「緑内障の目薬」にはどのような「副作用」があるかご存知ですか?【医師監修】

緑内障の治療では目薬が基本ですが、副作用への不安を感じる方も少なくありません。実際、緑内障の目薬にはその種類によって、さまざまな副作用があることが知られています。この記事では、緑内障治療に用いられる目薬の種類とその効果、そして副作用と対処法について解説します。

監修医師:
栗原 大智(医師)
目次 -INDEX-
緑内障の概要と治療法

緑内障とはどのような病気ですか?
緑内障の症状を教えてください
進行すると周辺の視野から徐々に欠けていき、最終的には視野が極端に狭くなる可能性があります。また、一部の緑内障(閉塞隅角緑内障)では、急激に眼圧が上昇し、目の痛みやかすみ、吐き気を伴う急性緑内障発作を起こすことがあり、この場合は緊急治療が必要です。
緑内障はどのように治療しますか?
現在、緑内障の眼圧を下げる目薬は何種類も開発されており、患者さん一人ひとりの緑内障のタイプや進行度、目標とする眼圧値に応じて処方されます。通常はまず1種類の点眼から開始し、効果や副作用をみながら必要に応じて点眼薬を追加したり変更したりして治療を調整します。点眼治療中は、症状がないからと自己判断で中断せず、長期的に根気よく継続することが大切です。
点眼で十分な眼圧下降が得られない場合や、それでも視野障害が進行する場合には、レーザー治療(レーザー虹彩切開術やレーザー線維柱帯形成術)や手術(線維柱帯切開術や切除術など)による治療を検討します。レーザー治療や手術は眼圧を大幅に下げられる反面、合併症のリスクもあるため、主治医と十分相談のうえで行われます。
緑内障の治療に用いられる目薬の種類と効果

緑内障の治療ではどのような目薬が用いられますか?
- プロスタグランジン関連薬(ラタノプロストなど)
- β遮断薬(チモロールなど)
- 炭酸脱水酵素阻害薬(CAI)(ドルゾラミドなど)
- α₂受容体刺激薬(ブリモニジンなど)
- Rhoキナーゼ阻害薬(ROCK阻害薬)(リパスジルなど)
このほか、ピロカルピンなどの副交感神経作動薬や交感神経α1遮断薬といった点眼もありますが、現在では副作用の観点からほとんど使用されていません。
治療に複数の点眼が必要な場合、上記の異なる作用機序の点眼を組み合わせた配合点眼薬を使うこともあります。それにより点眼本数や回数を減らすことができ、患者さんの負担軽減に役立ちます。
目薬の種類別に使用する目的や効果を教えてください
| 薬の種類 | 特徴・副作用 |
|---|---|
| プロスタグランジン関連薬 (ラタノプロストなど) |
強力な眼圧下降効果があり、第一選択薬として用いられます。副作用として虹彩色素沈着、まつ毛の変化、まぶたの黒ずみやくぼみ(PAP)があります。 |
| β遮断薬 (チモロールなど) |
全身に作用し、脈拍低下や喘息悪化のリスクがあります。心疾患や呼吸器疾患がある方は点眼薬を変更することがあります。 |
| 炭酸脱水酵素阻害薬(CAI) (ドルゾラミドなど) |
単独より併用で使われることが多く、内服薬に比べ副作用は少ないですが、腎臓に負担をかけるおそれがあります。 |
| α₂受容体刺激薬 (ブリモニジンなど) |
副作用は少ないですが、長期使用で充血やかゆみなどのアレルギー症状が出ることもあります。 |
| Rhoキナーゼ阻害薬(ROCK阻害薬) (リパスジルなど) |
点眼直後に一過性の充血がほぼ必発ですが、全身副作用は少ないとされます。 |
このように目薬の種類によって、眼圧下降効果や副作用が異なります。それぞれの緑内障の状態や目薬との相性を考え、治療で用いる目薬の種類を選択します。
緑内障の目薬による副作用と対処法

緑内障の目薬にはどのような副作用がありますか?
- アレルギー性結膜炎
- まつ毛の変化
- まぶたの黒ずみ
- 眼瞼下垂
- 目の周囲のくぼみ
また、β遮断薬では喘息や徐脈など全身性副作用のおそれがあります。このような副作用があれば、目薬の変更を検討します。
目薬によって黒ずんだ目の周りの肌をもとに戻すことはできますか?
特にプロスタグランジン系の点眼で生じやすい皮膚の色素沈着は、点眼を中止したり、ほかの薬に変更したりすることで、部分的ないし完全にもとに戻る可能性があります。医師の判断で別のタイプの点眼薬に切り替えることも選択肢です。
また、予防策として、点眼の際に薬液がまぶたや皮膚に付いたらすぐ拭き取ります。しかし、それでも微量の液体が残っていれば、副作用の原因になりえます。そのため、点眼後に洗顔あるいはシャワーを浴びることで、残った目薬の成分を洗い流すことをおすすめしています。
副作用によって眼瞼下垂や窪みなどが生じた場合の対処法を教えてください
このような副作用が出た場合、まずは点眼薬の変更を検討します。原因となっている薬を中止すれば、これらの変化は徐々に改善する可能性があります。それでも症状が改善しない場合や、瞼のたるみが強く美容面あるいは機能面で支障が大きい場合には、眼瞼下垂の手術で対処することも可能です。手術は負担もありますので、まずは主治医と相談しながら経過をみつつ対応策を検討しましょう。
副作用が少ない緑内障の目薬はありますか?
例えば、プロスタグランジン関連薬は1日1回で強い効果が得られるため第一選択となっていますが、全身への影響は少ない一方で前述のような局所の副作用(まつ毛や皮膚への影響)が出ることがあります。
一方、炭酸脱水酵素阻害薬やα2作動薬は副作用が少ないことが知られており、全身状態によってはこれらが選択肢になります。また、新しいEP2作動薬は眼周囲の色素沈着などの副作用が起こらない点がメリットです。このように、それぞれの点眼薬に長所と短所があります。眼科医は効果と副作用のバランスをみながら、患者さんの生活スタイルや持病に合わせて適切な目薬を選びます。
編集部まとめ

緑内障の治療では眼圧を下げるための点眼の継続が何より重要です。一方で、点眼薬にもさまざまな副作用があるため、その内容を理解し正しく付き合っていくことが大切です。
違和感や副作用症状があれば、我慢せずに主治医に相談しましょう。自己判断で治療を中断すると緑内障が進行するおそれがあります。医師と相談しながら副作用を和らげる方法や代替薬を検討できます。点眼治療を続けるには、正しい知識を持って臨むことが大事です。緑内障と副作用についてよく理解し、納得しながら治療を続けることが、生涯にわたり視力を守ることにつながります。



