり、急に寄り目が戻らなくなってしまうと考えられます。

どのような方がスマホ急性内斜視になりやすいですか?

では、どのような方がスマホ内斜視になりやすいのでしょうか。次のような習慣に心当たりがある方はスマホ急性内斜視になる可能性があります。

生活習慣 (要因) 内容
長時間使用 スマートフォンやタブレットを毎日に30分以上の使用する
極端に近い距離 画面まで30cm未満で見る
姿勢の問題 うつむきや寝転び、横向きなどの姿勢で長時間スマートフォンを見る
暗い環境 暗い部屋や暗い画面のため至近距離で視聴する
凝視、瞬き減少、片眼視 視線を動かさない、瞬きが減る、片目で見る癖などがある

以上のような習慣が重なると、目の位置を調整する両眼視機能に負担がかかり、急性内斜視を発症します。特にゲームに強く依存する生活は注意が必要で、30cm以内の至近距離で30分以上スマートフォンを連日見るような生活は大きなリスクといえます。逆にいえば、こうした生活習慣を見直すことがスマホ急性内斜視の予防につながります。

スマホ急性内斜視の検査と診断

スマホ急性内斜視の検査と診断

スマホ急性内斜視が疑われる場合にどのような検査を行いますか?

スマホ急性内斜視が疑われる場合、眼科ではまず症状が出た時期やスマートフォンの使用状況などを問診します。そのうえで必要な検査を行い、ほかの原因による斜視でないかを調べます。主な検査として次のようなものがあります。

  • 視力検査
  • 眼位検査
  • 複視検査
  • 眼球運動検査
  • 屈折検査
  • 画像検査(MRI/CT)

これら検査をすべて行うのは難しく、特に画像検査はクリニックなどでは行えないところが多いです。そのため、医師が必要と判断した場合は、ほかの医療機関で検査を追加することもあります。

スマホ急性内斜視と診断される基準を教えてください

診察の結果、下記を満たした場合にスマホ急性内斜視と診断されます。

  • 両眼に筋肉や神経の麻痺がなく、眼位のずれが共同性であること
  • 調節麻痺下でも斜視が残存すること
  • 眼位ずれの発症が急であり、スマートフォンなどの長時間近見作業という明確な誘因があること

また、患者さんのスマートフォンやPCの使用時間や姿勢など生活背景も詳しく聞き取って診断の根拠とします。発症前は両眼視に問題がなく正常な眼位だったかも重要な情報です。小児では母子手帳の健診記録や幼少期の写真などから以前は斜視がなかったことを確認します。スマホ急性内斜視と診断された場合、症状の程度に応じて治療方針が立てられます。

スマホ急性内斜視の治療方法と予防法

スマホ急性内斜視の治療方法と予防法

スマホ急性内斜視の治療方法を教えてください

スマホ急性内斜視は早期に生活習慣の改善や必要な治療を行えば、多くはもとの状態まで回復します。具体的な治療は下記のとおりです。

  • 生活指導(スマートフォンなどの適切な使用)
  • プリズム眼鏡による治療
  • 視能訓練(両目で見る力を取り戻すためのトレーニング)
  • A型ボツリヌス毒素の注射
  • 斜視手術

以上が主な治療法ですが、併せて遠視や乱視など視力に影響する屈折異常があれば眼鏡できちんと矯正することも重要です。子どもの場合、眼鏡の度数があっていないことでピント調節に余計な負担がかかり内斜視を引き起こすこともあるため、検査で適切な度数の眼鏡を処方されます。また、治療中もできるだけ両目で物を見るように心がけ、片目だけを使う癖を避けることも大切です。

スマホ急性内斜視はどうすれば予防できますか?

スマホ急性内斜視はスマートフォンが悪いのではなく、スマートフォンの使い方が原因です。日常的に目に優しい習慣を取り入れることで、多くは予防できます。

予防ポイント 内容
距離を保つ スマートフォンの画面は30cm以上離して見る
長時間連続で使わない 20~30分おきに休憩を取り、遠くを20秒以上眺める
姿勢と環境を整える うつ伏せや横向きでの使用や暗い部屋での視聴は避ける

これらの生活習慣を取り入れることで、スマホ内斜視になりにくい環境を作ることができます。

編集部まとめ

編集部まとめ

 スマホ急性内斜視は、スマートフォンやポータブルゲーム機の使い過ぎによって発症する後天的な内斜視です。若者を中心に症例が増えており、小児でも発症することがあります。しかし、早期に生活習慣を見直し、必要な治療を受ければ多くのケースでもとの状態に回復します。目に優しい習慣を取り入れ、もし「遠くを見ると物が二重に見える」「片目をつぶると楽に見える」といった症状に思いあたる場合は、早めに眼科を受診して相談してください。大事な目を守るために、デジタル機器と適度な距離を保ちつつ上手に活用していきましょう。

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