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「高血圧による頭痛」にはどのような特徴があるかご存知ですか?【医師監修】

 公開日:2025/10/15
「高血圧による頭痛」にはどのような特徴があるかご存知ですか?【医師監修】
頭痛は多くの方が経験する身近な症状の一つです。 そのなかには、血圧が高いことが原因で起こるものがあることをご存じでしょうか。

高血圧による頭痛は、ときに高血圧性脳症など深刻な状態のサインとなる場合があります。 早めに気付いて対応することで、進行や重い合併症を未然に防げる可能性があります。

この記事では、高血圧による頭痛の特徴やメカニズム、放置した場合のリスク、治療法、さらに日常生活で注意すべきポイントを解説します。
佐藤 浩樹

監修医師
佐藤 浩樹(医師)

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北海道大学医学部卒業。北海道大学大学院医学研究科(循環病態内科学)卒業。循環器専門医・総合内科専門医として各地の総合病院にて臨床経験を積み、現在は大学で臨床医学を教えている。大学では保健センター長を兼務。医学博士。日本内科学会総合専門医、日本循環器学会専門医、産業医、労働衛生コンサルタントの資格を有する。

高血圧と頭痛の関係

高血圧と頭痛の関係

高血圧の基準を教えてください

高血圧の診断基準は、測定する場所や方法によって異なります。 日本高血圧学会のガイドラインでは、診察室血圧で140/90 mmHg以上家庭血圧で135/85 mmHg以上を高血圧と定めています。診察室での測定値と家庭での測定値が異なる場合は、より日常に近い条件で測れる家庭血圧を優先することが推奨されています。

また、血圧は朝方や夜間など時間帯によっても変動し、職場や緊張時にだけ上がることもあります。そのため、診断の際には朝と晩に1日2回、少なくとも5日間以上測定した平均値を用いることが望ましいとされています。

参照:『高血圧管理・治療ガイドライン2025』(日本高血圧学会高血圧管理・治療ガイドライン委員会)

高血圧による頭痛にはどのような特徴がありますか?

高血圧に関連する頭痛は、慢性的な軽度〜中等度の高血圧だけでは生じにくいとされています。ここでいう中等度とは、180/110mmHg未満の血圧を指します。

一方で、血圧が急激に上昇したときや、異常に高い状態が続いたときには頭痛が現れることがあります。典型的には両側に広がる拍動性の痛みで、身体を動かすと強まる傾向があります。血圧は日内変動があり、特に朝方には上がりやすいため、朝に頭痛が出やすい場合もあります。

参照: 『国際頭痛分類 日本語版』(日本頭痛学会) 『Morning headaches: An in-depth review of causes, associated disorders, and management strategies』(Headache Pain Res)

高血圧により頭が痛くなるメカニズムを教えてください

高血圧による頭痛は、血圧の急激な上昇によって脳血管が拡張したり、血管壁にかかる圧力が増大したりすることが原因で生じると考えられています。これらの変化は血管周囲の神経への刺激や化学物質の放出を引き起こし、頭の痛みとして現れます。

さらに血圧上昇が著しい場合には、脳の血流を一定に保つ仕組みが破綻し、脳と血管を隔てる血液脳関門(BBB)と呼ばれるバリアが破綻します。その結果、脳浮腫や神経細胞の障害が生じ、神経症状を伴う高血圧性脳症に至ることがあります。この段階は単なる頭痛の範囲ではなく、緊急の病態です。

参照:『The hypertensive headache: a review』(Curr Pain Headache Rep)

高血圧の頭痛とほかの病気による頭痛にはどのような違いがありますか?

高血圧による頭痛の特徴は、血圧の変動に同期して頭痛の強さが変化する傾向があることです。血圧が高くなると頭痛が強まり、血圧が下がると頭痛が軽くなるという経過を示します。

一方で、頻度の高いほかの頭痛には別の特徴があります。片頭痛では吐き気や光・音への過敏を伴い、発作性であることが典型です。緊張型頭痛は肩こりやストレスなどが関与しやすく、頭全体が締め付けられるような痛みとして現れます。

しかし、病気の結果として脳出血やくも膜下出血でも、頭痛と同時に著しい高血圧がみられることがあります。このため、症状だけから高血圧による頭痛を見分けることは難しい場合も少なくありません。

急激な血圧上昇を伴う頭痛がみられた場合には、医療機関で診断を受けることが望まれます。

特に、どんどん悪化していく頭痛これまでに経験したことがないほど激しい頭痛、あるいは神経症状を伴う頭痛は緊急性が高い可能性があり、ためらわずに救急車を呼んでください。

高血圧による頭痛の危険性

高血圧による頭痛の危険性

高血圧による頭痛を放置するとどうなりますか?

高血圧による頭痛を放置すると、命に関わる病態に進展する可能性があります。血圧が急激に上昇した状態が続けば、脳血流を一定に保つ仕組みが破綻し、意識障害やけいれんを伴う高血圧性脳症に移行する危険があります。高血圧性脳症は緊急性の高い重篤な状態であり、早期の診断と治療が不可欠です。

さらに、高血圧そのものが長く続けば、脳出血や脳梗塞などの脳卒中、心筋梗塞や腎障害といった全身の合併症リスクも高まります。したがって、高血圧に関連した頭痛を軽く考えて放置することは危険です。

高血圧脳症とはどのような病気ですか?

高血圧性脳症とは、急激に血圧が上昇することで脳血流を一定に保てなくなり、脳浮腫や神経細胞障害をきたした結果、頭痛に加えて神経症状がみられる病態を指します。 神経症状には、吐き気や嘔吐、視覚の異常、意識障害、けいれんなどが含まれます。画像検査では、頭部MRIで可逆性後白質脳症(PRES)と呼ばれる特徴的な変化がみられることがあります。

明確な血圧の基準はありませんが、普段から高血圧のある方で220/110mmHg以上正常血圧の方は160/100mmHg以上になると起こりやすいとされています。ただし、血圧の数値だけで診断されるのではなく、血圧の急激な上昇に加えて、神経症状や画像検査の結果から総合的に判断されます。

参照: 『高血圧管理・治療ガイドライン2025』(日本高血圧学会高血圧管理・治療ガイドライン委員会) 『Posterior reversible encephalopathy syndrome: A variant of hypertensive encephalopathy』(J Clin Neurosci)

高血圧脳症が疑われる兆候を教えてください

普段よりも血圧が著しく高く、それと同時に強い頭痛が出現したときに以下のような神経症状を伴う場合、高血圧性脳症が疑われます。

  • 吐き気
  • 嘔吐
  • 視覚障害(視野がかすむ、見えにくいなど)
  • 意識障害
  • けいれん

こうした症状は時間の経過とともに悪化することも多く、放置すれば命に関わるおそれがあります。少しでも疑わしい症状があれば、速やかに救急外来を受診しましょう。

高血圧による頭痛の治療法と日常生活での注意点

高血圧による頭痛の治療法と日常生活での注意点

高血圧による頭痛の治療法を教えてください

高血圧による頭痛の治療の基本は、原因となっている血圧を適切に下げることです。 一般的には、生活習慣の見直しに加えて内服薬による継続的な血圧管理を行います。年齢や基礎疾患に応じて、カルシウム拮抗薬、ACE阻害薬、ARB、利尿薬などの薬剤から適切なものが選択されます。

一方で、血圧が高度に上昇し、臓器障害を伴う高血圧緊急症高血圧性脳症と判断された場合は緊急入院での治療が必要です。このような場合には、カルシウム拮抗薬をはじめとする降圧薬を静脈から持続的に投与して、慎重に血圧を下げていきます。急激に下げすぎると脳梗塞を引き起こす危険があるためです。

参照:『高血圧管理・治療ガイドライン2025』(日本高血圧学会高血圧管理・治療ガイドライン委員会)

高血圧で頭が痛いときに市販薬を飲んでも問題はありませんか?

市販の頭痛治療薬としては、ロキソプロフェンやイブプロフェンなどのNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)およびアセトアミノフェンが広く用いられています。 しかし、高血圧による頭痛においては、これらの鎮痛薬による症状の改善は期待できません。

それどころか、特にNSAIDsは腎機能に負担をかけるほか、血圧を上げるという報告もあり、安易な使用は危険です。 高血圧に伴う頭痛がある場合には、市販薬で対応しようとするのではなく、医療機関での適切な診断と治療を受けることが大切です。

参照:『Differential blood pressure effects of ibuprofen, naproxen, and celecoxib in patients with arthritis: the PRECISION-ABPM trial』(Eur Heart J)

高血圧の人が日常生活のなかで気を付けることを教えてください

食生活では減塩がすすめられており、日本高血圧学会では1日の塩分摂取量を6g未満に抑えることを推奨しています。

運動はウォーキングなどの有酸素運動に加え、スクワットや腕立て伏せなどの軽い筋力トレーニング(レジスタンス運動)が血圧の安定化によいとされています。ただし、急激な運動はかえって血圧上昇や頭痛を招くことがあるため、無理のない内容で続けましょう。

飲酒は節度を守り、1日あたり男性はエタノール20〜30mL(ビール中瓶1本)、女性はその半分以下にとどめることが目安とされています。喫煙は心血管疾患や脳卒中のリスクも高めるため、禁煙が推奨されています。

さらに、十分な睡眠を確保し、ストレスを和らげる時間をもつことも血圧の安定に役立ちます。すでに高血圧に対する処方を受けている方は、用法用量を守り、服薬を継続してください。

参照: 『健康日本21アクション支援システム 〜健康づくりサポートネット〜』(厚生労働省) 『高血圧管理・治療ガイドライン2025』(日本高血圧学会高血圧管理・治療ガイドライン委員会)

編集部まとめ

編集部まとめ 高血圧が原因で起こる頭痛については、一般にはあまり知られていないかもしれません。 しかし、その頭痛は重い病気のサインとなる場合があります。

高血圧による頭痛は、血圧の急激な上昇とともに現れるのが特徴であり、放置すると高血圧性脳症のような緊急の病気につながることがあります。症状だけではほかの危険な頭痛との区別が難しい場合も少なくありません。いつもとは違う高血圧と頭痛を自覚したときは速やかに医療機関を受診してください。

また、減塩や運動、十分な休養といった生活習慣の工夫は血圧を安定させ、頭痛の予防にもつながります。すでに高血圧と診断されている方は、医師の指導に沿って管理を続けましょう。

日頃から血圧を意識して過ごすことは、健やかな毎日を送る第一歩です。

参考文献

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