「糖尿病」を発症すると初期段階で「爪」にどんな変化が現れる?【医師監修】

爪の状態は健康状態を映すことがあります。では、爪の色や形の変化に糖尿病の初期サインはあるのでしょうか?糖尿病は自覚症状が少ないまま進行することも多い病気ですが、実は手足の爪にその兆候があらわれる場合があります。本記事では糖尿病と爪の関係について、初期症状として現れうる爪の変化や、受診の目安、検査方法などを解説します。

監修医師:
上田 莉子(医師)
目次 -INDEX-
糖尿病の概要

糖尿病とはどのような病気ですか?
糖尿病の主な症状を教えてください
- 喉が渇いて水分を多く摂る
- 尿の回数が増える
- 食べているのに体重が減る
- 疲れやすくなる
このほかにも傷が治りにくい、手足のしびれ、目のかすみなどが現れることもあります。ただし、症状が出ないまま進行するケースも多いため、これらの症状がないからといって糖尿病ではないとはいえません。
なぜ糖尿病になるのですか?
一方、1型糖尿病の大部分は膵臓のβ細胞が自己免疫で破壊されインスリンが不足することで発症しますが、患者数は2型糖尿病と比較して多くありません。
糖尿病の初期症状と爪の関係

初期の糖尿病では爪にどのような変化が生じますか?
- 微小出血
- 縦方向の線
- 遠位部の爪白癬
- 爪表面の小さなへこみ
- 爪の先端部分の剥離
- 細かい線状の出血
- 爪の下の角化
- 血管の拡張
- 爪先の黄変
これらは肉眼での異常が乏しい段階でも、ダーモスコピーなどの画像診断を用いることで高頻度に検出されることが示されています。特に爪白癬や爪下角化は糖尿病患者さんに多く、皮膚バリア障害や二次感染のリスク増加につながるため、早期から注意が必要です。
参照:
『Toenail Changes in Patients with Diabetes Mellitus with and Without Onychomycosis』(J Am Podiatr Med Assoc)
巻き爪は糖尿病の初期症状ですか?
ただし、巻き爪の方が糖尿病であるというわけではありません。巻き爪は深爪や合わない靴など糖尿病以外の原因でも起こるため、巻き爪だけで糖尿病と断定はできません。重要なのは、巻き爪に加えてほかに糖尿病を疑わせる症状(喉の渇きや多尿、体重減少など)がないかをみることです。それらが重なるようであれば、念のため内科などの医療機関で検査を受けるとよいでしょう。
糖尿病で爪に症状が現れる理由を教えてください
さらに、高血糖は爪の主要成分であるケラチンに糖化を引き起こし、蛋白質や脂質の変性が進むことで、爪がもろくなったり表面がざらついたりすることもあります。また、免疫機能の低下も伴うため、爪白癬や爪周囲炎といった感染症のリスクが高まります。このように、血行不良や神経障害、免疫機能の低下が組み合わさることで、糖尿病特有の爪の変化が初期から出現することがあります。
糖尿病の受診と検査方法

爪だけで糖尿病かどうかを判断することはできますか?
例えば、爪の白濁は爪白癬でもみられますし、爪の黒い変色は内出血やほくろ、皮膚がん(悪性黒色腫など)など別の原因の可能性もあります。爪の異変はあくまで何らかの不調のサインととらえ、最終的に糖尿病かどうかを確かめるには必ず医療機関で血糖測定などの検査を受ける必要があります。
爪に異常があるものの糖尿病かどうかわからないときは何科を受診するとよいですか?
爪の異常が水虫など皮膚の疾患によるものか判断がつかない場合は皮膚科で相談する方法もあります。しかし、仮に爪白癬であっても、糖尿病が原因であれば再発しやすかったり、改善が乏しかったりする可能性もあります。
したがって、爪のトラブルがあり、糖尿病が疑われる症状がある場合は、内科で血糖値やヘモグロビンA1c(HbA1c)などをチェックしてもらいましょう。必要に応じて専門の糖尿病内科を紹介してもらえるでしょう。
病院で行われる糖尿病の検査方法を教えてください
必要に応じて75g経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)といった詳しい検査を行い、飲んだブドウ糖に対する血糖値やインスリンの変化から糖尿病かどうかを判断する場合もあります。また、尿検査で尿中に糖が出ていないかを調べることもあります。これらの検査結果を総合し、基準値以上の高血糖状態が確認されれば糖尿病と診断されます。
糖尿病の治療を受けることで爪はきれいになりますか?
もちろん、一度厚く変形してしまった爪が元どおりになるには時間がかかったり、爪白癬があれば抗真菌薬での治療が必要だったりします。しかし、全身状態の改善とともに爪の健康も取り戻せる可能性はあり、糖尿病の治療開始前に比べて爪の状態がよくなる方もいらっしゃいます。継続的な血糖コントロールと適切な爪と足のケアにより、爪の状態はきれいな方向へ向かうでしょう。
編集部まとめ

糖尿病は珍しくない病気ですが、初期には症状が乏しく気付きにくい一面があります。一方で今回解説したように、爪の色や形の変化は糖尿病のサインの一つとなりえます。爪に現れる異変自体は決して特異的なものではないものの、「いつもと違う」「ほかの症状も心当たりがある」と感じたら見逃さず、早めに医療機関で検査を受けるようにしましょう。
糖尿病を放置すると、足の潰瘍や壊疽など重篤な足病変に発展し、最悪の場合足の切断が必要になることもあります。そうならないためにも早期発見と適切な治療と管理が何より重要です。糖尿病と診断されても、血糖コントロールと生活習慣の改善によって合併症予防しを健康な生活を送ることは十分可能です。日頃から爪を含め自分の身体の小さな変化に目を向けるとともに、バランスのよい食事や適度な運動、禁煙など生活習慣の改善に取り組みましょう。
参考文献




