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「歯周病の治療費用」はご存知ですか?治療法や自宅ケアも解説!【医師監修】

 公開日:2025/10/08
「歯周病の治療費用」はご存知ですか?治療法や自宅ケアも解説!【医師監修】
歯茎から血が出る、腫れているなどは歯周病のサインかもしれません。歯周病は身近な病気ですが、初期の段階では自覚症状がほとんどなく、気付いたときには進行しているケースも少なくありません。

歯周病は放置すると歯を支える骨が失われ、最終的には歯を失う原因になります。一方で、早期に発見して適切な治療やケアを行えば、改善や進行の抑制が十分に可能です。

本記事では、歯周病の分類やステージ・グレードの考え方、段階ごとの治療内容と費用の目安、自宅でできるケア方法を解説します。
松浦 京之介

監修歯科医師
松浦 京之介(歯科医師)

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歯科医師。2019年福岡歯科大学卒業。2020年広島大学病院研修修了。その後、静岡県や神奈川県、佐賀県の歯科医院で勤務。2023年医療法人高輪会にて勤務。2024年合同会社House Call Agencyを起業。日本歯科保存学会、日本口腔外科学会、日本口腔インプラント学会の各会員。

歯周病の分類とステージ、グレード

歯周病の分類とステージ、グレード

歯周病にはどのような種類がありますか?

歯周病は大きく分けて歯肉炎歯周炎に分類されます。歯と歯茎の境目に歯垢(プラーク)がたまって細菌が繁殖すると歯茎に炎症が起きます。これが歯肉炎で、歯肉炎の段階では炎症が歯茎(歯肉)に限局し、歯を支える骨にはまだ破壊が及んでいません。

ところが炎症が長期間続くと、細菌の毒素によって歯槽骨が溶かされ始め、歯がぐらつくようになります。こうした歯槽骨の破壊を伴う状態が歯周炎で、一般に歯周病というとこの歯周炎まで含めた病態を指します。歯肉炎は適切なケアで健康な状態に戻すことが可能ですが、歯周炎に進行して骨が失われた場合は放置するとどんどん進んでしまうため注意が必要です。

歯周病のステージを教えてください

歯周炎は進行の程度によって症状や治療内容が異なるため、ステージと呼ばれる分類で重症度を評価します。ステージ1~4の4段階があり、ステージ1がもっとも軽度、ステージ4がもっとも重度です。評価には歯周ポケットの深さや歯槽骨の残存量、歯の動揺度や歯の脱落本数などが用いられます。

歯周病のグレードとは何ですか?

近年新しく導入された概念にグレードがあります。グレードは歯周病の進行の早さや将来的な悪化リスクを評価するもので、A・B・Cの3段階(Aがリスク低、Cがリスク高)に分類されます。若年にも関わらず急速に悪化するタイプなのか、ゆっくり進行するタイプなのかを判定し、必要な介入や経過観察の頻度を決める指標です。グレードの判定には喫煙習慣や糖尿病の有無なども考慮されます。

歯周病のステージ別|治療法と治療費用の目安

歯周病のステージ別|治療法と治療費用の目安

歯周病の治療法をステージごとに教えてください

軽度の歯周病(ステージ1)では、主に歯周基本治療によって対応します。具体的には、歯科衛生士や歯科医師が専門的なクリーニングを行い、プラークコントロールのための歯みがき方法の指導を受けることが中心です。歯茎の表面についている歯石やプラークを取り除き、歯の表面を滑らかに磨き上げることで炎症を改善し、歯周ポケットを健康な状態に戻すことが期待されます。

中等度の歯周病(ステージ2~3)では、基本的な治療方針は軽度の場合と同じく歯周基本治療ですが、炎症が強くなっているため、より深い部分に入り込んだ歯石や感染物質の除去が必要です。この場合、局所麻酔を用いて歯周ポケットの奥まで器具を入れ、根面を磨きながら徹底的に清掃を行います。それでも改善しない深いポケットが残る場合には、歯茎を切開して奥深くの汚れを直接除去するフラップ手術などの外科的処置を検討します。

重度の歯周病(ステージ3~4)では、全顎的な徹底した歯周基本治療に加えて、複数回にわたる歯周外科治療が必要です。奥歯の根分岐部病変に対するフラップ手術や、骨移植やエムドゲインなどを用いた再生療法が行われることもあります。また、動揺が強い歯に対しては噛み合わせの調整や固定(スプリント)を行い、咬合力による悪化を防ぎます。改善が望めない歯については抜歯が検討され、その後はブリッジや義歯、インプラントなどで機能回復を図ります。

保険診療における歯周病の治療費用の目安を教えてください

軽度の場合、歯石除去や歯みがき方法の指導といった基本的な治療はすべて保険で対応可能で、3割負担の患者さんであれば合計で5,000~10,000円程度に収まります。1回の受診につき3,000~4,000円ほどの自己負担がかかるイメージです。

中等度になると、通院回数や処置部位が増えるため費用もかさみ、合計で1~5万円程度です。全顎的にルートプレーニングを行ったり、フラップ手術などの外科治療を行ったりする場合には、追加費用が発生します。

重度の歯周病では、歯周基本治療に加えて複数回の外科的処置が必要になるため、総額で15,000~100,000円ほどかかることがあります。

自由診療での歯周病治療にかかる費用の目安を教えてください

自由診療を選ぶ場合、内容や使用する機材によって大きく費用が変動します。軽度であれば1~5万円程度で済みます。

中等度になると、レーザーを用いた治療やエムドゲイン・リグロスといった再生療法を組み合わせることがあり、その場合は5~50万円程度に達することがあります。重度の歯周病治療を自由診療で行う場合はさらに高額になり、再生療法や複数本のインプラント治療を併用するため追加費用が発生します。治療内容によって費用負担は大きくなるため、事前に治療計画と見積もりをよく確認し、納得したうえで治療を決めましょう。

歯周病の治療期間と自宅でのケア

歯周病の治療期間と自宅でのケア

歯周病は治療によって完治する病気ですか?

歯茎の炎症だけで骨にダメージが及んでいない歯肉炎の段階であれば、適切な治療により健康な歯茎に回復させることが期待できます。一方、歯周炎で歯槽骨が溶けてしまった部分は自然には再生しません。

ただし、治療によってそれ以上骨が失われないよう病気の進行を止め、歯茎の健康な状態を取り戻すことは可能です。重度で歯がぐらつくケースでも、原因となる歯垢や歯石を徹底的に除去し噛み合わせを調整することで、ぐらつきが改善して長期間保てる場合もあります。このように、歯周病は適切な治療とその後の管理によって完治に近い状態まで持っていくことも可能です。

歯周病の治療期間を教えてください

歯周病の治療期間は、症状の重さや治療内容によって大きく異なります。

歯周病の重症度 治療期間の目安 通院回数の目安
軽度 1~3ヶ月程度 3~5回前後
中等度 3ヶ月~1年程度 5~10回程度
重度 6ヶ月から1年以上 10回以上

以上はあくまで目安ですが、歯周病は進行すればするほど治療に時間がかかる傾向があります。そのため、症状が軽いうちに治療を開始することが結果的に治療期間の短縮につながります。歯周病は慢性的な経過をたどる疾患ですので、その後も定期的に歯科医院でチェックとクリーニングを受けるようにしましょう。

歯周病になった際の自宅でできるケア方法とケア用品にかかる費用の目安を教えてください

歯周病の治療中・治療後に共通して重要なのが、自宅での日々の口腔ケア(セルフケア)です。どれだけ歯科で治療を受けても、日常のケアがおろそかになると再び細菌が増殖して歯周病がぶり返してしまいます。歯周病予防の基本はプラークコントロール、すなわちお口の中の細菌の数を減らすことです。そのために、自宅でできる主なケアとして以下のような方法があります。

  • 丁寧な歯みがき
  • デンタルフロス・歯間ブラシの使用
  • 洗口液(マウスウォッシュ)の活用

丁寧な歯みがきはセルフチェックケアの基本です。また、歯と歯の間の汚れは歯ブラシだけでは落としきれないため、フロス(糸ようじ)や歯間ブラシを使った清掃も併せて行います。

さらに、補助的なケアとして、薬用成分配合の洗口液でうがいをするのもよいでしょう。歯みがきやフロスの後にお口をすすぐことで、歯周病菌の増殖を抑える効果が期待できます。ただし、洗口液だけでは歯垢は十分に除去できないためあくまで補助と考えましょう。 いずれも数百~1500円程度です。これらのセルフケア用品は薬局やスーパーで手軽に入手できます。毎日のセルフケアと定期的な歯科医院でのクリーニングで歯周病を予防しましょう。

編集部まとめ

編集部まとめ 歯周病はよくある病気ですが、その進行度(ステージ)によって必要な治療内容や期間・費用は大きく異なります。初期段階では簡単な歯石取りと歯みがき方法指導で改善し費用もわずかで済むのに対し、重度になると外科手術や長期の通院が必要となり、治療費も高額です。

したがって、「もしかして歯周病かな?」と思ったら早めに歯科医院を受診し、症状が軽いうちに治療を始めましょう。また、歯周病は再発しやすい病気でもありますから、治療後も日々のセルフケアと定期検診によるチェックを欠かさないようにしましょう。大切なのは予防と早期発見・早期治療です。適切なケアと習慣で歯周病を防ぎ、ご自身の歯をできるだけ長く健康に保ちましょう。

この記事の監修歯科医師