「緑内障の目薬」にはどのような「副作用」があるかご存知ですか?【医師監修】
公開日:2025/10/02

緑内障の治療では目薬が基本ですが、副作用への不安を感じる方も少なくありません。実際、緑内障の目薬にはその種類によって、さまざまな副作用があることが知られています。この記事では、緑内障治療に用いられる目薬の種類とその効果、そして副作用と対処法について解説します。

監修医師:
栗原 大智(医師)
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2017年、横浜市立大学医学部卒業。済生会横浜市南部病院にて初期研修修了。2019年、横浜市立大学眼科学教室に入局。日々の診察の傍らライターとしても活動しており、m3や日経メディカルなどでも連載中。「視界の質=Quality of vision(QOV)」を下げないため、診察はもちろん、SNSなどを通じて眼科関連の情報発信の重要性を感じ、日々情報発信にも努めている。日本眼科学会専門医。
目次 -INDEX-
緑内障の概要と治療法
緑内障とはどのような病気ですか?
緑内障とは、目から脳へ情報を送る視神経が障害され、徐々に見える範囲(視野)が狭くなる病気です。40歳以上では約20人に1人が緑内障を持つとされ、日本人の中途失明原因の第1位でもあります。しかし、初期には自覚症状がほとんどなく、進行するまで気付きにくい病気です。進行すると視野が欠け、放置すれば失明につながるおそれがあります。
緑内障の症状を教えてください
緑内障の主な症状は視野が欠けたり、視野が狭まったりすることです。緑内障の症状は、視力が下がることだと思っている方もいます。しかし、中心視力は末期まで保たれることが多く、日常生活に支障が出にくいため気付きにくいのが特徴です。
進行すると周辺の視野から徐々に欠けていき、最終的には視野が極端に狭くなる可能性があります。また、一部の緑内障(閉塞隅角緑内障)では、急激に眼圧が上昇し、目の痛みやかすみ、吐き気を伴う急性緑内障発作を起こすことがあり、この場合は緊急治療が必要です。
緑内障はどのように治療しますか?
緑内障の治療法は大きく3つあり、まず目薬での治療(薬物療法)が基本です。
現在、緑内障の眼圧を下げる目薬は何種類も開発されており、患者さん一人ひとりの緑内障のタイプや進行度、目標とする眼圧値に応じて処方されます。通常はまず1種類の点眼から開始し、効果や副作用をみながら必要に応じて点眼薬を追加したり変更したりして治療を調整します。点眼治療中は、症状がないからと自己判断で中断せず、長期的に根気よく継続することが大切です。
点眼で十分な眼圧下降が得られない場合や、それでも視野障害が進行する場合には、レーザー治療(レーザー虹彩切開術やレーザー線維柱帯形成術)や手術(線維柱帯切開術や切除術など)による治療を検討します。レーザー治療や手術は眼圧を大幅に下げられる反面、合併症のリスクもあるため、主治医と十分相談のうえで行われます。
緑内障の治療に用いられる目薬の種類と効果
緑内障の治療ではどのような目薬が用いられますか?
緑内障の治療は、眼圧を下げることが目的です。そのために複数の目薬があり、それぞれ作用の仕方(機序)や点眼回数、副作用の特徴が異なります。現在、主に用いられる目薬には下記のようなものがあります。
- プロスタグランジン関連薬(ラタノプロストなど)
- β遮断薬(チモロールなど)
- 炭酸脱水酵素阻害薬(CAI)(ドルゾラミドなど)
- α₂受容体刺激薬(ブリモニジンなど)
- Rhoキナーゼ阻害薬(ROCK阻害薬)(リパスジルなど)
目薬の種類別に使用する目的や効果を教えてください
緑内障で用いる目薬にはいくつかの種類があります。主に用いられる目薬とその特徴あるいは副作用は下記のとおりです。
このように目薬の種類によって、眼圧下降効果や副作用が異なります。それぞれの緑内障の状態や目薬との相性を考え、治療で用いる目薬の種類を選択します。
| 薬の種類 | 特徴・副作用 |
|---|---|
| プロスタグランジン関連薬 (ラタノプロストなど) | 強力な眼圧下降効果があり、第一選択薬として用いられます。副作用として虹彩色素沈着、まつ毛の変化、まぶたの黒ずみやくぼみ(PAP)があります。 |
| β遮断薬 (チモロールなど) | 全身に作用し、脈拍低下や喘息悪化のリスクがあります。心疾患や呼吸器疾患がある方は点眼薬を変更することがあります。 |
| 炭酸脱水酵素阻害薬(CAI) (ドルゾラミドなど) | 単独より併用で使われることが多く、内服薬に比べ副作用は少ないですが、腎臓に負担をかけるおそれがあります。 |
| α₂受容体刺激薬 (ブリモニジンなど) | 副作用は少ないですが、長期使用で充血やかゆみなどのアレルギー症状が出ることもあります。 |
| Rhoキナーゼ阻害薬(ROCK阻害薬) (リパスジルなど) | 点眼直後に一過性の充血がほぼ必発ですが、全身副作用は少ないとされます。 |
緑内障の目薬による副作用と対処法
緑内障の目薬にはどのような副作用がありますか?
よくみられる副作用は点眼直後の充血や刺激感です。長期的にみられる主な副作用は下記のとおりです。
- アレルギー性結膜炎
- まつ毛の変化
- まぶたの黒ずみ
- 眼瞼下垂
- 目の周囲のくぼみ
目薬によって黒ずんだ目の周りの肌をもとに戻すことはできますか?
点眼を続けているうちにまぶたや目の周りの皮膚が黒ずんできたと感じたら、まずは担当医に相談しましょう。
特にプロスタグランジン系の点眼で生じやすい皮膚の色素沈着は、点眼を中止したり、ほかの薬に変更したりすることで、部分的ないし完全にもとに戻る可能性があります。医師の判断で別のタイプの点眼薬に切り替えることも選択肢です。
また、予防策として、点眼の際に薬液がまぶたや皮膚に付いたらすぐ拭き取ります。しかし、それでも微量の液体が残っていれば、副作用の原因になりえます。そのため、点眼後に洗顔あるいはシャワーを浴びることで、残った目薬の成分を洗い流すことをおすすめしています。
副作用によって眼瞼下垂や窪みなどが生じた場合の対処法を教えてください
長期のプロスタグランジン点眼によって、まぶたを開ける筋肉に影響が及び上まぶたが下がってしまうことがあります。瞼の脂肪組織が萎縮して目が落ちくぼんだ状態になることも含め、これもPAPの一症状です。見た目の変化だけでなく、瞼が下がることで視界が遮られてしまうこともあります。
このような副作用が出た場合、まずは点眼薬の変更を検討します。原因となっている薬を中止すれば、これらの変化は徐々に改善する可能性があります。それでも症状が改善しない場合や、瞼のたるみが強く美容面あるいは機能面で支障が大きい場合には、眼瞼下垂の手術で対処することも可能です。手術は負担もありますので、まずは主治医と相談しながら経過をみつつ対応策を検討しましょう。
副作用が少ない緑内障の目薬はありますか?
点眼の回数や薬の選択によっても副作用の出方は異なります。一般に、1日の点眼回数が少ない薬は継続しやすさが良好で、点眼時の不快感や全身への移行も少なく抑えられる傾向があります。
例えば、プロスタグランジン関連薬は1日1回で強い効果が得られるため第一選択となっていますが、全身への影響は少ない一方で前述のような局所の副作用(まつ毛や皮膚への影響)が出ることがあります。
一方、炭酸脱水酵素阻害薬やα2作動薬は副作用が少ないことが知られており、全身状態によってはこれらが選択肢になります。また、新しいEP2作動薬は眼周囲の色素沈着などの副作用が起こらない点がメリットです。このように、それぞれの点眼薬に長所と短所があります。眼科医は効果と副作用のバランスをみながら、患者さんの生活スタイルや持病に合わせて適切な目薬を選びます。
編集部まとめ
緑内障の治療では眼圧を下げるための点眼の継続が何より重要です。一方で、点眼薬にもさまざまな副作用があるため、その内容を理解し正しく付き合っていくことが大切です。
違和感や副作用症状があれば、我慢せずに主治医に相談しましょう。自己判断で治療を中断すると緑内障が進行するおそれがあります。医師と相談しながら副作用を和らげる方法や代替薬を検討できます。点眼治療を続けるには、正しい知識を持って臨むことが大事です。緑内障と副作用についてよく理解し、納得しながら治療を続けることが、生涯にわたり視力を守ることにつながります。




